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102話 み顧

「センパァイ、何度言ったら分かりますか? しかもここ学校ですよ?」


「気を付けてはいたんです……それは本当に……」


「言い訳は聞いてないんですけど?」


 さて、どうしようか。


 詰められるのにも慣れてしまった悲しみに明け暮れるのもいいけど……。


「あの」


「何です?」


 笑顔で青筋を立てる彩梅ちゃん。その顔でも可愛いものは可愛いんだから松前家は美形の家系なのかと変なコトを考えてしまう。


「そろそろ会場に戻らないと遅れると思うんですよね……学校説明会」


「誰の所為だと思ってるんですか?」


「はい……私の所為ですが……それは後で詰められるので、今は何とか……」


「はぁ……」


 彩梅ちゃんは少し悩んだように溜め息の余韻に浸ったようだが、すぐに結論を導いた。


「もう……。分かりました。でも、後で覚えててくださいね」


「……はい」


 どうにか彩梅ちゃんの詰問から逃れ得た。


「実も、さっきはゴメン」


 事故とは言え、実の胸を揉んでしまったのは事実だ。羞恥がどうとかの問題ではなく、ただ単純に痛がっていたので謝罪しなければ。


「いや、事故だって分かってるから……。うん、気にしないで」


「こればっかりは謝らないと気が済まないから。何なら後で何か奢るか、また別に何かあったらその時に力になるし」


「本当に、そういうの……、大丈夫だから……。……うぅ」


 実の顔はまだ赤いままだ。


 流石に色々とやらかし過ぎた。


 今まで様々なやらかしを女の身体になった実にしてしまったことがあるが、割と復帰が早かったのは、周りの目が無かったり、互いに顔を合わせずに良い状況があったりしたことが原因だろうか。


 その後、説明会会場へ向かう道は実に謝り倒し続け、説明会が終わった後はまたも彩梅ちゃんに詰められることとなってしまうのだった。


―Minol Side―


「はぁ……」


 なんとか学校説明会が終わった。後は撤収作業を残すだけ。溜め息が漏れてしまうのは、今日の活動での多少の疲れも勿論あるけど……それだけじゃない。


 未だに鼓動が速いまま。


 速い鼓動は準備中の事故を思い起こさせ、思い起こされた記憶が鼓動の速さが元に戻るのを阻害している。痛いのは痛かったけど倒れるマイクスタンドから私を守ろうとしていたまー君は格好良かったし、力強さを感じたのもあってか、痛いのも悪くなかったなと思ってしまった。


 この所為で循環器系が参っているのか、いつもより疲れが溜まっているのかも知れない。


 ある程度まー君と話して、後腐れ無くコトを纏めようと思っていたけど、彩梅が彼を引き連れてどこかに行ってしまった。……また。


 自分の心が揺れ動いているのもそうだし、2人のコトを嫉妬してしまっているというのも、“また”だ。


 自分は一体何度、こんな感情を抱くのだろうか。抱いてしまうのだろうか。


 一度は諦めの決意をして、諦められなくて、諦めたくて、それでもどうにも目が行って、醜く嫉妬に身が燃えて。そしてこの想いが深まることを知りながら、自らを慰めるほかない。


 ……自意識過剰にならないように、なるべく違うと思うようにしていたけど、最近まー君が私を見る目って、「友人を見る目」でも「距離感が近くて目のやり場に困る女子」でもあるけど、もしかしたら「恋愛感情を多少なりとも含んで見ている目」な気がしてしまう。


 次に「こんなこと」があったら、勘違いしてしまいそう。


 近日中にアクシデントが続いたのは、ただの偶然……偶然……。


 運命だとか何だとか、こんなことが必然であるはずがない。……って、まー君の意識がどういうモノであるのかと、まー君とのアクシデントが続くことを地続きに考えてしまうなんて、改めて自分で考えても大分混乱している。


 結局、友人であり続けるという忍耐も続かず、恋人になるために動くという覚悟も決められない。


 「自分は結局どうありたいんだろう」なんてコト、一体今まで何度考えたのか。


「一緒に帰れたら、何か決心が付きそうなのに……」


 そんなはずもないけど、この感情を彩梅に責任を負わせるような形にしてしまった。


 2人間での仲は良くはないけど、深刻なほど悪くもないと思っているし、流石にこんなに理不尽な思いを妹にぶつけるのは間違いだと思う。


「はぁ……」


 何もかもが達成されないまま、時間が過ぎていく。


 溜め息を吐いたのは、今夜はあの事故を思い出して欲求不満を解消するのだろうという考えに嫌気が差して出たものだった。

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