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7 宿命のライバル

 学生寮の自室という名の高級ホテルの一室みたいな部屋に荷物を置き、荷物の管理と部屋の管理をメイドスリーに任せて、私は入学式が行われる会場へとやって来た。

 血族の私が汚点を晒せば姉様のご迷惑になるので、真面目に行動して入学式の30分前には会場入りしたんだけど、その時点でも凄まじい数の生徒と教師が会場にひしめいていた。

 これ、生徒の数だけでも軽く1000や2000を越えてそう。

 時間帯的に上級生はまだ来てない筈だから、新入生だけでこれって事か。

 さすが、国中の貴族が集まる大学園。

 そして、ここにいる奴ら全員が魔力を持った貴族なんだと考えると、戦力が凄すぎて目眩がしてくる。

 正面から戦った場合、どれくらい倒せるかな?

 私は魔力量と魔術の扱いに関しては自信があるけど、実戦経験がないからなー。

 良くて半分ってところだろうか?

 実際はわかんないけど。


 私が真面目に戦力差を考えている間に上級生なども入場し、入学式が始まる時間となった。

 まずは校長っぽい中年が壇上に上がり、演説を開始する。

 ……どこの世界でも校長の話は長くて退屈だ。

 こっそり魔術の練習でもしてよう。


「続いて、生徒会長の言葉!」


 私が目立たない身体強化や探索の魔術を鍛えてる間に校長の話は終わり、今度は生徒会長とやらがお供二人を引き連れて壇上に上がった。

 まあ、生徒会長が誰だろうと、ゲームにも出てこなかったモブキャラなんてどうでも……って、なんだと!?

 そこには、私の予想外の人物がいた。

 いや、ある意味、予想通りではあるんだけど。


「新入生の諸君、入学おめでとう。

 私はこの貴族学園で生徒会長を務めている、三年生のノクス・フォン・ブラックダイヤだ。よろしく頼む」


 壇上でそう語るのは、まだ幼さの残る黒髪の少年。

 だが、幼くして既に全身から帝王のオーラが漂っていやがる。

 彼が名乗ったブラックダイヤという名前。

 それは、このブラックダイヤ帝国そのものと同じ名前。

 その名を名乗れるのは、皇帝の血を引く皇族のみ。

 そして、彼はそんな皇族の中でも更に特別だ。


 ブラックダイヤ帝国第一皇子、ノクス・フォン・ブラックダイヤ。


 既に亡くなった正室の子であり、帝位継承権第一位。

 つまり、現状、最も次の皇帝の座に近い男。

 そして、ゲーム『夜明けの勇者達(ブレイバー)』においては、主人公の宿命のライバルとして登場した人物だ。

 ガ◯ダムにおける赤い彗星みたいなポジションの人だと思ってくれればいい。

 そして、私が媚びを売ろうと考えていたターゲットでもある。


 そんな奴が生徒会長ねぇ。

 いや、考えてみれば充分にあり得る話ではあったんだけど、正直、盲点だった。

 だって、ゲームにも出てこない学園の生徒会なんか重要視してなかったんだもん。

 それに、ノクスが生徒会長だろうとモブAだろうと、私のやる事は変わらないし。

 ていうか、ノクス若いな。

 三年生って事は、13歳か。

 ゲームに出てきた時は18歳だったから、そりゃ私の知ってる姿より若い筈だよ。

 なんか新鮮。


「━━私からの話は以上だ。諸君らが帝国貴族の名に恥じぬ傑物となる事を祈っている」


 私がマジマジとノクスを観察してる間に演説は進み、ノクスは締めの言葉を口にした。

 ちなみに、演説の内容を簡単に纏めると、お前らには期待してるから頑張れって感じかな。

 実にノクスらしい演説だった。


 ノクスが側近二人と共に壇上から降りる。

 その時、不意に私とノクスの目が合った。

 絶対取り入ってやるかんな! という目で見ていたのを察知されたのかもしれない。

 ヤバイ!?

 心情が悪くなる!

 ……いや、本当にそうか?

 ノクスのキャラを考えれば、これってむしろ、顔を覚えてもらうチャンスじゃね?

 という事で視線を逸らさずにいたら、ノクスは面白いものを見たとばかりにニヤリと笑った。

 どうやら、目を逸らさなくて正解だったっぽいな。 


 そして、ノクスが退場すれば、それを最後に入学式が終了し、続いて上級生が退場。

 残された新入生はこの後、教師に連れられて学園内を軽く見て回ってから解散となった。

 学校説明会みたいだったわ。



 そんな感じで、私の学園生活は始まった。

 さて、それじゃあ、これから死ぬ気で頑張るとしますか。

 全ては姉様の為に!

 目標は、最低でもノクスの卒業までには側近に取り立ててもらう事。

 方法としては、とにかく私の優秀さをアピールする事だな。

 とりあえず、授業とかで目立ちまくる事から始めよう。

 その授業は明日からだ。

 気張るぜ!


 そうして意気込みを新たにしつつ、私はメイドスリーの待つ自室へと戻った。

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