第2章08 ルイース大陸大国会議と開戦
[7月27日 11:00時]
〈中立国セントラル 首都ドグマ アーク大宮殿〉
アメックス王国国王 フィリップ・アメックス
大国会議当日となり、わしはオリハルコンやミスリル、イロカネの装備を着けた親衛軍の軍勢と共に大宮殿にやってきた。
空を見るとドラコグレイスの竜騎士や竜人が大量にやってくる所だった。
「おお!そこにおるのはフィリップ殿ではないか!」
一際立派な竜に乗っていたエメラルドの鱗を持つ竜人の男性が声をかけてきた。
「その声はケツァル殿ですな?」
「うむ!既にレミー殿とトクヤマ殿は来ているようだな。遠くにレイシスの者共も見えておるし、これでいつもの5カ国は揃ったのう!
そういえばフィリップ殿!事前に連絡のあった会議に参加する6カ国目はどこにおるのだ?その国の者にワシの姪が助けてもらったようでの。是非とも一度会って起きたいと思っておったのだが、」
「はっはっは!彼等は最後ですよ。一番力のある者が最後に、ド派手に来るのがこの会議の習わしですからなぁ!それでは行きましょう。今回からはレイシスなんて気にしなくても良くなりますぞ。」
「良くわからんが、フィリップ殿がそこまで言うのだ。楽しみにしておるよ。」
わし達は雑談をしながら会議場に入って行った。
中には既にエーリンガムの王女のレミー・エーリンガム殿とのヤーハン首相のトクヤマ・フミヒコ殿が待っていた。
「フィリップ殿。お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
「レミー殿も相変わらずお美しいですな。」
「おやおや、ナンパですか?本当にお元気そうですな。」
「トクヤマ殿も相変わらずですな。」
わしは2人と簡単な挨拶をして席に着いた。
しばらく話をしていると、会場の扉が乱暴に開かれ、男が入ってきた。
「待たせたな。それでは会議を始めようか?」
男、レイシス帝国皇帝、アレハンド・レイシスは入ってくるとそう言った。
「いえ。アレハンド殿。まだ1国来ておりませんよ。」
トクヤマ殿がそう言うと、アレハンドは顔を真っ赤にして怒りだした。
「何!新参者のどこともしれない聞いたこともない国ごときが最後に来るとは何事だ!」
「フッ。」
わしはその何度も言われてきたセリフを聞いて思わず笑ってしまった。
「フィリップ!貴様!今笑ったな!」
「いや、あまりにも見事な井の中の蛙っぷりでしてな。彼女等はこの5カ国、いや。この世界で最も素晴らしく、強力な者達ですぞ。」
わしがそう言うと、
「ん?何でしょう?キーンと言う音と、バタバタと言う音が近付いてきます!それも物凄い速さで!」
レミー殿がエルフの聴覚で彼女達が近付く音を聞いたようだ。
「彼女等の到着ですな。皆さん。外に行きましょう。」
わしは全員を連れて大宮殿の外に出た。
〈中立国セントラル 首都ドグマ上空 フェンリル陸軍第160特殊作戦飛行隊第1大隊第1中隊『ナイトストーカー』 ナイトストーカー・リード MH-60M〉
フェンリル軍 GDU 1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー
私達はMH-60M 10機とAH-6 10機、AAS-72 10機、AH-64D 5機とリッジバックス隊のASF-X8機と共に中立国セントラルの大宮殿に向けて飛行していた。
《こちらスラッシュ。大宮殿を視認。》
「スラッシュこちらフェアリー。フォーメーション開始。王達を驚かせてやりなさい。」
《了解。リッジバックス隊いくぞ。》
リッジバックス隊の8機が加速し、大宮殿の上空を低空でフライパスした。
《こちらガンスリンガー・リード。大宮殿は大騒ぎですよ。中から人が大慌てで出てきました。》
「もっと驚かせてやりましょう。ガンスリンガー隊を先頭に大宮殿上空をNOEでフライパスして、周囲を旋回し、大宮殿から方位085の地点に着陸する。」
《こちらガンスリンガー・リード了解。Follow us(我に続け)。》
《こちらナイトストーカー・リード。ナイトストーカー隊はガンスリンガー隊に続く。》
「リッジバックス隊はアクロバットが終わったら、ヘリの近くに着陸して。」
《リッジバックス、ウィルコ。》
「さぁ、行くわよ!」
私がそう言うとヘリ部隊が高度を下げ、低空を猛スピードで飛行し始めた。
