天気は晴れのうち美少女
桃髪の美少女。
容姿端麗。眉目秀麗など、俺がどの言葉を頭の中で考え、揃えようとしてもそれらしい言葉は見つからない。
もしもだ。もしも、俺のベランダに裸の桃髪の美少女がいたとしたら、この世の男子は俺を羨むのかもしれない。
だが、憎むなかれ。
ていうか、桃髪ってなんだよ。
いや、ね。
俺もはじめ見たときは二度見どころか三度見しましたよ?
桃髪って俺がおギャーってこの世に生誕してから、このかた一度もありゃしない。
しかも、親がこの世界を救った人だとか、あの世界の住人だったとかで、そこから生まれた俺に会いに来たとかいうならわかるよ?
でも、ごめんなさい。うちの親は普通の一般人なんです。
もしかしたら、この美少女は向こうの世界の住人なのかもしれないとも思いもしたけれども。
けど──それでも、あの光景を。
まるで夢物語のようなことも信じずにはいられなくなる。
くそう。
嬉しい。
嬉しすぎる。
あんな出来事一生にはないと思った。
そりゃあ、なんたって元々そんな華々しいイベントはてんで発生しない灰色の高校生活を送っているんだ。いや、もちろん女が嫌いなわけじゃないし、そっちの趣味があるわけでもない。
けれど、全国のリア充になれない男たちにはわかる話ってだけだ。
まあ、だから俺には桃髪美少女っていう人間が輝いて見えて仕方がないわけですよ。
きっと残りの高校生活こんな出来事は一生ないだろうなぁ。
あの夏休みが終わりかけてた頃、そんなことは俺は考えさえもしなかった。
そう、あの扉を開けてしまうまでは──。
「───しまったああああ!!」
うっかり。
ほんのうっかりである。
夏休みが終わりかけてた頃、朝に布団を干したことを忘れ、昼寝をしたら、そのまま寝過ごしてしまい、気づいたときには夜8時を回っていた。
急いで俺はベランダに駆け寄り、扉を開けたのである。
そこにだ。
悲鳴が聞こえた。
どう考えても女性の声だ。
どこからか女性の叫び声が聞こえてくる。
疑問に思い、左右、ベランダから下へ覗くがそれらしき声の主は見当たらない。
気のせいかと思ったが、女性の声は大きくなるばかり。
「まさか……」
反射的にそう呟いた。
そのまさか、上を見上げると女性がここから数メートル上まで落下してた。
「なんじゃこりゃああああ!」
つい俺も叫んでしまった。
マズい。
なんだこの状況は。
たぶんアニメとかで見たことはあるけど、普通現実に起きないだろこれ。
しかし、状況は考えているだけで刻一刻とその声の主は近づいてくるので俺は叫びながら彼女の落下地点でキャッチする構えをとる。
よく見ると近づいてくる女性はシーツ一枚の真っ裸で泣いていた。
俺は女子だという事実にあためふたきながら、どうにかキャッチしようと試みた。
だけれど、思いとは裏腹に女性の体をキャッチしたとおもったら、後から降り注ぐかかとに気づかず意識を失ってしまった。
倒れて意識を失いそうな今に彼女は俺に近づいてなにか叫んでいたが、届かず俺は意識を失った。