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名付けと昇格



目が覚めるとまだ辺りは暗かった。


意識がなかったとは言え、三日間寝ていたせいか、これ以上眠れそうもない。

私はベッドからそおっと下りて、バルコニーに出てみた。

空を見上げると満天の星空。


「すごい…」


「ホシ キレイネ」


いつの間にか私の左肩にくるくる赤毛の子が座っている


「ゲンキ ナッタ?」


まぁね。たくさん寝たしごはんも食べたから、体は元気だけど、今の状況に頭がついていってない。


「ワタシ ヤクソク マモッタ」


あぁそうか。名前が欲しいって言ってたね

私が本当に望んだ形じゃないけど、もとの世界には戻れないんだろうし…


「ワタシ シッパイシタ?」


すごく悲しそうな顔をするのを見て少し慌てる。


「ううん そうじゃないの。少しさみしかっただけだから。そんなつもりじゃなかったのよ。ごめんなさい」


私の言葉にホッとした様子になったくるくる赤毛の子。本当にかわいい。


「名前をつけてあげたらどうなるの?」


くるくる赤毛の子は風の精霊で、名前をつけてもらうことによって、成長することができるらしい。

精霊の中には、そのまま自然の中で過ごす者がほとんどだが、一族のうち選ばれた数名は自分に名前をつけてくれる人族を見つけなければならないのだそうだ。


って


私のあの状態は人族と呼べるものだったのか?


「マリョク タクサン カンジタ」


一族から選ばれて、名前をくれる人族を探しているときに、落ちてくる私の魔力を感じたそうだ。

私に魔力があるなんて、自分では全然わからないけどなぁ。


「わかった いいよ 名前つけてあげる。約束したからね」


少しずつ白み始めた空が、周りの景色に色を付けていく。私の肩に座っている子の赤毛も、朝陽に照らされてきらきらと輝いている。


「あなたの名前は『ルウ』よ」


私が『赤毛』と言う意味の名前を声に出した途端に、ルウは青い光に包まれ、光が膨らんだと思ったら弾けるように消えた。


そこには蝶々の羽が背中についている赤毛の幼女がいた。


「ルウ?」


「はい。名前をつけてくださって感謝します」


「大きくなったし、言葉も上手になってる?」


両手のひらサイズから身長が私の膝ぐらいまで大きくなった。


「名付けのおかげで私は成長しました」


「名前が気に入らなかったら…その…」


口ごもる私にルウは少しはにかんだ笑顔で答える。


「いえ サラ様 ありがとうございます。かわいい名前です」


恥ずかしそうな様子のルウが可愛くて、思わず抱き上げてぎゅうって抱きしめる。

名付けをすることによって、私は風の精霊ルウと契約することになり、ルウは私の眷族となったそうだ。


「サラ様?あの…苦しいです」


「ごめんね。あんまり可愛くてつい力が入っちゃった」


「ほら、見てください。サラ様。」


ルウが指差す先には、山の稜線からすっかり顔を出した朝陽。

第2の人生の始まりだ。


他人の人生を代わりに生きるって想像もつかないけれど、なんとかなるでしょ。人生経験豊富なんだし。

私の腕から飛び立ったルウは、私の顔の前で羽をパタパタさせながら嬉しそうに笑った。


「サラ様。これからよろしくお願いします」


大きな茶色の瞳をうるうるさせながら、上目遣いで私を見つめる。


そんな顔で見られたら、断れるわけないし、断るつもりもない。


「こちらこそ。これからもよろしくね。ルウ!」





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