第3章10 見学
大変長らくお待たせしました。
[10月23日 08:15時]
〈アマギ共和国 首都:桔梗 桔梗港 フェンリル派遣軍簡易指揮テント〉
フェンリル軍GDU1stIB MRMU隊長 七海優香 TACネーム:フェアリー コールサイン:シルキー1-1
「各部隊の展開状況は?」
私は集合時間になる前に、派遣軍の指揮官達と簡単な会議を行っていた。
「特殊部隊の上陸は完了しています。現在各所でSOT-Aとフォース・リーコンが共同でデータ収集を行っています。」
SOT-Aの隊長のレナ・グリード中佐が報告した。
「SOT-Aにはいつも迷惑かけてるわね。」
SOT-A(SpecialOperationTeam-Alpha)は現実世界ではアメリカ陸軍グリーンベレーに属し、作戦遂行に必要不可欠なRISTA、つまり偵察(Reconnaissance)、情報(Information)、監視(Surveillance)、標的捕捉(TargetAcquisition)を行うグリーンベレー内の大隊支援中隊(BSC:BattalionSupportCompany)の部隊で、MOS区分|(MilitaryOccupationSpecialties:軍事的職業の専門区分)では『18』シリーズ|(特殊部隊)でなく『35』シリーズ|(情報)だが、特殊部隊と行動を共にする事が多いため、特殊部隊員と同様に、空挺降下、HALO/HAHO、レンジャー、パスファインダー(降下先行誘導)、外国語、ヘリコプター強襲、ファストロープなどの各種訓練を終了しており、戦闘能力は非常に高い。
「いえ。これが私達の仕事ですので。むしろ、もっと私達をこき使ってください。」
「ありがとう。海兵隊はどう?」
メディナ准将が報告を始めた。
「海兵隊は既に武装中隊とDAP|(DirectActionPlatoons:直接行動小隊)が上陸完了し、軽装甲偵察中隊は揚陸中です。1部は現地での訓練もかねてギルドの依頼を受けています。」
続けてメディナ准将の副官のカレル・ローランド大佐が報告を始めた。
「機甲戦力ですが、道路が我々の戦車の重量に対応出来ませんので、戦車の揚陸は行われていません。代わりにストライカーやLAV-25、機動戦闘車などの火力支援車両の揚陸を行っています。」
「道を履帯でボロボロにするわけにもいかないし、しょうがないわね。アンヴィルには悪いけど、戦車の出番はまだ先みたいね。現状はこのままの調子でいいでしょう。向こうの動きがわからない以上、部隊も動けないし、今は各自地理の把握と情報収集、現地住民との友好関係を築いて行くように。」
「「「「「了解しました。」」」」」
会議が終わり、テントを出て港の入口に向かった。
入口では海兵隊軽装甲偵察中隊のLAV-C2 1両、LAV-25 2両と海兵隊員、アマギ共和国国防海軍陸警隊の隊員達が警備を行っていた。
「コーエン少尉。お客さんは到着した?」
入口に止められているLAV-C2の中に入り、小隊長のリー・コーエン少尉に声をかけた。
「ああ!お客さんならさっきヘレンさんがそこの建物に連れて行きましたよ!トンプソン!案内してやってくれ!」
コーエン少尉に呼ばれ、近くにいた海兵隊員が駆け寄ってきた。
「こちらです。着いて来てください。」
「ありがとう。」
私はコーエン少尉にお礼を言い、警備任務に就いている隊員達に敬礼をした後、トンプソン特技兵に続いて近くの建物に入った。
トンプソン特技兵にお礼を言った後、案内された2階の会議室に入った。
「以上が甲板上での注意点になります。皆さんの安全の為にも、今言った事と案内員の指示には絶対に従ってください。」
会議室の中では母さんがみんなを相手にエンタープライズの広報用パンフレットを使って注意説明を行っていた。
「甲板の見学終了後、海軍航空隊所属機による展示飛行と、体験搭乗を行います。その後はエンタープライズの飛行甲板上にて立食パーティーを行います。」
「立食パーティー?!」
立食パーティーという単語に霊夢がビクッと反応した。
「それっていわゆる食べ放題ってゆうやつかしら?」
「ええ。いくらでもどうぞ。」
「やった。」
