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133話 熱ダレ

「えっと……」


「……?」


 実に袖を掴まれてから数十秒。実のミスの件は終わっていたので邪険に振り払うようなことも出来ず、動けずにいた。


「そのっ……」


「あー、えっと……」


 何か話したそうにしていたので待っていたけど、暫く経っても話が始まらないのでこちらから話を切り出すことにした。


「何も無いなら戻るけど……」


「それがそのっ……!」


「……何でしょう?」


 ここまで来ると少し面倒臭さを感じてしまう。


「れっ……」


「れ?」


「連休!」


「連休が、何? ……次の連休は確か……大型連休だったよね?」


「その連休の予定って、まだ入ってない?」


「全然全く」


「じゃっ、じゃあさ、その……」


「分かった。連休は全部空けとくよ、予定」


「あり、がとう……」


「そんな怯えたような顔すんなよ。別にさっきの件もそこまで後引いてまで怒ってる訳でもないし」


「そっ……かぁ……」


 溜め息混じりの応答には、安堵の情も込められている感じがした。


「じゃ……、戻るか」


「うん」


 今度こそしっかりとした応答が帰って来て、こちらとしても内心安堵の溜め息を吐くのであった。


―Minol Side―


「彩梅」


「……どうしたの姉貴」


 まー君から詰められた後の放課後。今日は彼と一緒に下校するのを遠慮して、妹に話し掛けた。


「折り入っての頼みが――」


「ちょっと待って」


「あ……何?」


 私の言葉を制止した妹は数度周囲を見回し、何かを確認してから再び口を開いた。


「頼みって言うけど、対価の予算はどれほど?」


「……応相談で良くない?」


「まあ良いけど。……で、要件は何?」


 身体が女になったからと言って、妹の言動には未だに理解出来ないモノが多い。これは男が女がという話より、ヒトとヒトの話なのだろうか、と思うなど。


「服を……見繕って欲しいな、と」


「服? また何で?」


「その……まあ、理由はイイでしょ」


「ふーん……分かった」


「え、イイの?」


 あまり仲が良い方ではないと思っていた妹からの承諾に、戸惑ってしまう。


「イイよ」


 良いらしい。


「で、対価なんだけど」


「はい」


「理由」


「は?」


「理由言ったら見繕ったげる」


「なっ……何でそれが対価なの……?」


「何でも。それとも見なくて良いの?」


「まー……増良と、出掛けるコトになって……それで」


「それだけじゃないよね? 2人で出掛けるコトくらい、TS化してからもあったよね?」


「そりゃそうだけど……」


「それも言って?」


 彩梅は何故そこまで理由の探求に拘るんだろう? まー君が関わるコトだから、彼を気にする彼女が話を聞いてくるのも多少は分かるけど……。


「それは……っ」


 相手は妹だというのに、口から考えは出てくるどころか、ぼやけて霧散しそうになる。


「すぅ……はぁ……」


「……」


 お願いだからそんな冷徹な目を向けないで欲しい。ただでさえ言葉に詰まってるのに言葉が出なくなりそうだ。マイペースに深呼吸している自分も割と落ち度あるなって思ったけども。


「それは」


 そして改めて気を引き締めて、彩梅の顔を真っ直ぐに見据え、声を張らせて宣言するように言った。


「次の連休にデートして、思いを伝えようと思う」

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