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ゲームの軍隊と異世界攻略  作者: RIGHT
第2章 Operation Dragon Slayers
51/88

第2章13 Operation Dragon Slayers Part.3

遅れましたが、皆様明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

[9月10日 13:00時]

<ルイース大陸北部 セレス海 フェンリル海軍第1艦隊 あかぎ空母戦闘群 旗艦あかぎ>

フェンリル軍GDU 1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー



私はルイース大陸を北周りに進んでいる第1艦隊の旗艦、あかぎのフライトデッキの上で私はスマートフォンで連絡を取っていた。今回の派遣では、本土に残っていた第1艦隊のケストレル空母戦闘群と、かが空母戦闘群も参加し、第1艦隊の所属艦が勢揃いし、総勢80隻近くの大艦隊となっていた。


「ありがとうございます。艦隊の通過許可を出してくれて。」


電話の相手は大国会議で合った3人の王達だ。


《何、気にする事はない。フェンリルは我々の重要な同盟国だ、この程度問題ではない。》


《そうですね。初めてこの、すまーとふぉん?、が鳴ったんで慌てましたよ。》


ケツァルさんとレミーさんが言った。


《私は是非とも艦隊に我が国に寄って行って欲しいですね。》


「それは少し難しいですが、そうですね、戦後にそちらに行かせて貰いますよ。」


《本当ですか?!いやー、これほどの技術を持つ国の艦隊がどれだけすごいのか楽しみにしていますよ。》


「是非そうしてください。それではまた。」


私は電話を終え、階段を使って艦内に入った。



<空母 あかぎ ハンガー>



ハンガーに入り、湊から届いた私専用に開発された、AF-Xの様子を見ようと歩いていると、


「凄い!何なのここ!」


と少女の声が響き、声の方を見ると、明らかに着なれていないと分かる迷彩服に身を包んだセシリアが立っていた。


「セシリア?どうしてここに?」


私はセシリアに近づき、そう聞いた。


「あ、優香じゃない。いやー、トイレに行ったら帰り道が分からなくなっちゃって。」


「あー、なるほど。この艦はクルーもたまに迷子になるほど複雑だからね。」


「本当!複雑過ぎだよ。優香はここで何をしてるの?」


「この後、使うかもしれないから、機体の整備をね。」


「へぇ。見てても良い?」


「別にいいけど、特に面白くないと思うわよ。」


「大丈夫、大丈夫。」


「それじゃあついて来て。」


私はセシリアを連れて機体の前に着いた。


「この間は聞けなかったけど、これって飛竜を落としたやつと同じやつ?」


「そうよ。フェンリルの戦闘機の一つよ。これは私専用に開発された特別機だけどね。」


私が機体の細部を確認しているとセシリアが話しかけてきた。


「ねえ。あなた達が異世界から来たのは聞いたんだけど、あなたは元の世界ではどんな感じだったの?」


「私?そうね。私の本当の世界では、フェンリル自体が存在しなくて、私は日本って国で学生をやっていたわね。といってもかなり浮いていたけどね。」


「う~ん。良く分からないけど、回りに馴染めていなかったのは分かった。」


「私があなた位の時は仲の良い友達も出来たんだけど、小さい時は髪の色とか目の色が他の子と違うから良くいじめられていたわ。あ、私の国の人のほとんどは黒髪か茶髪よ。」


「確かに、皆黒髪の中に1人だけ銀髪がいたら目立つよね。」


「本当にその通りよ。それで、最初の1年位は大丈夫だったんだけど、2年目位からだんだん酷くなってきて、ついに我慢出来なくなって、


いじめっこ達を全員半殺しにしちゃったのよ。」


「え?」


「まあ、相手から先に手を出すように状況を誘導したし、証拠も撮影していたから問題は全くなかったし、父さんと母さんが相手の親御さん達との交渉をしてくれたお陰で表沙汰にもならなかったけどね。」


「一体どんな子供だったのよ…。」


「私はごく普通の子供だと思っていたけどね。それで、いじめっこ達を半殺しにした後、」


私が続きを話そうとすると、


[ジリリリリリリ!!]


突然警報が鳴り響いた。


《あかぎSMIより各員へ、対空、対水上レーダーに反応を確認、各部署は戦闘準備を開始せよ!戦闘部隊の指揮官はすぐにブリーフィングルームに集合せよ!繰り返す、…》


「話しはここまでね。ついて来てセシリア。あなたの情報が必要になるわ。」


「了~解。」


私はセシリアを連れてブリーフィングルームに向かって小走りに駆け出した。



<空母 あかぎ ブリーフィングルーム>



「遅くなったわ。それで、状況は?」


私が部屋に入った時には主要部隊の指揮官と有希達3人は既に揃っていた。


「全員揃ったので状況を説明するわ。つい先ほどやまと他多数のイージス艦のレーダーに複数の航空、海上目標を捉えたわ。」


モニターにレーダー画像と予想進路が表示された。


「敵は小型水上艦18隻、中型艦26隻、大型艦5隻を確認。それと、敵大型艦から小型の飛行物体、おそらく飛竜、が発艦したのを確認しているわ。さらに、敵艦隊の上空に巨大な航空機と思われる影も映っているわ。そこで、UAVを偵察に出したんだけど、これがその映像よ。」


モニターに大量の飛竜と木造船、直径200m位の円盤に

小さな城を載せた様な飛行物体が3つ映っていた。


「何それ?ラピュ○?さすがはファンタジーだね。」


八重が楽しそうに言った。


「セシリア、あれについて何か知っている事は?」


私はセシリアに聞いてみた。


「あれは、多分帝国海軍第3艦隊ね。航空艦隊と飛竜母艦を運用する帝国海軍主力4艦隊の一つよ。最精鋭の第1艦隊に匹敵する戦闘力を持っているはずよ。セレス海の北方で集結するって聞いていたから多分それだと思う。」


