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ゲームの軍隊と異世界攻略  作者: RIGHT
第2章 Operation Dragon Slayers
53/88

第2章15 Operation Dragon Slayers Part.5

第2独立大隊

SFGp:日本国陸上自衛隊特殊作戦群

GROM:ポーランド陸軍緊急対応作戦グループ

Jagdkommando:オーストリア陸軍コマンドー部隊


第3独立大隊

SRT:アメリカ海兵隊特殊対応チーム

SRR:イギリス陸軍特殊偵察連隊

SEALタイ:タイ王国海軍SEALs

[9月8日 09:00時]

〈アメックス王国北部 鉱山都市チェーン フェンリル軍第2独立大隊基地 フォート・ライミー 会議場〉

フェンリル陸軍第4機甲師団第3戦車大隊大隊長 池田早苗 コールサイン:アンヴィル・アクチュアル



「これは…凄いわね。」


私を含むアマリア攻略部隊の指揮官達はフォート・ライミーの会議場のモニターでUAVが中継している街の様子を見ていた。


「このトリケラトプス見たいなやつが地竜で、FFにでも出てそうな黒い角のデカブツがベヒーモスか。」


SFGpの指揮官であり、フェアリーの父親でもある七海正弘が言った。


「奥にあるのは投石機か?あんな物でもホバリング中のヘリを撃墜する事は出来るわね。と言うかあの化け物達は空は飛ばないわよね?」


第160特殊作戦航空連隊第3大隊大隊長のクリスティア・ウォルコットが言った。


「爆撃で吹き飛ばす事も出来るだろうが、散開されたら俺達だけで全部片付けるのは厳しいな。数が多すぎる。やはりメインは戦車隊になるな。」


第19特殊作戦飛行隊の隊長のエディが言った。


「そうね。リッジには悪いけど、今回は私達がメインね。」


「とは言え、街中であれと戦う訳にもいかん。どうするか。」


第4機甲師団師団長の渡辺美春が言った。


「いっそのこと街を機甲師団で取り囲んで誘きだしますか?」


「………それもありね。取り囲んで地竜部隊と魔獣部隊を誘きだして一斉砲撃と空爆で、ってそう言えば湊さんが持って来た新しいおもちゃが使えそうね。そっちを使って残ったやつを始末して、リッジにヘリの脅威になりそうな物を破壊してもらってから制圧部隊をヘリボーンで運ぶ。これが良さそうね。街には城壁もあるから砲弾が市街地まで飛ぶ事はないでしょうし。

それで行きましょう。それじゃあ全員準備をしましょう。作戦開始は2日後よ。」


「「「「「了解。」」」」」



[9月10日 09:30時]

〈レイシス帝国森林都市アマリア 地竜部隊竜舎〉

レイシス帝国陸軍地竜大隊大隊長 ウィリー・トムソン



「良し!たっぷり食って良いぞ!メイル!」


俺は竜舎で自分の相棒である地竜のメイルにエサの魔物の肉を与えていた。


「隊長も変わり者ですね。エサやりなんて俺達新入りに任せておけば良いのに。現に先輩方の殆どは俺達に任せきりですよ?」


「それはそいつらがわかっていないだけだ。こいつらは互いに命を預けた相棒であり、戦友だ。常日頃から感謝の意を込めて接してやらなければならん。お前はまだ新入りで自分の地竜もいないが、自分の地竜をもらったら家族同然に接してやるんだぞ?」


