93話 彼女の抱負
―Ayame Side―
今年の抱負。
それはズバリ、細染センパイと付き合うこと。
去年は晩秋から冬にかけてセンパイと幾度となく一緒に帰ったり、デートしたりして仲良くなれたはずだけど、まだまだ異性として認識されている気がしない。
特に一緒に水族館に出掛けたときはそれをまざまざと認識させられた。
私が勝手に盛り上がって観覧車で告白しそうになったときに、センパイから冷や水を浴びせるような話題を掛けられた。おかげで冷静になりすぎた私は高所恐怖症だったことを思い出してその時からゴンドラを降りて駅に戻るまでセンパイに介抱されてしまった。
まだ救いがあったのは、私の告白を感知してその流れを断つために「この観覧車で告白すると~~」の話題を選んだ訳ではなく、自然に出た雑談の話題だったらしいこと。
異性としての意識はまだしていないだけで、嫌悪はされていないので意識を自然にさせて私に“そういう目”をセンパイに向けさせることが出来るのなら、まだ、チャンスはある。
センパイはどの道今年から忙しくなるはず。少なくとも夏以降は余裕なんて無くなるハズ。そのことを考えると夏までに恋人同士になってないと「恋人として」の仲を深める時間が足りなくなってしまう。
今から告白が成功できそうなくらいまで更に仲良くなって、夏までにも恋人として仲を深められるほど余裕を持たせて告白に良さそうなタイミング。そこまでに起こる丁度良いイベントは、というと……やっぱり、バレンタインデーかなと思う。
去年のバレンタインデーも例年の通り、告白できずにチョコレートの本気度で分かってもらえるかなとか寝惚けたことを考えていたけど、今年は絶対に告白する。
そしてそれに応えてもらうために、強く、より強くセンパイを私に意識させなければならない、と思う。
少なくとも2人きりで出掛けに行くって、悪いようには思っていないようだし、まだまだ可能性はあるはず。
付き合うことができるくらい意識させる為にはもっと距離感をもっと近づけないといけないかも。今のままではあくまで“先輩と後輩”として仲が良いだけだと思われているかも知れないし。まずは呼び方を変えて、親しみやすい様に。他にも、恋バナとかをして、意識をさせたり、好きなタイプを聞き出してそれに合わせてみたりしたりと、今考えると改めて色々出来ることはあると思えた。
「よし……完ッ璧な計画……!」
新年になって買い換えた新雪のように真っ白な手帳に1つ目の事柄として、計画を書き記す。
「ふぅ……」
この書初め代わりの計画が叶えられるようにと、今までのヘタレていた自分を一新して積極的になれるようにと、息を止め、瞑想するように祈った。