「食後はエンタープライズ艦内の見学を行い、17時にエンタープライズの艦載機にて桔梗港に停泊する巡洋艦やまとに帰還します。以上で説明を終わります。ではほうしょうに行きましょう。私はこのあと会議がありますので、後は優香について行って下さい。」
母さんはそう言うと書類の入ったAWACSとF-15Jがプリントされたクリアファイルを手に、私にウインクをして部屋を後にした。
「それじゃあみんな私に着いて来て。まずはやまとに行きましょう。」
私は6人を連れて部屋をでた。
建物を出るとにとりさんがLAV-25を興奮して指さした。
「ねえ!あれってどういう車?昨日見たのとかなり違うけど?」
「あれはLAV-25っていって、うちの歩兵戦闘車の1つよ。」
「歩兵戦闘車?戦車とは違うの?」
「歩兵戦闘車は戦車と違って歩兵の輸送能力、装甲、20mm以上の火砲、戦術機動力を兼ね備えている装甲車両の事ね。」
「戦車と輸送用の車にわけるんじゃだめなの?」
「昔はそれでも良かったんだけど、輸送車が直接戦闘に巻き込まれたり、攻撃に晒される事が多くてね。だからこいつは自信の装甲で歩兵を守り、目標地点まで高速で移動し、歩兵を展開させた後にそのまま歩兵に随伴して火力支援も行う便利な車両よ。まあその分値段も高いけどね。」
「なるほどぉ。」
私達が見ているのに気づいた銃座の隊員が敬礼をしたので、素早く答礼をした。
「さて、それじゃあ今回の主役の海軍を見に行こうか。」
霊夢達を連れてオスプレイの発艦準備をしているほうしょうに向かった。
「おぉー。上から見た時も思ったが、すげーデカさだな。」
帆船や、昭和レベルの軍艦が並ぶ中に、ステルス性を考慮した角張った船体のイージス駆逐艦と全通甲板を持つほうしょうは非常に目立っており、港に見学に来る民間人も多く見られた。
「まあ、ほうしょうは移動基地みたいな物だしね。上でヘリを待たせてるしさっさと行きましょう。」
「ここにいる3隻は見学出来ないんですか?」
「彼女達は今色々と忙しいからね。それにこれから向かう先にはほうしょうよりデカイ艦がいるわよ。」
「あれよりデカイのか!?すげーな。」
「楽しみにしてるといいわ。さ、行きましょう。」
〈フェンリル海軍派遣第1艦隊遠征打撃群 旗艦 いずも改型軽空母2番艦 ほうしょう〉
「あ、そうだ。これから艦に乗る訳だけど、艦内は急な階段とか配線とかで足元が結構危険だから、文さんと椛さんは靴を変えて欲しいんですけど。流石に高下駄のままはちょっと…。」
私は予め用意しておいたスニーカーを2足差し出した。
「良いですよ。」
椛さんはすっと下駄を脱ぎ、私の渡したスニーカーを履いた。
「?文さんどうかしました?」
文さんが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「い、いえ。……。あの、絶対履かないとダメですか?」
「はい。万が一にも怪我されたら困りますので。お願いします。」
「うぅ。わかりました。」
しぶしぶといった様子でスニーカーに履き替えた文さんは、
「「「「「「……………。」」」」」」
身長が縮んでいた。
「……………。ぷふ。」
誰かが小さな笑いをこぼしたのをきっかけに、
「あはははは!文!あんた実はそんなに小さかったの?」
「いっつも高下駄履いてるし、飛んでる事の方が多かったから全然気づかなかったぜ!」
「ぷ…ふふ。文さん……。」
「だ、大丈夫ですよ…文さん。ぷ、きっとまだ伸びますよ。」
全員が笑い出した。
「だから嫌だったんですよ!うぅぅ。」
「まぁ落ち着けよ。ちめぇ丸。」
「「「ぶふ!」」」
「ちめぇ丸言うな!」
「ま、魔理沙。そのくらいにしてあげて。文さんも。うちには文さんより小さい隊員もいっぱいいますし。強さ=身長じゃないですよ。」
(威厳とカリスマは間違いなく減るけど。)
心の中の事は秘密にしつつ私は文さんを元気づけた。
「本当ですか?」
私より背の低くなった文さんは涙目+上目遣いで私を見ていた。
「(可愛い…)ええ。上でヘリが待ってますし、行きましょう。」
落ち込んでいる文さんを励ましながら甲板に向かった。
[09:35時]
〈アマギ近海 フェンリル海軍派遣第2艦隊 旗艦 ジェラルド・R・フォード級航空母艦3番艦 エンタープライズ フライトデッキ〉
オスプレイがエンタープライズに着艦し、後部ランプが開いた。