「はい!了解です!」


「良い返事だ。昨日報告にあった周辺の地響きの調査も含めてそろそろ訓練に[カン!カン!カン!カン!カン!]」


装備を来て訓練に行こうとした時、街の物見櫓が警鐘を鳴らした。


「なんだ?!」


急いで外に出るとこの街に駐留する帝国軍の最高指揮官であり友人のガリル・エンフィールが駆け寄ってきた。


「ウィリー!直ぐに出撃しろ!」


「何があった?!」


「この街の周囲に見たこともない物体と明らかに高度に訓練された部隊が展開している!既に街は包囲された!」


「何だと!?巡回は何をやっていたんだ!」


「サボって娼館に入り浸ってやがった!これだからもっと規律を厳しくすべきだって言ったんだ!戦争のいろはも知らない貴族共め!」


「落ち着け!とにかく直ぐに出撃する!新入り!」


「は、はい!」


「隊員を全員叩き起こせ!今すぐA級装備で出撃する!」


「りょ、了解!」


新入りが兵舎に向けて駆けて行った。


「ガリル、非常に嫌な予感がする。」


「ああ、俺もだ。」


たった1日で街を包囲出来るだけの部隊を展開させる能力など帝国軍にはない。つまり、敵は我々より優れた能力を有していると考えるのが妥当だろう。


「ガリル、わかっていると思うが、」


「わかっている。お前達が失敗したら大人しく降伏するさ。地竜と魔物の群れに勝つような相手に未熟な兵がいくらいても無駄だ。」


「わかっているなら良い。それじゃあ俺は出るぞ。」


俺はメイルの背中に乗り、門に向かった。



[10:00時]

〈レイシス帝国森林都市アマリア近郊 10式戦車〉

フェンリル陸軍第4機甲師団第3戦車大隊大隊長 池田早苗 コールサイン:アンヴィル・アクチュアル



「こちらアンヴィル・アクチュアル。トップハット[AWACS]。敵の地竜と魔物が門から出て来ました。」


《了解。トップハットより全隊。敵部隊が出現。敵が接近を開始次第戦闘を開始しろ。》


《アイアンフット・アクチュアル[第4機甲師団第1戦車大隊 師団長 10式戦車]了解。》


《ファイアトーチ・アクチュアル[第4機甲師団第2装甲車大隊 10式戦車 MCV 96式装輪装甲車]了解。》


「アンヴィル・アクチュアル[第4機甲師団第3戦車大隊 10式戦車]了解。」


《スライダー・アクチュアル[第4機甲師団第4戦車大隊 10式戦車]了解。》


《モバイル・アクチュアル[第37歩兵連隊]了解。》


街を包囲した各隊が報告した。


「隊長。見てください。あいつら楽器を演奏してますよ。」


双眼鏡で見てみると確かにバグパイプのような楽器を演奏していた。


「味方を鼓舞してるのよ。たぶん演奏が終わったら突撃してくるはずよ。」


「こっちも流しますか?」


「何かいいのがあるの?」


「ええ。最適なやつが。」


装填手がケースを渡してきた。


「これ?確かに最適だけど、」


しばらく見ていると演奏が終わり、


『『『『『グォォォー!』』』』』


物凄い雄叫びと共に地竜やベヒーモスが突撃してきた。


「トップハット!敵が突撃してきた!」


《見えている。良し。作戦開始!》


「了解!アンヴィル全車、戦闘開始!砲手!まずは後ろのデカブツよ。弾種APFSDS。撃ち方よーい!撃ぇ!」


[ドン!]


C4Iで連携した戦車達が地竜と魔物達に攻撃を開始した。

120mmAPFSDS弾に貫かれた地竜と騎士は肉片となって霧散した。


「次、門近くのベヒーモス!撃ぇ!」


[ドン!]


戦車が咆哮をあげるたびに、狙われた哀れな標的が爆散していった。

その余りの攻撃に地竜と魔物は前進できずにいた。


《良いぞ。敵を釘付けにしている。全隊前進を開始しろ。》


「了解!井上、さっきのCD流して良いわよ!」


「了解!」


戦車に登載されたスピーカーから軽快なラッパとともに怪獣大戦争マーチが流れてきた。



[10:15時]

フェンリル陸軍第37歩兵連隊第1大隊大隊長 マーク・ミッチェル コールサイン:モバイル・アクチュアル



戦車とともに前進を始めると、怪獣大戦争マーチが大音量で流れ始めた。


「池田さんか。派手にやるな。」


《第4機甲師団各隊へ。敵部隊は防壁の近くまで後退した。防壁を破壊するわけにはいかない。街への接近を中止し、現在位置から第37歩兵連隊の支援に移れ。》


《《《《了解!》》》》


「俺達の出番か。行くぞ、お前ら!」


HACSを装備した第37歩兵連隊の兵士達が前進を始めた。

戦車からの砲撃が止み、地竜と魔物達がふたたび前進を開始した。


「モバイル・アクチュアルより各員。発砲を許可する。ただしミサイルは使うな。」


《《《《《了解!》》》》》


右腕に装備された20mmガトリングを展開し、接近してくる地竜達に向け、発射ボタンを押した。


[ウィーン ズドドドドドドドドドド!]


