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15話 体育祭と成長痛

「ふぃ~、疲れた~」


 “今日”の半分が終わり、グラウンドから弁当を取りに教室へ向かおうとしたときだった。


「増良、どこ行くんだ?」


「え? 教室に、弁当食いに行きに」


 声を掛けて来たのは実だった。


「それなら俺もついて行こうかな」


「ほーん」


「それにしても、増良は本当に足が遅かったよな」


「うっせ。他が早すぎんだよ、他が。なんで俺以外体育会系クラブのエース級しかいなかったんだよ」


 同じ学年なのにこんなにクジの運が悪いことある? 普通に考えて。俺以外は野球部、ラグビー部、そして陸上部の面々。最初から負け以外は無かった。


 俺自身そこまで早くない部類で、タイム自体は同年代平均よりも少し遅いくらいだが、何せ相手が悪すぎる。文科系部員が全くいないというのは体育祭の競争の中でも珍しい組み合わせだった。


「実は……早かったな」


「まあな」


 その他女子大勢をぶっちぎっての一位、見事だ。まあ、TS化した人が混じっているとよくある光景なのだが。


「それにしても陸上部短距離の子すら置いて一位は、凄いとしか言えないな」


「あんま言うなって……実力もそんなに出せなかったし……」


 少し照れたような、そしてややばつが悪そうな顔をして実は言った。


「実力が出せなかったって……なんで?」


「いやー……なんか胸が痛くってさ」


「えぇ……」


 お前そんな言うほどあったっけ?なんて言おうとして実の胸元に目線が行った。アレ? 少し大きくなってないか? てっきり、揺れるほどなんて無いと思っていたけど……。


「お前さぁ……今の俺は一応、女だし、学外の人間もそれなりにいる中で胸を凝視とかヤバすぎだろ……」


「あ、ゴメっ」


 そういやそうだ。実の言葉がなければ俺は公の場で女の胸をガン見するド変態になるところだった。いや、既にそうかもしれない、事実だけ見ると。


「それにしたって、ある程度揺れるとしてもそれは他の女子も同じじゃねぇか?」


「あーいや、そういうことじゃなくて……揺れて少し痛みがあるのも確かなんだけど……どうやら成長痛の方で……」


「成長痛?」


 そもそも性転換したときにはそんな話は聞いてなかったし、性転換に成長痛のような痛みが伴うなんてことは聞いたことが無い。それとこれとは別なのか?


「それって、膝みたいにズキズキ来る感じの痛みが?」


「どっちかというと、チクチクって感じかな」


「それってやっぱ、TS病と関係あんの?」


「いや、無いっぽい。なんか大雑把にそういうサイトを見た感じだと、『本来自分が女だったときになるはずだった症状が出てる』ってのが学者とかの主流の考えみたい」


「へー」


 保健体育の授業や生活している中で自然と聞こえてくるような知識だけじゃ、全然知らないこともあるんだなと実感する。


「服も擦れるってのと、胸が大きくなるからブラもキツくなってってので本当に痛くなってるな。母親と妹がそのこと知らなくて胸のサイズにほぼピッタリの選んだらしいし。……買い換えないといけないかなー」


「お前……お前も公然に男女間で下着の話してるヤツになってるぞ?」


「おっと」


「で……今のお前の胸の大きさってどれくらいなんだ?」


「いやこの話続けんのかい」


 教室へ戻る途中、人も減って周りにいなくなったのでこの辺りで突っ込んだ話題をしてもいいのかと判断した。実も軽く周りを見回して他に人がいないことを確認してから話し始めた。


「変わって初めて測った時はB+~Cくらいって言われた気がする。気になって測って貰ったらC~C+って判断されたと思う」


「へー……」


「聞いたんならもう少し興味持て」


 聞いたところで特に得るものが無いということを、聞いてから気が付いた。


 ……さて、体育祭の後半、午後の部も頑張るためにしっかりと飯を食べますか。

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