99話 同荘異向
「じゃあ、彩ちゃんのタイプの人ってどんなの」
「えぇっ!?」
「そんなに驚くこと?」
さっき彩梅ちゃんの口から出てきた言葉をそのまま返したつもりなんだけど。あと何か彩梅ちゃん、顔赤すぎない? この質問で照れているのは分かるけど……。
「いっ、いやそのっ……べッ別のことを考えてしまってそれで……」
「ああ……それもそうだね」
さっき胸がどうとか言っていたからね……。まあその言い訳も中々なことを考えていたことを自白しているようなモノということだけど、テンパっているのか、それには気が付いていないようだ。
「で、実際どうなの?」
「それは……そうですね……」
彩梅ちゃんは少し考えるように唸る。……どうして俺のことをジィっと見るんだろう?
「容姿で言うと、私より少し高めの身長で、細身に見える割に意外と筋肉質な感じ……中性的な感じな気がしてもその中にちょっと男らしさを感じるというか……」
「ほへ~……」
彩梅ちゃんってそんな感じの人が好きなのか。自分で聞いておいて何だけど、彩梅ちゃんの好きな人のタイプなんて考えたこともなかったな。
「中身で言うと……そうですね。朗らかな感じで、でもこっちがキツくならない程度の穏やかな感じもあって、優しくて、何かに真剣に打ち込んでいる心の芯の通った人、が良いですね。……もうちょっとデリカシーとかがあると良いと思いますけど」
「あー……アハハ……。そんな人が……、現れると良いね」
彩梅ちゃんって……割と理想高めだなぁ、なんて思ってしまった。
「……まぁ、大体備えてる人が私の近くにいるんですけどね」
彩梅ちゃんがこちらから聞こえるか聞こえないかくらいの声で言った。
「つまり彩ちゃんって、近くにそのタイプの人がいるってコト?」
「んなぁッ!!!???」
彩梅ちゃんは聴かれていないと思っていたのか、とても狼狽えていた。
「違うの?」
「えっいやっそのッええと……センパイじゃないデスヨォ!???」
それは分かってるけどさ。……顔、赤ぁ。あと呼び方元に戻ってる。
「別にそれが誰かは聞く気はないけど……へぇ、いるんだ」
「え……? ……え?」
顔全体を朱色に染めて狼狽えていた表情はどこへやら、彩梅ちゃんは顔色を困惑の色へと移ろいでいた。
「……はぁ」
そしてその困惑顔がだんだんと呆れたような、失望したような顔になり、遂には溜め息を吐いていた。何が何だか分からないけど、俺はどうやら何か話す内容を間違えたらしい。
「ふぅー……」
「なんか……ごめんね?」
目を伏せて自身の胸をトントンと軽く叩いた彼女に、謝罪することしか出来なかった。
「いえ、センパ……しー君が謝ることでは無いですから。よく考えれば自分が悪かったので」
「は、はぁ……そう、ですか」
落ち着きを取り戻したのか、俺への呼び方も戻り、冷静に受け答えをしていた。
うーん……。本当に彩梅ちゃんの中で彼女自身に問題があったのならそれでいいかもしれないけど、俺に問題があるのなら言って欲しいとも思った。彼女にも言えないこと、言い難いこともあるから一概には言えないけれども。
「……そろそろ、戻ろうか」
「そう……、ですね」
結局、これで仲が深まったのかどうなのか。
委員会への戻る道すがら、また雑談でもして空気の緊張感を解そうかとも考えたのであった。