〈中立国セントラル 首都ドグマ アーク大宮殿〉
アメックス王国国王 フィリップ・アメックス
外に出ると轟音と共に頭上を飛行機とか言う8本の空飛ぶ剣が通り過ぎ、続いて30以上のヘリコプターと言う空飛ぶ箱が轟音と風を起こして通り過ぎ、大宮殿の近くに降り立った。
「何なのだ!あの空飛ぶ剣に箱は?!」
とケツァル殿が音に負けないように叫んだ。
「あれが彼女等の乗り物ですぞ。お。噂をすれば。彼女が来ましたぞ。」
わしが着陸したヘリコプターを見ていると、一つのヘリコプターの前に兵士が並び、箱の中から、濃い緑の服を着た、銀髪の美しい女性と大勢の明らかに士官級の人間が降りてきて、こちらに歩いてきた。
〈中立国セントラル 首都ドグマ アーク大宮殿〉
フェンリル軍GDU1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー
私はブラックホークを降り、私の両親、護衛を務める有希、シャル、アナト、サンドマン、テンマ、カイヒメ、陸海空海兵憲兵の各司令官、本土から来た私の副官兼内務担当のキャロル・マクスウェル他各大臣、と一緒に大宮殿に向けて歩き出した。
「お久しぶりです。言われた通りド派手に登場しましたがいかがでしたか?」
「わはは!最高じゃったよ。さすがとしか言いようがないわ!そうじゃった、この大国会議中は王同士は互いに殿をつけて呼ぶ事が慣習でな。」
「では、フィリップ殿と、」
「わしもそなたの事は七海殿と呼ぼう。」
私達が話していると、竜人族の男性とエルフの女性、黒髪の人族の男性が話しかけてきた。
「フィリップ殿、そろそろ私達にも紹介してもらえないかしら?」
「そうですよ。」
「ワシも姪の事を聞きたいしのう。」
「それではそろそろ会議場に戻るとしますか。」
私を睨み付けている金髪の男性を残して、私達は宮殿に入った。
〈中立国セントラル 首都ドグマ アーク大宮殿 会議場〉
「5大国の王の皆さん、はじめまして。私は軍事国家フェンリルの総帥、国王みたいなものです、を務める七海優香です。他の者は軍の司令官と内務を請け負う大臣達です。今回はフィリップ殿の紹介でこの大国会議に参加させていただけた事を嬉しく思います。フィリップ殿のお話では、アメックス王国軍と私達フェンリル軍が拘束した犯罪者について話があると聞いたのですが、レイシス帝国の国王はどなたですか?」
私を睨み付けていた金髪の男が怒鳴り散らしながら立ち上がった。
「貴様!どこともしれない国の小娘ごときが誇りあるレイシス帝国の皇帝であるわしを愚弄するか!わしがレイシス帝国皇帝のアレハンド・レイシスだ!」
「なるほど、あなたが。それで、私達が拘束した犯罪者について話があるそうですが、一体何の話ですか?」
「決まっておろう!そ奴等はわしが他国での商売や活動を許可しておるのだ!つまり、それを捕らえると言う事は我が帝国を敵に回すと言う事だ!攻め込まれたく無いのなら、即刻全員を解放しろ!」
「つまり、機密情報の強奪未遂、強姦未遂、誘拐、人身売買、殺人は全て、帝国の名のもとに行われ、その上それらを全て許して犯人を無罪で解放しろさもなくばフェンリルに攻め込むと?」
「そうだ!第一、我が帝国の礎となれるのだ、本望であ『ふざけた事を言うのは止めていただけますか?この阿呆が。』は?」
唐突に大声を上げて割り込んだ私に呆気にとられたようで、アレハンドは黙ってしまった。
「他国に入国した以上、その国のルールには従わなければならない。それは当然の事です。そして、その商人や貴族はわが国とアメックス王国のルールを破り、国民に重大な被害を与えました。これを捕らえ、我が国の法で裁いて何の問題がありますか?私達の常識では重大な犯罪者やテロリストには慈悲も温情も許しも人権も存在しません。当然ルールを守っていただければ問題ないですし、私達にバレないのならそれも別にいいです。ただし、私達の見える範囲で行われた行為に関しては到底見過ごす事は出来ません。つまり、そいつ等はへまをしたんですよ。そして、へまをした犯罪者を解放するつもりはさらさらないです。しっかりと罪を償ってから出て来るのを待つ事ですね。
それと先程のあなたの発言は我が国への宣戦布告と取っても宜しいのですか?2、3忠告させてもらいますが、国際政治の場ではちょっとした発言が命取りになるので、冷静に良く考えて発言しましょう。宣戦布告をする時は勢いに任せて出なく準備を万端にしてからにしましょう。そして一番重要な事ですが、」
