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ルウの帰還と訪問者

雪が舞っています

冬本番ですね

状況も状況ですし

こんな日はこたつにみかん(笑)

抵抗する暇もなくセシルは私をベッドに押し込んだ。


「お嬢様。おやすみなさいませ」


静かに出ていくセシルを見送ってしばらくしてから、そっとベッドから抜け出す。


ルウが無事に帰ってくるように

バルコニーに出て森に向かって祈る。


眠るのは今日は怖くないけど

やっぱりルウがいないと寂しいから。


手の甲にキスをされたことを恥ずかしいと思っていたけれど、よくよく考えてみると、挨拶のようなものなのだから、恥ずかしがるなんておかしいのだと気が付いた。


お父さまとお母さまもハグしたり、私がいても頬や額にキスをしたりはいつものことだ。

そうは言っても、恋愛偏差値の低い私が

文化の違いに慣れるのは大変そうだと、ため息が出た。



昼間、『しばらくは大丈夫』って言ってくれたけど、しばらくアイツは私に近寄れないということなのかな。

『しばらく』じゃなくて、『ずっと』だったらいいのに。

お昼寝のときのことを思い返しながら、森をぼんやりと眺めていた。




「ふむ。これはなんと珍しい」


「ひゃぁっ」


すぐ傍で突然声がして驚き、変な声が出てしまった。



「誰?」


あたふたしている私の目の前にルウが現れた。


「サラ様!ただいま戻りました」


「ルウ!おかえりなさい。会いたかったわ」


手を伸ばしてルウを抱きしめる。


「精霊と仲が良いのは好ましいことだな」


ルウを抱きしめたまま、声がした方を見ると、深緑色長髪の超絶美人が立っていた。


声からすると男性のようだが、容姿があまりにも美しすぎて、何者か尋ねるのも忘れ、目が離せない。


「口を開けたままでは、虫が飛び込むかも知れぬな。その方の好物が虫だというのなら別だが」


私がぽかんしていると、その美人さんはくつくつと笑いながら私の頭を撫でた。


「我は精霊王。ルウの父だ。此度は、可愛い我が子に名づけをしてくれたこと、例を言うぞ」


目がつぶれるかと思う程ほど美しい笑顔で微笑みながら、その手は私の頭を撫で続けている。

思いがけない人物(?)の登場と

ルウが精霊の姫だったという事実に

頭が付いて行ってないが

とりあえず室内へ入っていただき、自己紹介をした後、椅子を勧めた。


「えっと、精霊王サマは何故こちらに?」


紅茶を入れてお出しし、精霊王さまの向かいに座った私は、とりあえず訪問の主旨を聞いてみる。


「ルウから話を聞いて、我が子に名づけをしたのがどのような者か会ってみたかった。思い当たることもあったのでな。我の妻も来たがったのだが、生憎今は精霊の里を離れられないのだ」


精霊の女王さまは精霊の里に魔力を補充し続けなければならないため、里から出ることができないらしい。

魔力はいろんな精霊が集めてくるので、女王さまは集まった魔力を里に行き渡らせているんだって。


優雅にティーカップを口元に運ぶ精霊王を見つめた。


この世界のイケメン比率が高すぎないか。

それとも私の周りだけなのか。

美意識がマヒしそうだなぁ


つまらないことを考えているのがバレないように、微笑みを顔に貼りつける。


一口飲んで、うまいなと呟き、音もたてずカップを置いた精霊王は私をじっと見つめた。


「其の方は実に面白い。これほど歪な者は見たことがない。」


歪?ってどういうことかしら。

私が首をかしげているのを見て、精霊王は愉快そうにははっと笑ってから、ルウに尋ねた。


「我が子よ。お前はどうやってこのような者を見つけたのだ。」


ルウは、精霊王に問われるまま、明日香の魂が入ったサラフルールが出来上がるまでの経緯を話した。


「なるほど取り換えっ子か。器と中身が一致していないから、これほどまでに歪なのだな」


精霊王はやはりそうかと独り言ちた後、手にしていたカップをそっと皿に戻した。


精霊に別の者と魂を取り換えられた子供のことを『取り換えっ子』と呼び、精霊に対し大変な不敬を働いたとか、酷い目に合わせた時など仕返しのために魂が取り換えられることがあるらしい。

取り換える魂は、人間に限らず魔獣や虫のこともあるとのことで、想像するだけでオソロシイ・・・


「歪な其の方が現れたから、なのか。それとも、解決のために其の方が現れたのか、まだわからんな。どちらにしても厄介なことだ」


ため息を吐きながら軽く首を振った精霊王は、私をまっすぐに見つめた。さっきまでの楽しそうな雰囲気は微塵もなく、真剣な表情をしている。


これは我がここに来た本来の目的でもあるのだ、と前置きしてから、精霊王はどこからともなく透明な水晶玉のようなものを取り出し、テーブルの上に置いた。


「其の方は『闇の王子と光の姫君』という童話を知っているか」


私は頷いて、部屋の隅の本棚から絵本を出し、テーブルに乗せた。


精霊王は絵本にそっと手を置いた。


「この物語は、ほぼ事実なのだ」と悲しそうな表情になった。








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