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朝食と王子様



ナタリエによる災難によって、本日臨時休暇となりました。

1階の食堂で朝食をいただく私の前には、いつもどおりの家族団らんとは言えない光景があった。


「この卵料理は美味いな」


美しい所作でスクランブルエッグ召し上がっているヴェンデル王子。


「パンもふわふわで美味しいですね」


その隣には5つ目のパンに手を伸ばしている護衛騎士のローガン。


「そうでしょう?我が家の料理人は腕が良いのです」


私の隣のお母さまが、にこにこしながら嬉しそうに答えていた。

朝食に王族が同席しても、慌てず騒がず、いつもどおりの両親はすごいとしか言いようがない。


「ぼくもたまごしゅきー」


セドリックはよくわかっていないから仕方ないけど、普通は緊張するものではないのかしら。


「体調に問題もなさそうで良かった。昨日、会えなかったので心配していたのだ」


「デル様。ご心配をおかけしました。傷は綺麗に治りましたし、どこにも問題ございませんわ」



朝食前に来客だと呼ばれて玄関に向かったら、挨拶もそこそこに私にいきなり接近して、傷がないか確認されましたよね。

至近距離のイケメンになかなか耐性がつきません。

悲鳴を上げたり、意識を失わなかったのを褒めて欲しいぐらいだ。



「すまないな。突然の訪問であったのに、すっかり馳走になってしまった」


「いえいえ。良いのですよ。このような朝食でよろしければ、またいつでもお越しくださいませ」


お母さまはやっぱりにこにこしている。


玄関ホールまでデル様とローガンをお見送りする。


扉を開けると、2頭の馬。

なんと、デル様はローガンと二人で馬を走らせて来てくださったようだ。


「あぁ、レオにも言われていたのに、朝食が美味しくて、肝心のことを伝え忘れるところだった」


デル様が私の方に向き直った。


「サラ。君は昨日の騒動に心を痛め、一日臥せっていることになっている」

「え?」


臥せるどころかすごく元気ですけど。


「だから今日は屋敷から一歩も出てはいけない」

「庭でお散歩もダメなのですか」

「だめだ」


良いお天気だし、セドリックと遊ぼうと思っていたのに、庭も禁止されて、ちょっとふくれっ面になってしまったのは仕方ないよね。


デル様は私のほっぺをむにっと摘まんだあと、頭に手を置いた。


「今日だけだ。どうか屋敷の中で大人しくしていてくれないか」


済まなそうに言うデル様を見てしまったら「はい」と言うしかないじゃないか。


「わかりました」


仕方なく返事をした私に嬉しそうに微笑んで、私の頭を2回、ポンポンした。


そして、さっそうと馬に跨り城に帰って行った。

ちなみに、デル様の馬は白馬ではなかった。

全身黒で鼻筋に白いラインのある馬でした。

屋敷の馬丁によると、青鹿毛というらしい。

定番のイメージだと王子様の馬は白だし、デル様にはきっと白馬も似合うと思う。なにせホンモノの王子様なのだから。


「サラ。屋敷から出られないのに申し訳ないのだけれど」


お母さまが急に登城しなければいけなくなったらしい。


「できるだけ早く帰って来るから、わたくしが帰るまでの間、セドリックをお願いできないかしら」

「もちろん構いませんわ。わたくし、一日することも特にありませんし」

「ねえたまとあしょぶ」

私のドレスを引っ張るセドリックを抱き上げた。


「お母さま。せっかくですし、ゆっくりしてきてください。職場のご友人と昼食を取られてはいかがですか」


私の提案にお父さまも頷いた。


「サラもこう言ってくれていることだし、ゆっくりしてきたらいい」

「そう?じゃあお言葉に甘ようかしら」


出勤するお父さまを見送ってから、お母さまは嬉しそうに準備のために部屋へ戻って行った。


「さぁ。セドリック。どこで遊びましょうか」

「ぼくのおへやがいい」


セドリックは私の手を引いて部屋に入ると、棚から箱を出してきた。


「あのね。ぼくのだいじなの」


セドリックが蓋を取ると、周りにいたメイドたちが悲鳴を上げた。


箱の中身は、つるっとした綺麗な色の石、何かわからない植物のタネ、何かの部品らしき金属、黄色いリボン、色々と入っていたけど、メイドたちが悲鳴をあげたのは、ヘビの抜け殻が目に入ったからだろう。うちの子もセミの抜け殻集めていたなぁと懐かしくなった。男の子はこういうの好きな子が多いよね。


「まぁ。セドリック。立派な抜け殻ね。どこで見つけたの?」

「おにわでみちゅけたの」


セドリックは嬉々として見つけたときの様子を教えてくれた。

セドリックの話ならいつまでも聞いていられる。

なんて可愛いのかしら。絵本を読んで、昼食を食べて、一緒にお昼寝をして、セドリック三昧の一日でした。


はぁ。満足。



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