139話 OUT IN OUT
「ふぅ~……」
3年になってから、1日1日が早くなってるように感じる。この1週間、殆ど思い出せないほどに早くも過ぎ去っていた。
実と前に連休に遊ぶと約束したりしてから、自らの足取りも浮ついたものになっていたようにも思う。
そして今日の下校前、実は「期待してて」とだけ残し、先に帰られてしまった。
「期待してて」、か……。
これは……この言葉はどう、受け取ったら良いんだろう。
2年前の春の連休あたりから、俺たちの関係性は変わっていった。ある種のターニングポイントだ。
そんな期間に、「期待」……。
先週の休み、一緒に出掛けて俺の意見をかなり取り入れた服装を実は買っていた。
うーん……。
俺は今まで、“こういうこと”に先走らないような考えをしてきた。“こういうこと“で焦った考えをしすぎると、単に勘違いである可能性が高いからだ。
しかしなぁ……。「期待してて」、だもんなぁ……。
俺たちの関係性で、敢えてそんなことを言う理由とは、と考えて、明確な答えは得られなかった。
自意識過剰かも知れないが、もしかしたら実は……いやいや、いやいやいや。まさかな。
「……整えておくか」
……特に意味は無いけど、出掛けるときに着ていく服を選び、それらのほつれが無いか、埃は付いてないかを確かめるのだった。
―Minol Side―
「はぁ~……」
ついに、だ。
ついに、自分の想いをぶつけるその時が、来る。
正直言って、まだこの想いを伝える覚悟は出来てないけど……。
でも、ここで伝えなければもう伝える機会も無い気がする。3年の夏休みは受験勉強の追い込み時期として集中出来ないようなコト……集中を邪魔されるようなことをされたくもないだろうし……。
だからこそ、この機会に想いをぶつけるしかないと思った。
「……やっぱりこっちの方が」
まー君に「期待してて」なんて言ってしまったものだから、一度決めた服装すら揺らいでしまうのが私の弱さだ。
「期待してて」と言った時の自信は一体なんだったんだろうと思い返してしまう。
自信が出たり、その時に言った言葉が重みとなって葛藤したり、一貫性のない心に私自身辟易してしまう。
でも。
それでも動かない、揺らがない想いはある。
まー君への想い。
「はぁ……よしっ」
それを改めて確認し、気合を入れて服を決め――
「姉貴ー、遅いからもう寝ろー。音と光が微妙に気になって寝れなーい」
「アッ、ハイ……」
決意を前に水を差されてしまったけど、妹の言葉は普通に正論だった。
一度決めた服を改めることはしないでおこう。今の私の考えは、きっと冷静じゃないし、彩梅のアドバイスとまー君の嗜好に沿って決めたこの服が、今の私には一番似合うはず。
無理やり頭を切り替えて、冷静になって寝ることにしよう。今、妹と喧嘩しても、論理上勝てないし……。
と、服を片していると、彩梅が自室への帰り際、振り返って言った。
「……それに、寝不足は肌の天敵だからね」
「……うん」




