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事情聴取と仔犬


お父さまもアランもいなくなって、治療室はすっかり静かになった。


「私は奥ですることがあるから、暇だったらこれでも読むといい。知っておいて損はないからね」


ハリエット先生は薬草や薬に関する本を貸してくれた。薬草の絵があるのでわかりやすいし読みやすい。

今度、マリアベル様に実物を見せてもらおう。


薬は純粋に薬草だけで作られるものと、薬草に魔力を込めて作られるものと2種類あるらしい。

魔力を込めたものの方が効果が高く、その分価格も高い。薬草だけのものは主に平民が作っているようだ。

さっきの薬湯も魔力が込められていたのかしら。


読んだことのないジャンルの本だけどなかなか面白かった。


ちょうど本を読み終わったところで、ルッツとともに女性騎士が二人やってきた。


ルッツの顔色がものすごく悪い。さっきのアランよりも悪いかも知れない。


「ルッツ。心配をかけてごめんなさい」


私が詫びると、ルッツはベッド脇に跪いて頭を垂れる。


「私の方こそ申し訳ございません。お傍に付いていながらお怪我をさせてしまいました。なんとお詫びして良いか」


声にも元気がない。


「いいえ。ルッツ。わたくしも悪かったの。色々言われて腹が立ったから、煽ってしまいました。ルッツにも嫌な思いをさせて申し訳ないと思っているわ」


私は手を伸ばしてベッドと同じ高さにあるルッツの頭を撫でた。


「それに、王子様方に叱られたのではないの?」

「はい。厳しくお叱りを受けました」

「そう。わたくしは今日のことはルッツが悪いとは思っていません。ただ、今後の教訓として生かして欲しいわね」


顔を上げたルッツは今にも泣き出しそうな表情をしていた。


「ルッツの本業は王子様方の護衛でしょう。王子に近づくご令嬢の中には、腹が立ったら本を投げつけるような方もいらっしゃるのだと覚えておいてね」


ふふっと笑いながら言うと、そうですねと苦笑いしながら立ち上がった。


「サラフルール様。今後はこのようなことなきよう、誠心誠意お守りいたします」


真剣な顔で騎士の礼をした。


ルッツと一緒に入ってきた女性騎士は、騎士団から派遣された事情聴取要員らしい。

聞かれたことに淡々と答え、起こったことを話す。

ナタリエとのやり取りを話していると「は?」とか「え?」とかいう相槌が入るのがちょっと面白かった。


まぁ、そうなりますよね。


「事情聴取は以上です。お休みのところ、ご協力ありがとうごさいました」


女性騎士は扉を開けようとした手を止め、私の方を振り返った。

ん、まだ何か聞き忘れたことでもあるのかしら。

私が首を傾げると、


「えっと。サラフルール様。この度は・・・災難でしたね。本当に」


しみじみと気の毒がられてしまいました。災難。まさにその通りです。

お大事にと言い残して2人は出て行った。


ルッツは所在なさげに扉の横に立っている。捨てられた仔犬のようだ。


「ルッツ?」


呼びかけるとおずおずと近づいて来た。


「明日は登城せず、ご自宅で安静にしているようにと王子からの伝言です」

「でも、準備があるし、大したことなかったし」

「準備はアラン様がいれば大丈夫とのことです」


えぇ〜大げさだなぁ。一晩寝たら大丈夫なのに。


「サラ様は登城しようとなさるだろうから、しっかり言い聞かせておくように言われております」


ルッツが申し訳なさそうに言う。

結構王子様方に絞られたみたいだし、これ以上ルッツを困らせるのは本意ではない。


「わかったわ。明日は屋敷でおとなしくしておきます」


私の言葉を聞いて、ルッツは明らかにホッとしていた。

王子様のところに戻ると言って、ルッツも出て行った。





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