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20 初仕事

 メイドスリーに全てを話し、その日は私の城でルナと一緒に寝た翌日。

 私はメイドスリーにルナを託し、その3人に心配と激励の言葉をかけられながら送り出され、単身帝都へと戻って来た。

 そして、いつも通り学園に通ってノクスに会い、そこで伝えられた衝撃の真実。


 私、退学させられてました。


 まさかの事態である。

 いや、正確には退学じゃなくて、六鬼将としての仕事を優先させる為に飛び級で卒業した扱いになったらしいけど。

 姉様の時と同じ処理だね。

 姉様を皇帝の側室にする為に取られた忌まわしい制度だ。

 聞くだけで不快になった。

 そして、不快になってるのは私だけじゃないらしく、それを語った時のノクスもまた凄まじく渋い顔をしてた。


「という事で、これからのお前の職場は城の軍部だ。

 グレゴールの使っていた執務室がお前に与えられる事になるだろう。

 ただし、しばらくはレグルスとプルートの下で研修だ。

 六鬼将として、いや帝国騎士としてのノウハウが完全に身に付くまでは二人の補佐に徹しろ。

 余計な事はしなくていい。二人の後ろで学ぶ事を最優先とし、前線にはなるべく出るな。

 わかったな?」

「はい。わかりました」


 要約すると、私が心配だからレグルスとプルートに守ってもらえ、である。

 2年以上も深く付き合ってれば、上司の言いたい事くらいわかるさ。

 ノクスは元々、私に対して若干過保護だった。

 それが最近は若干ではなく普通に過保護になってる。

 私への負い目と、私の心の傷を心配してくれてるのが原因だと思うけど。

 この不機嫌さも、私を心配してるからこそ、厳しい人事に怒ってくれてるからだろうし。

 本当にいい奴。

 姉様の結婚相手がノクスだったら少しは納得できてたかもしれないと思えるくらいに。

 なんで、父親である皇帝とこうも違うんだろう?

 あのクソ親父から大天使が生まれた事といい、世界は謎と神秘に包まれている。



 そんな訳で、今日から私は学園ではなく城に通う事になった。

 やる事は前と大して変わらず、普段の仕事は書類仕事に精を出すプルートの補佐である。

 プルートが卒業するまでは当たり前だった光景だ。

 扱う書類がグレードアップしてる事くらいしか変わらない。


 他には、レグルスに連れられて、他の騎士連中と模擬戦をやったりした。

 レグルス曰く「舐められないようにしっかり実力見せつけてマウント取っとけ」との事である。

 言われた通りボッコボコのボコにして上下関係を叩き込んだ。

 騎士の中にはそこそこ強いのもいたけど、それだって精々非戦闘員だった姉様にすら及ばないんじゃないかって奴らばっかり。

 束になっても私には勝てない。

 六鬼将とそれ以下で実力に差があり過ぎる。

 なるほど、これじゃ確かに六鬼将に相応しい奴がいない訳だと妙に納得した。

 道理で、ゲームで六鬼将がやられた後に後任が出て来なかった訳だよ。


 あとは魔獣狩り。

 街周辺の魔獣を定期的に駆除するのも騎士の仕事だ。

 本来は六鬼将じゃなくて下っ端の仕事らしいけど、私は実戦経験を積む意味でも、この仕事を多く回された。

 まあ、ありがたいと言えばありがたい。

 おかげで自分に足りないものとかもわかったし、魔術によるゴリ押しじゃない戦闘技術というやつを習得できた。

 魔獣の断末魔聞くのはちょっとキツかったけどね。


 でも、勿論仕事はそれだけじゃない。

 六鬼将の本業は戦争だ。

 まだ革命軍が水面下に隠れてるので、帝国は他国との戦争に戦力を割いてる。

 そして、六鬼将はそんな戦争の現場指揮官だ。

 レグルスもプルートもしょっちゅう戦場に行く事がある。

 私もたまに付いて行くんだけど、基本的に後方待機で前線には出してもらえない。

 積極的に戦いたいとも思わないから別にいいんだけど。


 でも、いつかは私も戦場に出るんだろうなーとは思ってる。

 私がいつまでも見習いやってるなんて皇帝が許す訳がない。

 何せ、戦闘力だけなら私は既にレグルスとプルートを超えてるんだから。

 必ず近い内に私も戦う事になる。

 人を殺す事になる。

 それも、グレゴールやクソ家族どもとは違って、縁もゆかりも恨みもない相手を大量にだ。


 私にそんな事ができるのか?

 いや、できるできないじゃない。

 やるしかない。

 私が仕事をしなければ、皇帝の期待に応えられなければ、奴はルナの呪いを発動させるかもしれないんだから。

 私は皇帝に失望される訳にはいかないのだ。

 だったら、六鬼将としての職務を全うするしかない。

 戦場に出て、人を殺すしかない。


 なら、私はやる。

 ルナを守る為ならなんでもすると誓った

 だから、私は本当になんでもする。

 人だって殺してみせる。

 たとえ、それで天国の姉様に顔向けできなくなったとしてもだ。


 覚悟はしっかり決めておこう。






 そうして、私が就職して半年が過ぎた。

 その間に起きた、クソ家族どもの死を無理矢理事故死扱いにして私が正式にアメジスト家の当主になったり、綺麗なドレスを着せられてパーティーに連れて行かれたりとかのイベントを経て、13歳の誕生日を迎えた頃。

 遂にその時がやって来た。


「セレナ、あなたの初陣が決まりましたよ」


 ある日、プルートからそう告げられて私は息を飲んだ。

 でも、驚きはしない。

 ちょっと前から、そろそろ私を実戦で使ってみろって話が持ち上がってるから覚悟しとけって、プルートが警告してくれてたから。

 だから、ちゃんと覚悟は決めてきた。


「敵はカルセドニ男爵領で暴動を起こした平民の群れです。

 魔力を持たない劣等種が相手ならば負ける事もないでしょうし、あなたの練習相手にはちょうどいい。

 一応、僕とレグルスも監督役として付いて行きます。

 なので、あまり緊張せず肩の力を抜いて頑張ってください。

 勿論、油断は禁物ですがね」

「はい。わかりました」


 そう。

 たとえ相手が悪政に耐えかねて決起しただけの、なんの罪もない民衆であろうとも。

 それが必要な事だと言うのなら……


 私は殺す。

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