ミニガンよりは遅い発射速度で大口径の銃弾が放たれ、地竜と魔物達の皮膚に突き刺さり、肉塊へと変えていった。


「奴らを近付けるな!この装備でもあの突進を喰らったら怪我するぞ!」


仲間に警告を出した時、1匹のベヒーモスが弾幕を越えてきた。


「邪魔するな!」


左腕の大盾を構えてこちらから体当たりを敢行した。


[ズゴン!]


「ぐ、うおぉぉぉ!」


右腕でベヒーモスの首を掴み、重心を後ろに傾け、突進の勢いとスーツのアシストをフルに使い、ベヒーモスの巨体に巴投げをし、後ろに放り投げた。


[ドスン!]


ベヒーモスは背中から地面に叩きつけられ、背中に乗っていた兵士を押し潰し、呻いていた。


「悪く思うな。」


苦しむベヒーモスの頭にガトリングを突きつけ発射ボタンを押した。



[11:30時]

フェンリル軍GDU2ndIB フェンリル陸軍特殊作戦群群長 七海正弘 TACネーム:リーパー コールサイン:サクラ・アクチュアル



俺は共に戦場を生き抜いてきた仲間達と共に第160特殊作戦航空連隊のMH-60Mに乗り、久々の戦争に機を引き締めていた。


《ヒュドラ[第2独立大隊]、ジュリエット[第8独立大隊]各隊、第4機甲師団と第37歩兵連隊が敵地竜と魔物を制圧。リッジの空爆により敵の投石機の無力化を確認。森林都市アマリアへのヘリボーンを開始し、アマリアを制圧しろ。》


「リーパー了解。」


《コヨーテ了解。》


アマリアを包囲した第1機甲師団と哀れな地竜達をフライパスし大量のヘリがアマリア上空でホバリングした。


《リーパー!降下地点だ!敵の攻撃が来る前に降りてくれ!》


「了解!降下開始!」


隊員がファストロープで降下を開始した。


『こちらはフェンリル軍だ!民間人や戦闘の意志のない者は家にこもり武器を捨てて地面にふせろ!武器を持ち街路にいる者は戦闘の意志有りと見なし容赦無く攻撃する!』


上空を飛び交うヘリ達がスピーカーで絶えず呼び掛けを行っていた。


「降下完了!敵指揮所に向かうぞ。キキョウ、先導しろ。全員民間人に注意しろ。」


「了解。」


HK416を構えた坂本冬美1等軍曹を先頭にステルスを起動して移動を開始した。

曲がり角を互いにカバーしながら3ブロックほど進み、他のヘリから降下した人員と合流し、指揮所まで2ブロックほどのところに来た時、


「コンタクト。重歩兵20名、魔術師3、指揮官1。15m先の曲がり角からこちらに接近。」


マグネティックで警戒しながら進んでいた冬美がこちらに接近して来る敵部隊を発見した。


「ツバキ、レンゲ、ユリ、キク、魔術師と指揮官を狙撃しろ。残りは狙撃と同時に敵部隊を始末。」


「「「「「了解。」」」」」


マークスマンに敵指揮官と魔術師を確実に始末するように命令し、俺を含む残りの隊員は手に持つ銃を構えた。


「侵入者は見つけ次第始末しろ!容赦するな!駄犬ごときが誰に噛み付いたのか教えてやれ!」


そんな怒鳴り声と共に敵部隊が曲がり角を曲がってきた。


「撃て。」


[プププ!ププ!]


[プシュ!プシュ!]


