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106話+ 夢の中へ

―Minol Side―


「ノーカン……と、いうコトで……」


「も、勿論俺も……それが良いかなって思ってた」


 こんなことを言ったら、その言葉が返ってきてしまうことは分かったはずなのに、それを口にしてしまった。


「じゃあその……そういうことで……」


「それじゃ……運ぼうか」


「……うん」


 諦めきれないどころか、無理やりまー君にその一線を超えて欲しいとすら思っている。


 それにしても――。


『も、勿論俺も……それが良いかなって思ってた』


 か……。


 そう……、だよね……。


 まー君にとって私は……同性の……友人……。


 声を出して注意してくれたのに、私は受け止めきれずに怪我までさせてしまった……。


 これじゃあ、友人とすら思ってくれないかも知れない。


 好きでもない人の唇を奪って、怪我までさせて。


 ノーカン。ノーカウント、か……。


 自分自身が放った言葉だけど、その言葉が自らの胸に突き刺さっている。


 まー君にとって私は、友人としても、女性としても“ノーカウント”に入ってしまうのかな。


 そりゃそうだよね。TS化で同性でもなくなって、これまでにも色々他にも迷惑掛けて。それにTSだから純粋な女性でもない。


「お疲れ。他の備品もちゃんとあったよ。これで備品回収は終わりねー」


「どもっすー」


 そんなことを頭の中でグルグルと考えていると、委員会室に到着した。


 まー君は放送室で何も無かったかのように飄々と応えていた。


 やっぱり、気にし過ぎているのは私の方だけなのかな。


 その後は特に何も無く、委員会の仕事をして下校時間にまでなっていた。


 いつもと少しだけ変わっていたことと言えば、私がまー君の方を見過ぎていた所為か、何でもないときにまー君と目が合うことが多かったくらいかな。


 そして、帰宅。


「はぁ……」


 なんとなく顔を合わせづらくて、1人で帰宅していた。


 私の妹と一緒に帰るまー君を先に見送ってから。


 帰って来た自室の寝具に身を投げる。


「……」


 宿題をこなせるような頭ではない。


 自分の唇を指でなぞる。


「まー君……」


 ただ彼の名前を口に出しただけ。なのに、こんなにも胸がドキドキしてしまう。


「会いたい……」


 自然と口に出た言葉に、ぼんやりとしていたモノが晴れ渡って見えてきた。だけど、その言葉通りにするには、合わせる顔がなかった。


 端末を見るも、メッセージを1文字も打てなかった。


「はぁ……」


 “友人”なら、こんなことは普通に出来るハズなのに……。


「ッハ、ヤバッ……」


 落ち込みの果て、自らの身体を慰めていると、宿題をやる時間が少なくなっていることに気が付いて焦りに焦っていたのだった。

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