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ゲームの軍隊と異世界攻略  作者: RIGHT
第2章 Operation Dragon Slayers
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第2章10 Operation Dragon Slayers Part.1-2

先週は休んでしまい申し訳ありませんでした。

[13:45時]

<魔術都市ルーン東部 シェーン平原>

魔術都市ルーン領主兼魔術師隊指揮官 フィルデナンド・コーウェン



「敵襲!帝国軍が来たぞ!」


見張りの声を聞き、魔術師達に緊張が走った。


「詳細は?!」


魔術師隊隊長のトマス・マクスウェルが怒鳴った。


「重歩兵700に騎兵300!飛竜はいません!」


その報告に魔術師達の顔に余裕の笑みが浮かんだ。


「なんだ。それだけですか。聞いていた話と随分違いますね。これだから軍は当てにならないんですよ。

トマス。全員に野戦に出ると指示を。」


「はっ!全員!野戦だ!馬に乗れ!」


トマスの号令に魔術師達は馬に乗り陣地を飛び出して行った。


「さて、私達も行きましょう。」


「お供します。」


私とトマスも馬に乗り、陣地を後にした。



[13:50時]

<魔術都市ルーン東部 シェーン平原 フェンリル軍第1射撃陣地>

フェンリル軍GDU1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー



「あ~あ~あ~。全員で出ていってどうすんのよ。何のための陣地だと思っているの?意味無いじゃない。聞いていた数より明らかに少ないんだから少しは伏兵の心配とかしなさいよ。第一、何で酒飲んでんのよ。周辺の見回りもしないし、戦争を嘗め過ぎでしょう。バカなの?死ぬの?そもそも」


「お、落ち着いてよお姉ちゃん。無線で他の人にだだ漏れだよ。」


私が文句を言っていると、アナトが止めに入った。


《まあ。確かに酷いもんだ。》


重春も同意見だったようだ。


《あそこまで酷いのは始めて見るね。まさか親衛軍も同じじゃないよね?》


八重がそう言うと、


《む。八重さん。それはさすがに失礼だ。確かにあなた方の練度とは比べものにならないが、親衛軍は王国軍の中でも精鋭揃いだぞ。それに最近はあなた方の訓練教官のお陰で規律や指揮が高まっているんだ。決してあそこまで酷くは無い!》


ドレイクさんがすぐさま否定した。


《あちゃー。そいつは失礼。》


「皆、ごめんなさい。作戦に集中しましょう。

スターゲイザー[AWACS]、ミニマップのデータは受信出来てる?」


完璧(パーフェクト)だ。ミサイルの精密誘導も出来る。》


「それなら良いわ。それじゃあ全員、もう少し様子を見ましょう。」



[13:55時]