サプレッサーによって減音された音がし、殺意の塊である銃弾の雨を浴びた兵士達が次々と倒れていった。


「クリア。進め。」


敵を始末し移動を開始した時、


[ドォォン!]


《うぉ!》


爆音が響いた。


《こちらコヨーテ[SRT 第8独立大隊大隊長]!空から何か降って来やがった!爆発によって隊員5名が負傷!重傷者2!3人は戦闘続行は不可能、何人か護衛につけて後退させる!メディバックを要請する!》


《トップハット!こちらドロップ・アクチュアル[SEALタイ]!今の攻撃は何だこっちにも降って来た!負傷者はいないが小さいのが高頻度で降って来る!岩見たいなやつだ!くそ!また来た!カーク!そこの家に入れ!行け![ドドドン!]》


街に展開した部隊が正体不明の攻撃を受け被害を受けたようだ。


「隊長!こっちにも来ます!」


隊員の1人が向かって来る岩に気付いた。


「全員走れ!敵指揮所に突入する!」


街路にいるより安全と思い、全員が30m先の指揮所に向けて全力で走り出した。


「ウォォ!」


指揮所に滑り込み、先に入っていた隊員が扉を閉め、


[ドォォン!]


同時に外で爆発が起こった。


「危なかったな。」


SFGp第1中隊[サクラ隊]の副隊長の船坂千博[TACネーム:ユウガオ]がそう言って手を差し出した。


「ああ、だが、手厚い歓迎だな。」


指揮所の至る所から兵士達が集まって来ていた。



[11:50時]

〈レイシス帝国森林都市アマリア上空〉

フェンリル空軍特殊作戦航空団第19特殊作戦飛行隊隊長 エディ・バルクホルン TACネーム:スラッシュ コールサイン:リッジバックス1



《こちらトップハット。確認した。街の北部の森の中に投石機が隠れているようだ。》


トップハットの報告に無線がざわついた。


《あれが投石機だと?》


《殆ど迫撃砲と同じ威力かそれ以上だぞ!》


《民間人もいるってのにバカスカ撃って来やがって。航空隊さっさとぶっ壊してくれ!釘付けにされて動けん!負傷者も出てる!》


地上部隊の緊迫した声と爆音が響いた。


《リッジバックス、まだ爆弾はあるか?》


「ああ。街を1回更地にしても余る位だ。」


《よし。位置情報を送る。森を吹き飛ばせ。》


「了解。ハンマー、ブレード、森を更地にして来い。」


《《ウィルコ。》》


対地攻撃使用のASF-XC、2機が編隊を離れ森の上空から急降下した。


《CBU[クラスター爆弾]アウェイ!》


《CBUアウェイ!》


武装を切り替え、主翼のハードポイントに装備されたクラスター爆弾を森全体に被害が及ぶ様に投下した。


[ドドドドド!]


投下されたクラスター爆弾、計12個は空中で炸裂し、合計で7800個の子爆弾に別れ森中に降り注ぎ、湊特製の高性能炸薬を詰め込んだ子爆弾は、その小ささの割りに合わない爆発を引き起こし、森に潜んでいた帝国軍と投石機を森ごと吹き飛ばし、森だった場所は見事な更地となった。


