第2章5 基地祭2日目とパイロットの意地
[7月15日 07:00時]
〈フォート・ディール 中央区画 上級職員宿舎〉
七海優香 TACネーム:フェアリー
起床のラッパと共に目を覚ました私は、着替えをして部屋を出た。
『あ、姉さんおはよう。』
「おはようなの。」
「おはよう~。」
丁度3人が部屋から出てきた所だった。
「ああ、おはよう3人とも。今日は私達にも仕事があるからね。」
『一応私達も特殊部隊に分類されてるんだよね。』
「ええ、私達の仕事は人質救出演習に参加する事と、空挺降下体験のインストラクター役よ。始まる前に装備の確認をしに行きましょう。」
『「「はい。」」』
私達が廊下で話していると、近くのドアが開き、レヴィアが出てきた。
「あ、皆おはよう。」
『「「おはよう。」」』
「おはよう。昨日は良く眠れたかしら?」
「はい。お陰様で。」
「それは良かったわ。私達はこれから食堂に行くけど、レヴィも一緒に行く?」
「はい!」
私達は雑談をしながら食堂に向かった。
私達は各自好きな料理を食べていた。
「どう?ここの料理は気に入った?」
「はい。とっても美味しいですね。私は特に港で食べたカレーが好きですね。」
「海軍のカレーは絶品だからね。あれは船によって味付けとか具材が違う上にこういう機会が無いと食べられないしね。」
「昨日は半分位周ったから、今日は残りを食べようと思うよ。
そう言えば、あそこで給仕をしてた人達の中に人間じゃない人もいたような…。何というか魂に近い感じがしたんだけど?」
「彼女達は艦魂で、レヴィの言う通り、艦の魂よ。」
「やっぱり!身体を出せるって事は相当力が強いんですね。」
「その辺は良くわからないけどね。
そうだ!忘れる前にこれをあげるわ。」
私はポケットから彼女の鱗と同じ深い青のスマートフォンを取り出し、レヴィに渡した。
「?これは?」
「私達の使っている通信装置よ。中央に人差し指を当ててごらん。」
レヴィは言われた通りに人差し指の腹を画面に当てた。
『登録完了しました。これからよろしくお願いします。マイマスター。』
声が流れ、画面に竜人族をモデルにしたキャラクターが現れた。
「うわ!しゃべり出した!」
レヴィはとても驚き、身を仰け反らせた。
「彼女はそのスマートフォンに宿る意思みたいな物よ。名前はトールよ。」
『はじめまして。トールと言います。マスターのサポートをさせていただきます。』
「こ、こちらこそはじめまして。」
レヴィとトールが自己紹介をし、落ち着いた所で続きを話した。
「そのスマートフォンがあれば話したい相手がどこにいても話す事が出来るわ。ただ、相手が話せるかはわからないけどね。
友達の印しにそれをあげる。何か頼みたい事があったら連絡を頂戴。詳しい使い方はトールに聞いてね。」
「凄い物をありがとう!トール、これからよろしくね!」
『こちらこそ。マイマスター。』
レヴィは早速スマートフォンに話しかけていた。
「気に入ってくれて良かったわ。
それじゃあ私達は行くわね。今日こそ楽しんでいってね。」
「はい!色々ありがとう!」
私達はレヴィと分かれ、装備をチェックしてから空軍区画の待機所に向かった。
[10:20時]
〈フォート・ディール 空軍区画 ブリーフィングルーム〉
私と演習に参加する各特殊部隊の精鋭達は雑談をしたり、装備のチェックをしたりして時間を待っていた。
「お姉ちゃん、今回はいくつの部隊が参加するんだっけ?」
「そうね。海兵隊からフォースリーコン、フュージリア、陸軍から私達シルキー、SAS、海軍からSEALs、SBS、憲兵隊からGSG-9、GIGNの合計8隊から各4人ずつ演習に参加するわ。今回は各軍でのタイムアタックになるから負けられないわよ。」
「そう言う事だ。今日はよろしく頼む。」
私達が話しているとブーニーハットをかぶった男性を先頭に4人の男性が近づいてきた。