<魔術都市ルーン東部 シェーン平原>

魔術都市ルーン領主兼魔術師隊指揮官 フィルデナンド・コーウェン



私達は帝国軍の部隊から300m程の位置に展開した。


「領主様!準備完了です!」


トマスがそう伝えてきた。


「全員!攻撃開始!」


「攻撃ー開始ー!」


私が攻撃開始を命じると、すぐさま復唱され、ハイファイアボール、ハイウォーターアロー、ハイライトイニングエッジと言った魔術が放たれ、帝国軍に命中した。


「ウァァア!ギャァアァ!」


「グフ!」


軽装の騎兵達は容易く魔術障壁が消えてしまい、一撃で壊滅したが、重歩兵の鎧は強力な障壁があるらしく、被害はさほど出ていなかった。


「まだ残っていますね。全員!次で決めます!最高の一撃をお見舞いしなさい!」


魔術師達が各自で出来る最高の一撃を準備するなか、私も馬を降り、杖を構えて魔術の詠唱を始めた。


「光よ!私に力を与え、敵を滅せよ!ライトニングレイ!」


杖から光線が放たれ、射線上にいた重歩兵70人ほどに当たった。強力な光と熱により、重歩兵達の目と体は焼かれ、致命傷を負ったが大多数は辛うじて生きていた。


「グ……アァァ……」


「痛い………」


しかし、この世界の治療ではもはや助からず、一瞬で死んだ方がましだったかもしれない。

他の魔術師達から放たれた魔術も帝国軍を無力化するには充分だったようで、全員が地面に倒れ、呻き声をあげていた。


「ハァ、ハァ、ハァ。全員、良くやりました。私達の勝ちです!さぁ、帰ってホットワインと洒落こみましょう。」


私が疲労困憊している魔術師達にそう言った瞬間。


『ギェアァァアァァ!』


大音量で甲高い叫びが響き渡った。


「い、一体何が?!………な!」


驚いて周囲を見渡すと、大型のドラゴン1頭と50以上の飛竜に乗った竜騎士達と、明らかに先程の兵士達より、練度も士気も上の2000以上の兵士達が森から現れた。

ここに至って、私はようやくはめられたと気付いた。もっとも、遅すぎたが。



[13:52時]

<魔術都市ルーン東部 シェーン平原 フェンリル軍第1射撃陣地>

フェンリル軍GDU1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー



《フェアリー、カークです。面白い情報が入りました。》


陣地で待機しているとメタル隊のスナイパーの一人が報告してきた。


「どうしたの?」


《帝国軍の奴等に指向性マイクを向けていたんですが、囮はどうやら本隊とは別の指揮系統にあるようです。音声を送ります。》


少し雑音が入った後、3人の中年の男達の会話が聞こえてきた。


『……し、あの小娘もなかなかわかっているじゃないか。我々に先鋒を任せるとは。』


『そうですな。魔剣使いとはいえ、所詮16の小娘。我々ベテランに手柄を譲るのが普通。』


『しかし、このままあの娘の力が強まるのは面白くないな。』


『なに、この戦いに勝ったら適当な罪を被せて処刑してしまえば良い。そうすれば我等には魔剣と優秀な兵士が手に入る。』


『あの娘共は本当に良く働いてくれた。自分達の家族と村の仇が亜人共と思い込み、真の仇の為にな。』


《以上です。次は森にいる部隊の指揮官と思われます。》


雑音の後、私と同い年くらいの男女の声が聞こえてきた。


『………に馬鹿ね。自分達が囮だとも知らずに。』


『でも、良いんですか?』


『構う事はないわ。あんなのがいてもこっちの士気が下がるだけよ。』


『しかし、これでやっと亜人共の味方を潰せますね。』


『ええ。私達の味わった痛みを教えてやりましょう。』


《これで録音は終わりです。


私は一つ溜め息をついた。


「それで、あなたは何をして欲しいのかしら?」


《囮はどうでも良いですが、本隊の方はなんとかこちら側に引き込めませんかね?》


「……………テンマ。」


《何でしょうか?》


「うちのスナイパーにここから[戦闘地域まで約1.4km]走る敵を精密狙撃することは可能かしら?」


《愚問ですね。あなたが一番分かっているでしょう?》


「……良し。いつでも撃てるようにしておいて。」


《了解。》


悪巧みが終わった時、


『魔術師達が攻撃を開始しました!』


有希の声を聞き、すぐに外に目を向けると、派手な魔法が帝国軍に襲いかかっていた。


「派手にやるわね。」


「あんなの全然駄目なの。」


「本当だよ。あれじゃあ精神力の無駄遣いだよ。


「そうなの?」


「うん。魔術障壁には一点集中型の攻撃の方が通り易いし、人を殺すのにはデカイファイアーボールじゃなくて、細い熱線を頭とか喉に当てるだけで充分だよ。」


「なるほどね。」


アナトの説明が終わるって少しすると囮が壊滅し、本隊が動き出した。


《飛竜が上がりました。》


「こっちでも見えているわ。スターゲイザー、こちらフェアリー。航空優勢(エアシューペリオリティ)の確保を要請する。」


《了解。リッジを向かわせる。》



[14:00時]