私は威圧感を全開にし、蔑むような笑顔を浮かべた。
『宣戦布告をする時はしっかりと勝てる相手を選んでしなさい。』
私がそこまで言ってようやく我を取り戻したアレハンドは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「貴様!我が帝国の人間を拘束しただけでは飽きたらず、ルイース大陸で最強を誇る我が帝国を格下に見るとは何事だ!」
「あなたのような人をなんと言うか教えて差し上げましょう。井の中の蛙と言うんですよ。狭い所で威張って周りを見ないあなたにぴったりです。」
「我が帝国には3000年に渡る歴史があるのだ!最近現れた国になど負けるものか!」
「何時までも傲っていると足下をすくわれますよ。この世で常に栄えるものなど存在せず、いつか終わりが来るものです。レイシス帝国にはそれが訪れたんですよ。」
「不愉快だ!わしは帰るぞ!フィリップ!あの小娘は貴様の差し金だったな?!我がレイシス帝国はフェンリルとアメックス王国に宣戦布告する!身の程をわきまえさせてやるから覚悟しておけ!開戦は1月後だ!精々足掻く準備でもしておくんだな!」
アレハンドとレイシス帝国の重役達は会議場を後にし、レイシス帝国の軍と共に去っていった。
「さて、邪魔者も消え失せた事ですし、会議を続けていただけますか?」
「「「待ってください[待つのだ][待ちなさい]!」」」
私とフィリップ殿を除く3人が叫んだ。
「?何か?」
「『何か?』じゃないですよ!良いんですか?!帝国に喧嘩売って!失礼ですが、あなたの国、フェンリルよりは強いと思いますよ!」
「そうよ!奴等人員、船、馬車、竜、アーティファクトの数はこの大陸で最も多いのよ!いくらあの変なものがあるからって!」
「ワシ等3国が集まっても、防衛が精一杯で攻め込む事も出来ないのだぞ!」
「落ち着いてください。まず、自己紹介をしましょう。話はそれからです。
先程も言いましたが、私は七海優香。軍事国家フェンリルの総帥です。」
「………私は魔術国家ヤーハンの首相のトクヤマ・フミヒコです。」
「私は多種族国家エーリンガムのレミー・エーリンガムよ。」
「ワシは竜人国家ドラコグレイスのケツァル・ドラコグレイスだ。」
「なるほど。それでは、質問に答えていきましょう。
まずはこれを見てもらえますか?母さん、あの写真を。」
「これね?」
私は母さんから写真の入ったファイルを受け取り、トクヤマさんに渡した。
「これは、絵、ですか?こんなにも精巧な絵があるなんて。」
「絵は問題ではありません。その絵に写ったものを皆さんで見てください。」
そう言うと3人が集まって、写真を見始めた。
「これは船、ですか?」
「ん?こ、この船帝国海軍の旗を掲げているではないか?!」
「本当だわ!え?!それがなんでこんなにボロボロで、しかも七海殿がどうして写っているの?!それにこの巨大な灰色の塊は何?!」
3人が一斉に私を見た。
「これは7月16日に撮影されたものです。その日我が国の海軍が演習中に人魚狩りをしている帝国海軍の艦隊を発見し、人魚を救出する為に強襲し、制圧しました。この戦闘における我が軍の死傷者は0、帝国海軍第2艦隊の大半を捕らえました。」
「「「はあ!?」」」
「さすがじゃな、七海殿。歴戦の帝国海軍相手に無傷で勝利とはな。さすがは異世界最強の軍隊じゃなあ。」
「「「異世界?!」」」
「フィリップ殿から教えられていなかったようですね。フェンリルは最近この世界に異世界から転移して来ました。フェンリルは転移前は世界最強の軍事国家として名が知られていました。」
「そう言えば姪のレヴィも言っておったな。とてつもない破壊力を持つ兵器を大量に保持する異世界の軍隊だと。まさか本当だとは思っておらんかった。」
「レヴィは無事に帰れたようですね。良かったです。」
「七海殿?!お主レヴィを知っておるのか?!」
「知っているも何も、私とそこにいる3人で彼女を助けたんですよ。」
「そうであったか!レヴィが危ない目にあった所を助けてくれた事、深く感謝する!」
ケツァルさんが頭を下げた。
「頭を上げてください。私達は当然の事をしたまでです。困っている人がいたら助けるのは当たり前の事です。」
「お主とは良い友人になれそうじゃ。今日はレヴィも来ておるから後で会ってやってくれ。」
