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15 粛清

「呼ばれて来たけれど……何故、あなたのような薄汚い小娘がいるのかしらね?」


 高級なドレスを身に纏ったおばさん、アメジスト伯爵家の正妻が私を見て吐き捨てた。

 私は何も返さない。

 こんなのと会話するのは時間の無駄だ。


 そしたら、正妻は今度クソ親父に詰め寄った。

 ヒステリックに喚き散らし、クソ親父が顔をしかめる。

 そんなどうでもいいやり取りをしてる内に、他の家族どもも集まってきた。


「父上、ただいま参りました」

「お楽しみの途中だったのになー」

「……何故、落ちこぼれまでここにいるのやら」


 そう抜かすのは、私の腹違いの兄である三人。

 臆病者で、小さい頃の私に暗殺者を送り込んできた長男。

 拷問好きで、女の悲鳴が大好きな次男。

 私を落ちこぼれと蔑んでサンドバッグにしてきた三男。

 揃いも揃ってクズばかりだ。


 そして、そいつらに続いて側近の使用人が何人か部屋に入ってくる。

 こいつらは、私やエミリア姉様に感謝する他の使用人達とは違い、家族どもに取り入っておこぼれに預かってる連中だ。

 全員が全員そんなクズな訳じゃないけど、クズ率が締める割合は高いと思う。


 さてと。


「お父様、これで全員ですか?」

「ああ」


 クソ親父に尋ねれば、肯定の言葉が返って来た。

 そっか。

 なら、早速やるとしようか。


「お集まり頂いてありがとうございます。では、早速本題に入りましょう。━━死ね」


 私はそう言って指を鳴らした。

 その瞬間、クソ親父の腹の中に入れておいたアイスゴーレムが内側から氷魔術を使い、クソ親父の体に風穴を空ける。


「ごはっ!?」


 何が起こったかわからないという顔で固まる家族ども。

 それはクソ親父も同じで、腹を押さえて踞りながら「何故!?」って感じの顔してる。


 私はそんなクソ親父の頭を、即席で作った氷のブーツを纏った足で踏み潰した。


 膨大な魔力によって強化された私の力は、クソ親父の身体強化をぶち抜くのに充分な威力を持っていたらしく、クソ親父の頭部はグシャリという音を立てて砕け散った。

 そこから、血と一緒にぬめりとした残骸が流れ出してくる。

 汚い。

 けど、すっとした。

 何せ、憎い仇の一人を殺せたのだから。


「キャアアアアアアアアアアアアア!?」


 と、そこでようやく現実を頭が理解したらしく、正妻が悲鳴を上げて腰を抜かした。

 それを聞いて兄3人も正気に戻ったらしく、即座に魔術を発動しようとしている。

 遅い。


「『氷弾(アイスボール)』」


 銃弾のような氷弾(アイスボール)が即座に兄3人の額を撃ち抜き、絶命させる。

 一応、ウチの家は騎士の家系って聞いてたのに驚くほど弱い。

 やっぱり、性根が腐ると力も腐って使い物にならなくなるのかね?

 これじゃあ、圧倒的に戦力で劣る革命軍にやられる訳だ。


「な、何故!? 何故このような事を!? 復讐のつもりですか!?」

「それをあなたが知る必要はありません」


 最後に残った正妻が喚いてたけど、気にせず氷弾(アイスボール)をぶち込んで殺した。

 家族どもの血で部屋が真っ赤に染まる。

 いい気味だ。


 でも、私がこいつらを殺したのは復讐の為じゃない。

 クソ親父に対しては復讐の意味も入ってたけど、本当の目的は別にある。

 ルナを助ける邪魔をされたくなかったからだ。


 何せ、ルナの後見人となる権利はこいつらにもあった。

 通常、親を失った貴族の子は、血縁の誰かが後見人として育てる。

 皇族の場合はちょっと特殊で、父である皇帝が後宮の運営にまるで関与していないから、母親を失った時点でその子供は親を失った貴族と同等に扱われる。

 その場合も、貴族と同じく血縁の誰かが後見人になる訳だ。


 だから、こいつらには死んでもらった。

 この一刻を争う事態に、誰がルナを引き取るかで揉めてる暇なんかなかったからだ。

 ルナはアメジスト家の血を引く皇女。

 クソ家族どもにとって、ルナの政治的価値は計り知れない。 

 私が引き取ると言えば絶対に横から口を出してくる。

 クソ親父みたいにアイスゴーレムを飲ませて言う事聞かせるのもありっちゃありだったけど、あれは腹をかっ捌く覚悟があれば外せちゃうからね。

 しかも、あれ一個作るのにも結構な手間と時間がかかるし。

 だったら、パーッと粛清しちゃった方が早いし安全だ。


 それに、こいつらがいなくなったところで別に困らない。

 貴族関係のお付き合いがなくなって家の力が下がるかもしれないけど、私はルナを引き取り次第、とっくの昔に完成させてあった国外逃亡用の魔術で逃げるから関係ない。

 まあ、残った使用人達が可哀想だから、ある程度のフォローはしていくけどさ。


「さて、これでアメジスト伯爵家の当主は、この家に残った血族の中で唯一生きている私になりました」


 私はパンと手を叩いて、青い顔をしているクソ家族どもの側近だった使用人達に話しかけた。


「家の運営はあなた達に任せます。ただし、間違ってもこいつらと同じ腐った運営はしない事。民の為になる仕事をしなさい。そうでなければ容赦なく殺します。わかりましたか?」


 使用人達がコクコクと壊れた人形みたいに首を縦に振る。

 まあ、ここまでトラウマを植え付けた以上、私がいなくなっても自律式アイスゴーレムを何体か残せば下手な事はしないだろう。

 それに、数年以内には革命軍によって国の体制が変わる筈。

 それまでの繋ぎになってくれれば充分だ。


「よろしい。では解散。あ、この部屋の掃除はしておいてくださいね」


 とりあえず家族どもの死体を凍らせて砕き、残った血痕とかの掃除を命じておいた。

 使用人達がそれに取り掛かるのを尻目に、私は秘密基地に行って国外逃亡用の魔術の最終確認をし、ついでに、そこを守らせておいた自律式アイスゴーレムの何体かを屋敷に派遣する。

 学園に通い始める前に数百体は作っておいたから、数体くらい屋敷の方に回しても問題ない。


 そうして私はルナの受け入れ準備を整え、転移陣で帝都へと帰還した。

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[一言] 領地を経営している人を消した後の後始末が書かれていない
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