<魔術都市ルーン西方70km上空>

フェンリル空軍SOAF 第19特殊作戦飛行隊『リッジバックス』隊長 エディ・バルクホルン TACネーム:スラッシュ



《こちらスターゲイザー。リッジバックス、フェアリーから航空優勢を確保しろとの要請がきた。敵は58。アルト(高度)30フィート。ベクター(方位)014。47マイル。AIM-9を使え。誘導はこちらが行う。発射後は作戦空域に急行し残りを叩き落とせ。》


「了解した。AIM-9。誘導はスターゲイザーに委託する。スラッシュより全機俺の合図で発射しろ。」


《2、ウィルコ。》


《3、いつでもどうぞ。


《リッジバックス4スタンバイ!


《5、ラジャー。》


《6、コピー。》


《7、ウィルコ。》


《8準備完了。》


「カウント、3、2、1、FOX3、FOX3!」


1機から6発、合計48発の長距離ミサイルが発射され、マッハ4で飛翔を始めた。


「発射完了。リッジバックスは作戦空域に向かう。」


スロットルを全開にし、マッハ2で急行を始めた。



[14:03時]

<魔術都市ルーン東部 シェーン平原 フェンリル軍第1射撃陣地>

フェンリル軍GDU1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー



3分前にミサイルが発射されたと報告を受けてから、弾着までの間に、飛竜やドラゴンの放った火球や、直接攻撃によってすでに魔術師達の1/3が殺られ、残りも1箇所に固まり、防戦一方となっていた。


「うるさいのが落ちたら私達も行くわよ。スナイパーと観測手はここで待機。」


《《《《《了解。》》》》》


《こちらスターゲイザー。ミサイル弾着まで5、4、3、2、弾着、今》


私達の頭上を大量のミサイルが飛んで行き、飛竜とドラゴンに命中し、爆発の衝撃とミサイルの破片、急減圧に襲われた飛竜と竜騎士だった物は地面へと落ちて行き、ドラゴンは辛うじて生きているものの、既に騎士は死に、瀕死の重傷を負っていた。


《こちらスラッシュ。リッジバックスだ。作戦空域に侵入。残りの敵を落とす。》


無線の後、轟音と共に8機のASF-Xが頭上を通過し、残っていた飛竜と瀕死のドラゴンに襲いかかった。

竜騎士達は必死に追おうとしているが、音速で飛ぶ戦闘機に追い付ける訳もなく、20mm、30mm機関砲により、全てが撃墜された。


《航空優勢を確保。VTOLモードで待機する。》


「良し!うるさいのは落ちた。さぁ、行くわよ!」


《《《《《了解!》》》》》


《こちらガンスリンガー・リード、エンジン始動、ナイトストーカーと共にCASを行う為に急行する。》


リッジが竜を潰し、低空でホバリングをして待機しているのを確認し、私達は陣地を出て、ジェットパックを起動し、魔術師達と帝国軍の間に降下した。


「領主さん。それに魔術師隊の隊長の、トマトさんでしたっけ?お久しぶりです。」


私は近くにいた2人にそう声をかけた。


「あなたは!一体どうやって!」


「それはあなたの知る必要のない事です。以降の戦闘は私達が行います。」


「な!貴様何を勝手に!」


私は返事を聞かずに銃を向けながら帝国軍に声をかけた。


「私達はフェンリル軍だ!あなた方の竜は潰させてもらった。あの竜騎士達と同じように肉塊になりたくないなら今すぐ降伏しなさい!私達の名誉に誓って命の安全は保証するわ。」


その時、


[グオォォォォ!]


