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121話 二分木

「「ごちそうさまでした」」


 料理に舌鼓を打ちつつ雑談も交わした後、席も混みだしてきたため、そそくさと店を出ることにした。


「昼からどうする?」


「う~ん、腹ごなしにちょっと体を動かすようなことでもしたいかな」


「大丈夫か? 吐いちゃったりしない?」


「吐くほど動く気まではないけど……?」


「……そりゃ失礼」


 などと馬鹿げた会話もしつつ。


「身体を吐かない程度に動かすとなると……なんだろう」


 ここのショッピングモールは色々なものがあるけど、そう言った類の場所ってあったかと考えを巡らせてみる。


 アクティビティスペースなるスポーツやアスレチックを楽しめるらしい場所があるようだけど、それだと流石に激しすぎるか。


「あ、ここってゲームセンターがあるんだっけ?」


「覚えてないな……どうだろ」


 と、あるかどうか、あればどこにあるのかを確認するために近くにあったモールの地図を見てみる。


「あるっぽいね。……行かない?」


「行こうか」


 ゲームセンターは地図の場所から少し歩いたところにあるらしい。食前のウィンドウショッピングの続きをするように、会話しながら向かうことにした。


「そういえば」


 他愛無い会話の中で、実が何かを思い出したかのように話しかけてきた。


「最近、まー君ってさ……。妹と仲、良さそうだけど……、何かあった?」


「何か、何かねぇ……」


 何かあったかと問われればあったし、特に無かったと言えば無かった……気がする。いや、細かい出来事を並べ立てるとあるにはあるけど、どう説明しようか。


「最近ともなると……何も無かったけど」


 今思えば、“最近”ではない少し前にだんだんと彩梅ちゃんと仲良くなったのは彼女の思惑だったんだろうなと考えられた。


「最近じゃないと何かあったの?」


「う~ん……推測でしかないけど……これかなぁ~ってのはあるかな」


「それって?」


 ……何か今日はグイグイ来るな。


「俺の推測でしかないし、考える限り彩梅ちゃんの心のプライバシーに関わることだから、俺からは言えないかな。俺から仲良くなりに行ったと言うより、彩梅ちゃんから遊びとかに誘われたりしたから、気になったら向こうに聞いたらいいと思う」


「……ふーん」


「聞いてきた割に反応薄いな」


「別に」


「往年の歌手兼女優かよ」


 実の方を改めて見てみると、そっぽを向いて首を傾げるように俯いていた。


 まあいっか、なんて声が聞こえた気がした。


 ……何が“まあいい”んだろう? 心の中で解決させたことだろうし、聞くのも野暮だろうし、聞かないけど。聞きたくはある。


「な、何して遊ぼっかな~?」


 実自身、聞かないで欲しそうだし、無理やりは聞かないでおくか。


―Minol Side―


「エアホッケーあるね。これやろうよ」


「おっけ」


 ここに来るまでの道のりの会話の中で、まー君と彩梅は私の知らないところで仲良くなっているらしいことが分かった。けど、それはあくまで彩梅からのアプローチでそうなっているだけだと考えても良さそう、ということが感じられた。


 ただ確証にまでは至ってないので、ここから引き出せるのか試してみよう。


「最初はどっちから打つ?」


「まー君が持ってるから、そっちからで良いんじゃない?」


「分かった」


 試合の開始を告げるブザーが鳴る。


「結局っ」


 まー君からのパックを打ち返し、それに合わせて口を開いた。


「彩梅とはっ、どういうっ、関係なっ……のっ!?」


 ガコンッ、というパックがゴールに飲み込まれる音と共にピコーン、と得点を知らせる電子音が鳴り響いた後、すぐさまパックが再装填され、まー君側に撃ち出そうとする機械音。


「それは……あっ」


 まー君はパックをマレットで押さえようとしていたかも知れないけど反射なのか、無意識でこちらにパックを反射させていた。


「おっと」


 こちらもすぐに来るとは思っていなかったので、テキトーに打ち返してしまった。威力は高いくせに、外枠に乱反射してその反射角を微妙に変えながらまー君の方へと再び向かった。


「それはっ」


 反射したパックを打ち返し、まー君は答えることにしたようだった。


「ただのっ、先輩とっ、後輩のっ、関係だっ……よっ!」


 そしてさっきと同じようにガコンッ、というパックがゴールに飲み込まれる音とピコーン、と得点を知らせる電子音が鳴り響いていた。


 パックはまた再装填されて、こちら側に打ち出された。


「隠してるっ、こととかっ、あるでしょっ!?」


 パックは打ち合う度、外枠に当たる度に小気味良い音を奏でながら移り合う。


「それはっ」


 私のスマッシュをすんでの所で打ち返して、まー君は答え始めた。


「告白っ、されてっ、振った……んだよっ!」


 そう言って放たれたスマッシュは、私側のゴールに入って得点の音を機体が奏でたのだった。

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