「わかりました。」
私とケツァルさんが信頼を固めていると、
「あの、話がズレていませんか?」
トクヤマさんがそう言った。
「そうですね。次に行きましょう。
レミー殿、帝国軍の主要兵力を教えていただけますか?」
「そうね、総兵力は46万人、艦艇数248隻、竜340頭、軍用馬車200両だった筈よ。」
「武器は剣や弓、投石、大砲、魔術、竜ですね?」
「そうね。」
「そうですか。それではフェンリル軍の総兵力を半分以下にしてお教えしましょう。
総兵力126万人[573万人]、艦艇数563隻[2243隻]、航空機1786機[5236機]、車両5739両[12756両]程です。」
「「「…………は?」」」
「航空機は先ほど私達が乗ってきた乗り物で、車両は馬が引かなくても馬以上に速く走れる馬車みたいなもので、艦艇は先ほどの絵に写っていた金属の塊です。
そして、私達の武器は剣ではありません。」
「「「え?」」」
「見てもらった方が早いですね。外に行きましょう。」
私は王達を連れて外に出た。
〈中立国セントラル 首都ドグマ 演習場〉
セントラルの人に軍の演習場に連れてきてもらい、私は王達を前に説明を始めた。
「まず、私達がいた世界では、剣などの武器は殆ど使いません。変わりにこれを使います。」
私はM5Aを掲げて見せた。
「これは銃という武器です。簡単に言うと、大砲を小型化して、命中精度、貫通力、射程距離を伸ばしたものです。
50m先に鎧が置いてありますね?あれはレイシス帝国軍の重鎧だそうです。今から撃ってみます。」
私はM5Aを構え、セミオートにし、5回引き金を引いた。
[ダダダダダン!]
発射された5発の6.8mm弾は鎧を貫通し、穴だらけにした。
「このように、私達の武器は遠距離から頭や首に正確に一撃を加える武器です。そしてこれを強力にしたものが、車両、航空機、艦艇に積まれています。それでは見てもらいましょう。」
私は無線を取った。
「ガンスリンガー・リード、こちらフェアリー。機銃掃射を行え。」
《了解。》
すぐにAH-64Dが飛来し、私達の頭上で30mmを掃射した。
《掃射完了。待機地点に戻る。》
「とまあ、こんな具合です。ここまで見てどう思いました?」
「なんと言うか………」
「終わったわね、レイシス…………」
「相手を知っておく事はこれほど重要だとは………」
3人と大臣達は青ざめた顔をしていた。
「大丈夫ですよ。私達はそちらに攻め込むつもりはありません。………そちらから手を出さなければ。」
私の氷のように冷たい顔を見た3人と大臣達は、皆苦笑いを浮かべた。
[7月31日 08:00時]
〈フォート・ディール 空軍区画 ヘリパッド〉
初日でレイシス帝国が退出した事以外は問題無く会議が進み、互いの軍との連携を深める為に交換要員を派遣する、軍部による合同演習を行う、有事の際は要請があれば救援などを派遣する、など様々な事を盛り込んだ条約を結ぶ事が出来た。私は会議が終わった時に3人の王達と大臣達にスマートフォンやタブレットを渡し、連絡方法を確立した後、3ヵ国の希望する者とMH-60Mに乗り込み、フォート・ディールに戻って来た。基地では既に宣戦布告を受けた事により、部隊の派遣の準備が始まっていた。
「う~ん。1週間くらいしか経ってないのに凄い久し振りに感じるね。」
そう言ってレヴィはブラックホークを降りた。
「あなたがいるとはケツァルさんから聞いていたけど、まさかウチに来るとは思っていなかったわ。」
「いやー、竜人王様が家族を大切にする方で良かったです。私がここに来たいって言った時にも色々準備していただけました。」
「それで、交換要員として来た訳だけど、所属はどうするの?私としては、基地で大人しくしてて欲しいんだけど。」
「いえ!是非とも私を使ってください!絶対役に立ちますから!それに文官の人も一緒に来ているから私は武官として軍につくのが妥当です!」
「う~ん。…………わかったわ。」
「!本当!」
「但し!これは他の人にも言うけど、軍に来る以上、私の指揮には従ってもらうし、厳しい訓練を受けてもらうよ。」
「望む所です!」
「元気がいいわね。これからよろしくね。」
「はい!よろしくお願いします!」
私達は固い握手をし、互いに友人同士となった。
[8月27日 10:00時]
〈フォート・ディール 中央区画 大会議場〉