リッジが帝国軍の近くに機銃掃射を行い、威嚇を行った。

上空にはVTOLモードで飛行しながら機関砲を向けるASF-Xと、旋回しながら機銃を帝国軍に向ける大量のヘリが我が物顔で飛び回り、帝国軍を威圧していた。


「さぁ、どうする?1分あげるわ。その間に、戦うのか、降伏するのか、取引でも持ちかけるのか、選びなさい。」


私がそう言うと、帝国軍はざわつき始め、1分たつと、白い馬に乗った青い髪の少女が進み出た。


「レイシス帝国陸軍第3重歩兵連隊第2大隊隊長のセシリア・リンドブルムよ。あなたと取引がしたい。」


「取引?」


「ええ、私と闘って私が勝ったら部下達を見逃して欲しい。」


「私が勝ったら?」


「私を含む全員が降伏するわ。無論負けるつもりはないけどね。」


「その言葉そっくりそのまま返してあげるわ。それにしても、大した自信ね。」


「伊達にこの部隊を任されているわけではないからね。そっちこそ、腰の剣が飾りじゃないと良いんだけど。」


「気になるなら試してみなさい。おっと、始める前にルールを決めましょう。私は相手の殺害の禁止を提案するわ。」


「あら?随分弱気みたいじゃない?」


「私が勝ってもあなたが死んだら私の目的が果たせないのよ。」


「そう。別にいいけど。それじゃあ、勝負は1対1、殺害禁止で、相手を無力化するか、参ったと言わせた方の勝ちで。」


「了解。」


私は頷き、腰の鞘から草薙を抜いた。


「へぇ、片刃の剣とは。ヤーハンのサムライが使うカタナ見たいね。」


「ご名答。この剣はれっきとした刀よ。もっとも、ヤーハン製じゃないけどね。そっちこそ、真っ青な刀身のレイピアとは、面白い物持っているじゃない。」


「私の住んでいた村に代々伝わって来た魔剣よ。私の長年の相棒よ。」


私とセシリアは剣を構え、互いにの間に緊張が走り、タイミングを待った。

体感時間では何倍にも感じた5秒が過ぎた時、私達の頭上をMH-60Mが通過し、それを合図にセシリアが身体能力が強化されているのか、一瞬で私の近くまで移動し、海の様に青い剣を横凪ぎにふった。


[キィン!]


私はそれを難なく受け止め、唾競り合いの状態になった。


「良く受け止めたわね。今のを受け止められる人は帝国にもそう多くはないわよ。」


「へぇ、でもまだ本気じゃないんでしょう?」


「当然!」


セシリアは後ろに飛び退き、距離を取ると、剣に手を当て、何かを呟いた。

すると、魔方陣の様なものが剣の回りに現れ、剣から水が滴り始めた。


「水の魔剣ね。」


「この剣は璃々色金で出来ていて水を操る事が出来るのよ。」


セシリアはそう言うと、水を操り、馬を作り上げた。


「便利な物ね。これは私も本気を出すとしますか。」


私は草薙のスイッチを高周波モードに切り替えた。


「?何も変化が無いようだけど?」


「ふふふ、打ち合えば嫌でも分かるわよ。さぁ、そっちからどうぞ。」


「お言葉に甘えさせてもらうわ!」


セシリアはさっき以上の速度で動き回りながら、水を矢のように打ち出し、牽制しながら自身も切り込んできた。

私はセシリアが動き始めると同時にオーバードライブを起動した。

私の視界が非常にゆっくりとした物となり、迫り来る水の矢とセシリアの姿をはっきりと視認する事が出来た。

私はジェットパックのブーストを起動し、自分の体に命中しそうな水の矢を剣で叩き落としながら、セシリアに突撃した。

まさか水の矢を叩き落としされた上、逆に突撃されるとは思っていなかったようで、セシリアが驚愕を顔に浮かべるのがゆっくりとした視界に映った。私は草薙をセシリアの首目掛けてふると、セシリアは魔剣をコース上に動かし、防御しようとした。


[シャイン!]


金属同士が擦れる音が響いた直後、セシリアの手にしていた魔剣が半ばから真っ二つに切断された。


「え?」


私はそのまま剣を返し、高周波モードとオーバードライブを切り、


「私の勝ちよ。」


そう言いながら、セシリアの首に峰打ちを叩き込み、意識を刈り取った。


[ガッ!]


