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昔話とフラグ



元の部屋に戻った私たちは、紅茶を飲みながら今後のことを話し合う。


「やはり、闇の精霊王がいると思われる池に行きたいと思うのだがどうだろう」


レオンハルト王子の言葉に、アランと護衛騎士が反対した。


「危険です。迷いの森に入るなど無茶です」


「私はレオと同じ考えだ」

「わたくしも池に行ってみたいですわ」


ヴェンデル王子と私がレオンハルト王子に同意するとアランがすぐに反論した。


「だめだ。サラ。王子を危険な目に会わせるわけにはいかないだろう。それに君も・・・」


「ルウがいれば大丈夫だと思いますわ」


件の池は、西の森、俗称『迷いの森』と呼ばれる場所に位置する。入ったら二度と出られないという噂のある場所だ。


「はい。ルウにお任せください」


円卓にいつの間にか追加された椅子に座り、ルウは自信満々の顔で答えた。片手にクッキーを持っているのがなんとも締まりがなくて非常に残念だ。

可愛いけど。


「どういうことだ」


「池は『聖なる泉』と呼ばれています。闇の精霊王の心を安らかにするためにエリーゼ姫が癒しの魔力を込めているのです」


ルウがそれだけを説明するとクッキーをもぐもぐし始めた。


「聖なる泉に人を近づけないために、森を精霊たちが守っているのです。入ったら出られないのではなくて、入れないのです」


後を引き継いで私が続ける。

入っても奥に進むことはできず、いつのまにか森の外に出てしまうのだ。


「なるほど。精霊たちが許せば池に辿り着けるというわけか」

「それならば危険はないのではないか」


王子様方がアランに同意を求めると、仕方がないと呟いてから


「わかりました。しっかり準備をしてから行くことにしましょう」


渋々、という雰囲気はあるがアランからも了承の言葉を得た。

西の森に行くのは1週間後、出発までに工程や準備物を十分話し合うことにして解散となった。





今日も密度の濃い一日だった。

バルコニーでルウと星を眺めながらお茶を飲んだ。


「サラ様。昔みたいに、人と精霊が仲良くできるようになるでしょうか」

「なるわよ。きっと。すぐには無理かもしれないけど。そうしたら堂々とルウとお出かけできるのにね」


「我もそうなれば良いと思っている」


ルウと笑い合っていると、会話に参加する人がいた。


「あら、精霊王さまもお茶をいかがですか」

「いただこう」


もう三度目となると突然の訪問にも驚かない。

精霊王は私が淹れた紅茶を飲みながら昔の話を教えてくれた。


双子の姫が一つずつ闇の祝福と光の祝福をそれぞれが持って産まれた。当代の王はそれを見て、闇の祝福を持った姫をすぐに殺してしまい、死産だったと発表した。

闇の精霊王の祝福は終わったと安堵していたが、姫が1歳になる前、左腕に闇の祝福が浮かび上がった。

結局、祝福からは逃れられなかったということだ。

王妃は我が子の命を奪ってしまったことに、心を病み自ら命を絶った。国王も姫が成人するとすぐに王位を姫に譲り、闇の精霊王の討伐に加わったが、姫を庇って犠牲になった。


「今代の王が過去の記録を知っていたのかどうかわからないが、息子たちそれぞれに祝福があることを受け入れ、どちらにも同じように接することは心情的に難しいと思うのだ」


そうかも知れない。光の祝福を持つ王子と闇の祝福を持つ王子。どちらを、と言われると心情的には光の方を遇し、闇は蔑んでしまうのが容易に想像できる。

国王陛下は、分け隔てなくどちらの王子にもちゃんと『父親』であると私は感じ、なんだか嬉しくなった。


「それを思うと、今代の王は良い王なのだろうな」


「はい。王族の贖罪について、きちんと理解していただけたと思っています」 


「そうか。我が魔術具を貸した甲斐があったというものだな」


精霊王は微笑んだ。


「西の森には問題なく入れるように周知しておこう」


精霊王は根回しをしてくれるようだ。


「ルウがいれば大丈夫だが念のためだ」


やはりヒトに対して、良い感情を持っていない精霊も未だにいるらしい。危害を加えられることはないが、迷わされたり森から出されたりしたら困る。

精霊たちのおかげで魔獣もいないみたいだし、アランたちが心配することもなかったかも知れないなぁ。安心安全が一番ですよ。


ほっとしたところで、私はずっと気になっていたことを尋ねることにした。


「闇と言えば、最近は気配が近づくこともないのですが、夢に出てくるアレはどうなったのでしょうか」


精霊王はじっと私を見つめた。


「ふむ。そうだな。まだウロウロしてはいるが、我が強力な祝福を与えたから、今までの方法では其の方に近づくことはできんだろうな」


そうか。良かった。精霊王さま強力な祝福をありがとう。夢の中だと言っても本当に気持ち悪いし、二度と触られたくない。鳥肌がヤバかったもの。


「アレは其の方の世界の者だろう?何かするとしても、せいぜい、夢の中で其の方にまとわりつくぐらいしかできん。あぁ、悪くすれば引きずり込まれることもあるが、其の方が魔力で力負けすることはあるまい。そのうちこちらの世界に関われなくなって、いずれ消滅する。それにアレは精霊ではないから消滅したとしても全く影響はないから心配せずとも良い」


引きずり込まれたくないです。絶対に。

でも精霊王に大丈夫と太鼓判をもらったし、次に会ったら冷冷静に対処できる。はず。多分。きっと。


「アレが実体を持てば厄介だが、そんなことは起こらないだろう」


精霊王が気になる一言をポツリと漏らした。

私、知っています。アラフォーでもご存知ですよ。

フラグですね。

絶対回収したくないっ。全力で折ることに決めた。





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