《お客人の皆さん。CVN-80エンタープライズにようこそ。お降りの際は足元にご注意ください。》
巨大な空母と大規模な艦隊に唖然としている5人を連れて甲板に降りた。
「フェアリーのご友人の皆様。ようこそジェラルド・R・フォード級原子力航空母艦3番艦、エンタープライズへ。私は艦長兼第2派遣艦隊司令のリリア・ハミルトン大将です。」
私達がオスプレイを降りると、艦長、と整備士長ほか数人の隊員とエンタープライズが海軍式の敬礼をして出迎えていた。
「今日はよろしく。みんな。」
「いえ。私達の事を理解してもらう為に行動するのも私達の仕事の内ですから。それじゃあまずはこの艦の事と、甲板の設備を見学し、その後は体験搭乗と行きましょう。ついてきてください。」
リリアの先導で甲板上を歩き始めた。
「先日フェアリーから聞いたのですが、この中にアマギ共和国国防海軍の艦艇の建造に携わった方がいるとか。」
「はい!私です!」
にとりさんが元気よく手を上げた。
「ではにとりさん。航空母艦と他の軍艦の最大の特徴は何かわかりますか?」
「はい!それはこの全通甲板と航空機の運用能力だと思います!」
「その通り。この国では自力で飛ぶ人も多いと聞きます。実際に飛べる方はこの中にいますか?」
5人全員が手を上げた。
「全員ですか。…まさかこの国の人全員が飛べる訳じゃ?」
「「「「「それはないです。」」」」」
5人が一斉に否定した。
「あ、そうなんですか。こほん。気を取り直しまして。私達のいた世界にはもともと自由自在に空を飛ぶ事が出来たのは鳥などの1部の動物だけでした。ですが、空を飛ぶ事を諦めきれなかった私達の先祖は、試行錯誤と多くの失敗と犠牲を払い空を飛ぶ術を手に入れた。それが飛行機であり、それを世界中で有効活用する事が出来る存在。それが空母です。」
「「「「「おぉー。」」」」」
「このエンタープライズには6000人程の人員が乗っており、合計で75の航空機が搭載されています。それだけでも私達の世界では小国の空軍力を制圧出来ると言われています。」
甲板を半周し、艦橋の近くに集まった。
「艦長より各員アバランチの発艦準備を開始せよ。」
リリアは帽子に取り付けられていた無線で指示をだすと、
[ガコォン]
3機のエレベーターが起動し、3機のF/A-18Fが甲板に上がってきた。
「そして、これが我が海軍の主力艦載機の1つ、F/A-18F艦上戦闘機です!エンタープライズにはF/A-18F以外にもF-22C、F-35といった戦闘機が搭載されています。その中で2人乗りの戦闘機はこのF/A-18Fだけです。それでは今から皆さんにはこのF/A-18Fに体験搭乗していただきます。これから具体的な手順と注意点を説明致しますので、私に着いてきてください。」
リリアが5人を連れて艦内に入って行くのを見届け、私は1人ハンガーに向かった。
[10:50時]
ハンガーで今日の飛行を担当するアバランチの隊員達に挨拶をし、あかぎから移乗させておいたAF-Xの最終確認と着替えを終えて甲板で30分程待っていると、耐Gスーツを着た5人が現れた。
「早苗はさすがWWOでパイロットやってただけあって様になってるわね。」
「私の場合、パイロットはパイロットでも戦闘機じゃなくてロボットですけどね。戦闘機の操縦なんてできませんよ。というか優香さんも一緒に飛ぶんですか?」
「もちろん。一緒に飛ぶ為にあかぎから私の機体を持って来たんだし。さてそれじゃあ始めましょうか。リリア。お願い。」
「はい。それではまず、パイロットの紹介に入りますね。今回のパイロットを務めるのはフェンリル海軍特殊作戦航空団空母エンタープライズ航空隊第2攻撃飛行隊アバランチ隊隊長、フレディ・デュラン大尉。同隊副隊長のフェイル・ローリス中尉、同隊3番機、セシル・ハリス中尉、4番機、ロベルト・マルヴェッツィ中尉。5番機、リタ・マルティノーリ中尉。以上の5名が責任を持って飛行を行います。」
紹介された5人が1歩前に出て敬礼をした。
「「「「「よろしくお願いします。」」」」」
「魔理沙さんはデュラン大尉、早苗さんはローリス中尉、椛さんはハリス中尉、霊夢さんはマルヴェッツィ中尉、文さんはマルティノーリ中尉の機体に搭乗して下さい。では皆さん。よいフライトを。」
5人のパイロット達はそれぞれ自分の後席に座る人を連れて自分の機体に歩いて行った。
