121話+ 真振り比
―Minol Side―
「ふぅ……」
残る冬の寒さが肌を刺して、まだ太陽が昇らずに明るみだけが差すほどの時間帯に起こされる。週が明けると学年末テストがあるということを思いだす。休日の朝早くに起きてしまったし、テスト勉強でもしようかな。
「寒い……」
降り積もる寒さが再び温度感覚を甦らせて、感覚が布団の中に引きずり込もうとした。
『似合ってんな』
でも、昨日言われたまー君の言葉が外への意識を向かわせる。
『手でも……繋ぐか?』『やっぱり結構待ってたんじゃないの?』『何分待ってたかは聞かないけど、あんま無理すんなよ』
「……」
その記憶から時をなぞって、手を繋いだ時の記憶も甦って来た。自分の手の中で感じた温もりも、一人で握ってみればその感覚、感情すら思い出した気さえする。
『それと、テスト前で嫌だった? もし無理に付き合わせてしまっているなら――』
流れで思い出した言葉。まー君は私をテスト前に連れ出したことを気にしてた。次のテストで私の点数が悪かったら、まー君は自責の念に駆られるかもしれない。
「むぅ……」
これは異性としてとか、そもそも異性かどうか以前に、人としてどうかと思った。少なくとも私は。私はここで点数低くとって、もしまー君が気にしたとして、平気な顔をしていられるほど図太くも無神経でもなかった。
「はぁ……。寒」
冬の寒さで目を覚ますため、あと電気代の節約のために暖房を点けていなかったけど、流石に寒い。手がかじかんできた。書く文字がブレてしまう。暖房、入れようかな。
「ミノ姉~、朝ご飯もう出来てるから、早く食べないと冷めるって~」
「分かった。すぐ行くから少し待ってて」
「はぁ~あ……。すぐ行ってあげなよ~」
意外と集中していたらしく、彩梅の呼びかけで時計に目をやると、いつもの朝ご飯の時間をそこそこ過ぎていた。今、解いていた問題の答え合わせをしてから朝食へと向かった。
「いただきます」
両親は既に食べ終わっていて、食べているのは彩梅だけだった。彩梅は一口一口を小さく食べているためか、食事速度は遅い。
『告白っ、されてっ、振った……んだよっ!』
昨日のまー君の言葉を思い出す。
『センパイのコト、私、本気で好きだから』『だから中途半端な気持ちでセンパイと関わるの止めて。真っ向から向かって来るなら仕方ないけど、今の立場、一番邪魔でウザいから』
そして、去年の文化祭での彩梅の言葉もフラッシュバックした。
これが本当かどうか聞きたくなったけど、いくら妹とはいえそんなデリケートな話題を投げられはしなかった。
「ごちそうさま」
聞こうか聞くまいか悩んでいたところ、当の妹はとっとと台所で食器を洗い、部屋から去っていった。下衆なことを訊かないようにと、運命がそうさせたのだろうか。
まあ、改めて考えてみるとバレンタインデー以降、家で明るいというか、浮かれている彩梅の姿を見た覚えは無かったな、と思った。
その後すぐに朝食を食べ終わり、食器を片付けて自室へと戻った。
「はぁー……」
自室の暖房を点けてテスト勉強すること1時間と少し。
少し暑くし過ぎたのか、頭がボーっとしているような気がする。
「ちょっと休憩しよ……」
教材を閉じて、暖房の設定を2度下げる。
「ズズズ……」
自室に戻る前に淹れていたコーヒーもすっかり冷めてしまっている。ま、少々火照った体にはこのくらいが良いかもしれない。暖房の温度も下げたし、これ以上体温が下がることにも気を付けなければいけないけど。
「……」
机の上に置いてある本を取る。
昨日、まー君と一緒に出掛けて本屋さんで買った本だ。
「……」
気分転換にと読んでみるも、目が滑ってしまう。
「……ふぅ」
別にテスト勉強で疲れた訳でも、温度変化に身体が不調を表した訳でもない。ただ、集中出来なかった。
「……そっか」
本の表紙を見て、考えが辿り着いた。この本は、まー君と一緒に買ったモノ。
「思い出して、また好きになっちゃうから、かな……」




