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診断と腹の虫



治療師の診察を受けた私は、ベッドに横になったまま、症状の説明を聞いていた。


「お嬢様は事故のショックで記憶を失っているようです。お体の方はどこにも異常がありませんが…」


まぁそうだよね。

中身はサラじゃないんだから、サラの記憶はない。


「あの、事故って?」


私が尋ねると、推定お母さまが教えてくれた。


サラは、危険だから入ってはいけないと言われていた区域に入り込み、足を滑らせて崖から落ちてしまったらしい。


落ちた先が川だったってことか。


「ところで、記憶は戻るのか?」


「それはなんとも言えません。戻るかも知れないし、このまま戻らないかも知れません」


治療師の言葉を聞いて二人は落胆した様子を見せた。


治療師は心を落ち着かせる効果のある薬と、よく眠れる薬を処方して、お大事にと言って帰って行った。


「サラ 本当に何も思い出せないのか?」


「はい…すみません。私はサラという名前なのですか?」


私のことを心から心配している様子の三人に、本当に申し訳ない気持ちになる。


「いや、謝らなくてもいいんだ。お前が無事だっただけでも本当によかった」


優しく微笑む推定お父さまは、かなりのイケメンだ。


「お前の名前はサラフルール=スペングラー。皆にはサラと呼ばれている。私はジェラルド=スペングラーでお前の父親だ。隣の女性はシャルロット=スペングラーでお前の母親。後ろにいるのはセシルでお前専属のメイドだ」


「無理に思い出そうとしなくてもいい。わからないことや知りたいことがあったらなんでも尋ねなさい」


「そうよ。なんでも言ってちょうだい」


優しく頭をなでるお父さまと、私の手を握ってふんわりと微笑むお母さまに、私は伝えたいことがあった。


「えっと…あの」


言いにくくて口ごもっていると、お母さまは私の方にぐいっと身を乗り出す。


「どうしたの?サラ?」


真剣な表情で尋ねてくれたけど、どう言おうか迷っているうちに、私が言葉を発するより早く、私のおなかが要望を伝えた。




ぐぅ~~




しくしく、恥ずかしすぎる。

おなかかがすいたって言いたかったんです。


私がお母さまに手を握られたまま、顔を赤くしているとくつくつと笑いながらお父さまがセシルに言う。


「セシル、料理長になにか消化のよいものを用意するように伝えてくれ。大至急だ」


「おなかかがすいていたのね。三日間なんにも食べてないのだから当然だわ」


お母さまもくすくす笑っている。


「今日はこのまま寝ていなさい。明日は体調が良ければベッドから出てもいいと治療師も言っていたからね」


そう言うと、二人は代わる代わる私を抱き締めてから部屋を出ていった。


その後運ばれて来た食事を、おいしくいただいた私は、セシルによってまたベッド押し込まれてしまった。


「お嬢様。今日はまだ大人しくしていてくださいませね。」


セシルが食べ終わった食器を持って部屋を出ていくとすぐに、薬のせいだろう。私はすぐに眠りに落ちた。



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