「元気そうね大尉。」
「あんたも最近は大活躍だそうじゃないか。」
「まあね。
紹介するわ。こちらは第22SAS連隊第1大隊第1中隊[シェパード隊]の中隊長のジョン・プライス大尉とジョン・マクタビッシュ大尉、サイモン・ライリー少尉、ゲイリー・サンダーソン1等軍曹よ。」
私が4人を紹介すると、有希達も自己紹介を始めた。
『私は有希と言います。今日はよろしくお願いします。』
「私はシャルルなの。今日はよろしくなの。」
「アナトよ。今日はよろしく。」
3人が自己紹介すると、私達は握手を交わした。
「改めてよろしく、大尉。」
「ああ、最近魔物狩りばかりで退屈だったからな。今日は楽しませてもらおう。」
『よろしくお願いします。』
「こちらこそよろしく。かなりの腕と聞いている。期待しているぞ。」
「よろしくなの。」
「よろしく。俺の事はゴーストと呼んでくれ。このTACネームが気に入っていてね。」
「よろしく。」
「こちらこそよろしく。空を飛べるのは羨ましいな。俺は建物から落ちたり、崖から落ちかけた事があるからな。俺の事はローチと呼んでくれ。」
私達は自己紹介を終え、演習での動きなどの打ち合わせを行った。
[11:00時]
〈フォート・ディール 第160特殊作戦航空連隊第3大隊第1中隊『スワローテイル隊』 スワローテイル2-3 MH-60S〉
時間となり私達8人は試験運用中のMH-60Sサイレントホークに乗り込んだ。
ドアは開かれ、大尉は葉巻を吸っていた。
ヘッドホンからは陸軍区画でのアナウンスが流れていた。
《…それではまず、陸軍の特殊部隊の登場です。》
会場で私達の出番が来た事を確認し、パイロットが低空でアプローチを始めた。
《SFA隊、こちらTCP。キルハウス内でテロリストが2人を人質に取っている。2人は2階西側の部屋にいる。2人を救出し、ヘリで撤退しろ。》
「こちらSFA隊。了解。会場をローパスして屋上から突入する。」
私がそう応えた直後、ヘリは会場をこえ、キルハウス上空でホバリングした。
「降下開始!」
両側からロープが投下され、降下を始めた。
私もロープを掴み、素早く降下し、部隊に合流した。
「SFA降下完了。これより部隊を2つに分ける。SFA1は階段で屋内に移動、目標の部屋の扉まで移動する。SFA2は屋上からラペリングをし、窓から突入しろ。今日はお客さんがいるわ。全員気合いを入れて。」
『「「「「「「了解。」」」」」」』
「SFA2、ロープを設置しろ。それじゃあフェアリー。また後ほど。」
「ええ。」
私達はプライスと分かれ、建物に入って行った。
階段を降り、目標の部屋まで互いにカバーしあいながら進んだ。
テロリスト役の隊員が現れるが、警戒している私達によって1秒と経たずに特殊なペイント弾を撃ち込まれ倒されていった。
部屋にはすぐに到着し、有希が扉の隙間から部屋の中を確認し始めた。
『HVIと敵を確認。マークしました。』
HUDに有希がマークした敵が映った。
テロリスト役は10人、中央の人質を囲むように展開し、私達のいるドアの方を向いている。
「こっちから入ると待ち伏せを受けるわね。
プライス大尉そっちは?」
《窓に爆薬を設置した。いつでも良いぞ。》
「それじゃあ、先にそっちが突入して。注意がそれたら私達も入るわ。」
《了解。
お前達、派手に行くぞ。5カウント。5…4…3…2…1…ゴー!》
爆発音と共に、シェパード隊が窓から突入した。テロリスト役はいきなり真後ろをとられた事で、私達がいる扉から注意を逸らしてしまった。
「突入!」
すかさず私達もドアを開け、部屋に突入した。
シェパード隊の攻撃によって、既に4人のテロリスト役が倒されていた。私は人質の近くにいたテロリスト役2人に狙いを着け、ダブルタップで射撃した。
[パパン! パパン!]