鈍い音がしてすぐにセシリアは意識を失い、倒れようとしていたのを受け止め、そっと地面に寝かせると、帝国軍に声をかけた。


「見ての通り勝負は私の勝ちだ!約束通り大人しく降伏しなさい!降伏するなら、武器を捨て、膝をついて両手を頭の後ろで組みなさい!言って置くけど、これが怪我しないで済む最後のチャンスよ。」


私がそういうと、映像で見たセシリアと話していた少年とベテランの風格を漂わせる男達、いかにも叩き上げと言った指揮官等のある程度の実力があるか、冷静な判断が出来る者達は、私達との実力の差を実感し、素直に言われた通りに動いたが、


「そんな事出来る訳無いだろう!」


「第一、俺達が負けた訳じゃない!」


「何をしているんだ!さっさと立ち上がれ!」


やけに豪華な鎧を着た貴族の様な男を中心とした約500人ほどは回りの者達にそう叫び、徹底抗戦を呼び掛けた。

私は無線で短く命令をした後、500人に対して声をかけた。


「負けて無いと思うならまとめてかかって来なさい。私達が相手になってあげるわ。ほら、どうしたの?あんだけ言っておいてかかって来ないの?この腰抜けが!」


私がそう挑発すると、


「何だと、この小娘が!」


「全員!あの小娘を始末しろ!」


と簡単に挑発に乗り、突撃してきた。


「はぁぁ、やっぱり間抜けじゃない。スタンバイ。」


私は無線にそう告げた。

500人が私達と降伏した帝国軍の中間あたりに来たところで、次の命令を出した。


「撃て。」


私がそう命令した直後、戦闘を走っていた男の足、指揮官と思われる男の肩、弓兵の腕にほとんど同時に風穴が空いた。


「ウグゥゥ!な、何が起こったんだ?!」


500人は突然の事態に混乱に陥り、歩みを止めた。その間も丘の射撃陣地に隠れているスナイパー達に狙撃されていき、100人ほどが負傷したところで射撃を止めさせた。


「さて、まだ続けて欲しいですか?」


私が笑顔でそう言うと、兵士のほとんどは恐怖の声を出した。


「と、当然だ!」


貴族の男が答えた。


「このままでは部隊が全滅しますよ?」


「それがどうした?誇りの為に、死ぬのだ、本望であろう!」


「そうですか。では死んでください。」


「は?」


私は素早く銃を構え、男の頭に向けて発砲した。


[シュ]


と非常に小さな音と共に放たれた6.8mm弾は男の額に狙い通りに命中し、男の命を刈り取り、脳をかき混ぜて後頭部から抜けた。


「さて、同じ目に合いたくなかったら今すぐ降伏した方が良いですよ。というか、さっさと降伏しろ。貴様等の勝ち目はもうない、ここからはそうすれば生き残れるか、良く考えろ。」


私がそう言うと、とうとう500人の心が折れ、全員が膝をついて両手を頭の後ろで組み、降伏した。


「それでいい。

メディック!負傷者の治療を!重傷者はヘリで後送しろ!残りは部隊で集まり、捕虜の武装解除を行え!」


「「「「「了解!」」」」」


私の命令を受け、ヘリが着陸し、ヘリで待機していた隊員達が降下し、作業を開始した。


私の周りにはシルキーの面々が集まって来た。

私は全員を連れて魔術師隊と領主の所に向かった。


「戦闘は終了しました。あなた方の重傷者の応急手当は済ませたそうなのでしばらくは保ちますが、このまま死なれては寝覚めが悪いので、危険な状態の者は私達の基地に運び、治療を施します。それと、この戦闘で発生した捕虜は全て私達が引き取ります。よろしいですね?」


