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122話 修め

「「「お疲れさまでしたー!!!」」」


 グラスの衝突音が鳴り響き、朗らかな雰囲気が繰り広げられた。


「ご卒業、おめでとうございます!」


「ありがとう」


 学年末テストも終わり、今日は3年生の卒業式が行われていた。


 俺たち放送委員会は卒業式の音響などを担当しており、委員会室も開かれている。


 今は会場である体育館に敷設された設備を回収し終わり、運営側としての卒業式の打ち上げが行われていた。勿論この打ち上げには、今年卒業する既に引退した3年生も招かれている。


「久保委員長、今までありがとうございました」


「アハハ、もう委員長じゃないって」


「癖で、そう呼ぶのが抜けなくって」


 皆が卒業生らに挨拶する中、俺も他の皆と同じように活動で仲良くしていた先輩に声を掛けさせてもらった。


「周りが女の子しかいないからって、侍らせて泣かせるようなことはしないようにね!」


「侍らせては無いですよ。モテてもいませんし」


「『侍らせて“は”無い』、『モテて“も”いません』。ということは、1人2人くらいからはイイ感じになったことがあるってコトじゃないの?」


「ハハハ……まさか」


「動揺してない?」


 中々に鋭いことを指摘されてしまうけど、ここは笑って流させてほしい。“年の功”というべきなのか、経験を用いて心を読まないで欲しい。変なお節介がおば――


「あ、今そこそこ失礼なコトを考えている顔してる」


「ノーコメントで」


 この人本当に人の心を読むことができるのではなかろうかと思えてしまうな。


 というかこの委員会、心を読める人多すぎだろ。


「取り敢えず……、仲良く、勉学励んで、委員会に手を抜くことなく……、で、いざというときは飛びこんでみることが大切ということを忘れずにね!」


「は、はぁ……」


 最初の3つは分かるが、最後の1つはどういうことなんだろうか。


「返事!」


「はいぃ……」


「じゃ、私は他の人にも話があったりなかったりするからまた後で」


「うっす……」


 相も変わらず、人柄の掴めない人だ。20秒ごとに人格が変異している気がする。


「ん? 何か言った?」


「なんでもないです……うす」


 この人の心を読む能力については会話中の話だけじゃなくて、超能力的な能力でも使っておられるのだろうか、と。


 まあ何にせよ、超人的な先輩方とおそらくもう会うことが無いと考えると、名残惜しさを感じてしまうな。……っと。


「先輩、お疲れ様です。今までありがとうございました」


「あ、細染君。こっちこそありがとー」


 名残惜しさを感じてしまう超人的な先輩方々というのは何も、久保委員長だけじゃない。他の先輩方も今日を過ぎれば再び会うことは少なく、そして難しくなる。今日は積極的に挨拶と最後の思い出話でもして来よう。


―Minol Side―


「はふぅ……」


 居心地が悪いとまではいかないけど、気まずいとは感じている。1年次から委員会で続けている人はなんともないだろうけど、私は2年になってから。この委員会は自主参加枠であるため殆ど部活みたいなモノだから2年以降……、というか1年生でも年末以降に参加している人は気まずいらしい。……それに該当する他の人を知らないけど。


「センパイに話し掛けないの?」


 部屋の隅でミルクティーをチビチビ飲んでいると、彩梅が絡んできた。


「3年生とはあんまり絡み無かったから……。結構絡みのあった元委員長とはもう挨拶を済ませたし」


「ああー……そうじゃなくて、増良先輩の方」


「なんで……ま、……そっちと?」


「なんでって……仲良くなりたいんじゃなかったの?」


「『邪魔するな』とか言ってた人がいう言葉……?」


「なんとなく知られてるとは思うけど、振られちゃったから。流石にもう牽制する必要性は無くなったし」


「あー……」


 血の繋がっている相手だからか、取り繕いの無い言葉が出てきたのが意外だった。


 まあそもそも言葉がどうのってことを考えられるほど、思春期に入って以降仲は良くはなかったとは思っているけど。


「ま、そんなことは関係なく私はセンパイにアプローチ掛けていくけど」


「ふ、ふーん……」


 これが牽制じゃないならなんなんだろう? 宣誓?


 頭を悩ませている間に彩梅は席を立って、卒業生への挨拶回りに向かっていた。


 ……まー君と2人で出掛けたときも聞けなかったけど、まー君が振った理由ってなんだったんだろう。受験? そういう目で見られなかった? 若しくは他に誰か……気になっている人が居たり……とか?


 聞かないことを考えても仕方ないのに、ついつい考えてしまう。


「そういえば細染君とは引退後に何回か食堂で会ったとき以来だよねー。ごめんねー、あんまり指導とかできなくてー」


「いやいや、先輩方も忙しいのは分かってますから」


 再びまー君の方を見てみると、今度は違う卒業生と話をしているようだった。


 話している相手を嫉妬しても意味はない。十中八九男女の特別な関係ではないだろうに、その場にいるのが自分ではないことが心に大きな影を作る。


「ンクッ……ふぅ」


 このままではダメだと分かっていても、今、この状況を打破できるような精神を持ち合わせていない自分にある種の怒りを覚えながらも、それを自分自身で諫めるようにミルクティーを小さく一口飲むのだった。

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