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145話 SQUEAL

 昼飯を食べて、俺たちは店を出た。


「で、考えた?」


「うーん……」


 お店を出る前に実の予定からこの後どうするかを聞いておいたけど、それでもまだ悩んでいるようだった。


「どういうことで悩んでたりする?」


「その……申し訳ないんだけど……」


「ほう」


「私にも分かってないというか……」


 ほほう?


「それだと俺にもどうしていいか分からないけど……」


「ゴ、ゴメン……」


「ま、楽しんで行こうぜ」


 食事する前は実の内心について色々と考えてしまうところもあったけど、もしかしたらそれ以外の理由……勉強や進学、進路についての悩みや、生理的なアレで精神が不安定になっているかもしれないな。なんかメチャクチャ謝って来られてるし。


 取り敢えず歩き出し、混み始めた飲食店エリアからの出ることにした。


「で、最初の予定はどんな感じだったーとか、言える?」


「それは……小物か服でも見ようかなって」


「最近実ってそういうの、買うようになったね」


「え? ゴメ――」


「責めてる訳じゃなくてさ。何か、心変わりとかあったのかなって思って。聞いたのは……ただの好奇心?」


「あ、そうなんだ……。あんまり自覚は無い……かも?」


 実は一瞬、天を仰いで考え、視線を横にずらしてから元に戻すようにしてその視線をこちらに投げかけながら答えた。


「じゃあ取り敢えず、小物売り場に行くか」


「うん……」


 兎に角今は少しでも買い物に実の意識を逸らして、いつも通りに過ごせるように精神を安定させてやるのが肝だ。


「前に来てから結構時間が経ってるから、ラインナップも変わってるねぇ」


「前からも来てたの?」


「高2になってから、たまーに?」


「なるほど」


 雑談を交えつつ、小物売り場でウインドウショッピング。ここで暫く実の興味の湧くものを見るのに付き合っていると、どうやら実も落ち着いたようで。


「で、結局買わなくて良かったの?」


「うん。今回は……また今度見て、あったら買おうかなって」


 斯くして、小物については1つも何かを買うことは無く、売り場を出ることになった。


「次はどこ行こうか」


 小物売り場に関して言えば、実的に「まだ」行けそうなところだったから、すんなり行けたのだと思った。でも迷っていたうちの何個かは実的に行きにくい場所かも知れない為、次の問いはあくまで実の自由意思を尊重する形になった。悩んでいるのが二択でもう片方が行きにくい選択肢、という可能性もある訳だし。


「じゃあ……服屋、行っていい?」


「おっけ」


 今の選択が、実にとって「さっきまで言い出し辛かった選択肢」なのかどうか、俺には分からない。でも、もし俺が小物売り場にて安定させた精神のおかげで実がその選択が出来ていたのなら嬉しいな、と思った。


 ……本当に安定したのかも俺には分からないけど。取り敢えずは、最低限取り繕えるほどは安定したことは確かなはずだと信じて、歩みを進めた。


「今日はどんなの見るつもりで?」


「暑くなってきたし、夏用のモノとかかなぁ……」


「確かに最近、急に暑くなってきたもんなぁ……梅雨もまだなのに」


 湿気ってないのがまだ救いだな。


「結構ここの服って、地元だとあんまり見ないのがあるね」


「……季節の変わり始めだし、まだ向こうで置いてないのがこっちで置いてあるのとかもあるのかもな」


「そうだね」


 なんとか話を繋いだけど、服にそんなに興味無いのもあって、本当はそれっぽいコトを言って誤魔化しただけだった。実際はどうなのかは分からない。実はそのことに気づいてないらしい。セ、セェーフ……。


「って、ここは……?」


 実の気の向かう方向に進んでついて行くと、そこはあまり女性モノが置いてあるスペースという感じでは無かった。


 男女兼用のモノ、そして男性向けの商品にも見えるモノが置いてあった。


「見る分には私が使うモノも見たいというのは本当なんだけど、買いたいとなると別で」


 そう言いながら実はゆっくりと立ち止まりつつ商品の一つを手に取り、こちらを見て、言葉を続けた。


「ネクタイとかプレゼントしたいと思ったんだけど……どうかな?」

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