猫型魔獣
「ボク……。ボク、ご主人さまに嫌われちゃったよぉー」
いきなり、えぐっえぐっと泣きじゃくる猫型魔獣の相談者様。
このままだと、時間だけが無駄に過ぎていくので、優しい言葉を掛けてなんとか泣き止ませ、話を聞く。
「ボク、悪気はなかったんだ。でも、ご主人さまが『ギャー』って悲鳴を上げて泡吹いて気絶しちゃって……」
悲鳴を上げて気絶。
そして、相談者は猫型魔獣。
これだけで、何があったのか大体想像がつくが、一応詳細を聞いておく。
「ボクね。町中にいる『ドブネズミー』を退治する仕事をしてるの。その日もいつもみたいに仕事をしてたら、たまたま『ネズミーイイエハムデス』を見かけて、頑張って追いかけて捕まえて、珍しかったからご主人さまに見て欲しくって持って行ったら……」
話すうちに思い出したのか、相談者がまたシクシクと泣き出す。
しかし、こちらとしては「ああ、やっぱりそうですか」という感想しか出て来ない。
「ご主人さまに嫌われたら、ボクもうご主人さまの所に帰れないよぉ」
本格的に泣き出した相談者を慰めるのは諦めて、相談受付時にまず聞いておいた相談者の主人へ連絡を取った。
連絡後、相談者の主人が速攻でやってきた。
どうやら、合わせる顔がなくて、プチ家出中だったらしい。
「もう! 心配したんだから!!」
そう言って、泣きながら猫型魔獣を抱きしめる主人と同じく泣きながら主人へ身をすり寄らせる相談者を眺めながら、私は今回の資料を解決済の箱へ投げ入れた。