ペイント弾はテロリスト役2人の胸に2発とも当たり、テロリスト役は倒れた。
「クリア!」
「クリア!」
『クリア!』
「オールクリア!」
全員が倒されたのを確認し、人質役の隊員を救出し、守りながら屋上に移動した。上げ
「フレア点火!」
緑のフレアが点火され、少しするとヘリが到着し、ヘリからロープが投下された。
まず、ローチとゴーストが人質役と共にヘリに上がり、残った私達は1本のロープに全員の体を繋ぎ、ヘリに引っ張り上げられ、建物からの撤収を完了した。
人質救出演習は無事終わった。観客にはかなり好評だった。ヘルメットカメラからリアルタイムで送られてくる映像と、音声がやはり大迫力だったのだろう。
タイムアタックでは、憲兵隊のGSG-9とGIGNのチームが優勝した。彼等は物凄い速さで制圧していき、他の追随を許さない勢いで人質救出を完了させた。流石は対テロ専門部隊と言う事だろう。
中には反撃を受け、負傷判定を受ける部隊もあった。
『凄かったですね。最後の人達。』
「なんて言ったって対テロ作戦の専門家だからね。狭い部屋での戦闘や人質救出では向こうの方が上手よ。上には上がいる物よ。
ただ、差は埋められる物よ。これからも諦めなければいつかは追いつくわ。頑張りましょう。」
『「「はい!」」』
「よし!それじゃあライフルはHMMWVにケースに入れて置いたら、その後はまた祭りを回りましょう。」
私達は私の愛車その2のHMMWVcustomに乗り、祭りに繰り出した。
[12:45時]
〈フォート・ディール 海軍区画 軍港〉
私はHMMWVを軍港の駐車場に止め、軍港で行われている各艦対抗料理大会に食事の為に来た。
「さて、まずは席の確保ね。どこか空いてるかしら?」
私達がカレーを持って席を探していると、
「七海さーん!」
「ん?」
名前を呼ばれたので、声の方向を見ると、
「セシルさんにバスターズの皆さんじゃない。来ているとは聞いていたけど、こんなところで会うとは思わなかったわ。」
「私もですよ!良かったら一緒に食べませんか?」
「ちょうど席を探していたのよ。ありがたくご一緒させてもらうわ。」
セシルさん達に席を譲ってもらい、何とか座る事が出来た。
「改めて、お久しぶりね。最近調子はどう?」
「ぼちぼちと言ったところですね。今は魔物狩りをメインにしています。」
「そうなの。そう言えば、ジャナサンさんはどこに?」
「兄さんでしたら、七海さんの仲間の黒い眼鏡をかけた男の人と仲良くなって、それぞれ何人かの仲間を連れてどこかに行きました。」
「サングラスをかけた男…。ああ、サンドマンね。と言うことはメタル隊の人達といるのか。それなら大丈夫そうね。」
「七海さんは最近どうですか?」
「そうねえ。最近は大きな作戦も無いし、少し暇なくらいね。楽しみと言えば、有希達の飲み込みがよくて、教えがいがある事かしら。最近はずっと一緒にいるわね。」
「そうなんですか。ウチにも最近入団試験があったんですけど、殆どの方は真面目で良い方何ですが、中には団員を性別や種族で判断して、見下すような言い方をする馬鹿もいて困りましたよ。」
「やっぱりどこにでもそう言うのはあるのね。」
「最近は随分減ったんですが、貴族の坊ちゃんとかレイシスの人は特に酷いです。異種族は奴隷って考えている人も少なくないです。」
「なるほど。
………空気が重くなっちゃったわね。話しを変えましょう。祭りはどう?楽しんでる?」
「最高ですよ!料理は安くて美味しいし、珍しい物ばかりだし、私ここに入ろうかなって本気で思いましたよ!」
「そんなに気に入ってもらえたなら主催者としても嬉しい限りよ。」
その時、近くのスピーカーからアナウンスが流れてきた。
《ご来場の皆様、5分後に上空で特殊作戦航空団隷下の航空隊による模擬戦が行われます。予め配布したゴーグルを装着して下さい。ルールや参加部隊などの説明を行います。説明中は危険ですので、立ち止まるようお願いします。》
「もうそんな時間か。」
「七海さん、これを着ければ良いんですか?」
「ええ。」
私はセシルさんにそう返し、HUDのモードを変えた。
