初めてのお使いと婚約者候補
あけましておめでとうございます
幸多き一年になりますように‥‥
私にも
みなさまにも
立ち去ろうとしたサイテー女に声をかける。
「お待ちになって」
私が呼び止めるとすごい勢いで振り返った。うひぃ。その顔は人に見せちゃダメなやつですよ。
「彼女にお返しするものがあるのではないですか」
何かを取り上げたの、見てたんだからね。私の指摘にぐぬぬと唸って顔が赤くなる。
「こんなもの、いくらでも返して差し上げますわ」
そう言って、思いっきり投げた。
手の中のそれは私たちの頭の上を通り越し、小川の向こう岸の繁みの中に落ちていくのが見えた。
サイテー女の投擲力が予想外だったわ・・・
サイテー女は私の呆然とした表情を見て留飲を下げたようだ。
ふんっと鼻を鳴らしてから他のご令嬢を引き連れて去っていった。
「あの・・・」
マリアベルに声を掛けられ、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「あなたの持ち物を取り返せませんでした。わたくし余計なことをしてしまいましたね。大事なものなのでしょう?」
「いえ。サラフルール様のせいではありませんわ。いただいたペンダントなのですが、あのまま他の方の手に渡るよりもずっとマシです」
「でも・・・」
レオンハルト王子からの贈り物かしら。探しに行けないかと思ってルッツの方を見た。
「侵入者除けの魔術具が設置されているので、探しに行くのはおすすめしません。というか、行くのはダメです」
ビシッと却下されてしまいました。マリアベルは侵入者除けの魔術具を点検するときに探すから大丈夫だと言ってくれた。
「サラフルール様。ご挨拶が遅れました。フォースター伯爵家のマリアベルと申します。助けていただいてありがとうございます」
「マリアベル様。初めてお目にかかります。スペングラー侯爵家のサラフルールと申します」
お互いに神妙に挨拶を交わしてみたが、今さらという感じがして思わず笑みが漏れた。
「マリアベル様。お洋服が汚れてしまいましたわね」
土を払ったけど、やっぱり少し汚れている。
「お気になさらないでください。仕事で土いじりもいたしますから、汚れても良いものなのです。薬事部に戻ったら着替えることにします。ところで、サラフルール様はどこへ?」
用向きを伝えると、部長室まではマリアベルが案内してくれることになった。
道々、マリアベル様が栽培されている薬草について聞いてみた。
希少種も材倍しているようだ。ぜひ見てみたい。
私がそう言うと、いつか見せてくれるという。
社交辞令かも知れないけど、楽しみだ。
社交辞令かも知れないけど。(期待してはいけないので、2回言いました。)
マリアベルの案内で、さしたる問題もなく、薬務部長室に到着し、無事におつかいを完了することができた。
マリアベルのペンダントは、ルウにこっそり取ってきてもらった。サイテー女に引きちぎられたせいで鎖が切れているから、修繕してからお返ししよう。




