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メンズPコート/税込13,200円

作者: 葵陽

※この作品はフィクションであり、専門用語は創作です。信じないで!


「恭子はお見合い結婚したそうです。」「さて、一番年上は何歳でしょう。」「ブーケトスもそんな感じ。」「いっしょに食事をするだけの簡単なお仕事です。」「マグロ係」「七つまでは神のうち」「店長、シフト変更してください。」「たぬきとどくだみ」「むじなとあしたば」「不思議な道具なんかより、あのあおいねこちゃんがほしいと思ったことはないか。」「職業:家政婦」「人見知りだっていいじゃない」の続きです。


読んでいただければ幸いです。


「気の強いやつは、かんなぎに向いていない。」

「いきなりなんですかもやし野郎。」



ご主人の言う通り、気の強い人間は巫に向いていない。神の声を聴くことは、神と対峙することだ。そして神は、我が強い奴が苦手と言っても良い。自分で言うのもなんだが、私は気が強い方だ、神や神使しんしを視認できたとしても巫としての役目を果たすのは難しい。

反対に、一佐かずさのように我が弱い、気の弱い人間も巫にはなれない。なれない、というよりはならない方が良いと言った方が良いか。気の弱い人間は、神に身体を支配されやすい。依り代としてはちょうど良いが、本来その人がもつ精神が神様に乗っ取られ、最悪完全に精神が消滅することもある。そうなるとその人は、永遠に神様の「入れ物」だ。






私たち姉弟のご主人さまは、自分のことを「くぼう」と呼ばせている。なんでも当人は「ご主人様」、と呼ばれることに抵抗があるとのことだ。我が敬愛するお姉さまは素直に、「くぼうさま」と呼んでおられたが私はあえて「ご主人さま」と呼んでいる。名目上私たち姉弟は、ご主人様の使用人だ。一線を引く必要はあるし、素直に他人の言うことをきくのは癪にさわったからだ。それでもお叱りを受けないのは、ご主人様が「馬鹿」がつくほど寛大だからだろう。


とどのつまり、単なる嫌がらせともいう。


 お姉さまと我らが末弟、壮一郎がお母さまのご実家である千波家ちばけに身を移してから一週間が経とうとしていた。まだ二人の居ない日常には慣れない。心なしか、家の中が寒々しくなった気がする。


 窓の外を、ちらちらと白いものが見えた。

今日は、「コチラ」でも雪が降り始めている。本島の気候は機械によって制御されているゆえに、十二月には順当にして冬がやってくる。  

機械がなくとも外は冬なのだが。

機械が止まってしまえば、たちまちこの世界は凍りついて生き物は死に絶えるだろう。制御された「冬」は、あくまでも安全な程度の「冬」ということだ。


その中でぬくぬくと暮らす我々の事を、「籠の鳥」という人もいる。



ご主人さまは新聞をたたみながら、紅茶を淹れている私に口を開いた。

「日向子、今日の晩御飯はシチューにしましょうか。冷えるらしいですから。」

「では牛乳と人参と、鶏肉を買ってきてくださいませ、ご主人さま。」

「俺は今日外出の予定はないよ。君が買ってきたまえ。」

「お前が行けよ、もやしっ子。」

私は心の中で、中指を立てる。

ご主人さまの齢は爺様たちをはるかに超えているが見目が弱弱しい青年であるゆえに「つい」、軽口を叩いてしまう。



その、ギスギスした空気に耐えられなかったのであろう、もう一人の青年が慌てて私たちの間に入ってきた。


「お、わたしが買ってきます、姉さん。」

「一佐、あんたは受験生なんだから家で大人しく勉強してなさい。」

「ちょうどノートと鉛筆が無くなったし、その帰りに買ってきます。あっ、くぼうさまは何かお入り用ですか?ついでになって申し訳ありませんが、買ってまいりますよ。」

「ありがとう。じゃあ、ささにしきに寄ってメイプルシロップを貰ってきてもらえますか?電話で店主に伝えておきますから。」

「かしこまりました。姉さんは、他にありますか。」

「じゃあドクダミとガラムマサラ。」

「・・・今日はシチューですよね。」

「ドクダミと、ガラムマサラ。」

「承知しました、行ってまいります。」



去年の誕生日にお姉さまから買ってもらった、ちょっとお値段高めのコートを着てワタワタと一佐は家から出ていく。



「気の強いやつは、巫に向いていない。」

「いきなりなんですかもやし野郎。」


定期更新、16作目。


閑話のような、短編にしてみました。


お読みいただけてうれしく思います。

楽しんでいただけたら、幸いです。

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