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16 呼び出し

 帝都の学園に戻ってからは、ノクスが早く手続きを終わらせてくれるのをソワソワふらふらしながら待ってたんだけど。

 そんな私を見かねたメイドスリーの泣きながらの懇願により、一回寝て休む事にした。

 幸い、後宮に侵入させておいた虫型アイスゴーレムはまだ生きてるから、ルナの居る後宮で何か騒ぎがあれば寝ててもわかると思う。


 でも、どうせ目が冴えて眠れないだろうなーと思ってたんだけど、疲労はしっかり溜まってたみたいで、横になったらすぐに意識が落ちたよ。

 そうしたら姉様と百合百合する18禁でディープな感じの幸せな夢を見られたんだけど、その最後に唐突に姉様の死に様がフラッシュバックしてきた事で悲鳴を上げながら飛び起きた。

 気がついたら、形見のペンダントを握り締めて震えていた。

 そこにメイドスリーがやって来て、3人がかりで必死に私を慰めようとしてくれる。

 その姿を見て、やっと震えが収まった。

 私はまだ大丈夫。

 ありがとう、アン、ドゥ、トロワ。

 そう素直に伝えると、3人は泣きそうな顔で笑った。



 そんなどぎつい目覚めをしてから少しして、私の部屋の扉がノックされた。


「どちら様でしょうか?」

「セレナの上司だ。ノクスが来たと伝えてほしい」


 対応に当たったトロワが問いかけると、返ってきたのはノクスの声。

 私はトロワに向かって肯定の意味で軽く頷いた。


「お入りください」


 トロワが扉を開けてノクスを招き入れる。

 トロワはそのままノクスを椅子へと招き、同時にアンとドゥが動いて速攻でお茶をお出しした。

 いつの間にか、メイドスリーのメイド力が劇的に上がっている。

 それはともかく。


「おはようございます、ノクス様」

「ああ。……その顔を見るに、少しは休めたようだな」

「はい。おかげ様で」


 悪夢に飛び起きたとはいえ、眠れた事には違いないから体力は戻った。

 身体強化の魔術で強化されてる魔術師は常人より遥かに頑丈だし、これでもう倒れる事はないと思う。


「ならばいい。では、早速だが本題に入ろう。

 まず、お前の望みであるルナマリアを後見人として引き取りたいという申し出は受理された。他の親族が何か言ってこない限り問題はないだろう」

「ありがとうございます」


 軽く言ってるけど、昨日の今日で手続き終わらせるって相当無茶してくれたんだと思う。

 まだ姉様が死んだっていう情報が帝都にまで届いてるかも怪しいのに。

 多分、第一皇子としての権力でゴリ押してくれたんだろうなぁ。

 凄く感謝だ。

 早急に夜逃げするのが申し訳なく思えてくる。


「あとはお前の受け入れ準備の問題だが……」

「ご心配なく。それは既に終わらせてあります」

「……私は休めと言った筈だが」

「休みましたよ。受け入れ準備を終わらせた後で」


 ノクスが渋い顔になった。

 でも、私がこういう奴だという事はノクスだってわかってる。

 ため息一つ吐いて流してくれた。


「まあいい。これからルナマリア引き渡しの日時の調整をするが、希望の日時はあるか?」

「できうる限り早くお願いします」

「だろうな。言うと思った。では明日辺りに捩じ込むとしよう」

「……ありがとうございます」


 私は椅子から立ち上がり、心からの感謝を籠めて頭を下げた。

 本当にこの人を見捨てるのが忍びない。


「よせ。お前が頭を下げる必要はない。むしろ、頭を下げねばならないのは私の方だ。

 お前に姉君の救済を約束していながら、それを果たせなかった。

 本当にすまなかった」


 そう言ってノクスもまた椅子から立ち上がり、私に向かって深々と頭を下げた。

 その声は悔しさで震えている。

 この姿を見たら、ノクスを恨む気にはなれない。

 実際、ノクスは最善を尽くしてくれた。

 今回は相手が悪かっただけだ。

 そして、私が無能過ぎただけだ。


「そのお気持ちだけで充分です。ノクス様は私との契約を充分に果たしてくれています。あなたを恨むつもりはありません」

「……そうか」


 ノクスは苦くて、少しだけ寂しそうな声でそう呟いた。

 恨んでほしかったのだろうか?

 いや、ノクスは私に責めてほしかったのかもしれない。

 私もメイドスリーに責められなかった時は、嬉しかったけど同時に凄く苦しかった。

 だから、断罪を望む気持ちはわかる。

 そうじゃないと罪悪感がヤバイから。

 ホントに、ここまで罪の意識を持ってくれるいい奴が、なんで悪役やってんのか本気でわからない。


「では、私はもう行く。一刻も早くルナマリアをお前の元に連れて来るから安心して……」


 コンコン


 ノクスの言葉を遮って、またしても扉がノックされた。

 トロワが対応に行くと、聞こえてきたのは若い男の声。

 その声には聞き覚えがあった。

 確か、ノクスの部下の一人だ。

 ノクスとトロワが私に視線を向けてきたので、入れていいという意味を籠めて軽く頷いた。


「失礼いたします」


 そうして、部屋入ってきたノクスの部下は、ノクスの前で跪いて要件を述べた。


「ノクス様、皇帝陛下より至急のお呼び出しです。即刻、セレナと共に謁見の間まで来るようにと」

「何? 父上がだと?」


 ノクスが素直に驚く。

 私も驚いた。

 あの、動かざる事ラスボスの如しを体現する皇帝が。

 革命に対してすら最後の最後まで直接動く事のなかった皇帝が、私を呼び出すだと?

 その呼び出しに、私は嫌な予感を覚えて仕方がなかった。

 今会ったら、反射的に飛び掛かってチン◯をズタズタにしてしまいそうな気がしたのも含めて。

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