すると、HUDに映像が流れ出した。
「わわ!七海さん!何か映りました!」
「セシルさん落ち着いて。それがこの後のイベントの説明よ。」
今日受け付けで配布したゴーグルには、AR、望遠、限定的なネットワーク機能があり、今はこの模擬戦を来場者にも分かりやすく説明する映像とゴーグルの機能の説明が流れていた。
この模擬戦のルールは、
1.空軍特殊作戦航空隊vs海軍特殊作戦航空隊のチーム戦
2.各軍3隊、1隊8機、空海両軍合計48機参加
3.1戦20分、相手を全滅させるか残存機の多い方の勝ち
4.長距離空対空ミサイルの禁止 ヘッドオン、ドッグファイト推奨
5.AWACSの判断は絶対
6.事故を起こしてはならない
となっている。
この世界に来て、初の大きな役目と言うこともあり、全員が異様なほど張り切っていた。
「このゴーグル凄いですね!でも、これ無料で配って良いんですか?」
「外では使えないし、無断で持ち出すと、世界中で調査している私達の仲間がお宅にお邪魔する事になるわ。」
「…………冗談ですよね?」
「だったら良いわね。」
そんな事を話していると、対戦表が表示された。
対戦表
1回戦
●フェンリル空軍第8航空師団第28戦闘飛行隊『ガルーダ隊』
◯使用機体
◎F-15Emod.Gr×5◎F-15Cmod.Gr×3
VS
●フェンリル海軍第2艦隊第2攻撃飛行隊『アバランチ隊』
◯使用機体
◎F/A-18Emod.Ab×8
2回戦
●フェンリル空軍第6航空師団第66戦術飛行隊『ガルム隊』
◯使用機体
◎F-15Cmod.G×6◎F-15Emod.G×2
VS
●フェンリル海軍第2艦隊第108戦術戦闘飛行隊『ウォードッグ隊』
◯使用機体
◎F-14Amod.Wd×8
3回戦
●フェンリル空軍第2航空師団第19特殊作戦飛行隊『リッジバックス隊』
◯使用機体
◎ASF-XAmod.Rb×6◎ASF-XBmod.Rb×2
VS
● フェンリル海軍第1艦隊第16特殊作戦飛行隊 『サムライ隊』
◯使用機体
◎F-4Bmod.Sa×8
特殊作戦航空団の所属でもあるフェンリル軍のトップエース達が指揮する部隊の模擬戦と言うことでやはりどれも相当な激戦になりそうだ。特に3回戦は空軍と海軍の制空戦闘で最強の部隊同士であり、ひさびさに迫力満点の空戦が見られそうだと私は期待に胸を膨らませた。
[1回戦 ガルーダ隊VSアバランチ隊]
ガルーダ隊隊長 ミシェル・マクガイア TACネーム:タリスマン F-15Emod.Gr
「もうすぐね。タリスマンよりガルーダ隊全機へ。これより模擬戦空域に入る。空軍の威信にかけて負けられないわよ。あとの隊の為にも、必ず勝つわよ!」
《《《《《《《了解!》》》》》》》
飛行を続けていると、AWACSからの連絡が来た。
《こちら空中管制機ゴーストアイ。ガルーダ、アバランチ両隊の空域への侵入を確認。これより演習を開始する。そっちの様子はしっかり見ているから、思う存分やれ。》
「タリスマン了解。叩きのめしてやるわ。」
《こちらスノウ。それはこちらのセリフだ。こちらこそやらせて貰う。》
「それなら、今夜、負けた隊は勝った隊の飲み代を奢って貰いましょうか?」
《良いだろう。受けて立つ。》
《賭けの話しをするのは構わんが、これは中継されているのを忘れていないか?それと、俺はガルーダに1万だ。》
《おいおいゴーストアイ。あんたは中立じゃないのか?》
《安心しろ、審判はしっかりやる。
演習開始までのカウントダウンを開始する。
5…4…3…2…1…スタート!》
カウントダウンが終わり、演習が始まった。
「タリスマンより全機!純粋な空中戦はこちらが上手だ!だが当然向こうも何か対策があるはずだ。油断せず、バディで行動し、1機ずつ仕留めていけ。」
《《《《《《《了解!》》》》》》》
「全機散開。一番活躍した者には私が今度秘蔵のワインを一杯奢ってやるわ。」
《《《《《《《おぉー!》》》》》》》
「さぁ、天使とダンスの時間よ。シャムロック、行くわよ。」
《了解。》