「装備は分かる?」


「う~ん。魔法、魔術防御は鉄壁と聞いた事があるけど、物理攻撃を防ぐ障壁は消費魔力の問題で弱かったはずよ。」


「だそうよ。」


私がそういうと多紀は少し考えて、


「ふむ、それなら艦隊と航空機からのミサイルと艦隊の速射砲で十分だろう。戦闘機隊は発進準備に入って。」


《《《「「「了解。」」」》》》


あかぎ、ケストレル、かが乗艦の戦闘機隊の隊長達が答え、ブリーフィングルームを出て準備に向かった。


「各艦はデータリンクを確立して、攻撃の準備を始めろ。」


《《《《《了解。》》》》》


艦隊の行動の方針が決まり、艦長達が退室する音が聞こえ、無線が切れた。


「今回は私達の出番はなさそうだね。」


アナトが私に近付いて来てそう言った。


「そうね。」


私もそう答えると、


「何を言っているの?あなた達にも出てもらうぞ

。」



「「「『え?』」」」


「というか、あなた達だけじゃなくて戦闘機に乗れる人には全員出てもらう事にする。本土にいる湊さんからいくつか機体は届いているし、今後の為にも飛んでもらうわ。当然だけど、拒否権は無い。攻撃には参加するか否かは任せるけど、バックアップとして飛びなさい。」


「「「『はい……了解です。』」」」


「あなた達って一体どっちが偉いの?」


私達の様子を見ていたセシリアがそう不思議そうに言った。



[9月10日 14:20時]

〈ルイース大陸北方 セレス海 レイシス帝国海軍第3艦隊 旗艦 飛行城塞"ラトゥール"〉

レイシス帝国海軍将軍 アミン・ベラーノ



私は栄えあるレイシス帝国海軍第3艦隊の司令官として、侵攻を早める為に艦隊の集結を急がせていた。


「艦隊の集結が遅れているぞ!何をやっている!」


「海上艦隊旗艦のホーリンからの連絡です。"向かい風と海流の影響で艦隊の航行に遅れが生じている"との事です。」


通信員がそう報告してきた。


「むう。とにかく、出来るだけ早くしろ。いつ敵が来るか分からないんだ、護衛の竜も交代で上げて常に一定数が艦隊の上空にいる様にしろ!」


「はぁ。了解しました。」


通信員は渋々と言った様子で他の艦に連絡を入れた。


(全く、こいつ等全員緊張感が足りん!確かに、この飛行城塞を沈めるのは海上艦隊にはほぼ不可能だろう。だが飛竜を用いて直接乗り込まれたり、物理的に攻撃されたらいくらこの飛行城塞でも危険だと言うのに。)


私が心の中でそうぼやいていると、


「ん?何だ?何かが物凄い速さでこっちに向かって来ています!」


監視員が大慌てで叫びんだ。


「何?!」


私もすぐに遠見の魔術道具で確認すると、光る矢のようなものが飛翔してきた。


「障壁を貼れ!急げ!」


直ぐに障壁が貼られ、直後、


[ドオォォン!]


大爆発を起こした。


「一体今のはなんだ?!鉄の雨が降ってきたみたいだ!」


「バルチャーの艦隊が!」


「な、何が起こっているんだ?」


状況がわかっていない船員がそう呟いた。


「馬鹿者!明らかに艦隊を狙った攻撃だ!全艦に敵襲と報告して障壁を貼らせて飛竜隊を飛んで来た方向に向かわせろ!そっちに敵がいるはずだ!」


「りょ、了解!」


「バルチャーから連絡です!我、被害甚大。通常飛行は困難。着水する。との事です!バルチャーの近くに展開していた小型艦は軒並み沈み、フリゲートと竜母艦が大破しました!」


「一撃で!?なんと言う威力「うわぁぁぁぁ!」どうした?!」


「さ、先ほどと良く似た飛行物体が大量にこちらに向かって来ます!数は40以上!」


「?!全員衝撃に備えろ!」


敵の姿も見えず、私にはそう命令を出すのが精一杯だった。



[14:00時]

〈ルイース大陸北方 セレス海 フェンリル軍第1艦隊上空〉

フェンリル海軍特殊作戦航空団 第1艦隊ケストレル空母戦闘群 第116戦術飛行隊『ウォードッグ』隊長 フランク・ハルトマン TACネーム:ブレイズ コールサイン:ウォードッグ・リード



俺達ウォードッグを含む多くの飛行隊は艦隊の上空で待機していた。


《へい、ブービーまだ命令は出ないのか?》


「残念だがまだだ。」


《あー。艦隊の連中はいつまで俺達をぐるぐる回しているつもり何だ?》


《チョッパー、いつまでもそんな事言っていると後で痛い目に合うわよ。》


《そうですよ。そろそろ止めた方が良いと思います。》


《そいつは怖いな。だが俺は黙らないぜ。》


そんな事を話していると。


《あなた達はいつも楽しそうね。》


俺達の前に黒いASF-Xに似た機体と見慣れない機体が3機の計4機が俺達の近くに現れた。


《フェアリー?何か見慣れない機体を率いていますね。》


エッジが質問した。


《湊が送って来た新型の試作機よ。どれも癖が強いと言うか、癖しかない様な機体ばかりでね。多紀に今後の為にも出ておけって言われてね。》


《色々大変ですね。》


《全くよ。という訳で、今回は私達の完熟飛行でもあるから、攻撃には参加しない積もりだけど、プロのあなた達と飛ばせてもらいたいのよ。良いかしら?当然そっちの指示には従うわ。》


