第2章07 マッドサイエンティスト再びと新装備
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[7月20日 09:55時]
〈フォート・ディール 空軍区画 エプロン〉
フェンリル軍 GDU 1stIB 七海優香 TACネーム:フェアリー
技術研究所の平賀湊から、新装備を満載したC-5の大編隊が出発し、フォート・ディールに10:00時に到着すると連絡を受け、各地に展開していたGDUの特殊部隊や、各部隊の隊長達が空軍区画に集まっていたが。
「全然機影が見えないわね。遅れているのかしら?」
時間が近付いていると言うのに機影が見えず、集まっている隊員達も戸惑っていた。
「まさか墜落したとかじゃないわよね。」
私がそう呟くと、
[キーン!]
ジェットのエンジン音が聞こえてきた。
「来たみたいね。?機体はどこ?」
辺りを見ても機体が見えず、音だけが近付いてきた。
しばらく辺りを見回していると、唐突に空中に20機ほどのC-5が現れ、順番に着陸して行った。
全機が着陸してから、最初に着陸した機体に近付いた。
私達がC-5に着くと丁度カーゴベイが開き、湊が降りてきた。
「やあやあ、驚いてもらえたかな?」
「ええ、おかげさまでね。航空機用の光学迷彩が完成したのね。」
「これ以外にも沢山あるけどね。順番に紹介しよう。質問の時間は後であげるから、ひとまずは黙って聞いてくれ。」
技術研究所の職員がトレーラーを操作し、大量の装備が並べられた。
「まずはパワードスーツのアップグレードパーツから。」
そう言って湊は小さなランチャーのようなものを取り出した。
「これはフックランチャー。左腕に装着して、壁とかにワイヤーのついたフックを発射。ワイヤーを超高速で巻き取る事で素早く別の場所に移動出来る。射程は200m当然人間に突き刺して、相手を自分の所に引き寄せる事も出来るよ。」
フックランチャーをケースに戻し、小型のジェットのようなものを取り出した。
「これはジェットパックだね。ジャンプのアシストから高速ステップ、飛行と、色々出来るようになる。今まで使っていたスカイレイを大幅に上回る性能を誇っているよ。大気中の魔力と電気が燃料だけど、充填効率が悪くてね。フルの状態だと連続で5時間使えるけど、魔力を充填出来る人に頼むか、専用の充填機に繋げば1時間もかからずに使えるけど、自然充填だと20時間かかるんだ。」
ジェットパックをケースに戻し、U字型のパーツを取り出した。
「これはオーバードライブって言ってね。簡単に言うと、神経の伝達速度を上げて知覚を高速化、つまり周りがスローモーションになる装置だよ。これも魔力とバッテリーを使うけど、こっちは0からの自然充填でも4分で終わるから問題はないよ。起動!って心の中で思えば起動出来るよ。突入とか、繊細な作業が求められる時に使うといいよ。」
オーバードライブをしまい、地雷のような機械を取り出した。
「これは暗影石の効果を増幅させて、周囲の音を完全に消す装置だね。ミュートチャージって名前で、効果は30秒。効果中は最大で半径20m以内の音を完全に消してくれる。」
ミュートチャージを戻し、ライフルのようなものを取り出した。
「次は新開発した銃だよ。名前はELR1。超高出力レーザーを照射して目標物を焼く事が出来る。こいつはバッテリー式で、照射可能時間は2分40秒。時間を過ぎたらバッテリーのチャージと銃身の冷却に3分かかる。この辺はまだ試作品だからしょうがないね。この世界には物理攻撃が効かない生物もいるみたいだけど、こいつならある程度は効くはずだよ。」
ライフルを戻し、私達に向き直った。
「次が歩兵用装備では最後だね。さっきまでのも次のやつも魔法と魔術の力が無いと完成しなかったね。いやー。本当に凄いと思ったよ。完全に物理法則を無視しているんだもの。それじゃあ最後の装備だよ。正直これは殆ど魔法のおかげだね。」
そう言って湊は胸に着けるタイプと腰に着けるタイプの2種類のポーチを取り出した。
「君達はゲームをやってる時に、『お前こんなデカい武器どこから、どうやって取り出したんだよ!』って思った事無いかい?このポーチはいわゆる4次元ポーチさ。明らかにポーチより巨大なものを入れられて、好きなときに取り出せる。ただ、これには制限があって、生き物を入れることは出来ないし、合計で260kgまでが限界だね。コストパフォーマンスが最悪だから特殊部隊への配備に限定するつもりだよ。
さて、これで歩兵用装備は終わりだけど、何か質問は?」
「「「「「大有りだ!」」」」」
「うんうん。その反応は予想通りだよ。それじゃあ代表としてフェアリー、質問をどうぞ。」
