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134話 CLIPPING POINT

「おはよー」


「おーっす」


 朝の教室。朝のHRが始まる少し前。


 おかしい。何かがおかしい。


 いや、単に違和感が“何か”は分かっている。分かっているけど……。


「おはよう、まー君」


「……おう」


「……どしたの?」


「いや……、今日も遅かったなって」


「それは……アハハ、そうだね」


 実が朝、ここのところ遅めに出てきていて、登校が被らないのが1つ。これはまあいい。そういうことも前にもあった。恐らく。


「1限って化学だっけ?」


「合ってる。課題とかは無かった……と思う」


「そっか、ありがと」


 そしてもう1つ、違和感。何かこう……何だろう?


 分かっている、分かっているけど……認めたら自らの中の何か、堰が外れて感情が外に漏れ出てしまうような、気がする。


 でもこれを否定的に考えていれば逆に意識し過ぎているかもしれない、ような気もしてきた。なので改めて心中で独白しよう。


 なんか実、綺麗になってないか?


 元の顔――TS化してからの素の顔――から整ってはいたし、暫くして仕草とかが女性のそれになって徐々に綺麗になっていったけど、ここ最近は特に、そして急激に。新学期に至ってしばらくしてから。


 男だった時の顔は……今の実と俺の関係から、あまり思い出したくは無いが敢えて言いうなら決して不細工などではないがかといってイケメンとまでは言わないくらいの顔だったような気がする。正直言ってあまり覚えてない。写真とか見ないと忘れそうだな、2年も実が男だった時の写真も映像も見てないし。


 ……閑話休題。


 それにしても一段と綺麗にはなったよな……。何故。


 何故って……、自問自答で自明だけど、そりゃメイクとかをしているからだろうな。


 そして本質的な疑問と言えば、何故メイクなどをしているのだろうか、ということ。


 勿論それは俺がどうのこうの文句言う権利なんてないのは百も承知だが、しかしてそれはそれとして気になること。


 時期も変な時期に、と思う。3年生の初めに何の心変わりがあったんだろうか。


 受験勉強とかあるだろうに、そこまで緊急性のあるようなことなのだろうか?


 うーん……面接対策? とも思ったけど、高校生が受ける面接って、それが例え就活だろうと進学の為の受験だろうと、そこまで気にすることなんだろうか? 分からん。


 実のことを異性として気にしている俺としてはこういう変化があると結構気にしてしまうなぁ……。俺達の関係性はあくまで古くからの友人、という域は出てないのに、こういう考えを持っているともしかしたら嫌に思われるかもしれないな。改めて行こう。


―Minol Side―


「ただいまーっと……」


「……おかえり」


「彩梅……、先に帰ってたんだ」


「委員会が終わって他にすること無いからね」


「……友達と遊びに行ったりしないの?」


「行ったりしない日も当然あるでしょ」


 それもそうか。何聞いてんだろ自分。


「で、どうだったの?」


「何が?」


「反応。センパイの。私が『どうだったの』って言ったらそれ以外何かあるの?」


 確かに無いね。他。


 この妹に服の選び方の教えを請うたあの日、ついでにメイクも教えてもらうことになった。曰く、メイクの仕方と服選びは密接に関わっているとのこと。そりゃそうか。とはいえ「ついで」で教えてくれることに感謝だ。色々教えてくれているのだから、そこは誠実に対応しよう。


「んー……こっちから見る分には、微妙、かなぁ……? 変化自体には気づいてなくもないっぽいけど、それを話題に上げることはないっていうか……」


「ふむ……、なるほど。……じゃ、思い切ってもっと濃いメイクにしてみるかな……」


「それは……自然な感じのままで良いと思うけど……」


「姉貴ってナチュメに拘るよね。何で?」


「何でって……男だった時の経験? 自分が男だった時はメイクが濃い人を敬遠してたし、その時の増良も同じようなモノだった、からかなぁ……。今の好みが変わってる可能性もあるとは思うけど」


「そういうモノかぁ……なるほどねぇ……」


 腕を組み、握った手を額に当てて考えるように俯いて、数秒の沈黙。姿勢を正し、目を改めて見開いて、彩梅は口を開いた。


「別のアプローチ、考えとく」

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