「別に問題はありませんよ。」


《ありがとう。フェアリー、ウォードッグ・リードの指揮下に入ります。》


《プラン[シャルル]、ウォードッグ・リードの指揮下に入るの。》


《ルーシー[アナト]、ウォードッグ・リードの指揮下に入るよ。》


《『ティターニア[有希]、ウォードッグ・リードの指揮下に入ります。よろしくお願いします。』》


フェアリーを含む4人の少女の声が聞こえ、4機が最後尾についた。


《お姫様達の護衛だぜ、ブービー!気合いが入るな!》


「お前にお姫様のエスコートは無理だな。どちらかというとお姫様に襲いかかる暴漢だろう。」


《いくら何でもそいつは酷いぞ!俺ほどの紳士はそういないぞ?!そう思うだろナガセ!》


《ん?ごめんなさい。聞いていなかったわ。》


《マジかよ!》


《ただ、あなたは紳士じゃないわよ。》


《聞いているじゃないか!》


いつも通りにチョッパーが中心となって騒いでいると、


《ウォードッグ隊、任務中に私語は謹めと何回言わせるつもりだ?こちら空中管制機サンダーヘッド。第1艦隊所属の全隊。これより参加隊の確認を取る。状況を報告しろ。》


ウォードッグ隊を含む第1艦隊航空隊の指揮を請け負うAWACSからの命令とお馴染みの注意が入った。


《カミナリオヤジの降臨だ。》


「こちらウォードッグ。フェアリー指揮の4機を編隊に組み込み艦隊の上空で待機中。」


《こちらシャーク隊[空母ケストレル航空隊 第144戦闘飛行隊 F-22C、FB-22C]。同じく艦隊上空で待機中。》


《ジョリーロジャー隊[空母ケストレル航空隊 第103戦闘攻撃飛行隊 F/A-18E、F/A-18F]だ。準備は万端だぞ。》


《レッドデビル隊[空母ケストレル航空隊 第232海兵戦闘攻撃飛行隊 F/A-18E、F/A-18F]準備完了。いつまでもぐるぐる回っていて退屈している所だ。》


先ずは空母ケストレルの飛行隊が答えた。


《こちらサムライ隊。全機発艦済みだ。現在待機中。》


《ソウヘイ隊[空母あかぎ航空隊 第122戦闘飛行隊 F-4B、F-4C]準備完了。》


《こちらアニマ隊[空母あかぎ航空隊 第127攻撃飛行隊 F-2C]です。全機発艦し、現在待機中。》


《こちらイーグル隊[空母あかぎ航空隊 第124戦闘飛行隊 F-3C]。準備完了よ。いつでも良いわ。》


続いて空母あかぎの飛行隊が答えた。


《シノビ隊[特殊作戦航空団 空母かが航空隊 第84戦闘飛行隊 F-3Cmod.Si、FB-3Cmod. Si]だ。現在かが上空で待機中。準備完了。》


《こちらクーガー隊[空母かが航空隊 第361戦闘飛行隊 F-35CJ]。発艦完了。待機中。》


《レッドナイト隊[空母かが航空隊 第325攻撃飛行隊 F/A-18E、F/A-18F]は準備完了し、待機中です。》


《ソード隊[空母かが航空隊 第364戦闘飛行隊 F-3C]も準備完了よ。》


最後に、空母かがの飛行隊が答えた。


《了解した。……全機の発艦を確認した。間もなく艦隊が対空、対艦ミサイルの一斉射を開始する。諸君の仕事は、敵艦隊に攻撃を加えた後に、空中に残った竜を叩き落とす事だ。心配はしていないが、油断せずに仕事をこなすように。》


《《《《「了解。」》》》》


《こちらやまと。これよりミサイルを発射する。航空隊は艦隊の上空から離れろ。》


やまとから連絡が入り、艦隊上空で待機していた飛行隊は敵艦隊に向けて進路を取った。


《やまと艦長より全艦へ、対水上戦闘用意。目標のデータを送る。各艦、自分の仕事は完遂しろ。先駆けとして、ワシントンがSLBMを発射する。続けて攻撃を開始せよ。》


《こちらワシントン。SLBMを発射する。》


海中からミサイルが飛び出し、敵艦隊に向け飛翔を始めた。


《良し。全艦ミサイル発射!サルボー!》


やまと艦長の命令と共に艦隊から大量の対艦ミサイルと対空ミサイルが発射され、敵艦隊に向かって飛んで行った。


《空母と護衛部隊を除く各艦は、スピード、31に増速し敵艦隊に向かう。航空隊、私達の仕事を減らしておいてよ。》



[14:25時]



《ミサイル弾着まで5、4、3、2、弾着。》


レーダーに映っていたミサイルの群れが敵艦隊に突き刺さり、半分以上の目標が一瞬にしてレーダーから消えた。


《ミサイル弾着。敵艦隊に甚大な被害を与えた事を確認した。敵大型航空機は1機撃墜、残った2機は着水し、小型の航空目標が発艦している。さらに小型の航空目標が艦隊に向けて進路を取った。艦隊の到着前に全て叩き落とせ。》


「了解。ウォードッグ隊、エンゲージ!」


《シャーク、エンゲージ!》


《ジョリーロジャー隊、エンゲージ!》


《レッドデビル隊エンゲージ!》


《サムライ隊、交戦開始!》


《ソウヘイ、エンゲージ》


《アニマ隊、交戦!》


《イーグル隊、エンゲージ!》


《シノビ隊、エンゲージ!》


《クーガー隊、エンゲージ!》


《レッドナイト、交戦!》


《ソード隊、交戦!》


各隊ごとに散開し、艦隊に向かい始めた飛竜達に喰らいついた。


「ウォードッグ隊、長距離ミサイルを使え。」


《《《《《了解!》》》》》


長距離ミサイルを選択し、レーダーに表示されている目標にロックを開始した。


「ロック完了。ブレイズ、FOX3!」


《エッジ、FOX3!》


《チョッパー、FOX3!》


《アーチャー、FOX3!》


《ソーズマン、FOX3!》


《バーベット、FOX3!》


《フォード、FOX3!》


《ナスカ、FOX3!》


ウォードッグ隊の各機から2発ずつ、計16発のミサイルが発射され、飛竜達に向かって行き、すぐにレーダーから16の目標が消えた。

他の隊からも大量のミサイルが発射され、一瞬にして200近い数の飛竜が撃墜された。


《敵勢力の2/3の撃墜を確認。止めをさせ。》


飛行隊が増速し、残った100近くの飛竜に突撃を開始した。


「ヘッドオン!FOX2、FOX2!」


接近した飛行隊は近距離ミサイルを発射し、発射されたミサイルは定められた目標に真っ直ぐ向かい、飛竜の体に突き刺さり、爆発した。


《敵航空勢力の全滅を確認した。そのまま敵艦隊上空で待機しろ。》


飛行隊は再集結し、敵艦隊の上空で旋回して待機を始めた。



[14:30時]

〈ルイース大陸北方 セレス海 フェンリル海軍第1艦隊 あかぎ空母戦闘群 ミサイル巡洋艦"やまと" SMI〉

フェンリル海軍 ミサイル巡洋艦"やまと"艦長 有賀海幸



「サンダーヘッドから敵航空目標の全滅の報告が入り、本艦のレーダーからも目標が消失しました。」


SMIのクルーがそう報告してきた。


「よし。航空隊は仕事を全うした、次は私達の番よ。全艦、敵残存艦隊に接近するわよ。いつ攻撃が来ても良いよう準備しておきなさい。」


第1艦隊の空母3隻と護衛の艦を除いた、総勢50近くの艦が、対艦ミサイル攻撃を受け、瀕死の敵艦隊に接近した、小型艦はほとんどが一撃で沈み、中型艦と大型艦は大破し、戦闘は不可能だろう。


