137話 失速
短めです。
―Minol Side―
「はぁ~~~~~~~~~~……」
溜め息をしても一人。
自室で意気消沈している人物、それが今の私だ。
「何で私はいつもいつも……」
天井を仰いでみるも、解決策は降って来ない。ただただ「後悔先に立たず」という言葉が頭の中でグルグルと回っている。
帰って来てから自らの胸の内に自省の念が押し寄せてきた。
これはある種の最後の決断の為の準備。その為に出掛けたのに、今日は最大の目標である「相手」のことを殆ど見てなかったような気がする。もっと言えば、相手の意見は確かに聞いてたし、反応も見ていたけど、友人と遊びに出掛けているような話……雑談らしい雑談は殆ど無かったように思う。
私も真剣に服を選んでいたのもあって、まー君からしたら他人の仕事に付き合わされた気分になっていても、全くおかしくない。これは、マズった。
「ぐぅ~~~~~~~~~~~~」
掛布団を抱き締めて、唸りながら身悶える。
今更どうにもならないことをここまで堂々巡りしているのはいつ以来だろう?
「はぁ……」
そして何度目かの溜め息。さっきの自分にも、そして溜め息を吐き続ける自分にも嫌になってくる。
「……」
結論としての、沈黙。
傍から見たとしたら、さながら瞑想のように見えるかもしれない。
「姉貴ー、入るよー」
こちらの応えも聞かず、無遠慮に部屋に入って来た彩梅。
「……何してんの?」
「何でもない……」
敢えて言うなれば虚無……。けど、伝えても何の意味も無いので省略。
「で、センパイと一緒に出掛けたんでしょ? どうだったの、結果は?」
「それは――」
――事情説明中。
「はぁぁ……」
目頭を摘まむようにして目元を隠し、溜め息を吐く我が妹。
「どこかダメだったかは流石に分かってるよね?」
「はいぃ……」
分かっていなかったら今頃、何も気にせず過ごせていたはず。
「はぁ……じゃ、どうやってリカバリーすればいいか考えよっか」
「はい、ありがとうございます……」
頭を垂れて、感謝の辞を述べた。
――時間は過ぎ、数十分後。
「晩御飯出来たけどー」
と、居間から父親の声。
「じゃあ、取り敢えずはこれで良いと思う」
「……本当に?」
「これ以上ウダウダ考えても良いのは思いつかないって。それとも思いつきそうなの?」
「思いつきそうに無いです……」
「だったら、もう良いよね?」
「そう……ですね……」
生きてきた中で一番、年長者としての威厳が無いな……。
「ご飯冷めるぞー」
と、再び居間から父の声。
「分かったからー、今行くから先に食べててー! ……ほら、落ち込んでてても仕方ないでしょ。私、先に行ってるから。冷める前に片付けるモノ片付けてからとっとと来れば?」
その言葉を残して彩梅は部屋を出て行った。
「……ふぅ」
今日最後の溜め息だと決め、立ち上がって部屋に出ている荷物を片して食卓に向かうのだった。