私は一番近くにいた魔理沙さんとデュラン大尉に目を向けた。
「魔理沙さん。今日はよろしくお願いします。」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「ははは!緊張なさらずに。今日はただの体験、遊覧飛行みたいなものです。」
デュラン大尉が緊張をほぐすように明るく言うと、
「隊長!その娘が可愛いからってヘラヘラし過ぎですよ!」
「機内でナンパなんてしないで下さいよ!」
「そんな!隊長俺というものがありながら!」
「「「ハハハハハハ!!」」」
甲板上に駐機してあったF/A-18Fの確認をしていたアバランチの隊員達がデュラン大尉に言った。
「うるせぇ!お前らも出るんだからさっさと準備しろ!それとレヴィン!俺がゲイに思われるから冗談でもやめろ!」
「すいません!ははは!」
アバランチの隊員達の騒ぎ声が響いた。
「相変わらず騒がしいわね。」
あまりに騒がしいかったのか、飛行長の声がスピーカーから響いてきた。
《エアボスよりアバランチ。貴様等さっさとせんか!全員後で俺の所に来い!みっちりしごいてやる!》
《艦長よりアバランチ各位。あまり醜態を晒すようですと、どうなるかわかってますよね?》
拡声器から怒鳴り声と柔らかいが底冷えするような声が響き、アバランチの面々がてきぱきと動き出した。
普通の魔法使い 霧雨魔理沙
昨日霊夢の紹介で会った七海とか言う異世界人達の艦に招待され、色々あってF/A-18とか言うものの中にいた。
《魔理沙さん。これから発進します。注意事項は覚えてますか?》
私の前の席に座るデュランと言う男が言った言葉がヘルメット越しに聞こえて来た。
「おう!大丈夫だぜ!それよりこんなでかい金属の塊が本当に飛べるのか?いやさっき実際に似たものに乗ったんだが…イマイチ実感がわかないと言うか…。」
《それは保証しますよ。俺はこいつに乗って長いですからね。ビッグEコントロール、スノウ発艦準備完了。》
《こちらビッグEコントロール。スノウ発艦を許可する。よいフライトを。》
《これから発艦します。目の前の手すりをしっかり握って下さい。》
キーンという甲高い音と振動が大きくなっていった。
「わ、わかったぜ!」
目の前の手すりをしっかりと握り、周囲を見渡した。
《左手前方に人がいるのが見えますか?》
「ああ!見えるぜ!」
《彼らに敬礼して下さい。》
「こ、こうでいいのか?」
右手を額に当てるポーズをとった。
《それでは発艦します。》
「お、おう!ぐぅ!」
返事をした直後、急激な加速で体がシートに押し付けられた。
《スノウ発艦。》
《こちらビッグEコントロール。貴機の発艦を確認した。高度制限を解除する。残りの機が発艦するまで上空待機せよ。》
《ウィルコ。魔理沙さん上がりましたよ。》
「うぇ?お、おおおぉぉ!すげー!本当に飛んでる!」
声をかけられて目を開けると確かに空を飛んでいた。
《ブリザード。続けて発艦せよ。貴機の発艦を許可する。》
《ラジャー。早苗さんしっかり掴まってください。》
《はい!》
《右下を見てください。早苗さんの乗った機体が上がって来ますよ。》
言われた通り右下を見ると同じ機体が勢い良く射出されていた。
《ブリザード発艦した。》
《ブリザード、高度制限を解除。アバランチ1と合流し、上空待機せよ。》
《了解。》
早苗の乗った機体は私達の機体の左後ろの位置についた。
《ブリザード、アバランチ1と合流。》
《ビッグE了解。コントロールよりセラック。発艦を許可する。》
《了解。椛さん行きますよ。………大丈夫ですか?》
《だ、だだ大丈夫です。》
《それじゃあ行きますよ。》
《や、やっぱ待っきゃぁぁぁぁ!》
椛の悲鳴が響いた。
「おいおい。大丈夫か椛?」
《凄い悲鳴でしたね。》
早苗の余裕そうな声が聞こえた。
《ぎゃ、逆に聞きますけど!なんでこんなものに平気で乗ってられるんですか!》
《セラック発艦した。》
《セラック。アバランチ1、アバランチ2と合流せよ。コントロールよりライム|(Rime:霧氷)発艦を許可する。》
《了解。霊夢さん行きますよ。》
《大丈夫よ。ぐっ…。》
《ライム発艦。》
《ライム、アバランチ1、2、3と合流後上空待機せよ。アイシクル発艦を許可する。》