「それにしても、良くSLBMと対艦ミサイルを喰らって沈まなかったわね。」


「魔法か魔術ってやつですかね?」


「でしょうね。」


「艦長。自分はそれよりも、あんな巨大な物体が、航空工学や物理法則を無視して空を飛んでいた事の方が気になるんですが。」


「それもそうね。全く。この世界は飽きさせ無いわね。湊さんも新しい艦とか作ってくれないものかしら?」


私がそう呟くと、


「私じゃご不満ですか?」


やまとが顔を膨らませながら現れた。


「そんな訳無いでしょう。私達はあなたの事が大好きよ。そもそも大事な家族に優劣をつけたりしないわ。」


私がそう即答すると、


「そう言ってもらえると私も嬉しいです!よし!今日は頑張っちゃいますよ!」


やまとが顔を少し赤らめながらそう言うと、艦の速度が少し上がった気がした。


「やまと?あなた何かした?」


「え?は!すいません!興奮して速度を少し上げちゃってました!」


「はぁ。まあすぐに気付いたからいいけど、気をつけてよ?」


「はい…すいません。」


SMIの中に小さな笑いが起こり、全員の緊張が程よくほぐれた所で、レーダー員が報告してきた。


「敵艦隊との距離が所定の距離まで狭まりました。」


途端に全員の顔が真剣なものとなった。


「了解。通信員、全艦に通達。作戦通りに行動せよ。」


「了解。」


「航海長、取り舵15゜、敵艦隊の横に出る。」


《了解です。取り舵15゜。》


《とーりかーじ。》


艦橋にいる航海長と操舵員の復唱が無線から聞こえた。


「副長、艦のスピーカーは使えるな?」


《いつでもどうぞ。》


「了解。」


私はスピーカーを使う前に、艦隊への無線をとった。


「やまと艦長、有賀より全艦へ。本艦はこれより作戦通り、敵艦隊に対して降伏勧告を実施する。」


無線を置き、スピーカーに接続されたマイクを手に取った。


「こちらはフェンリル海軍第1艦隊だ。貴艦隊は既に我々の攻撃により大打撃を受けている。これ以上の抵抗は死を招くだけである。帆をたたみ、マストに白旗を掲げ降伏する事を推奨する。諸君の身の安全は保証する。繰り返す。これ以上の抵抗は死を招くだけである。帆をたたみ、マストに白旗を掲げ降伏する事を推奨する。諸君が正しい選択をする事を願う。」


マイクを置き、モニターに映る敵艦隊に視線を移した。


「さあ、どうでる?」



[同時刻]

〈レイシス帝国海軍 第3艦隊 旗艦 飛行城塞"ラトゥール"〉

レイシス帝国海軍将軍 アミン・ベラーノ



私は攻撃を受け、着水したラトゥールの指令室で、艦隊に大打撃を与えた敵の声を聞き、始めてその姿を見た。


『鉄の巨船?どうやって浮いているのだ?それにこれ程優位な位置にいて何故降伏を求める?』


私は状況を理解しようと必死で考えを巡らせていた。


『もう使えない?いや、さっき飛んできたのは40ほど、上を飛んでいるやつも何回か使っていた所を見ると、あれより大きい船がもう撃てないという事は無いだろう。ここは大人しく降伏するのが若い衆の為か。』


私は降伏する事を決め、指令室にいる者と、艦内にいる者に、アーティファクトを使い、私がそう結論するに至った経緯を説明した。


「艦長………。分かりました。おい!マストに白旗を掲げろ!降伏するぞ!絶対に手を出すなよ!」


幸い私の考えは理解され、すぐにマストに白旗が掲げられた。


「艦長。他の艦にも報告しますか?」


「ああ、頼[ドン!]?!誰が撃った?!」


他の艦にも降伏するよう伝えようとした時、他の艦が大砲を発射した音が聞こえた。


「飛行城塞アークと、飛竜母艦ヴィツート、他に数隻の艦が砲撃を開始しています!」


「すぐに止めさせろ!全部沈められるぞ!」


私は急いで攻撃を止めるよう連絡をいれさせた。



[14:45時]

〈フェンリル海軍第1艦隊 ミサイル巡洋艦"やまと" SMI〉

フェンリル海軍ミサイル巡洋艦"やまと"艦長 有賀海幸



[ドン!]


モニターに映った敵艦のうち、巨大航空機1、空母と思われる大型艦2、中型艦の数隻が白旗を掲げたが、他の艦はこちらに向けて砲撃を開始した。


「敵艦、砲撃を開始!」


「弾着位置は?」


「本艦からかなり離れています。おそらく、位置調整の為の砲撃と思われます。」


「これから悠長に調整をしようと?呑気なものね。対水上戦闘よーい!」


「対水上戦闘よーい!」


私の命令に砲雷長が復唱した。


「指向兵装、主砲。目標、敵大型航空機砲台!撃ち方よーい!

強襲部隊をボートとヘリで出撃させて。目標は敵艦隊。」


「主砲撃ち方よーい良し!」


「全艦へ、こちらやまとSMI。強襲部隊の発進準備を行え。強襲目標は敵艦隊。抵抗する場合は戦闘を許可する。戦闘艦は強襲部隊の乗船を支援しろ。」


通信員が艦隊の各艦に連絡し、砲雷長が復唱し対水上戦闘の準備が整った。


「主砲、撃ちぃー方始め!」


「撃ちぃー方始め!」


拳銃の様な形のトリガーが引かれ、


[ドン!ドン!ドン!ドン!]