《こちらトップハット。投石機の破壊を確認。良くやった。》


《助かったぜ一本線!こちらは前進を再開する!》


《ふぅ。ジョー、レント、ガイン。ズールとキムの2人を連れて近くの空き地に行け。メディバックを要請する。》


AWACSと地上部隊からの連絡が終わると殆ど同時に2機が編隊に合流した。



〈レイシス帝国森林都市アマリア 帝国軍指揮所〉

フェンリル陸軍特殊作戦群群長 七海正弘 TACネーム:リーパー コールサイン:サクラ・アクチュアル



「グワッ!」


「くそ!数はこっちが勝っているのに!グエッ!」


大量の敵が迫って来ていたが、俺達は互いの動きを気配で察し、誰かがリロードする時には一言も声を出さず互いにカバーしながら絶え間ない銃撃を加えた。


「スカウト2-1[ フェンリル陸軍第5偵察飛行隊第2小隊 OH-1]、HVIの居場所はわかるか?」


上空で指揮所を監視しているヘリに指揮官達の居場所を聞いた。


《ばっちりだ。衛星スキャンと光学レンズで発見済みだ。今いる建物の3階、中央の大部屋だ。敵は会議中のようだ。》


「侵入を許しているのに会議中とは、随分余裕だな。まあいい。集まってるなら好都合だ。全員、移動だ!」


階段の方からの敵が少なくなったのを確認し、俺を先頭に移動を開始した。


「喰らえ!」


「おっと!」


階段を上りきる直前、騎士が剣を降り下ろしてきたが、


[ガキィッ!]


湊製造の特殊な金属を大量に使ったM468で受け止め、


[ドカァ!]


スーツで強化された蹴りを喰らわせ、騎士を5m以上吹き飛ばし、壁に激突した。

騎士の鎧は腹のパーツが大きく変形し、壁に叩きつけられた衝撃で骨が砕け、瀕死の重傷となった。

そんな騎士には目もくれず、侵攻を続けた。

後ろでは最後尾の隊員がフラッシュバンと催涙ガスを大量に投擲し、騎士達が追って来るのを防いでいた。


「良し。さっさと頭を押さえるぞ。続け。」


仲間達は無言で頷き、そのまま3階中央の大部屋の3つの扉に移動した。

扉を中央に挟むように隊員が張り付き、突入の準備を終えた。

扉の中からは複数の男達が怒鳴りあう声が漏れてきていた。

俺は隊員達に見えるように片手をあげ、カウントダウンを始めた。


(5、4、3、2、1、0)


[バン!]


カウントが0になった瞬間、扉に張り付いていた隊員が扉を蹴破り、3つの扉からサクラ隊の隊員達が一斉に部屋になだれ込んだ。


「な、何だ!お前達は!?下の兵達は何をしているんだ!」


中には10人ほどの男達がおり、俺達の近い側にいたいかにも高級そうな鎧を装備した男が叫んだ。


「失礼する。俺達はフェンリル陸軍の者だ。ここには降伏勧告にきた。既にこの戦局はそちらの手を離れている。このまま、そちらの兵達が全滅するのはそちらの将来にとって大きな損失となるだろう。ここで降伏すればそちらの将兵と民間人の命の安全は補償しよう。」


俺がそう言うと、


「何だと!我等は誇り高い帝国軍だぞ!そんな事が出来る訳がない!」


「そうか!さては貴様等勝てる見込みがないからそのような事を言うのだろう?

司令!このような軟弱者共の言うことなど聞く必要がありません!打って出ましょう!」


半分ほどはそのような事を言い、司令と思われる男に徹底抗戦を訴えた。

司令と思われる男とその副官達は、黙って俺達を見ていた。


(ほう。あの司令と副官達、戦争の経験があるな。)


その男達からは回りの状況を読めない男達のような、名声に溺れた目と違い、本物の戦場を生き抜き、何が最善かを冷静に見極めようとする意志が感じられた。


「静かにしろ。

部下が失礼したな。私はガリル・エンフィール。この街に駐屯している帝国軍の最高司令官だ。」


男は騒ぐ貴族の男達に侮蔑の視線を向けて言った。


「フェンリルの軍人、決して民間人と投降した将兵に危害を加えないと誓えるか?」


「司令!降伏する積もりですか?!それは国家反逆ですぞ!」


打って出ると主張した男が怒鳴ったが、


「黙れ!私が守ると誓った物は国民と帝国の未来だ!断じて自らの権益の為に国民や友軍の事も考えずに攻撃を行うような腐った貴族の誇りを守る為ではない!

