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34 イベント開始

 グレンがいたという事で革命軍はやっぱり砦を狙ってるという事を確信し。

 そのグレンにくっ付けた超小型アイスゴーレムからの情報によって、革命軍の拠点の場所と大まかな戦力の把握が完了した。

 あとは迎撃準備を整えるだけだ。

 革命軍が挙兵すればわかるので、不意を打たれるって事はまずないだろう。

 なので、安心して準備に専念できる。

 私は上司に報告を入れ、部下に指示を飛ばし、戦力を嵩ましする為にアイスゴーレムを作った。


 正直、拠点の場所がわかってるんだから、こっちから奇襲をかけるっていうのも考えた。

 でも、ノクスとの協議の結果、色々な理由でその作戦はボツになりましたよ。

 その理由の一つは、革命軍の拠点がかなり厄介な場所にあったから。

 ゲーム知識で知ってたけど、実際に敵として対峙してみると、こんなに厄介な拠点も早々ないと思える。

 戦争を経験しまくった今の私をしてそう思わされる革命軍の拠点の場所。


 それは、なんと魔獣ひしめく森の中だ。


 あれを攻略する場合、攻める側が圧倒的に不利になる。

 そりゃね。

 布陣してるだけで魔獣に襲われるような場所だもん。

 天然の警備兵に守られた拠点に、しかも私がいる砦を攻めようっていう精鋭達に立て籠られたら厄介なんてもんじゃない。

 ただでさえ攻撃側は防御側の三倍の戦力が必要って言われてるのに、この場合だといったい何倍の戦力が必要なのかわかんないよ。

 それでも戦力差に任せて強引に落とせなくはないだろうけど、確実に甚大な被害が出るだろうし、脱出口でもあったら大量に取り逃しが発生すると思う。

 その作戦はあんまり現実的じゃない。


 おまけに、ゲーム知識によれば革命軍の拠点の殆どがこういう場所にあるっていうんだからやってられないよ。

 そんなのをポンッと作れる裏切り爺の魔術はチートだと思う。

 魔獣対策まで万全ってどういう事!?

 私の氷も大概万能だけど、あれには負けるんじゃないかという気がしてならない。


「お?」


 そんな事をつらつらと考えていた時、超小型アイスゴーレムの探索魔術が革命軍の大きな動きを捉えた。

 これまでとは明らかに規模の違う人数が拠点の外へと出て行く。

 思いきっり集中してみれば、その人達の殆どが魔導兵器(マギア)を持っている事がわかった。

 映像も見れないし会話も拾えないから断言はできないけど、これは出陣したって事だと思う。

 現在時刻は午前6時頃。

 革命軍の拠点からこの砦までは、魔力のない常人の徒歩で5、6時間ってところだろうから、到着予想時刻は正午。

 白昼堂々襲撃をかけるつもりか!?


 でも、それが正解なんだよなー。

 魔術師は身体強化の応用で目を強化すれば、遥か遠くの景色を見る事も、夜の闇を見通す事もできる。

 つまり、魔術師だらけの帝国軍に対して夜襲は効果が薄いって事だ。

 だったら、まだ自分達の視界も良好な昼間に戦った方がいい。

 革命軍も大変だ。


「さて」


 それはともかく、あっちが動いたならこっちも動かないと。

 私はとりあえず待機させておいた部下達の所へと向かった。

 私が姿を見せると、全員が一糸乱れぬ敬礼をする。


『セレナ様、おはようこざいます!』

「はい、おはようございます」


 ここにいるのは30人程の騎士達。

 こいつらは、この砦に元々いた連中じゃなくて『氷月将』セレナの直属の部下である精鋭達だ。

 帝国貴族らしく性根の腐った奴も多いけど、優秀さと実力だけは太鼓判を押せる連中である。


「早速ですが、新しい命令を下します。

 たった今、反乱軍に動きがありました。恐らく、今日の正午にはこの砦へと攻めて来るでしょう。

 あなた達の何人かは帝都へと戻りノクス様へ報告。

 残りは予定通り作戦行動に移りなさい。以上です」

『ハッ!』


 命令を伝え終えると、全員がキビキビと動き出す。

 エリートって感じだわー。

 戦力としては実に使える駒だ。


「じゃあ、次は……」


 砦の連中に話しとこうか。

 突然来られるのと、迎撃準備が整ってる状態で来られるのじゃ天と地ほど違うだろうし。

 迎撃準備さえ整ってれば、私抜きでもそれなりに戦える筈だ。

 何せ、ここにいるのは貴族の最高位である公爵に仕える辺境騎士団。

 さすがに六鬼将率いる中央騎士団には劣るだろうけど、他の騎士団に比べれば格段に強い。

 前の戦いで革命軍が倒した連中とはレベルが違う。

 こっちもまた使える駒というやつだ。

 ……まあ、私はまだ就任してそんなに経ってないし、直属の連中みたいにスムーズな連携は取れないと思うけどね。

 しかも、なんか年齢と見た目のせいか私を舐めてる奴らも多いし。

 素直に命令を聞いてくれるかどうかすら怪しい。

 戦力として期待してるけど、駒としては欠陥品と思っておいた方がいいかも。


 それでも革命軍襲来を知らせるだけ知らせておき、信じてなさそうな奴らには六鬼将としての命令で無理矢理準備させた。

 細かい指示は聞いてくれないかもしれないけど、このくらいの命令なら聞かせられる。


 で、その後はアイスゴーレムの配置を確認したり、報告を受けたノクスからの援軍を迎え入れたりしてる内に時間は過ぎ。

 遂に革命軍が目視できる距離まで近づいてきた。

 と言っても、まだ視力を強化する千里眼を使わないと見えない距離だから魔術の射程圏外だけど。

 でも、こっちから距離を詰めれば話は別だ。

 

「ちょっと飛んで爆撃してきます」


 私はそう言って氷翼(アイスウィング)を出した。

 そうして砦を飛び立った瞬間、


 チュドォオオオオオン!!!


 という凄まじい音が近くから聞こえた。

 何事かと思って振り返れば、砦の一部が吹き飛び、そこから煙が上がっている。

 これは……ああ、なるほど。


「そうきたか……やってくれる」


 多分、内通者か何かが砦の中で爆弾を使ったんだろう。

 ブライアンみたいな裏切り者か、それとも下働きの平民が革命軍に抱き込まれたのか。

 どっちにしても中々にいい先制パンチを食らってしまった。

 しかも、その混乱が覚めない内に砦の中が騒がしくなる。

 今度は少人数の別動隊でも来たのかな?


『ウォオオオオオオオオ!』


 それと同時に、少し遠くの方にいた革命軍も一斉に走り出して突撃を開始した。

 内と外からの挟み撃ちか。

 なるほど、悪くない戦略。

 馬鹿正直に真正面から来る訳ないと思って警戒してたけど、それでも尚裏をかかれた。

 もう少し時間があれば味方戦力を掌握してもっとまともな対応ができたかもしれないけど、革命軍は多分それも見越してこのタイミングで攻めて来たんだろうなー。

 初手は完全にしてやられた。


「さて、どう対処しようか?」


 私は思考加速を使いながら考えを巡らせた。

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