私は有無を言わせぬ勢いでそう告げ、領主のフィルデナンドは今までの戦いで私達の実力を認識したのか、すぐに頷いたが、


「な、何を言っているんだ!」


魔術師隊隊長のトマスが食って掛かってきた。


「貴様等の様な怪しい連中に仲間を預けられるか!それに、捕虜は我々が受けた損害を埋める為に働いてもらうのだ!そう簡単に渡せる訳が「では、私達と戦いますか?」


私がそう言うと同時に仲間達が魔術師達に銃を向けた。


「あなたはご自分の立場を理解しているんですか?私達が来なければあなた達は間違いなく全滅していましたよ。それも戦術的な全滅ではなく。この状況であなたに出来るのは、私達に対して怒鳴る事ではなく、託す事だけです。それと恫喝が通用するのは自分よりも弱い相手に対してだけです。あなたの不用意な一言のせいで仲間全員が危険に曝される事もあると言う事を良く考える事ですね。」


私が見下す様にそう言うと、トマスは杖を構え魔術を放とうとした。


「隊長!止め」


後ろにいた魔術師の1人が止めようとしたが、その前に、


「はいはい。無駄無駄。」


「な?!グエ!」


[ドスン!]


光学迷彩で隠れていたアナトがCQCをかけ、トマスを1回転させて地面に背中から叩きつけた。


「ガハ!グゥゥ!」


突然アナトに投げられたトマスは、受け身も取れず地面で悶えた。


「だから良く考えろと言っておいたのに。」


私がそう言うと、更に数人が光学迷彩を解除して現れた。

私は圧倒的な差を見せられて震える領主と魔術師達に近付き、


「次に隊長を決める時は能力だけでなく人間性も見た方が良いですよ。

それと、皆さんの魔術は確かに強力です。ただ、今回は使い方が非常に悪かった。もっと使い方を応用出来れば更に強くなれると思いますよ。諦めずに頑張って下さい。後の事は私達に任せて、今日はゆっくり休んで下さい。それでは。」


私は領主と魔術師達にそう言い残し作業の手伝いを始めた。



[17:30時]



大量の捕虜と負傷者を基地から飛んで来たヘリに載せ、作業があらかた終了し、私達も基地に帰ろうとしていた。


「ドレイクさんに親衛軍の皆さん!今日はすいませんでした!本来ならあなた方にも出番があったんですが!」


私は後ろで待機しているMH-60Mの爆音に負けない様に言った。


「構わんさ!あんた達の戦いを間近で見れたし、街は守られたからな!一緒にいられた事を誇りに思うよ!」


ドレイクさんと親衛軍の隊員達は私に敬礼をした。


「私もそう思います!それではまた!」


私は敬礼で返し、待機していたMH-60Mに乗り、基地への帰路についた。



[9月1日 11:00時]

〈フォート・ディール 中央区画 病院〉

レイシス帝国陸軍 第3重歩兵連隊連隊長 セシリア・リンドブルム



「う?」


私が目を覚ましたのは白を基調とした見慣れない物だらけの部屋だった。


「ここは?うぅ…頭が痛い。私は一体…。」


頭が少しもうろうとしていたが、しばらくするとはっきりと思い出す事が出来た。


「そうだ…。私は負けたんだ……。」


私は部下達への謝罪の気持ちで一杯になっていると、


[ピ! ガラ]


という音と共に、数人にが部屋に入ってきた。

部屋に入ってきたのは、嬉しそうな、それでいて不安そうな顔をした副官のウィル・マイアーズ、複雑な模様の服を着た亜人と人間の少女の3人、そして、


「目を覚ました見たいね。」


私を負かした怪しく赤く光る目を持った年の近い少女だった。


「気分はどう?」


赤い目の少女、確か名前は七海、はそう聞いてきた。


「負けた事を思い出して落ち込んでいた所よ。」


私がそう答えると、


「そう。

あなたには良い知らせと悪い知らせの両方があるんだけど、どっちから聞きたい?」


七海は近くにあった椅子に座って言った。


「……………良い知らせからお願い。」


捕まった時点で良い知らせも何も無いだろうに、と思いながら答えた。


「了解。まず、あなたのお仲間だけど、あなたが負けた後に襲いかかってきた貴族、チャッフィンだったかしら?そいつと、そいつの指揮する部隊、約500人を除く全員は無傷で、今も近くにいるわ。」