「それじゃあ言うわね。
フックランチャーとレーザーライフル、ミュートチャージはもう別に良いわ。問題はそれ以外よ。ジェットパックは降下のアシスト程度しか出来ないと聞いていたんだけど?」
「今まではね。スカイレイでは重量と風速冷却とかの問題で、長時間、高速での飛行は無理だったんだけど、最近ジェットの代わりになる魔石が見つかってね。重さはスカイレイのエンジンの10分の1、大きさは子供の拳程度なのに、スカイレイのエンジンの6倍の出力を持っていたんだ。それを使う事でエンジンの問題は解決。風速冷却は、魔法を付与すれば避けられる。本当に便利だね。」
「大丈夫なの?」
「当然自分で試したさ。結果は問題無し!快適な飛行だったよ。」
「それなら良いわ。
次よ。4次元ポーチって、一体どうやって作ったのよ。」
「それはね、この世界にはダンジョンがあるだろう?そこでは稀にマジックポーチと呼ばれるアーティファクトが出るらしくてね、サイズの割に合わないほど大量の荷物を入れられるものでね。王国の魔術師が持っていたから解析してみたんだ。その時には魔法の解析もあらかた終わっていたから結構簡単に解析出来たよ。その結果は後でフェアリーのデスクにまとめておくよ。それで、解析してみた所、簡単な魔法で作れるとわかったんで、軍で使えるように色々組み合わせて作ってみた。詳しく説明しても良いけど、3時間はかかるよ。」
「………やっぱりいいわ。ちゃんと使えるなら。」
「世の中には理屈じゃ解らない事も多いんだよフェアリー。
それじゃあ、パワードスーツのアップグレードをするから、全員パワードスーツを脱いで、そこのケースに入れておいて。」
私達はC-5の中に置かれた大量のケースにパワードスーツを入れ、湊の前にもう一度集まった。
「それじゃあ次は車両用の装備だね。」
そう言って湊は次のC-5に歩いて行った。
「まずは、車両用光学迷彩。これの説明はもういいね。
次はマイクロミサイルポッド。これは小型の対人ミサイルを大量に発射できる装備だね。普通なら1発撃ったら使えないんだけど、さっきの4次元ポーチを応用して作ったのがこれ、リローダーだよ。弾を撃ち尽くすと自動で再補給してくれる。マイクロミサイル以外は航空機にも取り付ける予定だから。それと、燃料タンクにもリローダーを取り付けるから。これで車両や航空機の継戦能力が格段にアップするよ。」
「「「「「おお~!」」」」」
「最後は特殊作戦航空団用の装備なんだけど、これは後で個別に話そうか。どれもクセが強いし。
これで全部の説明は終わりだよ。ここ以外の基地にも後続の輸送機とエンジニアが向かってるから、部隊がここ以外の基地にいる人はすぐに戻った方がいいね。
それじゃあ私達は作業に入るよ。パワードスーツのアップグレードは16:00時に終わる予定だから、それまではELR-1とかミュートチャージ、4次元ポーチを試してみると良いよ。」
「そうさせてもらうわ。頼んだわよ。」
私達は装備を湊達技術者に任せ、新装備を試す事にした。
[11:00時]
〈アメックス王国 フィールの街 冒険者ギルド〉
私達は愛銃と新装備を持った後、一旦各自所属の基地に戻り、そこの街のギルドで依頼を受ける事になった。そこで私達1stIBも、フィールの街に来ていた。
「あ!優香さん!先日はありがとうございました!とてもよい経験でした!」
「喜んでくれて何よりよ。今日は討伐系の依頼を受けたいの。何か良いのはある?」
「そうですね~。今日はここから馬車で3時間ほどした山でゴーレム討伐の依頼がありますね。目的はゴーレムの体に含まれる金属だそうですので、討伐して体の一部を持ち帰ればクエスト達成になります。」
「それで良いわ。」
「わかりました。手続きはこちらでしておきますね。」
「お願いするわ。15:00時くらいには戻ってくるわ。」
「わかりました。皆さんに幸運を。」
私はギルドを出て、車両の準備をしている仲間のもとに向かった。
[11:40時]
〈アメックス王国 フィールの街東方 トレム山〉
ワスプ2のHMMWVに乗って山を登っていると、200mほど先にゴーレムを見つけた。
「全隊員、こちらフェアリー。前方200mにゴーレムを発見。まずはミュートチャージを試す。もしもに備えてカバーしてくれ。」
《《《《《了解。》》》》》
私はRSS-1のサプレッサーを外し、ミュートチャージを半径3mにセットし、HMMWVを出て腹這いになり、銃を構えた。
「有希、ミュートチャージを起動して。」
『了解。』
[ウィーン]
有希がミュートチャージのスイッチを入れると、私の周辺の音が完全に消失した。
私はゴーレムの頭に狙いを着け、引き金を引いた。
[ゴガン!]