轟音と共にやまとにの前部と後部に搭載された175mm速射砲が巨大な砲弾を連続して発射し、敵大型航空機の砲台に突き刺さり、吹き飛ばした。


「敵大型航空機の砲台を破壊!」


「他の艦も敵残存艦隊への攻撃を開始しました!」


「敵中型艦5隻を撃沈!」


「強襲部隊の出撃準備が出来ました!」


SMIのクルーが矢継ぎ早に報告してきた。


「強襲部隊を出撃させて。攻撃はこのまま継続。強襲部隊に被害を出させるな。」


私は淡々と指示を出し、大型艦と大型航空機の制圧を強襲部隊に託した。



[14:55時]

〈フェンリル海軍第1艦隊 いずも改型強襲揚陸艦"ほうしょう" フライトデッキ〉

フェンリル海軍DEVGRUネプチューン隊隊長 レオナ・メイソン TACネーム:セクション



依然抵抗を続ける敵艦の強襲部隊には、海兵隊の一般部隊でなく、私達の様な特殊部隊が選ばれ、準備をしていた。


「全員、準備は出来たな?!」


「「「「「おう!」」」」」


「良し!良い返事だ!敵艦に乗り込むぞ!全員搭乗!」


私の目の前に整列していた隊員達がSH-60Kに乗り込み、私も席についた。


「全員乗ったな?!良し!機長!行ってくれ!」


《了解。ウォーホース2-1離陸する。》


ヘリが離陸し、敵大型航空機に向けて飛行を始めた。



[15:00時]

〈レイシス帝国海軍 第3艦隊 飛行城塞"アーク" 上空〉



《後30秒で目標の上空に到着するぞ!》


「了解!全員降下準備!」


ヘリが低空飛行で大型航空機に近付き、衝突する直前に機首が持ち上がり、降下地点上空でピタリと静止した。


「降下!」


ロープが投下され、隊員達が降下を開始した。

私は船に降り立つと、ヘリに対してサムアップをし、それを見たヘリはロープを切り離し、空中で旋回を始めた。


《空中で待機している。戦闘機もいるが俺達が必要なら呼んでくれ。》


ヘリから視線を外し、周囲を見渡すと、他の地点でもヘリから降下が開始され、海兵隊員が乗船を始めていた。


「セクション!俺達の目標は?」


「艦長室よ。移動開始!ハーパー、先導して。」


「了解!」


ハーパーを先頭に中央の小さな城の様な建造物に向かって現れる船員や魔術師達を撃ちながら移動を始めた。

15mほど進むと、


「セクション!城から増援!数は60!魔術師もいる!」


「了解。こちらセクション。今すぐ航空支援にこれるやつはいるか?」


《こちらウォーホース3-3。今向かうわ。目標をLAMでマークしておいて。》


私は銃に着けておいたLAMで船員達をマークした。


「マークした!」


《了解。攻撃する。頭を下げて。》


SH-60Kが私達の後ろから現れ、城の入り口に向けてM134を掃射した。


[ヴォーーーー!]


7.62mmの嵐に襲われた60人は一瞬にして肉塊となった。


《ターゲットを殲滅した。また次があれば呼んで。》


ヘリが離脱し、私達は前進を再開した。

どうやら敵は4方から同時に侵攻してくる海兵隊と特殊部隊に対して効果的な反撃が出来ず、城に立て込もっているようで、周囲から聞こえる銃声も散発的になり、私達は無事城まで到達できた。


「ネプチューン城門に到達。」


《ウォーピッグ[フォースリーコン]、城門に張り付いた。》


《サイモン[海兵隊特殊作戦連隊第3大隊第2中隊]、同じく城門に到達。》


《アレクシー[JTF-2]、城門に到達。待機中。》


他の方向から向かっていた部隊も門に到着した。


「全隊、マグネティックを使って門の中を確認しろ。」


《《《了解。》》》


HUDのマグネティックモードを使い、門の中を確認すると、槍や剣を持った男達が私達が入ってくるのを今か今かと待ち構えていた。


「こちらネプチューン、ざっと40人近くが長物持って待ち構えているわ。わざわざ真正面から入る必要も無い。壁を吹き飛ばして突入する。敵の連携を妨げる為、全隊同時に入るぞ。」


《《《了解。》》》


「クロスビー、そこの壁にC4を設置して。カバーする。」


「了解。」


私達は門を少し離れ、入った時に敵の後ろを取れる位置の壁にC4を設置した。


「設置しました。」


「コピー。ネプチューン、スタンバイ。」


《アレクシー、準備完了。》


《ウォーピッグ、準備良し。》


《サイモン、準備完了。》


他の隊からも直ぐに準備完了の報告が届いた。


「良し。3カウントだ。入ったらオーバードライブを使って素早く、確実に全員あの世に送ってやれ。」


《《《了解。》》》


「カウント、3、2、1、ブリーチ。」


[ドォォン!]


轟音と共に壁が吹き飛び、大穴が空いた。


「突入!」


私は叫び、銃を構えながら突入し、同時にオーバードライブを起動した。

ゆっくりとした視界の中で、待ち構えていた敵が驚き、腰を抜かしている者もはっきり見えた。

私は男達が復帰する前に、一番近くにいた男の頭に狙いを付け、ホログラフィックサイトの赤い丸に敵の頭が重なった瞬間、


[バン!バン!]


ダブルタップで引き金を引いた。

私のHK416Cから発射された6.8mm弾は男の喉と顔面に突き刺さり、後頭部から抜けていった。

私は男を撃った直後、吹き抜けになっている2階に弓を持った男と魔術師が大量にいるのを見て、左手をアンダーバレルに着けてきたM320に伸ばし、狙いをつけて引き金を引いた。


[ポン!]


と軽い音と共に発射された40mmグレネードは、狙い通りに飛翔し、2階の天井、丁度魔術師と弓兵達の図上で炸裂した。


[ドン!]


グレネードの爆発の威力と発生した破片に、近くにいた男達は一瞬で命を刈り取られ、20人近くが重傷を負った。

私はグレネードのリロードは後回しにし、1階に目を向けた。すでに、突入したネプチューンの隊員達により、ほとんどが死んでいた。しかし、指揮官と思われる男は脚を撃たれただけで生きていた。

私はオーバードライブを切り、仲間に周囲の警戒を命じ、男に近付いた。


「艦長室はどこだ?」


「お、女か?だれが教えるか!」


「なら話させたくしてやろう。」


私は腰のホルスターからナイフを抜き、男の右手に突き刺した。


「グアァァ!」


「次は指を一本ずつ、少しずつ輪切りにしてやるわ。」


「ひぃぃぃ!か、艦長室は最上階の指揮所の隣だ!」


「ありがとう。」


私はレッグホルスターから愛用のFive-seveNを抜き、男の額を撃ち抜いた。


[パン!]