マニュエル隊長!先程の投石機による攻撃は貴様の指示だろう!国民を守れない、いや、国民に牙を剥く軍など存在価値はない!恥を知れ!」


男の凄まじい剣幕に萎縮した貴族達は、黙って席についた。


「失礼したな。既に我々に勝ち目はない。降伏する。」


男がそう言ったのを聞き届け、貴族連中を捕縛するように指示し、ガリルに近付いた。


「未だ戦闘は続いています。これを使ってください。」


そう言って無線を手渡した。


「これは?」


「外のスピーカーに繋がっています。大音量で街中の人間に呼び掛けを行えます。」


「そうか。助かる。」


ガリルはマイクに呼び掛け始めた。


『帝国軍将兵の諸君。ガリル・エンフィールだ。既に戦局は我々の手を離れた。これ以上の抵抗はやめて、投降してくれ。帝国の為にも、未来ある君達を失う事はできん。降伏する事は恥ではない。その命を無駄にしないでくれ。』


ガリルが無線から口を離し、返してきた。

俺は無線を受け取り、


「帝国軍将兵の諸君。聞こえたな?命を無駄にする事はない。降伏の意志のある者は武器を捨て、両手を頭の上で組むか、白旗を掲げゆっくりとフェンリル軍の兵士のもとに歩け。今から5分間を受け入れ期間とする。諸君が正しい決断する事を期待する。」


無線を切り、ガリルに向き直った。


「あなた方の身柄は我々が預かります。」


「ああ頼む。フェンリルの軍人、あんた、名前はなんと言うんだ?」


ガリルはイスに座り尋ねた。


「機密事項なので本名はお教え出来ませんが、リーパーと呼んでください。」


「そうか。ではリーパー。あんたとは話が合いそうな気がするよ。」


「私もです。戦争が終わったら酒でも飲みましょう。」


「ふ。そうだな。それも良い。」


ガリルは背もたれに体重をかけ、天井を見上げて、


「この戦争…絶対に始めるべきではなかったな。」


そう呟いた。



[13:30時]

〈レイシス帝国森林都市アマリア レイシス帝国指揮所地下〉

レイシス帝国陸軍第4歩兵師団師団長 ロメオ・マニュエル



「クソ!ガリルの奴!なにが帝国の未来だ!負けたら何の意味もない!」


俺は指揮所の地下に行き、あれの部屋に入った。


「おい!起きろ!こういう時の為に貴様のような物があるんだろう!」


俺は部屋の中で眠るそれを殴り、叩き起こした。

殴られたそれは目を開け、俺をじっと見つめた。


「目を覚ましたな!それなら外の敵を殺してこい!」


俺はそう命じたがそれは俺を見つめるだけで動かなかった。


「おい!何をして、」


俺がもう一度それを見ると、

口を歪めて笑みを浮かべて剣を抜いた。


「良し。それじゃあ奴等を殺して[ザシュ!]あれ?」


気が付くと俺の頭は地面に向かっていた。

遠ざかる意識の中、あれが狂ったような笑い声をあげていた。



〈レイシス帝国森林都市アマリア レイシス帝国軍指揮所 会議室〉

フェンリル軍GDU2ndIB ファルケン陸軍特殊作戦群群長 七海正弘 TACネーム:リーパー



『アッハハハハハハハハハハ!』


街の制圧が殆ど完了し、会議室で待機していると突然下の階から少女の笑い声が聞こえてきた。


「何だ?今のは?」


俺がそう呟くと、


「な!誰かが彼女の封印をといたな!?」


ガリルは慌てたように言った。


「おい!どういう事だ!」


「帝国で行われた最悪の実験さ。少女に呪われた剣を持たせて兵器にするというな。」


「何だと?!」


それを証明するように下の階から悲鳴と笑い声が聞こえてきた。


《リーパー!赤い髪の少女が帝国軍の兵士達を襲ってます!どうします?!》


「すぐに上に来い!窓から外に脱出する!」


《了解!》


俺は会議室の窓を割り、ガリルを抱えて飛び下りた。

他の隊員達も指揮官達を抱えて次々と飛び下りてきた。


「おい!少女を止めるには何をすれば良い?!」


「剣を破壊しろ!それで呪いの支配が解ける!」


俺はガリルを隊員に預け、背中の鞘から高周波ブレードを抜いた。


「指揮官達を連れて近くの空き地に待避してヘリを呼べ!少女の相手は俺と他数人でやる!」


「了解!こっちだ!死にたくないなら来い!」


隊員達が誘導を開始した。


「おい!リーパー!」


ガリルが俺の前に進み出た。


「あんたに頼むのは筋違いだが、あの子を助けてやってくれ。あの子は帝国の間違った研究の犠牲者だ。」


ガリルはそう俺に頼み、隊員に連れていかれた。


「言われずとも。やってやるさ。ユウガオ、お前達は周囲の建物の屋上でスナイパーライフルを持って準備してくれ。俺が隙を作るからそのタイミングを逃がさず、剣を狙撃しろ。」