《了解。行きますよ。》
《はい!》
《アイシクル発艦しました。》
《アイシクル、アバランチと合流せよ。ゲスト全員の発艦を確認。フェアリー発艦を許可する。》
《了解。》
文の乗った機体が射出された後、優香の乗った機体が発進し、編隊に加わった。
《お待たせ。それじゃあ近くを飛んで周りましょうか。》
《優香さんの機体は私達の乗ってるのと違うけど、どういうやつなんだい?》
にとりが質問した。
《私の機体はうちの技術研究本部が研究中の第6世代戦闘機の実戦試験機にアメックスの魔術師と魔法使いが魔術と魔法で強化を施した特別機よ。コストがかかり過ぎるからこの子1機しかないけどね。》
《だから魔力を感じるのか。ちなみにいくらくらいするの?》
《空母の周りにいる艦|(アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦)見える?》
《見えるよ。》
《あれ1隻建造出来る|(約1500億円)。》
《《《「……え?!」》》》
「な、なぁにとり。私はよく知らないけど軍艦とかってものすげー高いんだろ。」
《そ、そりゃあそうだよ。うちの会社が建造したマリーゴールド級はミスリル貨40枚|(40億:第2次大戦の米軽巡クリーブランドが3150万ドル=約31億円)くらいするよ。だから少なくともそれ以上はするんじゃないかな?あの優香さん、具体的なお値段はいくらくらいで?》
《こっちの値段で言うと、だいたいミスリル貨1500枚くらい。》
《《《「…………………はぁ?!」》》》
「そんだけお金があれば一生遊んで暮らせるぜ…。」
《それどころか六世代くらい持つわよ。》
《ちなみにさっきまでみんなが乗ってた空母はミスリル貨4万枚|(ニミッツ級原子力空母:3兆650億5800万円)くらい必要よ。》
《《《「………。」》》》
文字通りの桁違いに言葉が出なかった。
《…もうこの話やめましょう。圧倒的な差に悲しくなってきたわ。》
いっつも金欠で喘いでる霊夢が呟いた。
「それにしても、最初はびっくりしたけど慣れるとどうってことないな。もっと刺激のある動きとか出来ないのかねぇ?」
音はうるさいが、ヘルメットのお陰でかなり軽減されてるし、普通に飛んでいるだけなので若干飽きてきていた。
《ほほう。刺激が足りないと?どう思うデュラン大尉?》
《お客さんを飽きさせてしまうとは。これはもっと刺激のある事をやらないといけませんなぁ。》
「あ、いや。別に無理してやらなくてもいいんだぜ?」
雑音混じりでもわかるニヤついた声になにやら不穏な空気を感じた。
《いやー。正直私も退屈だったんだよね。という訳でデュラン大尉。ダンスを踊ろうか?》
《喜んで。エスコートさせていただきます。》
「あの、私の話聞いてる?」
《魔理沙さん。》
「はい?」
《気を失わないでね。フェアリー、ブレイク!》
先頭を飛んでいた黒い機体が右下に高速で移動した。
《魔理沙さん。しっかり掴まっていて下さい!アバランチ各員は所定のコースの飛行を続け空母に帰投しろ。スノウ、ブレイク。》
「ちょ、ちょっと待っ!のわぁぁぁぁ!」
視界が反転し、体が座席に押し付けられた。
《まずは…クルビットでもやりますか。》
「な、にそれぇえぇぇ!」
直後に感じる強烈な力と重力を最後に、私の視界が暗くなっていった…
「……沙。さっさと起きなさい魔理沙。」
霊夢の声が聞こえ、重い瞼を開けた。
「う…ん。ここはどこ…私は誰?」
「優香~。魔理沙はもう一回行きたい見たいよ。」
「ちょっと待てぇ!もう勘弁してください!お願いします!」
「やらないわよ。ごめんね。やり過ぎたわね。」
「んあぁ。別に良いよ。それよりイマイチ覚えてないんだけど、どうなってたんだ?」
私が周りの奴らに聞くと、
「いやー凄かったですよ!物凄いスピードで飛び回ってて、いきなり宙返りをやったり、言葉で説明出来ないすごさがありましたよ!明日の一面はこのネタで決まりですね!ありがとうございました魔理沙さん。」
文が興奮気味に言った。
「そんじゃあお礼になんかプレゼントしてくれよ。そういえば椛と早苗はどこだ?」
「椛でしたらいま早苗さん達の付き添いでトイレに行きましたよ。」
「トイレ?」
「ええ。どうやら酔ってしまったようですね。酷い有様でしたよ。」