猛烈な音がゴーレムから響き、ゴーレムはバラバラになったが、レールガンの発射音は聞こえなかった。
[ヒュー]
30秒が経ち、機械音が聞こえると、音が戻ってきた。
「これは凄いわね。本当に聞こえなくなったわ。」
「あんな経験はしたこと無いの。」
「暗影石は一般的にはあまり使い道の無い石だけどこんな凄い力があったんだね。」
「取り敢えずあのゴーレムを回収したら散開しましょう。」
私達はゴーレムがいた場所を中心に散開する事に決め、各自4人1チームで山に入って行った。
散開して少し進んだ所で私は2体のゴーレムを見つけた。
「2体。2時と11時、250m。ELR-1を試しましょう。2時は私と有希。11時はシャルとアナト。」
『「「了解。」」』
私と有希は2時方向のゴーレムに向けてライフルを構えた。
「3カウント。3…2…1…照射。」
[デュー]
独特な機械音と共に銃身から青のレーザーが照射された。
私と有希のELR-1から照射された2本のレーザーは、ゴーレムの頭と胸のコアに命中し、一瞬でゴーレムの体を溶かし、反対側に抜けた。
[ズン!ズズゥーン!]
頭とコアに風穴を空けられたゴーレムはゆっくりと膝を付き、倒れた。
「凄い威力ね。この調子でどんどん行きましょう。」
『はい。』
私達は山の奥に入り、新たな獲物を探し始めた。
周りからは地響きやレーザーの照射音が聞こえ、ゴーレムが狩り尽くされるのは時間の問題だろう。
[14:55時]
〈アメックス王国 フィールの街 冒険者ギルド〉
トレム山のゴーレムをあらかた片付けた後、HMMWVでゴーレムの残骸を街まで運び、ニーナちゃんを待っていた。
「七海さ~ん。お待たせし、って何ですか、これ?!」
「見ての通りゴーレムよ。」
「いや、それはわかってます。一体何体狩って来たんですか?!30体以上いますよね?!」
「正確には54体ね。途中でゴーレムが大量発生している場所を見付けたから包囲殲滅しておいたわ。」
「そんな数のゴーレムを殲滅させる集団なんて聞いたことがありませんって、よく考えたら七海さん達ですものね。そうなってもおかしくないですよね~。あはは。」
「大丈夫?目が死んだ魚みたいになってるわよ?」
「大丈夫ですよ~。ただ自分の中の常識が音をたてて崩れただけですから~。それじゃあ私は鑑定作業があるので報酬はまた明日受け取りに来てくださいね~。」
「わ、わかったわ。お願いするわね。」
私は危ない雰囲気を纏始めたニーナちゃんに後を任せ、フォート・ディールに帰還した。
[15:20時]
〈フォート・ディール 空軍区画 エプロン〉
私達が戻ってくると、ちょうど湊がC-5から降りてくる所だった。
「おお、フェアリーと第1独立大隊の諸君。試し撃ちとかは充分に出来たかい?」
「ええ、それはもう。おかげであなたの異常さが再認識出来たわ。」
「お褒めに預かり光栄だね。パワードスーツのアップグレードがちょうど終わった所だし、試してみるかい?」
「そうねぇ。私は試してみるけど、皆は?」
「「「「「やります。」」」」」
「という事で、試させてもらうわ。」
「それじゃあ各自、自分のパワードスーツを装備して、AIの指示に従ってチュートリアルを実行してご覧。」
私達はC-5に入り、自分のパワードスーツを装備した。
「背中側にジェットパックが、左腕にフックランチャーが着いた以外に変わりはなさそうだけど、ん?」
『パワードスーツが装備されました!新機能が実装されましたが、チュートリアルを実行しますか?』
「これがチュートリアルね。お願い、アリア。」
『了解しました!今回実装された装備はフックランチャーとジェットパックです。まずはフックランチャーからご説明します。
フックランチャーは左腕に装着された機械でフックを飛ばし、壁や手すりなどにフックを固定、フックに繋がったワイヤーを超高速で巻き取る事で、素早く移動出来る装置です。
使い方は、発射したい方向に向け、左手首を内側に曲げ、発射、あるいはそれに近い事を思えば発射されます。フックが刺さった対象物が固定されていなかった場合は自分のもとに引き寄せる事も出来ます。刺さったフックは移動と思えば、自身が移動、あるいはフックが刺さった対象物を引き寄せられます。回収と思えば、フックのロックが解除され、フックが回収されます。言葉でなくても、イメージが出来れば、フックをその通りに使えます。』
