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知らない天井と褒め言葉



目覚めると知らない天井でした。




転生モノにはテンプレのセリフ。一度言ってみたかった。



「サラ。気が付いたか。良かった」


ベッドの横に座っているアランは顔色が悪かった。


「アランこそ大丈夫?ひどい顔色をしているわ」


アランが心配で手を伸ばした。


「お嬢さん。意識が戻ったようだね。ちょっと失礼するよ」


その手はキリっとした白衣のマダムに握られ、脈拍を測られた。その後も額に手を当てたり、腕を触ったりする。


「私は王宮治療師のハリエット=コリンズだよ。気分が悪いとか、痛むとか、具合の悪いところはないかい」


ここは王城内の救護室のようだ。ハリエット先生と言えば、国内一番の治療師と名高い方。まさか自分がお世話になるなんて。


大丈夫ですと答えると、アランが大きく息を吐いた。


「あの。アラン。心配をかけてごめんなさい」


私が詫びるとハリエット様がクスクス笑い出した。


「この坊やは、あんたを抱えてドアを蹴破る勢いで飛び込んで来たんだ。真っ白い顔色だったから、血を流したあんたを抱えてなければどっちが怪我人かわからないぐらいだったよ」


血を流したって?


「ナタリエ様はきみに本を投げつけたんだ」


少し顔色の良くなったアランは何があったか教えてくれた。

本の角が額に命中して切れたらしい。傷口自体はそれほど大きくなかったけれど、まあまあ出血したらしい。


「この坊やがすぐにここに運んでくれたから傷跡なく治療できた」


「まぁ。そうでしたの。アラン本当にありがとう」


治療までに時間を要すると、傷跡や後遺症が残ることもあるのだ。きれいに直すには多くの魔力を費やして高度な治癒魔術を施さなければならなくなる。


「サラは女性だし、未婚だし、顔に傷が残ると良くないだろう。綺麗な顔に傷が残らなくて良かった」


驚いて咄嗟に言葉が出ず、真面目な顔で言うアランを見つめる。

アランが綺麗な顔って言った。

アランが褒めるなんて、聞き間違いではないだろうか。


「そう思いませんか」


アランに同意を求められたハリエット先生はその通りだと頷いた。


「全くだよ。嫁入り前の娘がよりによって顔にけがをさせられるなんて」


ハリエット先生が入れてくれた造血効果のある薬湯をいただく。ほんのり柑橘系の香りがして、意外と飲みやすい。


「傷は治ったけど流れた血は戻らないからね。明日一日は安静にするんだよ」

「わかりました」


薬湯を味わっていると、バーンと激しく扉が開いた。


「サラ!!大丈夫か」


お父さまがすごい勢いで飛び込んできた。慌てて手に持っていた薬湯を脇のテーブルに避難させる。


「傷は?痛いところは?苦しいところはないか?」


矢継ぎ早に尋ねながらぎゅうぎゅうと抱き締める。


「こら。ジェラルド。落ち着きなさい。多分、抱き締めすぎて今まさに苦しいと思うが」


ハリエット先生がお父さまを引きはがしてくれた。

そのとおりです。


「お父さま。わたくしは大丈夫ですから落ち着いてください」


「サラ。けがをしたと聞いてどれほど私が心配したと思っているのだ。それなのに」


私に付いていたかったが、泣く泣く重要な会議を優先させたらしい。


「ご心配おかけいたしました。」

「いや。無事ならいいんだ」


大したことがなくて良かったと今度は優しく抱きしめてくれた。


「それで何があった」


お父さまに問われて簡単に図書室での出来事を説明した。

お父さまの顔がだんだんとこわばって行く。


「ナタリエ嬢は?」


話終わったあと、ひんやりした声で尋ねるお父さまが怖いです。


「サラに本を投げつけておいて、後を見ずに出て行ったようです」

「自分が怪我をさせたことを知らないということか」

「おそらくはそうでしょう。そのあとすぐにレオ様とのお茶会に何食わぬ顔で現れたそうなので」


アランがお父さまの様子を伺いながら話す。

そのお茶会は、ナタリエ様が席に着いた瞬間にルッツから届いた報告によって。強制終了となったそうだ。


私に本を投げつけておいて、その足でお茶会に行った、ということか。


「なんだそれは」


お父さまが怒りと呆れと半々の様子だ。


ハリエット先生から治療の説明と今後の注意事項を聞いたお父さまは、キャンベル侯爵に抗議文を書くと言って、治療室を出て行った。お父さまが仕事を終えたら一緒に帰ることになり、私はそのまま治療室で絶対安静。アランは王子に説明してくるといっていなくなった。




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