41 革命軍の拠点
「セ、セレナ様! ノ、ノクス様! お、お疲れ様です!」
「ええ、あなたもお疲れ様です、マルジェラ」
「ご苦労」
戦いが終わってから数日後。
戦後処理が多少片付き、なんとか動ける時間を確保した私とノクスは、ある場所へと赴いていた。
アイスゴーレムと一緒にそこの警備に当たっていた私の部下の一人、どもり症の快楽殺人鬼であるマルジェラに迎えられ、内部へと入る。
ちなみに、マルジェラは私の部下の中では比較的まともな部類だ。
人を殺すの大好き、人が絶望した顔見るのが大好きな破綻者のくせして、その矛先を敵以外には決して向けないから。
他の連中と違って、気まぐれに平民を欲望の捌け口にしたりしないのだ。
それだけでも評価に値する。
他のメンバーである、女の子の悲鳴が大好きなチャラ男とか、女の子を壊すのが大好きなヤンキーとか、弱い者虐めが生き甲斐のおっさんとかに見習わせたい。
なお、一番まともなのは直属部隊を指揮する隊長だ。
あれは優しくはないけどクズでもない普通の有能だから。
まあ、そんな部隊の事情は置いといて、今はこの場所の調査とノクスへの報告をしよう。
「これは……凄まじいな」
この空間を見て、ノクスが思わずといった感じで声を漏らした。
私も同意見だ。
正直、この場所は氷で作った私の城と同等以上の魔導技術が使われている。
ここは、今回の戦いで制圧した革命軍の拠点だ。
森の地下に作られた、東京ドーム何個分かもわからない巨大な空間。
植物によって形成されており、入り口は巨大な樹木に見せかけてある。
中から操作すると開けゴマする仕掛けだ。
他にも、LEDライトのように光る謎の植物とか、魔獣が嫌う臭いを出す謎の花とか、大地から拠点を維持する為の魔力を吸い出す謎の根とか、なんとも便利な植物が大量にある。
軽くオーバーテクノロジーだ。
「まさか、反乱軍にこれ程の拠点を用意する力があったとはな。
だが、納得した。
確かに、これだけの基盤があれば、あれ程の兵力を抱える事もできよう。
魔獣ひしめく森の中に拠点を作れたからこそ、今まで我らの目を欺いて潜伏する事も容易だったという訳か。
セレナ、よくぞこれを見つけてくれた」
「ありがとうございます」
まあ、ゲーム知識のおかげで最初から知ってた訳だけどね。
でも各拠点の正確な位置まではわからなかった。
ここを見つけられたのは、前に街中でグレンにくっつけておいた超小型アイスゴーレムのおかげだ。
あれが位置情報を発信したおかげで拠点の場所がわかった。
つまり、グレンの善意によってこの拠点は落ちたのだ。
本当に善人に優しくない世界だよここは。
私はそんな感傷を振り払い、ノクスに言うべき事を言った。
「ノクス様、わかっておられると思いますが、このような物を作れる人物は限られております」
「……ああ。これでほぼ確定だな。お前の言っていた通りになった訳だ」
ノクスが苦い顔になった。
予想してた事でも、それが現実になるとやっぱり嫌な気分になるらしい。
それでも、まだ余裕のあるこの段階で確信に至ったのは幸運だと思うけどね。
少なくとも、絶妙なタイミングで裏切られたゲームの時よりは。
「しかし、この拠点だけでは証拠が足りない。シラを切り通されれば追及できないだろう」
「ですが、膿は早めに出された方がよろしいかと」
「わかっている。あの老獪を追い詰めるのは骨だろうがやるしかあるまい。
幸い、証拠としては足りずとも、疑惑の種として充分過ぎる程だ。
やってやれない事はあるまい」
頼もしい。
是非ともあの爺を追い詰めていただきたい。
可能なら国家反逆罪で処刑して領地も潰せれば最高なんだけど、さすがにそれは高望みし過ぎかな。
でも、できればそこまでやってほしい。
切実に。
「……あと一つ、何か決定的な証拠でもあれば楽なのだがな。いっそ、この拠点に転がっていないものか」
「そんな簡単に尻尾を出してくれれば苦労しませんね」
「全くだ」
そんな愚痴を言い合いつつ、私達は時間の許す限り拠点を隅々まで捜索した。
最終的には部下に任せて延々と調べさせたけど、結局決定的な証拠と呼べる物は何一つ出てこなかった。
割と大量に捕まえた捕虜を尋問したりもしてるけど、そっちも収穫は乏しい。
何も知らない下っ端か、死んでも口を割らない忠臣しかいないのだろう。
これは尋問の達人レグルスがいても多分無駄かな。
色んな意味で実にやりづらいと思った。