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現状把握と決意



「お嬢様 おはようございます。ご気分はいかがですか」


セシルが元気よく部屋に入ってきた。


「おはようございます セシルさん。体調はもうすっかりいいみたいです。」


ベッドに腰かけて本を読んでいた私は、ノックの音に気づかなかったようだ


「それはようございました。お嬢様 私のことは『セシル』とお呼びください 。」


メイドだから呼び捨てでってことね。


「さぁ お召しかえいたしましょう。どのお洋服になさいますか?」


セシルがクローゼットお開けるとそこにはヒラヒラでフリフリのワンピースがたくさん並んでいる。


若い頃からヒラヒラとフリフリには縁遠かったし、どちらかと言えば苦手なので、これを着なきゃならないのかと思うと、全く気が進まない。

仕方なく、一番シンプルな紺色のワンピースを選んだ。


「え?ちょっ…」



私がとまどっているのを気にもせず、セシルはあっという間に私の寝間着を脱がせて、あっという間にワンピースを着せていく。

すごく手際がイイ。


「さぁお嬢様、ここに座ってください」


鏡の前に用意した椅子に私を座らせると、手早く髪を整えていくセシル。


「よくお似合いですよ。お綺麗です。」


鏡の中のサラは、紺色のワンピースに銀色の髪が映えて確かに美しい。私なんだけど私じゃないから、ものすごく違和感。

自分の姿に慣れるまでちょっと時間がかかりそうだ。


「朝食まで時間がありますが、どうなさいますか?」


セシルに尋ねられて、私は迷わず答えた


「私が忘れてしまったことをいろいろと教えてほしいの」


「あぁ、お嬢様は本当にご記憶が…」


一瞬、セシルは悲しそうな顔をしたけれど、すぐに笑顔になる。



「もちろんです。何からお聞きになりたいですか?」


セシルに教えてもらったことを簡単にまとめると、このカルディア王国は、ジャン=ポール=カルディア国王が治めている。

スペングラー侯爵家は代々カルディア王国の騎士を務めていて、今は父であるジェラルドが騎士団長を任されており、国王とは知己の仲だそうだ。


「それに奥さまはカルディアでも5本の指に入るぐらい、すごい魔術師でいらっしゃいます。今は屋敷で執務をなさっていますが、王城の魔術部局にお勤めしておられます」


魔術に関しては父も敵わないほどの使い手らしい。


「ってことは、私も魔術を使えるのかしら?」


ルウが私にたくさんの魔力を感じたって言ってたし。

私が尋ねると、セシルは急にそわそわと落ち着きがなくなった


「え、ええ…もちろんです。奥様は素晴らしい魔術師ですし、旦那様も魔術を絡めた剣術では右に出るものはいないと言われております。サラ様もきっと優秀な魔術師になられる…はず」


急にセシルの歯切れが悪くなったのは気のせいなのかしら。


「あの、そろそろ朝食の時間です。用意ができているかどうか、私が見て参りますので、このままお待ち下さい」


歯切れの悪さと、不自然な話題転換。

なにかあるに違いない。

いそいそと部屋を出ていこうとするセシルを呼び止めた。


「セシル 待ちなさい。ここに座ってくれる?」


ドアノブに手をかけたままま、固まったセシルは、恐る恐る私の顔を見る。


「ちゃんと話してくれないかしら?」


ここに、と、優しく私の前の椅子を勧める。


「お嬢様、笑顔が怖いです」


特上の笑顔のはずなのに何故だ?

それでもそろりと椅子に腰かけたセシルは、渋々と言った様子で話してくれた。


私が崖から落ちるハメになったのは、なんと魔術の勉強から逃げ出したから、だそうだ。サラのことを探すメイドや執事から身を隠すために、立ち入りを禁じられている区域に入ったらしい。


それに、サラはとにかく勉強が嫌いで、ことあるごとに逃げ出していたため、魔力の制御がろくにできなかったようだ。そのせいで、感情が高ぶったり、突発的なことが起こると、魔力を暴走させて、いつも大変なことになっていたと言う。


「大変なことって?」


「部屋のガラスや鏡が割れたり物が壊れたりしました。ひどいときには火事になりかけたときもありました」


なんじゃそれは~。


崖から落ちたのも自業自得なのかも。勉強が嫌で逃げ出すって…幼稚園児じゃないんだから。


「あの、サラ様。大丈夫ですか?どこか痛みますか?」


頭を抱えている私をセシルが心配そうに覗き込んだ


「大丈夫よ。なんでもないわ。話してくれてありがとう」


申し訳なさそうにしているセシルに笑いかけて、立ち上がる。


「おなかかがすいたわ」


「そろそろ時間ですね。食堂へ参りましょう」


セシルの案内で食堂に向かいながら考えた。


これからずっと、サラの振りをして生きていくのは無理だろうなぁ。私とサラはあまりにも違いすぎる。

でも、今なら人が変わったようになったとしても、記憶を失くしたから、と言えばなんとかなるかも知れない。

多分、大丈夫。かな。


スペングラー家のみんなを騙しているようで、心苦しいけれど、私をサラとして認めてもらえるように頑張ろう。まずは腹ごしらえだ。



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