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初めてのお使いとサイテー女

今年も今日が最終日。

一年はあっという間ですね。

色々と心配なこともありますが

無事に1年を終えられることに感謝です。


皆さまも良いお年をお迎えくださいませ




精霊王の立てたフラグが気になって、昨夜は熟睡できなかった気がする。

お昼ごはんを食べたらちょっとお昼寝できたらいいなぁ、なんて思いつつ、聖なる泉に行くための準備物のひとつ、薬の調達のため、ルッツと一緒に薬事部へ向かっています。


アランが書いたメモを持って、はじめてのおつかいです。


騎士団棟とは反対側に位置する薬事部は、王城で使用する薬に関することを担っていて、栽培、製造、研究を行っている機関だ。

薬事部の建物の奥に薬草の温室がチラリと見えている。

どんな薬草が栽培されているんだろう。いつか入ってみたいものだ。



渡り廊下を進んでいくと、複数の女性の笑い声が聞こえてきた。建物の横を流れる小川の岸にある繁みの奥からだ。

少し奥まっていて、ここからはほとんど見えない。


あんなところで誰が、と思っていると後ろから声が聞こえた。


「一人のご令嬢を4人のご令嬢が取り囲んでいますね」


ルッツよ。透視能力でもあるのか。驚いて振り返った私は、ルッツを見上げた。ああ。わかりました。目線の高さが全く違うのですね。

ルッツは繁みの上から向こうの様子が少し見えているようだ。


「取り囲んでいる?」


「はい。あっ、ご令嬢が突き飛ばされて倒れました」


「ええぇっ。助けに行った方が良いかしら」


「そうですね・・・あれは・・・」


「ルッツの知り合いなの?」


突き飛ばされたのはレオンハルト王子の婚約者候補のひとりでマリアベル様というご令嬢らしい。


渡り廊下を出て、繁みを回り込むと地面に座り込むご令嬢の周りを、4人のご令嬢が取り囲んでクスクス笑っている。

一人のご令嬢が、マリアベルの胸元に手を伸ばし、何かを取るのが見えた。


「返してください」


マリアベルが大きな声を出した。


「貴女には分不相応だわ。伯爵家のくせに。厚かましいのよ」


座り込んだまま手を伸ばすマリアベルを避けながら、鼻で笑っている。うわ。サイテーな女だな。


「そんなところでどうなさったの?」


私が声を掛けると、全員が一斉にこちらを見て驚いた顔をしている。


「声が聞こえましたので覗いてみたのですが、皆さまでなにをなさっていたのかしら」


私は微笑んでこてりと首を傾げた。


「はっ。ざん・・・サラフルール様」


サイテー女め。残念姫って言いそうになったな。


「あら、そんなところに座っていると、服が汚れます」


私がマリアベルを見つめると、彼女はそっと視線を逸らした。


「この方が勝手に転んだのですわ」

「こんなところで転ぶなんてみっともないわね」

「ほんとですわねぇ」


周りのご令嬢はクスクス笑っている。私はマリアベルに近づき手を差し出す。


「大丈夫ですか」


問いかけに顔を上げ、おずおずと私の手を取ったマリアベル。

なんですかこの子、スゴクカワイイんですけど。

赤茶色のクリクリおめめがサイテー女のせいでちょっと涙目なのが庇護欲をそそります。


「ほんとうにみっともないですわ」


マリアベルの手を取り、立ち上がらせながら私が言うと、一瞬マリアベルの身体が強張ったのがわかった。

それに構わずドレスの裾についた土を払ってやる。

周りのご令嬢は私に便乗して、貴族の令嬢として恥ずかしいだの、王子にはふさわしくないだの好き勝手に口にしていた。


「転んだご令嬢に手を貸すこともせず、取り囲んで嘲笑いながら眺めているだけなんて」


私はご令嬢を見回して微笑んだ。


「ほんとうにみっともないですわ。ねぇ。そうお思いになりませんか」


微笑んで問いかける私を、サイテー女が頬をぴくぴくさせながら睨みつけていた。


「ところで、皆さまはわたくしのことをご存知のようですけれど、わたくし、お名前が思い出せませんの。申し訳ございませんが、名乗っていただけると助かりますわ」


笑顔で4人のご令嬢に促すが、誰一人として名乗ろうとしないし、私と目を合わせようともしない。


「先ほどこちらの方に『伯爵家のくせに』とおっしゃっておられましたけれど」


そこの貴女、と名前を知らないのでサイテー女に的を絞ってこちらを向かせる。


「貴女はさぞや立派なお名前と家名をお持ちなのでしょうね。それなのに尋ねられても名乗れないなんて。

誇りを持てないような名なら捨ててしまえばよろしいのに」


うふふと笑って言うとサイテー女が今度は額に青筋を立てた。

わぁ。ほんとに怒りで青筋立つんだ。初めて見たよ。

何か言われるかと思って身構えたけど、テンプレの捨て台詞。


「覚えていなさいっ」


踵を返して立ち去ろうとした。




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