私は試しに、ハンガーの上に左腕を向け、発射、と心の中で言った。するとフックが物凄い速度でハンガーの上部に刺さった。私が移動と心の中で言うと、私の体が一気に持ち上がった。スーツのアシストが働き、無事に壁に取り付く事が出来たが、気を抜いていた為、私の体からはどっと冷や汗が垂れた。
「恐!まさかあそこまで速いとは思ってなかったわ。」
私はフックを刺さったままにし、ゆっくり降りるようにイメージし、吸着モードになったグローブをもとに戻した。
するとフックが私のイメージ通りに動き、ゆっくりと地面に降りる事が出来た。
「便利だけど、なんか怖いわね。頭の中が覗かれている気がして。」
私が率直に思った事を言うと、
「あながち間違いでも無いよ。パワードスーツを通して脳波は常に解析しているし、魔法と魔術のおかげで、思考を解析する事も出来ているからね。勿論危険は無いよ。」
湊は自信満々にそう言った。
「何というか、もはやあなたの技術って科学でも魔法でも魔術でも無いわね。差し詰め魔科学とでも言った所かしら?」
私が呆れ半分、驚き半分の溜め息をつきながらそう言うと。
「それいいね。それじゃあこれからは魔科学と呼ばせてもらうよ。」
湊は笑いながら答えた。
「はあ。取り敢えず私はジェットパックを試してみるわ。アリア、お願い。」
『は~い。ジェットパックの操作は、イメージする事で行います。まずはジェットパックを用いての飛行です。起動をイメージしてください。』
私がジェットパックのエンジンが起動するようイメージするとジェットパックから火が出てきた。
『起動したら空を飛ぶようにイメージしてください。後は私がパワードスーツを最適に操作し、マスターのイメージ通りに飛行させます。慣れてきたら私のアシストを切って、マスター自身の操作で飛行出来ます。』
私がゆっくりと飛び、2mの位置でホバリングするようイメージすると、パワードスーツが私のイメージ通りに動き、空中2mの位置でホバリングした。
「おおー!これはいいわね!」
私がゆっくり降りるようにイメージすると、出力が段々と落ちていき、地面にゆっくりと着地した。
『次は高速ステップです。ジェットパックが装備されている状態で、地面を素早く移動するようにイメージしてください。するとジェットパックが短いブーストを行い、素早く移動出来ます。ただ、非常に速い為、オーバードライブを併用する事を勧めます。』
私が地面を高速で移動するようイメージすると、ジェットパックが作動し、一瞬で10m先に移動した。
「これも凄いわね。湊、やっぱりあなたは頭がおかしいわね。」
「ははは!そうだろう、そうだろう!それじゃあ頑張って使いこなしてくれたまえ。もうじき戦争が始まるかもしれないんだろう?それまでに私もいろいろ作らないといけないからね。失礼するよ。」
湊はそう言って他のエンジニア達の所に混ざっていった。
「さて、なんかデジャヴだけど、運命の日まで1週間。きっちり実戦で使えるようにするわよ!」
「「「「「了解!」」」」」
新たな装備の訓練が始まり、なんとか大国会議の日には完全に使いこなせるように仕上げることができた。
新たな力を得た事でさらにレイシス帝国との戦力差が広がったが、当のレイシス帝国はそんな事知る由も無く、私達は着実に、投入達の知らないうちにレイシス帝国を追い詰めていった。
今回はCODAWに多大な影響を受けた話しとなりました。まだプレイ出来ていないので早くプレイしたいです。
今回の名言です。今回は『機動戦士ガンダムUC』からです。
ダグザ・マックール「歯車には歯車の意地がある」
個人的には、今の美形ばかりのガンダムより、格好いいおじさんたちが登場する初期のガンダムの方が好きです。
UCはとても面白かったですね。カイ・シデンやブライト・ノア、ベルトーチカ・イルマといった過去作のキャラがストーリーに絡んでくるのも良かったです。UCのキャラクターだと連邦軍の特殊部隊『エコーズ』のダグザ・マックール中佐が好きですね。無骨な軍人でありながら、バナージの事を気にかけ、バナージを守る為に生身でシナンジュに攻撃を仕掛け、最後に敬礼をして死んでいった姿に感動[?]しました。
次回は大国会議の話しですが、現実の国際会議でどんな話しがされるのか良く分からないので、早急に切り上げると思います。
ご意見ご感想をお待ちしています。