私とシャムロックがしばらく飛行していると、アバランチの先頭の2機が射程に入った。
「ガルーダ1、エンゲージ!」
《ガルーダ2、エンゲージ!》
AWACSに交戦開始を宣言した。
HMDにアバランチ隊のF/A-18Eが□のカーソルで表示され、短距離空対空ミサイルを選択すると、◇のカーソルが□のカーソルと重なり、ピーとロックオンが完了する音が響いた。
「ガルーダ1、FOX2!」
ミサイルの発射ボタンを押すと、HMDにVRミサイルが現れ、飛翔を始めた。
《ガルーダ2、FOX2!》
私達の発射したミサイルは順調に飛翔したが、2発とも回避されてしまった。
「ちっ!やっぱり当たらないか。」
《向こうもベテランだからな。おっと!》
アバランチ隊の2機[恐らく、スノウと副官のブリザード]はすかさず反撃をしてきた。
私はタイミングを見極めてフレアをまき、ミサイルを回避した。
「ヘッドオン!行くわよ!」
《了解!援護する。》
真正面から先頭のF/A-18Eに突撃し、機銃を発射した。
「ガンズ、ガンズ、ガンズ!」
2機のF/A-18Eは射線から素早く逃れたが、
《これは避けられないだろ?FOX2!》
後ろにいた、シャムロックが短距離空対空ミサイルを発射し、1機に命中した。
《ガルーダ4、7、アバランチ2、7、8は撃墜された。空域を離脱しろ。》
《くそ!流石だなガルーダ!アバランチ隊各機海軍の意地を見せろ!》
《こちらガルーダ5!2機に追われている!誰かこれないか?!》
《こちらガルーダ3!今向かう!》
無線からは撃墜報告や救援要請がひっきりなしに流れている。
「さあ、スノウ。私達の相手は後はあなただけよ。一緒に踊りましょう?」
《女性からのお誘いを断るわけにはいかんな。良いだろう。踊ってやるさ。》
「そうこなくちゃ。シャムロック、手助けは無用よ。他の手助けに行って。」
《了解。負けるなよ。》
シャムロックが離れていき、私は逃げるスノウのF/A-18Eを追いかけた。
《ケツを追われるのは好きじゃねえんだ。とっとと諦めてくれ!》
「逃がすわけ無いでしょう!」
スノウを追いかけていると、スノウは急減速しながらのバレルロールを行い、オーバーシュートした私の後ろについた。
《攻守交代だ!》
「くっ!」
私は機体を細かく動かし、ロックオンされないように回避した。
「しつこい男は嫌われるわよ!」
《野郎のケツばっか追っかける女もな!》
互いに速度がでたのを確認し、急減速から、半径の小さい宙返りを行い、再び後ろをとった。
《まじかよ!》
「さあ、今度は逃がさないわよ!」
機体を操作し、レティクル[機銃の照準]の中央にスノウを捉え、機銃を発射した。
「ガンズ、ガンズ、ガンズ!」
発射されたVRの機銃弾はスノウのF/A-18Eの右主翼に喰らいついた。
《こちらゴーストアイ。アバランチ1、貴機は撃墜された。これにより、アバランチ隊残存機0、ガルーダ隊残存機4、よってこの模擬戦はガルーダ隊の勝ちだ。
残念だったなスノウ。楽しみにしているぞ。》
《くっそ!あそこで逃がさなけりゃなあ!》
「御馳走様。それじゃあ次もあるし、帰りましょう。」
私達は基地への帰路についた。
[2回戦 ガルム隊VSウォードッグ隊]
ウォードッグ隊隊長フランク・ハルトマン TACネーム:ブレイズ F-14Amod.Wd
「ブレイズよりウォードッグ各機。アバランチの仇を取るぞ。」
《《《《《《《了解。》》》》》》》
《ブービー、確か敵はガルムだったよな?》
「ああ。」
《まじかよ!あいつ等信じられないほど機敏じゃねえか!スピード重視のF-14じゃきついぜ?》
《でも、ガルム用のF-15は機動性は抜群だけど、スピードはそれほど出ない筈よ。だったら私達の得意な高速戦闘に無理やり持ち込めば。》
「ああ、だから俺達は4機編隊に別れて一撃離脱戦法を取る。編隊を崩すなよ。散開したら食い殺されるぞ。」
《《《《《《《了解。》》》》》》》
基地上空に到達した所で、AWACSから連絡が来た。
《こちらゴーストアイ。ガルム、ウォードッグの空域到着を確認。両隊準備は良いか?》