周りを見渡してみるとカラフルな服を着た作業員達が雑巾で甲板を拭いていた。
「うへぇー。たまにあるけどやっぱ嫌だなぁ。」
「昨日もんじゃ焼きなんて食べるんじゃなかった。」
「言うな。ルイス何でお前は平気そうなんだ?」
「だってこれさっきまであのケモミミ美少女の中にあったんだろ?俺達の業界ではご褒美だよ。」
「うーわ。まじかお前。引くわ。」
「結構長いことお前と一緒だったけどドン引きだわ。」
「キモッ。」
「そこまで言うか?!」
「「「言うわ!」」」
作業員達はバケツを片付けに去っていった。
「なんというか、あんた達本当に変わってるな。」
私は優香に話しかけた。
「何が?」
「私の知ってる軍人はもっと高圧的な奴等ばかりだったからな。女も少ないし。」
実際街では稀に軍人と住人との間でトラブルが発生していた。
「でもここの奴等は皆友好的で親切だし、女の隊員もいっぱいいる。」
「トップが私見たいな性格って事も大きいけど、高圧的に接する事で発生するメリットなんて皆無に近いからね。せいぜい相手がこっちの命令を聞いてくれるくらいかな。どこの世界の軍隊も、基本は超現実主義の塊だからね。無駄で非効率的な事は嫌いで、楽で効率的なのが好き。高圧的に接して妙な軋轢を生むより、友好的に接して協力体制を作る。少なくとも私はそう言う考えでいるわ。ま、私達見たいな組織の人間は平時は国民に嫌われてるくらいでも良いんだけどね。」
「そりゃまたどうして?」
「簡単な話よ。軍人がもっとも必要とされる時っていつかわかる?」
「え?そりゃあ戦争の時だろ?」
「そう戦争の時。つまり国家が非常事態に陥てる時よ。私の故郷の総理大臣が、昔士官学校の卒業式の時に、卒業生達にこう言ったの。君達は在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく職務を終わるかもしれない。きっと非難とか叱咤ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。しかし、君達が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたいってね。」
「なるほどなぁ。言われてみるとその通りだよな。普段私達が生活しているうえで軍隊の有り難みを感じる事なんてそうないしな。」
「それが普通なんだよ。っとそんな事話してると戻って来たわね。」
優香が手を振ったので、目を向けると青い顔をした椛と、椛を支える早苗とリリアさんが歩いて来た。
「色々トラブルもありましたが、皆さん楽しんでいただけましたか?この後は食堂で昼食になりますが、まずは着替えをしましょう。」
「食べ放題!早く行きましょう!」
リリアさんの言葉に霊夢が興奮したように答え、駆け足で艦に入って行った。
「ちょ!霊夢走ると危ないぜ!」
私も急いで霊夢について行った。
[12:20時]
〈ジェラルド・R・フォード級航空母艦3番艦 エンタープライズ ダーティーシャツ〉
七海優香
「おお。凄いな!」
エンタープライズに複数ある食堂の1つには既に多くの乗員が食事を楽しんでいた。
「ここはエンタープライズに複数ある食堂の1つで、通称ダーティーシャツやダーティオフィサーズメスと呼ばれてます。」
「ダーティーシャツ(汚れたシャツ)?なんか食堂にふさわしくない名前だな。」
「ダーティーシャツは、飛行服やつなぎ、作業服などのルーズな服でも入れるという意味です。エンタープライズには士官用と下士官用に複数食堂があるのですが、ここはその中でも航空団や整備班の士官達が集まる食堂です。現にあちらには戦闘機隊のパイロット達が集まっていますし。その隣にいるのは順番に電子攻撃飛行隊、早期警戒飛行隊、対潜ヘリコプター隊、誘導士官達ですね。」
「ほー。よくわからんがいっぱいいるんだな。」
「そんな事はいいから早くいただきましょう。もう空腹で倒れそう。」
「ではお好きな席でお好きな料理をどうぞ。」
「よし食べるわよ。ここで1、いや2週間分は食べて置かないと。」
「霊夢…。」
「霊夢さん…今度山菜とか持っていきますね。」
霊夢は魔理沙、早苗と一緒に真っ先に列に並び、
「あのー。ここの軍人さん達にインタビューとかしても大丈夫ですか?」
「業務に差し支えない程度でしたらいくらでもどうぞ。」