「了解。」


3人が4次元ポーチから狙撃用レールガンを取りだし、建物に走って行った。


「さて。待たせたな。」


俺がそう言うと、指揮所の窓から返り血を浴びた赤い髪の少女が飛び下りてきた。

少女の顔は楽しそうな笑みを浮かべていたが、その目は恐怖にそまっていた。


「少女を切るのは気が進まんが、君の為にも切らせてもらう。」


「アハ。アハハハハハハハハハハハ!」


少女が笑いながら物凄い速さで切りかかってきた。


[ギィン!]


俺は高周波モードにした愛刀で受け止めた。


「高周波モードのこいつを受け止めるとは。凄い剣だな。」


唾競り合いの状態を解き、互いに距離を取った。


《リーパー。配置につきました。》


「了解。」


少女がふたたび突進し突きを放った。


「剣は良いが、」


俺は半身に移動し、突きを避け、少女の剣に刀を降り上げた。


[キィン!]


スーツのアシストも加わり、少女の手から剣が弾き飛ばされ、少女の背後に突き刺さった。

その瞬間。


[ズドォン!]


隙を待っていたユウガオ達が、フルチャージのレールガンで狙撃した。

マッハ4以上の速度で飛翔する大口径の銃弾を3発もほぼ同時に受けた魔剣は、半ばから折れるどころか、跡形も無く吹き飛んだ。


「アハハ。アハ。アァハハハハハハハハハハハ!ハハ……」


少女は最後に一際大きく笑い、意識を失った。


「脈はあるな。トップハット。メディバックを要請する。10代の少女。意識は無い。精神障害を持っている可能性がある。」


《了解。5分で着く。》


少女の後送を頼んでいると狙撃をした3人が戻ってきた。


「やりましたね。その子は大丈夫ですか?」


「まだわからん。命はある。そこから先はこの子次第だ。」


「それにしても許せませんね。子供を呪いで縛って兵器にしようだなんて。」


「ああ。だが、これでこの事を考えた奴は俺達の怒りを買った。確実に取っ捕まえて、死ぬより辛い目に合わせてやるさ。」


話していると、迎えのヘリが到着し、少女を背負い、ヘリに乗り込んだ。

今日も無事に生きて帰れる事を感謝しつつ、眼下に広がる戦争の傷痕を眺めた。

森林都市攻略作戦でした。


今回は良識のある帝国軍人を登場させました。厳しい戦場を生き抜いてきた人間と、親のコネや金の力で重要職についている人間では同じ階級でも実力は段違いです。


今回の名言です。今回は『エースコンバットZERO』より、主人公サイファーの相棒にして、最高の強敵だったガルム隊の2番機、ラリー・ピクシー・フォルクの名言です。


ピクシー「戦う理由は見つかったか?

相棒」


エースコンバットZEROラストミッションへの導入です。ZEROのラストミッションはBGMの選曲から、展開から何もかも最高です!初プレイの時に手に汗握ったのは私だけじゃない筈です。


ちなみに、この台詞の前にはかなり有名になった死亡フラグがあります。


PJ「俺基地に恋人がいるんですよ。戻ったらプロポーズしようと。花束も買ってあったりして。」


たった10秒ほどの台詞の中で『恋人』『プロポーズ』『花束』と3つの死亡フラグを一瞬にしてたて、さらに10秒後には回収されるという驚異の早さはもはや伝説だと思います。


次回はSASとグリーンベレーが活躍します。

副題は『オール・ギリードアップ』です。ニコニコ動画でも有名になったマクミラン大尉は残念ながら出ませんが、彼の台詞はでます。


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