祈りと…
祈っていた。
何に対して祈っていたかって?
それはね?
目には見えない不可思議なもの。
霊と呼ばれるもの。
その存在を認められていないものの事。
いつからだろう…。そんなものに頼るようになったのは。
霊と言っても【座敷わらし】だからね。可愛いもんでしょ。
出会うと幸福をもたらすと言われている。
私もあやかりたくてここまでやってきた。
でもね?
それらしいこと全く起きないんだよ?
なんで?
私が欲の塊を持っているから?
そんなのわかりっこないと思っていたのに、わかっちゃったの?
座敷わらしが出ると言われている旅館で、ただジッと待っていた。本当に出るのか?と疑いたくもなるが、そればかりは待ってみるしかない。
時計の針は深夜を指していた。
眠い…。正直諦めている自分がいた。
で、寒さもあって布団の中へ。
暖かさが眠気を誘う。
その瞼がゆっくりと閉じていく…。
ガサッ。ゴソッ。
カツコツカツコツ。
ギーーッ!!
私は気づかない。
ドンドン。ポトッ。
寝返りを打った時、なぜか目が覚めた。
何かを感じた私は持ってきていたカメラを手にあちこちシャッターを切り始める。
でも目には何も写ってはいない。
カメラのレンズは何を捉えているのか?
写真を見てみる。するとそこに写っていたのは.白い塊だ。埃?いや、違う。埃じゃない。じゃあ、何?
何枚も撮った写真を順番に見ていくも、写真にはバッチリと写っていた。
「霊?…座敷、わらし?」
普通の霊ならきっと怖いんだろうが、ここに出ているのはきっと座敷わらし。怖くはなかった。なんでだろうね?
「座敷わらしさん、出て来て一緒に遊ぼうよ。」
シーーン…。
「??やっぱりいないのかな?気のせいだった?」
その時何かが視界の端を横切る気配を感じた。
その方向は振り向いてみても何も変わらない。
「座敷わらしさんじゃ…ない…の?」
私は少しだけ怖くなった。
もしかしてほんとの霊?
ビデオカメラで撮影しとけば良かったと今になって後悔していた。それでもね?今からでもと思いビデオカメラで撮影を始めたよ。
気になる場所を手当たり次第に写していく。
30分ほど経った頃、録画をやめて巻き戻して再生をかける。
するとそこには確かに白い塊が右から左へと空いて飛んでいくでは無いか。
「座敷わらしさん、お顔を見せてくださいな。」
それでもやっぱり現れない。
諦めかけたその時それは現れた。
それは…真っ黒な塊だった。
それが何なのかはわからない。
そもそもの願い事が不純だったのかもしれない。
【友達ができますように…。欲しいな。友達。】
そう、私には友達と呼べる人が一人もいないのだ。
今まで生きてきて友達と呼べる人に会ったことはないと思っている。それがまずかったのかもしれない。
黒い塊は徐々に姿を変え、人の姿をとっていく。
顔が見えたが、目は落ち窪んでいる。見てて気持ち悪かった。
「な、なに?お化け?霊?」そう言いながら私は身体をガタガタと震えさせていた。その塊が徐々に近づいてくる感じがして慌ててその場から逃げ出そうとしたが、体が動かない。
悲鳴をあげたくても声が出ない。
怖い。
ぎゅっと目を瞑った。
どれくらい目を瞑っていたのだろう…。もういいかなって思った時、少しずつ薄目を開けてみた。そこには真っ黒な塊が。
視界いっぱいに見て取れた。
あまりの恐怖に意識が飛びそうになったが、このまま意識がなくなったらどうなるのかが気になり、怖がりながらもそんな余裕があったのかとふと思った。
「座敷わらしさん、座敷わらしさん、う〜ん。」
右肩がふと冷たく感じた。
それは…真っ黒な手らしきものだった。ビックリして逃げようとしたよ。そしたらね、今度は体が動いた。
もうそりゃ必死でその場から離れたよ。
黒い塊は追っては来なかった。
ホッとしたよ。
マジで…。
その夜は結局座敷わらしには会えなかった。
しかしあの真っ黒い塊は一体なんだったんだろう…。
座敷わらしさんでないことは確かだろう。