「よし!さあ椛行きますよ!」
「先にご飯食べましょうよ。お腹減りました。」
「食事なんていつでも出来ます!が、取材は今しか出来ないんです!まずはあそこで喋ってる…ぱいろっとの所に行きますよ!」
文さんはメモ帳を片手に椛さんの腕を引っ張って航空隊のパイロット達の所に歩いて行った。
私はみんなに続いて食堂に入り、メニューに目を向けると『本日のメニュー:シェフのおすすめ』と書かれていた。
「お!今日はシェフのおすすめメニューの日だったのか。」
「はい。昨日艦魂の皆さんが釣り大会をやってまして。その時に新鮮な魚がいっぱい手に入ったんですよ。1部の方々は非常に個性的なものを釣り上げましたけどね。」
「………今度は何を釣ったの?」
「モンスーアさんがリュウグウノツカイとか、あとあきづきちゃんは何故かカニ釣り上げてましたし、ヴェラ・ガルフさんはイタチザメと格闘したらしいですよ。」
「へぇ。スーアの釣り運はもうこの際置いておくとして、エンターは何を釣ったの?」
私はいつの間にかリリアの横に立っていたエンタープライズに声をかけた。
「私はノドグロとカワハギ、あとハタハタとか釣ったよ!美味かった!」
「良かったわね。」
私は手袋を外して、エンターの頭を優しく撫でた。
「えへへ。そうだ!聞いてよ!あかぎも一緒に釣りしてたんだけどね!あいつ何か変な魚つったんだよ!なんていうか、オジサンみたいな魚だった!」
「オジサンみたいな魚?」
「そう!めちゃくちゃブサイクだった!確か写真が…あった!これ!」
エンターはスマホを操作し、1枚の写真を見せてくれた。
「これは…確かにオジサンっぽい。」
写真には乳白色で、たるんだ頬や鼻のような物が目立つ非常にブサイクな顔の魚が写っていた。
「でしょー!あいつのこの魚釣った時の顔ったら傑作だったよ!」
「ほう。面白そうな話をしているじゃないかエンター。」
ケラケラと笑うエンターの頭が突然むんずと掴まれた。
「あ、あかぎしゃん?いつからそこに?」
「たった今だ。さっきまで井上班長とファーナム班長の2人とパイロット達の機体の扱いについて話していたんだ。」
ほれとあかぎが差した方を見ると、見た目小学生のあかぎ整備士長と40代のいかにもベテランという風貌のエンタープライズ整備士長の2人が一緒の席でなにやら話し合っていた。
「アバランチの連中からもっと機動性を上げて欲しいと言われたんだが…どう思う。」
エンタープライズ整備士長のエリクソン・ファーナム大尉が机に置いてあるタブレットを見ながら言った。
「これ以上ですか?うーん…これ以上上げるとG-LOCの可能性が上がり過ぎますし、いくら特空使用に生産されたF/A-18とはいえ機体が持たないです。うーん…。それでもやるならウイングと制御システムを調整するとかどうです。」
あかぎ名物整備士長の井上大尉がデザートなのかアイスを食べながら言った。
「だよな。変えるならどこのやつが一番だ?」
「当然日本です!と、言いたい所ですけど実はですね技本が開発した新システムを知ってるですか?」
「ああ。フェアリー達の乗ってる戦闘機に積まれた魔術とかを利用した試験装備だろう?」
「近々あれが民間にも開発出来るようになるそうですよ。」
「だが、あれは高度な魔術を使える者にしか作れないんじゃなかったか?そのせいでコスパが最悪で1部の実験機にしか積まれていないと聞いたが。」
「当然性能を落として使える魔術師の数を増やすらしいです。こちらの大陸にある研究機関や企業と技術提携の契約を結んで、こちらは技術をあちらは魔術をそれぞれ得ると言う計画らしいです。どことやるかは近いうちに決めるらしいです。」
「そんな話どこで?」
「むふー。私には経産省や科学技術庁、技術研究本部などなどにお友達がたくさんいるのです!」
2人がそんな事を話していると、
「あの!今の話詳しく聞かせてもらえないですか!?」
にとりさんが息を荒らげて席に座った。
「どちら様です?」
「あ!申し遅れました!私、この国で開発交易会社を経営してる河城にとりです。アマギ国防軍が使用する軍艦とかの兵器を開発したり、民間で使う機械を作ってます。」
「とすると、あんたが車とかを?」
「はい!私が設計しました!」
「へぇ〜。すごいです。私は航空母艦あかぎ飛行隊整備士長の井上遥大尉です。」
