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サイク屋  作者: オセロニア
8/14

工と麗美 パート3

 工は、機械を麗美に納品した後、通常通りにサイク屋の店番をしていた。いつも通りサイク屋はほとんど来客もなく時間が進んでいった。 ちょくちょく興味本位でサイク屋に入店する人もいるが、10分も経たないうちに出て行ってしまった。

(宣伝用のwebサイトでも作ろうかな....)

一応サイク屋には、店のサイトがある。今のサイク屋のサイトは父親が作ったものなのだが、いかんせん、デザインセンスがない。 いつか工は自分で店のサイトを作ろうと考えていた。

(レンタルサーバー使うより自分でサーバー立ててサイト作った方がメンテナンスも自分できてコスパもいいな...)

そんなことを考えていたら誰か店に入ってきた。

「いらっしゃいませー」

入ってきたのはいつぞや来店してた背の高い黒いスーツの男だ。工に近づいて来たので、何か用があるのかと思い尋ねた。

「どうも、お客さん。機械の修理の依頼ですか?」

「君が、あの話題の動画のカッパと格闘していたものだね?」

!? 頭が真っ白になった。確かにあの動画はSNSで話題を呼んでいるものだ。だからこの男が例の動画を知っていても不思議ではない。しかし、例の動画は工の顔をモザイクして投稿していたし、次郎にもこれは俺だと話さないように約束していた。まさか、あいつ約束を破って...!?

「ち、違います。人違いです。」

咄嗟に嘘を吐いた。 カッパと格闘とした男なんて世間にばれたらいろいろ面倒なことになりかねない。最悪、サイク屋の経営に支障をきたしかねない。 

「安心していい。私はこのことを誰かに話したりなんかしない。 実は私は君のお父さんの知り合いでね。」

「...親父と?」

「ああ、今日は軽くあいさつに来たんだ。 これ名刺だ。興味があれば名刺の携帯番号に連絡をくれ。ちょっと用事があるので私はこれで失礼する。…では」

工は受け取った名刺を読んだ。国際機関 RSFラボ? 聞いたことがない。あの背の高い黒いスーツを来た男は徳永白って言うのか もしかして親父が働いてるところで その同僚なのか。

狐に包まれた気分になりつつもいつもどおり店番を終え、麗美に連絡した。

「すみません、お店終わりました。俺はどこに向かえばいいですか。」

「お疲れ様です。新橋駅に来てもらってもいいですか?着いたら連絡お願いします。」

「わかりました。」

麗美の指示通り新橋駅へと向かった。すでに麗美は駅に着いていた。

「お疲れ様です。工さん。わざわざ来てもらってすみません。車でそちらまで向かえに行きたかったんですけど、お酒を飲みますから。」

「いえいえ。ところでどこの店に行くんですか?」

「私のいきつけの店にご案内します。」

麗美についていき、お店へと到着した。 工のしらないお店だ。もっとも工はあんまり飲みにいったことがないため、大手のチェーンの居酒屋くらいしか分からないが。


お店に入り、軽くメニュー表を覗いた。 工は成人しているが、実はお酒を飲んだことがなかった。

「工さん、飲み物は何にします?」

少しの間悩み、ビールにしようと考えた。 最初はビールを頼むというのが常識だとネットで見たことがある。

「じゃあ、ビールでお願いします。」

「わかりました。」

呼び出しボタンを麗美が押し、注文を始めた。

「生ビール2つと枝豆、それにゲソ揚げ、トマトサラダをお願いします。」

注文をしてから3分後に料理と飲み物が届いた。

「では、工さん乾杯しますか。」

「ええ。それじゃ、乾杯...」

乾杯してお酒を飲んだ。 初めてビールを飲んだ感想は苦いという感じだった。しかし、不味いとも思えない不思議な感じの味だった。

「工さんは、お酒はよく飲むんですか?」

「いや、今日初めて飲みました。」

「そうなんですか。今確か21歳ですよね?」

「ええ、でも高校卒業してから友人たちとあまり連絡も取り合ってないので居酒屋に行ったことはありませんでした。」

「なるほど、そうだったんですか。」

一杯目を飲んで、工は日本酒を注文した。 麗美はカクテルを注文した。 カクテルを半分飲んだあたりで麗美の様子がおかしくなった。

「ねぇ、なんで工ちゃんはうちに入社してくれないの?」

工はすぐ分かった。麗美は酔っていると。 まだ、ビール一杯とカクテル半分ほどしか飲んでないのにである。

「いや、うちの店のほうが大事なので...」

「ふーん 工ちゃん私が日本酒ついであげるよ⭐️ おちょこ貸して!」

「いや、そんな悪いですよ」

「うちの注いだ酒が飲めねぇってか! オラー!」

(酒癖悪すぎだろう...)

工は店員を呼び、お水を頼んだ。 それを麗美に飲ませた。

「少しは酔いさめました?」

「えー、ま、まぁ」

工は麗美を美人だと思っていたが、酒癖の悪さのギャップに驚いた。まぁ、人間誰しも欠点の一つや二つあるものだが

「麗美さん、もう遅いですしそろそろおひらきにしましょう。立てますか?」

「ええ、はい キャッ!」

麗美が転んだ。 どうやら立てる状態じゃないようだ。酒に弱すぎだろう。

「肩貸しますから捕まってください。」

「い、いえそんな悪いですし...」

「だって、歩ける状態じゃないじゃないですか!」

「すみません、それじゃお言葉に甘えて....」

麗美と体が密着した。 ほのかに甘い匂いがして工はすこしドキッとしたが早く連れて帰ろうと考えた。店の外にでて、麗美に尋ねた。

「家どこですか?」

「この通りをまっすぐ歩いてもらっていいですか?」

麗美のナビゲーションを頼りに歩いていった。男女が肩を組んで歩いているためかちょくちょく通行人に好奇の目で見られた。店を出てから15`分後くらいには到着した。

「麗美さん、着きましたよ。」

「わざわざ、ありがとうございます... その、見苦しい姿を見せてすみません....」

「い、いえ、それじゃあ失礼します。」

そう告げ、麗美と別れようとした。

「あ、あの!」

「どうしました?」

「うちに入社するのは無理でも... また、協力してくれませんか?」

「え、ええかまいませんけど」

麗美は酔いながらも笑顔でこういった。

「ありがとう」

工は不覚にもドキリとした。

「そ、それじゃぁ麗美さんお大事に!」


麗美と飲みに行った次の日、麗美からメールが届いた。

[お疲れさまです。 昨日は飲みに付き合ってくれてありがとうございます。 また、機会があれば飲みに行きたいです。]

昨日のことはあんまり覚えてないのかと工は思った。まぁ、麗美のことは嫌いではないし、いつかこちらから飲みに誘ってみようなどと考え、いつも通りサイク屋の開店の準備を進めていった。

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