軽い音と共に男の額に穴が開き、少し痙攣した後、動かなくなった。


「最上階だ。行くぞ。ネプチューンよりサンダーヘッド、艦長室と指揮所の所在を確認。最上階だ。」


《了解した。アレクシー、指揮所は最上階だ。ネプチューンと協力してあたれ。》


《ラジャー。ネプチューン、俺達は東側から向かう。誤射に注意しろ。》


「そっちこそ。私達は北側の外から指揮所に突入する。」


《外から?了解した。出来るだけ急ぐが俺達が着くまで待っていてくれよ。》


連絡を終えて部隊に向き直った。


「聞いたわね?全員フックを準備。外に出るわよ。」


私達は開けた穴から外に出て城の上部に向けて左手のフックを構えた。


「発射。」


[ドシュ!]


小さな金属音と共にフックが発射され、城の上部に刺さり、私達の身体を凄い勢いで持ち上げた。


「っと。」


最上階より上の壁に張り付き、少しずつ、音を出さないように窓に近付き、スネークカムで部屋の様子を探った。


「アレクシー、ネプチューンだ。指揮所を確認。艦長と副官もいるようだ。HVIと敵をマークしてそっちが配置に着くまで待機する。」


《了解。後2分で配置に着く。アレクシーアウト。》


「全員、アレクシーが来るまで待機よ。準備はしておいて。」


「「「「「了解。」」」」」



[15:17時]

フェンリル陸軍第2任務部隊第2大隊第1中隊アレクシー隊隊長 クリス・ホーキング TACネーム:アンカー



「て、敵が侵入!全員武器を取れ!」


艦内は俺達が乗り込んで来た事でパニックとなっており、散発的に剣や、槍、杖を持った男達が襲って来たが、


[バババン!]


「グエ!」


「な、何で壁越しに俺達の位置が分かるんだ?!アガッ!」


HUDのマグネティックモードを使っている俺達には扉の後ろや曲がり角に潜む敵は全て見えており、壁越しにそれを攻撃するだけの作業となっていた。


「階段がありますね。」


「良しこの上が指揮所だ。さっさと終わらせるぞ。」


俺達は警戒しながら階段を上り、指揮所の扉に張り付いた。


「アレクシー配置についた。突入準備完了。」


《了解。窓からナインバンガーを投下する。3、2、1、投下。》


少し間が空き、


[バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!]


9回の爆発音が聞こえ、修まると同時に突入を開始した。


[バーン!]


扉を思い切り蹴破り、愛銃のARX-160を構えながら突入した。


[ババン!]


「ガッ!」


[ババババン!]


「ウギャッ!」



爆発から距離があったお陰でナインバンガーの効果が薄かった為、剣を抜こうとした兵士を射殺した後、強烈な閃光と音で視界と聴覚が封じられている指揮所の人間達を地面に倒し、両手を背中側で拘束した。


「ルームクリア!あかぎ、こちらアレクシー・アクチュアル。敵大型航空機の上部構造物を確保。これより指揮所を調べます。ネプチューンは艦長室に向かいました。」


《了解。必要そうな物は全て回収しろ。》


「了解。全員作業を開始しろ。」



[15:10時]

〈レイシス帝国海軍 第3艦隊 飛行城塞"アーク" 下部構造内部〉

フェンリル海兵隊武装偵察大隊第1中隊中隊長 ポール・ジャクソン コールサイン:ウォーピッグ・アクチュアル



「こちらウォーピッグ・アクチュアル。サイモンと合流。これより敵大型航空機下部構造内部の制圧を開始する。」


《サンダーヘッド了解。充分に気をつけて進め。》


「了解。良し、全員中に入るぞ。充分に気を付けろ。この世界にきて最初の死者報告なんてごめんだ。トーマス、先行しろ。」


「了解。」


内部につながる異様に大きな階段を素早くかつ慎重に降りていった。

中は薄暗く、高さ3~4m、横幅10m程の通路の所々に設置された蝋燭や魔術を使っていると思われるランプが周囲を照らしている程度だった。


「まるでゴーストシップだな。」


サイモン隊の隊長のルーク・ヴァレンが冗談めかして言った。


「そのジョークは笑えないぞ。ルーク。この世界にはゴーストもゾンビもいるからな。」


「アンデッド系のモンスターは勘弁して欲しいもんだ。」


「同感だな。良し、艦内はかなり広い、2手に別れるぞ。ルーク、サイモンは下の階だ。さっき捕虜から聞いた話しではこの中は2フロアだけらしい。」


「了解だ。サイモン隊、行くぞ。HUDのナイトビジョンをオンにしろ。」


ルーク達サイモン隊の30人が階下に降りて行った。


「良し、俺達も移動するぞ。ナイトビジョンを使え、不意討ちに注意しろ。」


俺達は周囲を警戒しながら慎重に進み始めた。



[15分後]



「クリア。何だ?何もないぞ?」


既にかなりの部屋を開けて見たがあわただしく部屋を出て行った形跡はあるが人は一人としていなかった。


「隊長、さっきから思っていたんですがこの通路やけにデカイですよね。」


「ああ、それがどうした?」


「それで思ったんですが、この通路って人間用じゃなくて、竜用なんじゃないですかね?」


「………そう思う根拠は?」


「さっき入った部屋の中にはゴーグルの様な物がありましたし、こいつが落ちる前にはこいつから大量の飛竜が出て来ましたよね。多分下部構造は飛竜とそれに乗る竜騎士用のスペースなんじゃないでしょうか?」


「………だとすれば、まだ竜が残っていてもおかしくないよな?」


俺達の間に緊張が走った。


「マグネティックを使って周囲を走査するぞ。」


「「「「「了解。」」」」」


HUDをマグネティックモードに変更し、周囲を見渡した。

ふと、下を見ると、ルーク達サイモン隊の面々が見えた。そして彼等の向かう先に、


「!!サイモン・アクチュアル!ルーク!聞こえるか!」


《どうした?何があった?》


「今すぐ引き返せ!その先に進むな!」


《一体どうし《グアァァァァ!》!?何だ!》


サイモン隊のメンバーはまだ状況を把握していないようだが、上から見ていた俺にははっきり見えた。サイモン隊のポイントマンが入った部屋にいた1匹の飛竜が、ポイントマンの腕を食いちぎったのだ。


《飛竜だ!》


《くそ!ブーンの腕が持ってかれたぞ!》


《全員撤退だ!ここじゃあ分が悪すぎる!ブーンは俺が運ぶ!全員走れ!何の為に毎日走ってんだ!ゴー!ゴー!ゴー!》


サイモン隊のメンバーが銃を後ろ向きに撃ちながら全力で後退を開始した。


「ルーク!フラッシュバンだ!」


《何?…!そうか!フラッシュ行くぞ!》


ルークが仲間を担いだまま器用にフラッシュバンを取りだし、ピンを抜き、飛竜に向けて投げた。


[バン!]