「俺は航空母艦エンタープライズ整備士長のエリクソン・ファーナム大尉だ。よろしく。」
にとりさんは同じエンジニアの2人と話始めた。
「お、おもしろそうな話してるし私も行って来るね!じゃねあかぎ!」
走りだそうとするエンターの頭を掴んだまま、
「ぜひもっと聞かせてもらいたいなぁ。ちょぉっと向こうに行こうか。安心しな
痛くしてやるから。な?」
エンターを笑顔で持ち上げた。
「いやー!そこはせめて痛くしないとか言おうよ!」
「大丈夫だ慣れると気持ちよくなってくるってネットで言ってた。」
「それは特別な訓練受けた人だけだよ!やめてぇ!」
エンターの悲鳴を残して2人は食堂を出ていった。
[18:00時]
〈アマギ共和国 桔梗港 フェンリル海軍ミサイル巡洋艦 やまと〉
「はあ〜。無事終わって良かった。」
見学が終わり、私はやまとの自室でゆっくりとくつろいでいた。
「フェアリー!失礼します!」
扉が突然開き、メディナ准将が入ってきた。
「ちょっ!どうしたの?!」
「これを見てください!」
メディナ准将がタブレットを私の机に置いた。
「これは…監視カメラの映像?」
「はい。これはやまとの監視カメラの映像です。」
タブレットにはやまとの艦内の一角の映像が映し出されていた。
「今の所不審な事はないけど…ん?」
「気づきました?」
「ええ。この女の子は誰?」
カメラの映像にはフリルの着いた服を着て、帽子をかぶっている少女の姿が映っていた。
「つまり私達の警備体制を突破したって事よね。」
「はい。ですがこれを見てください。これはやまとの食堂の映像です。」
クルー達が食事をしている映像の中に、件の少女がやはり映し出されていた。
「ちょっと待って。この子普通にご飯食ってるんだけど?と言うかどうして誰も気づいてないの?」
少女普通に列に並んで、普通にトレーに料理を載せて、普通に食事を終えて、普通にトレーを片付けて食堂を出て行った。
「この後も艦内を歩き回った後、特に何もせずに出て行来ました。出て行くまでの間複数の隊員が彼女を目撃しているはずなのですが、誰1人として覚えている者はいませんでした。」
「はぁ?そんな馬鹿な…某ネコ型ロボットの石ころ帽子でもかぶってたって言うの?」
「フェアリー、彼女は妖怪や亜人のいずれかではないでしょうか?」
「でしょうね。能力は認識阻害とかその辺でしょう。この手の相手にどれだけ役に立つかはわからないけど、警戒レベルを上げて置いて。」
「了解です。失礼しました。」
メディナ准将が部屋を立ち去り、私はもう一度タブレットの画像を見た。
「認識阻害系の能力…か。対応策を考えて置かないといけないわね。小説とかだとこういうのどうやって対応してたっけ?それにしても…結構可愛い。どうにか平和的かつ友好な手を探さないと。」
私はスマホで小説やアニメで似たような能力の対応策を調べていたが、いつの間にか眠ってしまった。
お待たせしてしまい申し訳ありません。1度書き直したり、学校の成績がやばい事になっていたりと色々あり遅れてしまいました。
今回の名言はせっかく空母が登場したのでエースコンバット5よりこの一言を
アンダーセン「イエス、ケストレル」
この言葉がでるミッション「混迷の海」はエースコンバット5のプレイヤーなら誰もが心に残っていると思います。かく言う私もこのミッションは大好きです。軍の指揮を外れて行動する主人公達にかつての敵が仲間として加わる…。物凄い熱い展開ですよね。
次話は闘技会に入るか、闘技会までの間の話を少し入れるか悩んでおります。意見があればぜひ聞かせてください。
また第4章は航空機をメインに描こうと思っており、読者の方の中で「この機体をだして」と言うリクエストがあればぜひ感想に書いてください。とりあえず出すのが確定しているのは、
Su-33、Su-37、Su-35、F/A-18F、ASF-X、B-52、AC-130、A-10C、F-22、F-3、F-2、E-2D、E-767
です。爆撃、制空戦、近接航空支援、電子支援等で各飛行隊をクローズアップして書きたいと思っているので、リクエストがあればぜひ。すでに1つ読者の方のリクエストを反映させております。その方が納得出来るように格好よい物が出来るよう頑張らせてもらいます。




