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116話 引戦庭歩

「ところで」


「……はい」


 学校を出て街の喫茶店でお茶を嗜みながらの会話。目の前の彩梅ちゃんはくつろげている様子だけど、残念ながら俺はそうもいかなかった。


「センパイの好きな人って誰ですか?」


「すぅぅーーー……。ノーコメントで」


 それもそのはず、何故か尋問のような恋バナ?をする羽目になってしまっていたからである。


「やっぱり姉ですか?」


「黙秘で」


 それにしても、なぜこの子は俺の想い人を探っているんだろう。


「でも流石に付き合ってはいないんですよね?」


「……それは、まあ」


 付き合っている人がいる状態で年頃の異性と2人きりで出掛ける程節操がない訳ではない、流石に。


「もう1つ聞きますけど、『その人』とはどれくらい仲良くなってるんですか?」


「どれくらい仲良く……それって、主観的に見て分かるようなモンなのかな?」


「例えば2人で遊びに出掛けたりはしたことあるんですか?」


「まあ、あるかな」


 夏休みとか色々出掛けてはいた。そう考えると進展はあるのか? でもあれらは「友人として」出掛けているだけだしなぁ……。


「じゃあ、今みたいに遊ぶ感じでもなくて駄弁るだけの為みたいに何でもない感じで出掛けたことは?」


「……それで出掛ける、かぁ……」


 首を傾げて考えてみる。学食はあるけど喫茶店とかは無いかな。外食も出掛けに行ったついでみたいな感じだったし。


「同じ学校の人なんですね。学食ではあったみたいで」


「……」


 何で分かるの……。


「センパイは顔に出やすいというのと、最近の私の趣味がコールドリーディング……所謂プロファイリングすることだから、ですかね……?」


「ここまで来るとドン引きする可能性の方が高いだろうし、そんなネタバラシしたら次から効果ないかもしれないけど……」


「ま、これ以外にもコールドリーディングには色々方法がありますし、ドン引きするかどうかは……これくらいなら大丈夫かもっていう甘えですかね」


 まあ、俺もこれくらいじゃ彩梅ちゃんに対してドン引きはしないけどさ……。何か納得がいかない……気がする。


「でも、センパイのそういうところなんじゃないですか?」


「……何が?」


「『甘えても良さそう』ってオーラ?が出てる気がします。女たらしですよ」


「女たらし……?」


「おっと」


 そう呼ばれる程女子に好かれては無いと思うけど……。少なくとも告白されたのは彩梅ちゃんだけだし。


「気にしないでください」


「気にはなるけど追及はしないよ」


 少なくとも今の自分には十中八九必要の無い情報だろうし。


「ふむ……もう私がセンパイのことが好きだって知られてるから聞くんですけど、センパイの好きな人のタイプってどんな人ですか?」


「本当に躊躇いなく聞くよね……。うーん……、好きな人のタイプかぁ……」


 あんまり真剣に考えたことも無いなぁ……。


 この手の話題はたまーに振られることがあるし考える機会もあるっちゃあるけど、未だに答えは出ない。


「分からないなぁ……」


「はぐらかさないでくださいよ」


「そういう訳でもないけど……。実際どういうところが明確に好きとか無いし……。彩ちゃんはそういうのあるの?」


「私はセンパイがタイプですよ?」


「そういうことじゃなくて……」


「普段は緩い感じなのに、ここぞってトコロでメチャクチャ集中した真剣な顔になって凛々しくなるような人がタイプですよ。その中の1番がセンパイです。飛びぬけて1番、唯一と言っていいぐらいです」


「……はぁ、そうですか」


 なんというか、血筋だからか、雰囲気が実を彷彿とさせるからなのか、そういうアプローチを掛けられると揺れてしまう自分の心が情けなく感じる。


「お待たせしました。ご注文の品、お持ちいたしました」


 店員さんが注文した料理と飲み物を持ってきた。これ幸いにと食事で話題を逸らすことにした。


「センパイって美味しそうに食べるので、一緒に食事してて本当に楽しいですね」


「無理に褒めなくても……」


「そんなに照れなくてもいいと思いますけど?」


「……」


「フフッ」


 これは……この先何を言っても褒められそうだったため、そこで無理やり会話を終わらせることにした。


「「ごちそうさまでした」」


 軽食程度だったために時間はそこまで掛からず、食事中の会話もそれなりに。


「さて、出ようか」


「もう少しお話ししましょうよ~」


「長居したら店の迷惑になるよ。話は帰りにもできるでしょ」


「は~い」


 早めに切り上げることが出来たとはいえ、こうやって甘やかしてしまうところが俺の悪い所なのかもしれないと、そう思うのだった。

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