「ほ、本当に!良かった。」


私は部下達がほとんど無傷だと聞き、安堵のため息をはいた。


「それじゃあ悪い知らせよ。まずはこれを見てもらおうかしら。有希。」


『はい。』


そう言って、七海は後ろに控えていた、同じ銀髪に赤い目の少女から薄い板の様な物を受け取り、何か操作をして私に差し出した。


「板に人が?!それに………ブレイ大領達?」


その板にはあの日囮部隊を率いていた、貴族の達があの日の格好で動いていた。


「それは私達が戦闘が始まる前に記録した、あの日に実際にあった事よ。かなりショックだと思うけど、聞いてみて。」


七海はそう言って私に聞くように促した。


『……し、あの小娘もなかなかわかっているじゃないか。我々に先鋒を任せるとは。』


『そうですな。魔剣使いとはいえ、所詮16の小娘。我々ベテランに手柄を譲るのが普通。』


『しかし、このままあの娘の力が強まるのは面白くないな。』


『なに、この戦いに勝ったら適当な罪を被せて処刑してしまえば良い。そうすれば我等には魔剣と優秀な兵士が手に入る。』


『あの娘共は本当に良く働いてくれた。自分達の家族と村の仇が亜人共と思い込み、真の仇の為にな。』


そこで会話は終わったが、私はあまりの衝撃に呆然としてしまった。。


「そ、そんな……。う、嘘よ。でなかったら、私は、村の、家族の仇の為に、何の罪も無い亜人達を恨んで、傷つけて、殺してきたっていうの?」


「残念だけど、この話は事実のようよ。これを見て。」


七海は私から板を取り、何か操作をして私に渡してきた。


「?これは?」


板には書類が映っていた。


「私の仲間が帝国の城の資料室で見付けた資料よ。」


私はじっくりとその資料を読んでいった。

資料には、国民に亜人に対する恨みを持たせる為、貴族が私腹を肥やす為に、国境沿いの村や町を亜人の仕業に見せかけて定期的に略奪を行う、という作戦命令書と、その王の印、作戦の対象にされ、襲われた村の名前が記録されていた。

そして、襲われた村の名前の中には、私が10年間、家族と共に過ごしてきた村の名前もあった。


「そんな…!何で……!こんな理不尽な事が、あって良いの?!私達は、何も知らないで!家族の仇の為に、命懸けで、殺し合いをして、何もしていない亜人達を、殺して……!」


私は怒りと、悲しみ、悔しさに襲われ、涙を流しながら震えた。


「そして、これが生き残った貴族の指揮官の尋問の映像よ。」


七海は再び板を操作して私に渡した。

そこには、身体に包帯を巻いたブレイ大領が映っていた。


『それで?もう一度言ってくれないか?』


『さっきから言っているだろう!私達はあのセシリアとかいう小娘に騙されたんだ!何が敵はまともな戦略も無い雑魚だ!おかげで1000人が壊滅だ!』


『騙していたのはあんた達の方じゃないのか?村を襲って、亜人のせいにして恨みを増長させた上で私腹を肥やしていたんだろ?』


『ふん!何の問題がある?生き残りは兵士としての職を得て、他の者は帝国の繁栄の礎となれたのだ!死んだ者も本望だろう!』


『………そうか。よーく分かったよ。』


そこで映像は止まったが、


「ふざけないで!!!」


私は怒りに任せて板を壁に向け投げた。

壁に激突した板がバラバラになったが、怒りと悔しさに支配されている私は全く気にしていなかった。


「[あぁ、私のタブレットが…]

さて、この事実を知ったあなたは、


何がしたい?


