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責務と贖罪

何故か

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投稿が遅れました


結局、アランは部屋の前で待っていてくれた。

扉も開けてくれた。やっぱりいい人。令嬢の扱いもスマートだし、きっとおモテになるのでしょうね。


ほどなくして王子様方が護衛騎士と共にやってきた。一気に部屋のイケメン密度が高くなる。

王子様方とアランと私の4人が円卓に座り、護衛騎士は壁際に立った。部屋付きのメイドがお茶を入れ終わり退室したところでレオンハルト王子が口火を切った。


「皆は『黒き厄災』についてどれぐらい知っている」


「『黒き厄災』は帝国に災いをもたらすと言われているものです。100年ほど前に発生しましたが、当時の王太子によって討伐されたと歴史書で読みました」


すぐにアランが答える。さすがですね。『黒き厄災』と呼ばれているものは闇の精霊王のことだ。


「そうだ。だが、黒き厄災は討伐できない」


「前々回は今から180年ほど前だった」


何度討伐しても、長い年月をかけて復活する。復活するたびに王族が倒し、民を守ってきたのだとヴェンデル王子が続ける。


「我ら王族は黒き厄災の復活を感知できるのだ」


「それでは、レオ様・・・」


言いかけたアランにレオンハルト王子は大きく頷いて見せた。


「そうだ。近いうちに黒き厄災が復活する。国民を守るため、黒き厄災を治めることは王族の責務だ。皆にはそれを手伝ってもらいたい」


レオンハルト王子の言葉に、アランと護衛騎士たちはより一層真剣な表情になった。


「黒き厄災を治め、民に大きな被害が出ないように備えねばならない。なにぶん100年前のことであるし、黒き厄災についてはわからないことが多すぎて、困難な仕事となるだろう。どうか、私たちに力を貸して欲しい」


二人の王子は座ったまま、私たちに頭を下げた。


「頭を上げてください。王族が責務とおっしゃるような大業に関わることは、大変な栄誉です。どれほどお役に立てるかわかりませんが、精いっぱいお手伝いさせていただきます」


アランの力強い言葉に、護衛騎士たちも大きく頷いていた。



王族の責務、大業とか、栄誉なんて言えば聞こえは良いかも知れないけど、ぶっちゃけ、精霊王を怒りに任せて殺してしまった5代目国王の尻拭いを、壮大な年月をかけて、子孫がやらされているだけじゃないか。

国民にしても当時も精霊に対しては何一つやましいところはないのに、とんだとばっちりだ。

長い歴史の中で、真実が正しく伝わらないことなんてたくさんあるだろう。

でもこれではあまりにも殺された精霊王と、エリーゼ姫が可哀相すぎる。


『王族の責務』なんて立派な言葉で正当化して欲しくない。誰も本当の目的を知らないなんてひどい話だ。

精霊王への理不尽な所業に対する『贖罪』なのに。


「王族の責務、だなんて」


この世界を恨んだ精霊王と、この世界を救おうとしたエリーゼ姫の気持ちがないがしろにされているのは悲しかった。


「サラ。一体どうしたんだ」


アランがぎょっとした顔で私を見ていた。


「なぜ泣く。今の話のどこに泣ける要素があったというのだ」


ヴェンデル王子がハンカチを差し出してくださった。

私は泣いていたのか。完全に無意識だった。気付いてみると余計に涙が止まらなくなった。

お借りしたハンカチで涙を拭いながら、大きく息を吐いて、心を落ち着ける。ヴェンデル王子が座っている私の隣に跪き、顔を覗き込んだ。


「事実を知っていなければならない人にその事実が正しく伝わっていないことが悲しいのです」


私は止まりつつある涙を堪えながら問いかける。


「黒き厄災がなぜ生まれたのか。なぜ王族が討伐するのか。なぜ討伐しても復活するのかご存知ですか」


私の問いは静寂に溶けていく。


「なぜ、なんて考えたこともないのでしょうか」


二人の王子は顔を見合わせてから答える。


「そうだな。理由は考えたことがなかった」


「では、お二人に祝福が与えられているのはなぜか、についても考えたことはないのでしょうか」


私の言葉を聞いたヴェンデル王子は勢いよく立ち上がり、私の肩を掴んだ。レオンハルト王子は椅子をひっくり返していた。


「サラフルール嬢。なぜそれを知っている」


ヴェンデル王子の勢いが強い。それにお顔が近いです。


「ほかに何を知っているのだ。知っていることを全て話せ」


レオンハルト王子がひたと私を見据えた。


「お話はいたします。が、確認したいことがございます」


「なんだ」


私は王族の肖像画が見たいと伝えた。


「第5代目国王陛下のご息女の肖像画を見たいのです」


「ふむ。肖像画の保管庫の鍵は宰相が持っているはずだ。ついて来い」


王子様方はスタスタと部屋を出て行った。


え。いいの?そんなに簡単に?

ついて来いってどこに?

あまりにも早い展開に、ハンカチを握りしめて呆然としていた私は、護衛騎士のローガンに促され、ようやく王子様方の後を追った。





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