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104話 探し物はなんですか

 月曜日。


 今日から1週間、先週の記憶を振り払って、気持ちを切り替えていこう。


 精神的には明るく朗らかに、注意力は何事にも細心に。


「あ、おはよう」


「おはよう!」


「……?」


 明るく元気に挨拶をしてみるも、実の反応は芳しいモノではなかった。それもそうか。


 どう振舞おうと一昨日実の胸を揉んでしまった事実が消える訳ではないし。


 実自身気にしないとは言っているものの、そう簡単に割り切れるものでもないのかも知れない。


 それを抜きにしてもいつもより大きな声で挨拶したから、それを怪訝に捉えられてしまうのも頷ける。


「おっはようございまっあーす!」


「彩ちゃんもおはよう」


 何か昨日の考えごとからか、実に対してできた明るい挨拶もし難いというか、「女性として」意識してしまうなぁ……。


「……、……?」


 そして実は俺の彼女へと妹へとの挨拶の差を不審そうな顔で首を傾げていた。


 その後、学校での授業はと言えば、特に問題も無く時間が過ぎて行った。


「本日のパーソナリティは2年の島津と」


「同じく2年の細染でした。それでは皆さん、またお会いしましょう。さようなら~」


 委員の活動であるお昼の放送も恙なく。


 そして、放課後となった。


「え? 備品が足りない?」


「そう。この部屋にあるはずの委員会の備品が無いんだよね」


 委員会活動に勤しんでいると、委員からそんな話題を振られた。


「視聴覚室は?」


「流石に無いと思うんだよね~。使った備品はスクリーン前でしか出してないし、少なくとも終わった後に一応会場を確認して、備品が撤収されてるかは確認してるからね」


 先週の学校説明会後にいくつかの備品が行方不明になっているとのこと。


「で、俺にも探せと」


「細染君には放送室を調べてもらおうと思って。それで私が視聴覚室、委員長は生徒会室、委員会顧問には職員室とか先生たちだけが入れるところ、その他の皆にはこの部屋とか、ありそうなところに分散して探してもらうって話になってる。細染君だけ別で放送室なのは、女の子ばっかりだと息が詰まるかと思って」


「ハハハ……助かる」


 こういう気遣いが些細なことだけど気が利いていて心から助かっているな。何か飲み物を頼まれたときは、たまに奢ろう。


「それで、足りない備品は?」


「この紙のチェックが付いてないヤツ。じゃ、後はヨロシクね?」


「頼まれた」


 こんなこともあるもんだ。去年も多少はあったけど、行方不明になった備品の数も少なく、すぐに見つかっていたので、俺と彩梅ちゃんが撤収時に抜けていたのが原因になってそうでもある。そう考えると申し訳ないな。


「さてっと、無くなってた物って確か……」


 放送室に入ってすぐ、渡されたリストを見て確認する。


「早速1つ見つかったな……。流石にこれはここに無いの分かるだろ……」


 そしてテキパキと見つけていき、邪魔にならないところに移動させた。


「これで半分は終わったか……ん?」


 順調に見つけ出していき、目に入ったのは壁に立て掛けられたマイクスタンドの群れだった。


 その近くには、棚も勿論ある。


 つい思い出してしまう。たった2日前のことだった。


 気を利かせてくれるのはありがたかったけど、俺には苦痛になってしまう面もあった。


 実も彩梅ちゃんも俺に変な風評が付かないように、事故があった日、他の委員には俺が原因で「ちょっとした事故があった」とだけ伝えていた。


 だからこそ俺が放送室での業務を請け負うことになってしまったのだろう。


「っと、残りの備品を探さないと……」


 あの日の後悔と反省の気持ちを振り払い、与えられた業務に集中した。


 ガチャ。


「……?」


 再び備品を探そうと体勢を戻そうとしたとき、放送室のドアノブが回される音が聞こえた。


「失礼します」


「え……? なんで……?」


 その姿に、ギョッとする。


「元々同性だから大丈夫だろうって……さ」


 部屋の内外の境に立っていたのは、実だった。

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