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126話 リテイク

―Minol Side―


 まー君を最近見つけた喫茶店に連れて行った日からそう経ってないある日。まだ春休み中だけど、私とまー君、そして彩梅など他、放送委員が登校して来ていた。


 予定では新年度の行事で行われる音響関係の役割分担の話し合いのはずだったけど……。


「急遽! ドラマの追加撮影をしようと思います!」


 委員長がそう宣言して委員たちの注目を集めた。


 一部の委員が首を傾げているけど、私には分かる。これは数日前にまー君と一緒に行った喫茶店の中にいるときに思い出したことの一つだ。まー君もそのことを思い出しているのか、委員長の言葉を数度頷きながら飲み込んでいるようだった。


「撮り忘れのシーンがあったので……で、それはどこかというと、屋上のシーンの幾つかって感じなんだけど――」


 余程撮影の優先度が高いのか、予定だった行事の話し合いにすら触れず、ドラマ撮影の担当についてのミーティングが始まっていた。


「それで、音響……マイクの担当なんだけど……」


「あ、私やります」


「おっけ。録音機とメモリのカードとガンマイク、忘れずにね」


「分かりました」


 ドラマ撮影の時にあまりマイクの担当をしたことが無かったので経験を得るためにと立候補してみると、意外にも他の立候補もなくスムーズにその担当になれた。


「これとこれ……で、よしっと」


 機材を準備して屋上に持って行くためにまとめてみる。


 機材は一介の高校生が買うことを考えると高いモノばかりだ。特にガンマイクなんか、値段が高い以上にどこで買えば良いのか分からないモノまである。流石にネット通販とかだと売ってるよね? ……弁償することになりでもしたら、私の貯金でどうにかなるようなモノでもなさそう。丁寧に扱おう。他のも大体高くつくモノばかりだし。


「それじゃ、撮り忘れのシーンその1、撮影始めまーっす!」


「「「はーい!」」」


 準備したモノを改めて確認して、撮影待機状態から稼働状態に移した。


「……」


 役者の口を狙って超指向性のマイクの向きを調整する。


 ……ん? 何か忘れているような……。


「3……2……1……」


 そんな内心の引っ掛かりを周りは気づくことなどなく、撮影は始まった。


「カット!」


 疑問を明確にすることなく撮影に集中して、1つの区切りまで撮影し終わった。


「一旦映像と音声を合わせて見て確認しとこうか。全部撮った後に何か不具合があったことが分かったら全部撮り直しになるからね。全体の撮影は少ないとはいえ」


「「「はい!」」」


 と、いう訳で委員会室に戻ってパソコンにデータを取り込んで確認することになった。


「カメラ側の音声がこれで……マイク側の音声がこっちで……波形で音合わせして……カメラの音声を1回消して……と」


 編集担当の子が慣れた手つきでデータを揃えて整えた。


「それじゃ再生しますんで、気になる所があれば言ってください。ポチっと」


 キーボードのスペースキーを軽く叩いて、映像は再生された。


『ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……』


 ん?


「んー?」


 私の疑問符と重なるように、編集担当の子も口から疑問符を垂れ流した。


『ドクンっぱドクンこにドクンだねドクン……』


『ドクなドクこドクとドクに』


「な……何も聞こえない……」


「んー、あー……」


 編集担当が頭を抱えている最中、まー君は周りを見渡して、何かを見つけて納得した声を出していた。


「実」


「え、何?」


「アレ」


 唐突にまー君から声を掛けられて内心動揺してしまったけど、努めて冷静に対応しようと試みる。そして彼が指した方向を見てみると、そこにはさっきまで握りしめていたガンマイクとその他機器が置かれていた。「置かれていた」って、置いたの私だったけど。


「布……巻いてた?」


「あ」

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