『ギュアァァァ!』


暗闇の中で強い光と強烈な爆音を受けた飛竜の絶叫が響き渡った。


《やったぞ!》


《走れ!もっと速く!》


「ウォーピッグ、移動するぞ!俺達も速く上に上がれ!行け!」


俺達も階段に向けて全力で走り始めた。


「サンダーヘッド!こちらウォーピッグ・アクチュアル!緊急事態だ!」


《こちらサンダーヘッド。状況を報告しろ。》


俺は艦隊や航空隊を含む全隊に向けて無線を開いた。


「下部構造内部に飛竜がいた!サイモン隊の1名が重傷!俺達は今から上部に戻る!」


《何?了解した。ヘリは一時後退しろ。現時点で攻撃可能な部隊は報告を。》


《こちらネプチューン・アクチュアル。現在アレクシーと上部構造物の最上階にいる。レールガンを持っている隊員が数人いる。》


《こちらウォードッグ・リード。航空隊はミサイルも機銃もまだたっぷり残っているぞ。》


《良し、ウォーピッグとサイモンが出て来たら最大限援護しろ。》


「感謝する!」


連絡が終わった頃俺達は最初に降りて来た階段についた。


「おまえ達は上に行って待ち構えておけ!」


「隊長は?!」


「俺は下に行ってサイモンを援護してくる!」


「………分かりました。死なないで下さいよ!全員行くぞ!」


仲間達は上にかけ上がって行った。

俺は階段を駆け降り、アンダーバレルのM320にフレア弾を装填し、サイモンがくるのを待った。


1分程すると、正面の通路から重傷者を抱えたルーク達とそれを追う飛竜が現れた。


「こっちだ!急げ!」


[ポン!]


俺はグレネードランチャーを発射し、赤く光るフレアが飛竜に向けて発射された。

しかし、飛竜は全く怯まず、勢いを緩めなかった。

ルーク達はパワードスーツのアシストを全開にして物凄い速さで駆け抜けた。

と、同時に俺も踵を返して全力で駆け出した。


「おまえ、何がしたかったんだ!全く効いてねえぞ!」


「うるせえ!ワンチャン行けると思ったんだよ!来てやっただけでもありがたく思いやがれ!」


俺達は叫びながら階段を駆け上がった。


「上に出たぞ!急いでこの建物から出ろ!」


「飛竜も出て来ちまうぞ?!空に飛ばれたら俺達じゃ奴の餌になるだけだぞ!」


「いつ俺達でやるっつた?!いいから行け!追って来てるぞ!」


「くそ!全員急いで外に行け!」


俺達が門から出た直後、


『ギュアァァァ!』


叫び声と共に飛竜が階段から現れ、俺達を追いかけて来た。


「サンダーヘッド!来たぞ!殺れ!」


《了解。全隊、攻撃開始。飛竜に誰に噛みついたのか教えてやれ。》


《《《《《了解。》》》》》


飛竜は門を出て、空に上がろうとしたが、


[バキズチャ!]


壮絶な音を響かせながら皮膜のついた前腕の付け根にネプチューンとアレクシーからのフルチャージのレールガンによる狙撃が行われ、両腕を引きちぎった。


『ギィエアァァァ!』


聞いているだけでSAN値が下がりそうな絶叫が響いた。


《なんつう声出しやがる。全機、一斉射撃だ。仲間に当てるなよ!》


[グォオォォォ!]


無線の直後、上空で待機していた戦闘機から一斉に機銃が発射され、20mm弾の嵐を浴びた飛竜は見るも無残な姿となり、息絶えた。


「はぁ、はぁ、はぁ。助かったぜ。後で一人1杯奢るよ。」


「全くだ。

だが、今はそんな事より今すぐヘリを一機送ってくれ。ブーンを後送せにゃならん。」


《心配するな。もう向かっている。10秒で着く。》


話していると遠くから確かにヘリのローター音が聞こえてきた。


「ポール。助かった。ありがとよ。」


ルークはそういって拳をつきだした。


「貸し1だぞ。」


俺は自分の拳をぶつけ、ハイファイをした。



[17:30時]

〈フェンリル海軍第1艦隊 旗艦 航空母艦"あかぎ"〉

フェンリル軍GDU1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー



空母に着艦した私達4人にはコクピットで固まった身体をほぐすより先にやる事があった。

私達は着艦してすぐにパイロットスーツを脱ぎ、着なれた戦闘服ではなく、きちんとした制服に着替え、会議室で敵艦隊の首脳陣を乗せたオスプレイの到着を待っていた。


「無理やり飛ばさせた上にさらに働けとは、さすがは多紀ね。」


「疲れたの。あの機体ほんとに癖しかないの。」


「ほんと、ほんと。私の奴は動きが軽すぎるよ。」


『私のやつも慣れるにはもっと飛ばないといけないですね。』


私達が機体について話していると。


《フェアリー。オスプレイが到着しました。後7分程でそちらに到着します。》


「了解。みんな、もう少しでお客様が到着するわ。くれぐれも失礼のないように。」


「「『はい!』」」


「いやー、異世界の艦隊の指揮官ってのはどういう奴等なのか気になるねぇ。」


「まあ確かに。……って、あかぎじゃない。なんでここに?」


気が付いたら海軍の制服をビシッと着こなした艦魂のあかぎが私の隣に立っていた。


「ん?私だってこの艦隊の一員で、しかも旗艦を務めているんだ。階級で考えれば大将級だ。聴く資格はあると思うが?」


「まあ、隠す様な事でもないでしょう。それに、たとえダメって言っても絶対聞いているでしょう?」


「良くわかっているじゃないか。それじゃあ座らせてもらうよ。」


あかぎが有希の隣の椅子に座り、しばらくすると扉がノックされた。


「レイシス帝国海軍の首脳陣を連れて来ました。」


「入って。」


扉が開かれ、MP5やMP7で武装した隊員に連れられて32人の男性達が入って来た。


「空母あかぎにようこそ。私がこの派遣部隊の総指揮官兼軍事国家フェンリルの国王の七海優香です。」


私がそう言うと首脳陣がざわめき出した。


「女だと?!」


「馬鹿な!こんな最前線に王がいるわけがない!嘘も大概にしろ!本物はどこにいるんだ?!」


集団の中程にいた2人がそう怒鳴り、集団の先頭にいた総指揮官と思われる男性、首脳陣を連れて来た隊員達、有希達4人が冷や汗を浮かべ、あかぎは面白い事になりそうだとニヤニヤしていた。