開戦の日となり、会議場にはフォート・ディールにいる戦闘部隊長や艦長、航空要員が揃い、データリンクにより、他の基地の会議場にも繋げられ、異世界に転移してから最大級の会議が開かれた。
「全員、もうとっくに状況はわかっているな?今日私達はこの世界に来てから初の戦争が開かれる。
そして、相手が殺る気だと言うのは既に判明している。
1時間前レイシス帝国の基地を監視していた衛星とUAVがアメックス王国国境に向けて出発した歩兵部隊、海上部隊、竜騎士部隊を捉えている。
後顧の憂いを断つ為にも彼等にはここで消えてもらう。今回の戦争における対レイシス作戦を、以降はOperation Dragon Slayers[竜を討つ者達作戦]とする。Operation Dragon Slayersは大まかに言って3つのフェイズに別れている。
誘い込み、殲滅、侵攻だ。
我々だけで壊滅させるのは簡単だが、アメックス王国にもプライドがある。無用な軋轢を避ける為に全て我々で片付ける訳にもいかん。そこで我々はアメックス王国軍と共同戦線を張る。
王国軍の装備は、この世界で一般的な鎧や馬車が主流だが、親衛軍や一部の精鋭部隊にはフェンリルの技術者が協力して開発した自動車やライフルが配備されている。これは帝国に対してのアドバンテージになるだろうが、何分数が少ない。それを補う為、レイシス帝国軍にはアメックス王国軍と我々で用意したトラップゾーンまで入り込んでもらう。これが誘い込みだ。
そして、誘い込んだ部隊を包囲し、レイシス帝国に伝令を出させずに全ての侵攻部隊を潰す。これが殲滅だ。
後は簡単な話だ、すっかり有利に攻め込んでいると思っている帝国に侵攻し片を付ける。これが侵攻だ。
敵の部隊が国境に到着するまでは長い所で推定で8日。短い所で3日。それまでの間に敵が侵攻すると予測される地域に住む民間人を可能な限り退去させ、前線にトラップゾーンを構築する。
今の時点で質問は?」
グリーンベレー第1大隊大隊長のグレアム・ヤーボロー大佐が手を上げた。
「使用可能な兵装とROEはどうなっているんだ?」
「誘い込みが完了するまでは戦車と航空支援は無しよ。武装も誘い込むまでは派手なやつは禁止。ただ、正面戦闘が不可避となってしまった時には増援と航空支援を送るわ。」
「なるほど。」
続いてアバランチ隊隊長のフレッド・デュランが手を上げた。
「補給線を潰すのは俺達の仕事か?」
「そうね。前線の部隊に気付かれないように、敵陣深くで輸送の車列を爆撃してもらうわ。」
多紀が手を上げた。
「海軍の動きはどうなりますか?」
「海軍には敵艦隊がアメックス王国の200海里以内に侵入した際の撃滅を許可するわ。」
「了解。」
スペツナズのトリシャ・レシュコフ中佐が手を上げた。
「侵攻フェイズでのアメックス王国軍の動きの予定は?」
「侵攻フェイズではアメックス王国軍は自国の防衛に徹し、侵攻はフェンリルのみで行うわ。侵攻に不慣れな部隊を連れてきて足を引っ張られるのはごめんだ。」
「了解しました。」
「他に質問は?………よし。それでは各自作戦通りに頼むわよ。
私達に手を出すとどうなるか、思い知らせてやりなさい!」
《《《「「「応!」」」》》》
「作戦開始!私達の敵を喰らい殺しなさい!」
会議場から軍人達が飛び出し、着々と準備を整えて前線へと向かって行った。
異世界転移後初の戦争の火蓋が切って落とされた。
本当は副官が条約を結んだり、両親が帝国の大臣や軍人を威圧したりする所を書きたかったんですが、ボロが出そうなので止めました。
今回の迷言です。今回は『這い寄れ!ニャル子さん』からです。
ニャル子「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。」
這い寄れ!ニャル子さん、ではかなり可愛く描かれている邪神達ですが、元ネタのクトゥルフ神話だと触手だらけの不定形の化け物だったり、軽く地球を滅亡させたり出来る存在ですから、主人公が遠ざけようとするのもわかる気がします。
どれくらいヤバいかと言うと、見ただけで発狂して精神病院で何年も治療を受ける事になるレベルのヤバさです。
それにしても、そんな邪神達を可愛いキャラクターにする日本って一体何なんでしょうね。一番謎です。
次回は優香達第1独立大隊の戦闘[というより一方的な殲滅]となります。
ご意見ご感想をお待ちしています。