《おお!ウチの担当の石頭とどっこいどっこいの美声だな!》
《ダヴェンポート大尉だな?君とウォーウルフのガッツの雄弁さはよく聞いている。私は作戦の進行に支障が出ないなら、おしゃべりを止めはしないから安心してくれ。》
《おお!気前も良いね!ウチの担当になってくれないか?》
「その位にしておけ。ゴーストアイ、ウォードッグは準備完了だ。」
《了解。ガルム隊そちらは大丈夫か?》
《ああ。噂以上の雄弁さに驚いたが、こちらも準備完了だ。》
《両隊の準備完了を確認。5秒後に演習を開始する。5…4…3…2…1…スタート!》
AWACSのカウントダウンが終わり、演習が始まった。
「ウォードッグ各機、作戦通りに行くぞ。」
スピードを最大まで出し、一気に近付いた。
「ソーズマン、6、7、8を連れて5時から先に突入しろ。続けて俺達が8時から突入する。」
《了解。ソーズマン、突入する。》
ソーズマンはガルムの編隊に高速で突入し、ガルムの編隊をかき乱した。
「俺達も行くぞ!」
足並みの乱れたガルムに追い討ちをかけた。
残った2機は一斉に反撃に転じ、ウォードッグ7が撃墜判定を受けた。
《ガルム4、6、7、8、ウォードッグ7、貴機は撃墜された。》
《フゥー!大戦果だ!》
《ブレイズ。おかしいです。2機足りません。》
「ああ。残りはどこに、」
その時、突然警告音が鳴り響いた。
「!全機ブレイク!」
《チクショウ!どこから!》
《上です!太陽を背に突っ込んできます!》
上を見ると、翼の端を青く染めたF-15と、右翼が赤く塗られたF-15がミサイルを発射した所だった。
発射された4発のミサイルは味方のF-14に命中した。
《ウォードッグ6、8、貴機は撃墜された。空域を離脱しろ。》
《すいません、隊長。後は任せます。》
《必ず勝ってくれよ!》
「ああ!任された!エッジとチョッパーは片羽を頼む!落とさなくて良い、生き残れ!アーチャーとソーズマンは残りのガルムをやれ!鬼神の相手は俺がする!」
《チョッパー了解!》
《エッジ、コピー。必ず仕留めます!》
《任せますよ隊長!》
《負けるなよブレイズ!》
4機のF-14が片羽の赤いイーグルと2機のF-15に向かっていったのを確認し、鬼神と向かい合った。
ウォードッグ隊2番機 ケイ・ナガセ TACネーム:エッジ F-14Amod.Wd
「チョッパー、私が先行するから、しっかりカバーして。」
《了解だナガセ。》
私達が赤いイーグルを追っていると、
《こちらピクシー、あんた達が俺の相手か?》
片羽からコンタクトがあった。
「ええ。隊長の為にも落とさせてもらう。」
《ふ。面白い。地獄の番犬と戦争の犬、どっちが強いかはっきりさせよう。行くぞ!》
片羽のF-15がフックをし、機銃を撃ってきた。
《ブレイク!》
《うわっち!》
回避の為に広がった編隊の隙間を抜け、片羽のF-15が私達の後ろをとった。
《チョッパー、右にブレイク!》
《おうよ!》
私達は2手に別れた。
《サッチウィーブに持っていく気だな。乗ってやろう。》
F-15はチョッパーを追いかけ始めた。
《男にケツ追われても嬉かねえよ!ナガセなんとかしてくれ!警報が鳴り止まん!》
「今後ろに着いた!」
カーソルが重なり、ロックオンが完了した。
「FOX2、FOX2!」
ミサイルを2発発射した。
《当たらないぞ?》
F-15はフレアとバレルロールで逃げた。
「こっちだって当たるとは思ってないわ!チョッパー!」
《分かってる!》
片羽が回避に集中している間に、急減速をし、片羽の後ろに回ってから、ミサイルと機銃を発射した。
《FOX2、FOX2!ガンズ、ガンズ、ガンズ!》
《く!》
フレアをまき、ミサイルは回避したが、エンジン付近に機銃弾が命中した。
《ガルム2、貴機は撃墜された。演習終了まで残り5分。》
《くそ。傲ったな。まあ良い。楽しかったぞお2人さん。またやろう。》
F-15が針路を変え、離脱を始めた。
《ふー。強敵だった。訓練じゃなきゃやられていたのはこっちだったかもな。》
「ええ。それより隊長の救援に行くわよ。」
《ブービーの奴やられてないだろうな。》
