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【完結済!】天涯のアルヴァリス~白鋼の機械騎士~  作者: すとらいふ
第一章 召喚 〜異世界と白い機体〜
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第六話 亡命先生・2

第六話 亡命先生・2


「そうね、ユウは理力甲冑を降りて私についてきて。ヨハンは残って周囲の警戒」


 ヨハンは明らかに不満そうな声で返事をする。好奇心の強い年頃だ、アレが何なのか自分も中に入って見たいのだろう。二人は正体不明機の前後に機体を駐機させ、念のために逃げられないようにする。


 ユウたちが理力甲冑から降りてくるのと同時に、相手も機体の側面に設けられた出入口から出てくる。どうやら二人しかいないようだ。


 一人は黒髪で長身の男性で、恐らく無線の主だろう。やたらと疲れた顔をしているが大丈夫だろうか。もう一人は……少女? 金色をした少し癖のある長い髪、丸く大きな目は碧色をしている。愛らしい顔立ちをしているが今は眉間にしわを寄せ何かを考えている風だ。身長からすると、十代前半の少女のようだが。


 一応、クレアは腰に下げた拳銃(リボルバー)へ手をかけながら問おうとすると、ずっと何かを考えていた様子の少女が突然しゃべり始めた。


「あああー! やっぱり出力制御と変換効率が上手くいってないデスねー!!! ボルツ君、私が昨日言ってたようにちゃんとスラスター調整しましたデスか??? これまでの変換効率の値を参照しながら作ったグラフと公式使ってって言ったデスよねー! え? 使った? ホントデス? うーん、それじゃあ公式が間違っていたのデスかねぇ? もう一度計算やり直しデスか!!! チクショー!!! いや、待つデスよ? もしかして理力エンジン側のパラメータ設定が甘かったんデスか? こりゃあ一度、全部バラシて値を煮詰めなきゃいけないのデスか??? あああ!!! 徹夜デスか今夜も!!!」


 あまりにまくし立てるのでクレアもユウも言葉が出ない。隣の男性はヤレヤレといった風にしている。


「あの先生、今はそれどころじゃありませんよ。ホラ、お二人とも困っています」


「知るかデス! それよりも安定翼の方は調子良さそうデスね、今後は今の形状を発展させる方向で設計していきましょう! あッ! そういえばアレは無事デスか?! 流れ弾とかに当たってないといいんデスが!!」


 トタタと走って宇宙船の内部に戻る姿はどう見ても子供にしか見えなかった。話の内容からどうやらエンジニアだか研究者のようだが。キョトンとしている二人を見かねて黒髪の男性が自己紹介を始めた。


「いや、どうもすみません。私の名前はボルツ・ターナー。で、先ほどの彼女は先生。本名は私も知りませんがみんな彼女を先生と呼び、彼女もそう呼ばれるのを望みます。ああ、遅くなりましたが、危ないところを助けて頂き本当にありがとうございました。見ての通り、こいつの理力エンジンが丁度止まってしまって、皆さんが来てくれなければ連れ戻されるところでした」


 クレアは警戒しながらボルツを見ている。ユウも何となく気付いた。


「いえ、どういたしまして。私はクレア、こっちはユウです。我々は連合の理力甲冑操縦士です。……では、ボルツさん。ズバリ質問します。あなた達は帝国の人間ですか?」


 彼らはこの謎の巨大な乗り物に乗って国境線の方からやって来て、それをオーバルディア帝国の理力甲冑に追われていた。救助を求める無線には自らの所属を述べなかった。それに今、この男は「連れ戻される」とも言った。これらの情報から逃げてきたこの二人は帝国の関係者と考えるのが妥当である。


 クレアとユウはボルツがどのような反応をするか見守っている。しかし彼はさも当然といった表情をしたまま答えた。


「はい、私と先生は帝国で軍の開発をしていました。まあ、色々あって今は逃亡中なんですが」


 あっさりと認めるのでクレアは少し拍子抜けをしてしまう。なんか調子狂うわね、と心の中で愚痴る。


「あ、そうだ。あなた達は都市国家連合の人なんですよね? 丁度いいところでした。私と先生は連合に亡命したいんですけど、どなたかに取り次いで頂けないでしょうか」


 クレアの整った眉がピクリとする。彼女は直感的に厄介事になると思った。


 今、話してみた感じでは何かを企んでいるような人間には見えない。が、このまま内地へ連れて行っていいものだろうか? それとも今一度本部に連絡を入れ、判断を仰ぐか。悩んでいると向こうから先生と呼ばれた少女が叫ぶ。


「ボルツ君ー! 何をしているんデスか! 早くこっち来て手伝うんデスよ! ついでにお前ら二人も手伝うんデス!」


「いやだから先生、それどころじゃないでしょ……」


 ボルツは仕方がないという顔をして少女の下へ駆けていく。ユウとクレアは仕方なくその後を追う。


 ボルツが入った扉を二人がくぐると、そこはかなりの広さを持った空間だった。機体のかなりの容積を占めているこの空間は理力甲冑が二、三体は余裕で入るだろう大きさだ。一体何に使うのだろうか? それに何か大きなものが空間の一角を占拠しており、シートが被せられている。先生とやらはそこのすぐ傍で手を振っていた。どうやらこっちへ来いという事らしい。


「先生、今はコイツよりもスワンの理力エンジンの様子を見た方が……」


「いいからこのカバーを外すんデス! この機体に何かあったらここまで来た意味が無くなるんデスよ?! いや私がいれば、たとえ一からでも作り直すんで問題ないデスけど! ホラ! 早く!」


 ユウとクレアはこの少女の勢いに呑まれ、何故かは分からないがシートを一緒に外し始めた。かなり大きいシートの留具を外し、めくっているうちにその全容が見え出した。


「これ、理力甲冑か……?」











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