直接聞かせてくれる?」


七海は邪悪な笑みを浮かべながら聞いてきた。


「何がしたいか、ですって?決まっているでしょう!私は!帝国が許せない!村を!友達を!家族を!自分達で破壊して!私腹を肥やして!利用して!私達を騙して!絶対に許せない!」


私の心からの叫びを聞いた七海は、


「なら、私達と来なさい。」


私にそう持ちかけた。


「え?」


「私達のこの戦争での最終目標は、あなたの様な人を大陸中で作っている帝国を叩き潰す事。私達があなたの恨みを引き継いでも良いけど、どうせなら自分で殺りたくない?」


七海は天使の様な、それでいて悪魔の様な不思議な笑みを浮かべた。


「そ、それは、出来れば自分でやりたいけど…。良いの?私達は敵でしょう?」


「少し前までは、ね。でも、今のあなたは帝国の人間じゃない。そうでしょう?」


七海は不思議な笑みから一転、無邪気な子どもの様な笑みを浮かべた。


「………あははは!面白い人ねあなた!」


私は思わず笑ってしまった。心にたまっていた鬱憤が少し消えた気がした。

七海は少し恥ずかしそうにすると、ハンカチを取りだし、私の顔を拭いた。


「ありがとう。決めたわ。私はあなたについて行く。私の命と身体をあなたに預けるわ。」


私は七海に右手を差しだし、七海は私の手をぎゅっと握った。


「これからよろしくね。ウィル君。そういう事で、結果を待ってるお仲間に伝えて来たら?」


「はい!失礼します!」


ウィルはそう言って部屋を飛び出していった。


「そういえば、何でウィルも一緒に?」


「あの映像と資料はあらかじめあなたの部隊の1人1人に見せておいたのよ。その中であなたと同じように復讐を望んだ人がいたんだけど、ウィル君を含む多くは、あなたに従うと言っていたのよ。ウィル君は全員の代表としてあなたの答えを聞きに来ていたのよ。」


「成る程。」


「さて、あなたは私の部下になってもらう訳だけど、まだしっかりとした自己紹介をしていないわね。

私は七海優香、優香かフェアリーと呼んでちょうだい。11月生まれの18歳で、好きな色は黒。そして、フェンリル軍ギルド派遣部隊第1独立大隊の隊長であり、軍事国家フェンリルの総帥よ。」


「総帥?」


「国王よ。」


七海が自慢気に言った答えに、

私は思いっきり噎せてしまった。


「げほ!ごほ!こ、国王?!あなたが?!この国の?!」


「びっくりした?」


七海はイタズラに成功した子どものように笑った。


「あ、当たり前でしょ!?だれが自分が最前線で決闘して負けた相手を国王だと思うもんですか!」


「まぁ、まぁ。そんなどうでもいい事は置いておいて。次はあなたの番よ。」


「……私はセシリア・リンドブルム。9月生まれで17歳よ。好きな色は青。元帝国陸軍第2重歩兵連隊連隊長よ。」


「これからよろしく。セシリア。」


七海は私に手を差しだし、ベッドから立たせた。


「よろしく。これからどこかに行くの、行くんですか?」


「セシリアの部下達のところよ。それと、私の事は呼び捨てで良いし、敬語もいらないわよ。呼び方も優香かフェアリーで。」


「優香、あなたって本当に変わった国王ね。」


「誉め言葉として受け取っておくわ。さあ、行きましょう。」


優香は私の手を引き部屋を飛び出していった。

私はその時、久しぶりに心の底から笑えた様な気がした。

戦いに敗れ、国にも裏切られたが、私は部下と一緒にとても変わった年の近い少女が納める国に加わった。その点だけは、裏切られて良かったかもしれない、と私に笑顔を向ける優香を見てそう思った。

前書きでも書きましたが先週休んでしまい申し訳ありませんでした。色々ありまして投稿できませんでした。今後は気をつけます。


今回の迷言です。今回は『METAL GEAR SOLID 2』からです。


ソリッド・スネーク「心配ない。無限バンダナだ。」


弾を渡すと言われた雷電が「あんたは大丈夫か?」と聞いた時のスネークの言葉です。

初めてやった時は吹きました。まさか正式なセリフとして出ると思っていなかったので。


次回は、他の町で戦うグリーンベレーと親衛軍の話になります。


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