「私が総指揮官兼国王で何か問題でもありますか?」


私はゆっくりと席を立ち、笑顔を浮かべながら2人に近付いた。


「当然だ!我々を倒した敵の指揮官が、貴様のような小娘な訳がない!」


「ほら、怪我したくないならさっさと本物と変わってこい。」


2人は回りの空気に気付かず、そうぬかした。


「おまえ達やめろ!立場をわかって[ドガッ!]「グワ!」「グエ!」」


総指揮官と思われる男性が諌めようとしたが、私は2人の胸ぐらを片手で掴んで、


壁に放り投げた。


「寺本軍曹、ギャランタイン軍曹。ナイフを貸せ。」


「「はっ!」」


私は2人からナイフを借り、壁近くで呻いている2人を無理やり立たせて喉に突きつけた。


「もう一度聞きましょう。私が総指揮官兼国王で何か問題でもおありですか?ご自分の立場をよーく考えて喋って下さいね?」


私は顔だけは笑顔を保ったまま言った。

ナイフを首に押し付けられた2人の首が薄く切れ、血が流れた。


「い、いや!良く考えたら何の問題もなかった!いや、違う!全くありませんでした!失礼しました!」


「も、申し訳ありませんでした!」


2人は目に涙を浮かべながら謝罪した。


「それでいいです。それじゃあ交渉を始めましょうか。どうぞ座って下さい。」


寺本軍曹とギャランタイン軍曹の2人にナイフを返して私は席に戻った。

先頭の男性を除く首脳陣はビクビクしながら席についた。


「さて、それで、総指揮官はどなたですか?」


「私だ。私はレイシス帝国海軍第3艦隊指揮官のアミン・ベラーノだ。」


中央の初老の男性が答えた。


「成る程。さっそくですが、あなた方の待遇についてお話ししましょう。ちなみに帝国軍では捕虜はどのような扱いに?」


「帝国軍では捕虜は処刑するか、戦争奴隷として強制労働についてもらう事になっている。」


「ふむ。そこはアメックス王国とあまり変わらないようですね。

あなた方の待遇ですが、フェンリルの捕虜収容所に行ってもらいます。あなた方には戦争が終わるまでそこにいてもらいます。終わったら国に帰ってもらいます。」


「こ、殺したり拷問するんじゃないのか?」


後ろにいた若い士官が怯えながら言った。


「それならあなた方に降伏勧告をして、艦に呼んだ意味が無いじゃないですか。私の軍では捕虜に拷問をしたり、処刑をする事は必要にならない限り起こりません。そう、必要にならなければ、ね。私達は溺れた犬を助けこそしますが棒で打ったりはしませんから。」


「……………」


若い士官が黙ると、アミンさんが口を開いた。


「つまり、命は保障してくれるのだな?」


「勿論。国にも10月の初め頃には帰れると思いますよ。」


「……勝つつもりか?ルイース大陸最強の帝国に。」


アミンさんはそう口にした。


「…逆にお聞きしますが、あなた方は私達に勝てると思っているんですか?」


「何?」


「私達は既に帝国内部に内通者を送り込んでおり、あなた方帝国軍の部隊が、どの町に集結しているのか、町がどこにあるのか、過去にどのような事をしていたのか、そしてどの程度の戦力差があるか、次々と入って来る情報を考慮して作戦をたてています。

例えば、レイシス帝国北部の城塞都市ベルンに帝国海軍最強の第1艦隊、帝国陸軍最強の竜騎士隊第1竜騎兵大隊、と帝国陸軍最強の第1重、軽歩兵大隊が集結してフェンリルの本土を目指して出撃する。

違っていますか?」


「……………合っている。」


「私達がその気になれば、今から4時間で帝国全土をあらゆる生物が住めない不毛の土地に変える事も出来ます。信じるか信じないかはあなた方次第ですが。それをしないのは、敵国とは言え、民間人を殺すのは我々のルールに反するからと、我々との戦力の決定的な差を見せつけるためです。

私から言わせてもらえば相手を全く知らずに戦争を仕掛けるなんて愚の骨頂以外の何物でもありません。そんなド素人に負けるつもりは更々ありません。一方的に駆逐するだけです。

話しが長くなりました。それでは上でヘリが待機しているので収容所の方に行ってもらいます。」


私は隊員に目配せをした。


「行くぞ。立て。」


「また戦後にお会いしましょう。」


隊員達は顔を青くしている首脳陣を連れて部屋を出て行った。

私には彼等の足音が帝国の滅亡への足音に思えた。

様々な反応がありましたが、集結していた第3艦隊は敵側です。

潜水艦の発射したSLBMは当然あれです。わからない人はYoutubeでエースコンバット5のプレイ動画を見てみましょう。


色々新兵器作っているけど資材は大丈夫か、との質問がありましたのでここで答えさせてもらいます。

答えは大丈夫です。

本土の大きさは北アメリカ大陸まるまる1つと同じかそれ以上の大きさがありますし、転移の影響か地面を掘れば山のようにオリハルコンとかが出てきます。


今回の名言です。今回は空母ケストレルが登場したので『エースコンバット5』における彼女の最期を見たアンダーセン艦長の言葉を。


ジュネット「ケストレルが…沈みます。」


アンダーセン「負け続けの私だが…今度は私の勝ちだ。」


ジュネット「え?」


アンダーセン「見たまえ彼らは無事に飛び立った。それが私の勝利だ。

彼らが空中にある限り、私の負けはない。そして、彼らならやってのけるだろう。」


ピーター「ああ…。」


開戦以降、ケストレルを最期以外で1発も被弾させる事のなかった名艦長の台詞です。主人公達に対する信頼が良くわかります。


次回は大陸の反対側をすすんだ第2艦隊の上陸作戦です。副題をつけるなら『チャーリーは波に乗らない』か『地獄の黙示録』ですかね。前者はCOD4MWのプレイヤーならわかるのではないでしょうか?後者は有名ですので、どうなるかわかりますよね?

間違っても『ブラックホークダウン』ではないです。

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