私達はブレイズの手助けをするため、針路を変えた。
ウォードッグ隊隊長 フランク・ハルトマン TACネーム:ブレイズ F-14Amod.Wd
《演習終了まで残り5分。》
鬼神のF-15と空戦を繰り広げていると、AWACSから連絡が来た。
《ピクシーがやられるとは。あんたの仲間もやるじゃないか。亡霊。》
「鬼神に誉められるとは光栄だ。そろそろ決着をつけようぜ。」
《良いだろう。》
俺達は距離をとり、正面から向かい合った。
《行くぞ!》
「来い!」
一気に加速し、機銃を発射しながらすれ違った。
ガルム1のF-15の発射した機銃弾は俺のF-14のエアインテークに、俺の発射した機銃弾はF-15の左翼に命中した。
《ガルム1、ウォードッグ1、相討ちだ。見事な戦いだった。これにより、ガルム隊残存機0、ウォードッグ隊残存機3。よって2回戦は海軍ウォードッグ隊の勝利だ。》
《負けちまったか。楽しかったぞ亡霊。あんたが仲間で良かった。後で一杯やろう。》
「こちらブレイズ。楽しみにしているよ。」
俺達は滑走路に針路をとり、基地に着陸した。
[3回戦 リッジバックス隊VS隊]
リッジバックス隊隊長 エディ・バルクホルン TACネーム:スラッシュ ASF-XAmod.Rb
「スラッシュよりリッジバックス。2回戦はウォードッグが勝った。空軍が勝利する為にはここで負ける訳にはいかん。相手はあのサムライだ。だが、勝つのは俺達だ。言うべき事はそれだけだ。わかったな?」
《《《《《《《了解!》》》》》》》
俺達は巡航速度を維持して、基地上空に侵入した。
《こちらゴーストアイ。リッジバックス、サムライ両隊の空域への侵入を確認。最終戦だ。お互い死力を尽くして戦ってくれ。準備は出来たか?》
「こちらスラッシュ。リッジバックスは準備完了。」
《こちらライデン。久し振りの模擬戦だなスラッシュ。ハンナとは最近どうだ?どっちも初手だからな。あまり進展して無いんだろ?》
サムライ隊隊長の杉田智弘が聞いてきた。
「お前には関係無いだろう!」
《そうです!関係ありません!》
《どっちも素直じゃ無いな。》
《そっちこそ、正美さんとはどうなんですか?!》
《いえ、私はそんな、《良好だぞ?普段は氷みたいにクールだが、2人の時は甘えてきて可愛いもんだ。》
サムライ隊2番機の菅野正美が否定しようとした所に杉田が割り込んだ。
《な、何を言っているんです!そ、そんな事ありましぇんよ!》
「《《《《《噛んだな[わね][ね]。》》》》》」
《ウワー!》
《その辺で良いか?そろそろ始めろとホークアイとプロビデンスから連絡が来ているんだが?》
《ヤバい!サムライ隊準備完了!何時でも来い!》
《それではカウントダウンを始める。5…4…3…2…1…スタート!》
「リッジバックス隊各機へ。決して編隊を崩すな。分かっているだろうが、向こうの得意技は編隊を組んでの連携攻撃だ。離れると食われるぞ。」
《《《《《《《了解!》》》》》》》
《スラッシュ、ちょっと良いか?》
「なんだライデン。」
《久々のお前との戦いだ。邪魔されたく無いんでな。と言うことで、各自1対1でやらないか?》
「ふむ。良いだろう。リッジバックス散開しろ。」
《《《《《《《了解!》》》》》》》
《ありがとう。サムライ散開。負けるんじゃ無いぞ?》
《《《《《《《了解!》》》》》》》
16機の戦闘機が8組に別れてドッグファイトを始めた。
「さて、ライデン。俺達も始めるか。」
《ああ。やろう。》
スピードを上げ、レーダーに映るF-4Bに向けて突撃した。
ライデンのF-4Bも加速し、真正面から迫った。
機体を右に90°ロールさせ、前進していると、向かいから同じように機体をロールさせたライデンのF-4Bと高速ですれ違い、互いに相手の姿を確認した。
すれ違った後、すぐに機体をF-4Bに向け、互いに相手の後ろをとる為の機動を始めた。
後ろをとったと思いきや、急減速してのバレルロールをして相手をオーバーシュートさせ、相手の後ろを奪ったり、エンジン推進を下に向け、機首を上に上げる事で、機体をほとんど水平に保ったまま急減速しながら相手の上に逃げ、相手の後ろを奪うなど、互いに激しい機動を行い、1歩も譲らなかった。
