プロローグ
GUARD-それは、
世界各地に支部を持つ大規模な組織でありながらその存在を知る者はいない。
言わば「秘密組織」である。
GUARDの目的はただ一つ、
人類を守ること。
世界には様々な不思議が存在する。
現在の技術では到底理解し得ない道具や、
何かのきっかけで特殊な力を得た能力者。
そしていつどこで発生するかわからない怪奇現象。
そんな危険因子を確保、
もしくは抹消するのがGUARDの仕事なのだ。
GUARDのエージェントになるのは簡単なことじゃない。
鍛え上げられた精神と肉体、
そして情報を死守する強い意志。
人類を守るため、
より優れた人材が集結したこの組織こそが、
GUARDなのだ。
とまぁ前置きは置いといて案外組織内は和やかな雰囲気だ。
最初は堅っ苦しいお偉いさんばかりで全部が灰色の空間かと思ったが、
いざエージェントとしてGUARDに入ってみるとそうでもなかった。
薬の実験に失敗して頭が焦げてる科学者や、
これでもかというぐらい部屋を散らかしまくってる研究員や、
無駄に装備をパワーアップしていつあるかわからない戦闘に向けて日々トレーニングを続ける脳筋エージェントや、
武器の扱いが下手すぎてすぐ壊す機械音痴エージェントなど、
まるでサーカスを見ているようだ。
精神と肉体が鍛え上げられたとは何のことだったんだろうか。
しかしこんなことを言っている自分も実はGUARDについて知らなかったりする。
なぜ知らないかというと、
他の組織からのスパイだからだ。
GUARDの機密情報を盗み出し世界に漏洩、
そして最新の技術をコピーし我々が世界を征服するという計画だ。
我々の名は『SCULL』。
50年以上前にGUARDの創設者に潰されたマフィアが密かにその規模を拡大していき設立された組織である。
俺はその組織のスパイエージェントというわけさ。
時間があればGUARDが保管しているオブジェクトや能力者もSCULLに引き入れるつもりだ。
「さて…まずは情報を管理している場所を見つけないとな。しかしいくら秘密組織とはいえこんな巨大な施設今までよく見つからなかったな。中もまるで迷路だ。」
「おい、そこのお前」
なんだか位が高そうなエージェントに呼び止められてしまった。
今怪しかったか俺?。
「あ、えっと…先日エージェントとしてガードの試験に合格しここの支部に配属されたチャックです。よろしくお」
「見つけたぞ!すぐ来てくれ」
言葉を遮るようにしてそのエージェントは小型無線で応援を呼び次の行動で俺の体は得体のしれない機械で拘束されていた。
そのまま俺は気絶し目が覚めると尋問室にいた。
「ん…あ…あれ……ここは…」
「お前はSCULLのメンバーだな?本名はフェイン・ダグラス。家族構成は父と母、弟が一人で2年前に妹が交通事故で死亡している。ちなみに家族全員がSCULLのメンバーということも知っている。」
「な、なに言ってるんですか…俺がSCULLのメンバーなわけないでしょう?おかしなことい」
「残念だが我々に嘘は通用しない。」
また言葉を遮られた。
なんだか腹が立ってきたぞこいつ。
「嘘なんか言ってませんってば。試験だってちゃんと合格したんだし」
「あぁ、あの試験か。確かにあれはGUARDのミスだな"分かっていて"入れたんだからな。」
え?分かっていて入れただと?
「お前がSCULLのスパイだということはレベル5以上のエージェントにしか知らされていない。もしそれより下のレベルの職員に知られてしまったら混乱が起きるからな。」
さっきからこいつは何を言っているんだ…。
「SCULLの情報を引き出すためにわざと入れたんだよ。」
「わざと?なぜそんなことを。もし仮に俺が本当にSCULLのメンバーだったらそれって危険な行為なんじゃないですか?それこそ職員の混乱を招くと思うのですが…」
「あぁ、お前がスパイということを下の職員は知らないだけでSCULLが潜入してくることは全員知ってるぞ。」
はぁ!?どういうことだ…?
SCULLが来ることを分かっていただと?
はったりに決まってる。
「それはありえませんよ。」
「いや、本当だ。それを把握するためのシステムがあるんでな。」
「システム…?」
そんなシステムがあるなんて話し始めて聞いたぞ。
SCULLの上の連中はそんなこと言ってなかった。
嘘か…?いやだが。
「まぁお前はスパイだからどういうシステムかは教えられないがな!。」
元々敵だが本当に腹が立つなこいつは。
すると尋問室の扉が開き別のエージェントが入ってきた。
「あなたは喋りすぎなんですよエージェントマック。」
「あっ!エージェントXじゃないですかぁ!久しぶりですね!任務は終わったんですか?。」
「相変わらずですね…続きの尋問は僕が引き受けますので。」
「えぇ!?いいんですか…?いやぁどうにも私はこういう仕事が苦手みたいで…ハハ。」
腹が立つ糞野郎は照れ笑いしながら尋問室から出て行った。
最後の最後でキモイ顔を見せつけてんじゃねーよ。
「申し訳ない。余計な時間を取らせてしまったね。」
「いやぁいいんですよ。新人の洗礼儀式みたいなもんだと思っときますから。」
「それはよかった。ではさっさと終わらせようか。」
「え?」
瞬間、
体の自由が一気に利かなくなり身動きが取れなくなった。
「…!!!」
「さて、GUARDは君を無事に返すつもりはない。情報を引き出した後は記憶処理をしてここで生活してもらう。SCULLには帰れない、家族にも会えない。いいね?」
な、なんなんだこいつ!!!
くっそ…全然動けない…!!
二度と元には戻れないってことか?
そんなのごめんだね!!!
「頑張るのは勝手だが君の記憶から情報は回収させてもらった。尋問は終了したよ。」
スーッと力が抜けていき、
やっと体が動かせると思ったが、
そのまま脱力していき俺はその場で寝てしまった。
くそっ聞かされてないことだらけだったぜ…
あのクソ爺ども…覚えとけよ…
絶対に…
俺が…
…
「やぁ、君が新しく配属されたチャック君だね?僕はエージェントX君の監督官に任命された。これからよろしくね。」