《相変わらずやるな!》
「そっちもな!」
久々の身体をシートに押し付けられる感覚と、強敵であり戦友でもある男との激しい戦いに、自然と高ぶってきた。
「次で決める!」
《ああ!他の奴等と同じように度胸試しといこうぜ!》
互いに距離をとり、ヘッドオンからの一騎打ちを始めた。
「行くぞ!」
《さあ!来い!》
エンジンを全開にし、互いに一気に距離を詰めた。
「グウゥ!」
《怖いか?!さあ!撃て!臆病者!》
「言われずとも!そっちこそ撃て!流浪人!」
「《食らえ!》」
互いに機銃を発射し、始まり以上のスピードですれ違った。
「《AWACS!どっちの勝ちだ?!》」
《少し待て。………出た。スラッシュ、あんたの勝ちだ!ライデンは右翼と右尾翼が大破、操縦不能の判定だ。スラッシュは右尾翼を被弾。しかし、飛行は可能だという判定だ。
そして、今ので3回戦も決着が着いた。リッジバックス隊残存機5。サムライ隊残存機3。よって、3回戦はリッジバックス隊の勝利だ!そして、演習の総合優勝は空軍に決まった。優勝報酬はカスタムアップ用の新装備だそうだ。》
「新装備だって?まさかとは思うが、平賀さんの発明か?」
《その通りだ。》
「まじかよ。」
《またなんかヤバいもん渡されるのか?》
《あのマッドサイエンティストどんだけイカレてるのよ!》
俺達が打ちひしがれていると、無線から笑い声が響いてきた。
《ハハハハ!良かったじゃないか!》
「他人事だと思いやがって!」
《事実他人事だしなあ。》
《実は海軍にも新装備がある。遅いか早いかの違いでしかないようだ。
それと伝言がある。まずは山本大将からだ『後でブリーフィングルームに集合するように。』最後にあかぎと艦長の山口中将からだ『覚悟しておけ。』以上だ。楽しい楽しいお説教の時間のようだな。》
《《《《《《《《Oh。》》》》》》》》
「……そっちも大変だな。ひとまず帰ろう。」
《ああ…そうだな……》
俺達は針路を変え、基地に着陸した。
[14:00時 フォート・ディール 海軍区画 軍港]
七海優香 TACネーム:フェアリー
ゴーグルに投影される大迫力のヘルメットカメラ映像と、頭上で繰り広げられた音速での戦いは、基地祭に来ている商人や冒険者、一般人から一時的に言葉を奪った。
少したつと、誰からともなく、拍手と賞賛の声が沸き上がり、基地は大歓声に包まれた。
「凄いですね!前に見た時よりも段違いの凄さでしたよ!」
「本来ならあそこまで近距離での戦闘はしないんだけどね。祭りの日は特別よ。それに戦っていたのはプロ中のプロだしね。」
「そうなんですか。」
「セシルさん達はこの後何するの?」
「セシルで良いですよ。私達はこの後、くうていこうか?体験って言うのにいこうかと。」
「それなら私も優香で良いわよ。空挺降下はこの国じゃ体験出来ないでしょうからぜひ楽しんでいってね。それじゃあ私達はもう行くわね。また後で。」
「色々ありがとうございました。それでは優香、また後で!」
『さようなら。』
「また後でなの。」
「バイバーイ。」
「おう!またな嬢ちゃん!」
「あんた等といると退屈しねえな。これからもよろしくな。」
バスターズの面々と別れ、私達は車に乗って、空軍区画に向かった。
[14:20時]
〈フォート・ディール 空軍区画〉
空軍区画をゆっくりと走っていると、ふと視線の先に、2mを超える巨体と、とても小さな少女がいた。
私は車を近づけ、声をかけた。
「マスター!ニーナちゃん!」
2人は足を止め、私の方を向いた。
「ん?おお!誰かと思えば七海殿ではないか!久し振りであるな!最近は大活躍ではないか!我が輩も同じギルドの人間として誇らしいぞ!」
「お久しぶりです。優香さん。さっきのは凄かったです!あんなに速く空を飛び回るものがあるなんて思ってもいなかったですよ!」
2人は興奮気味にそう言った。
「楽しんでもらえてる用で何よりです。2人はどこに行こうとしているんですか?」
「特別パスとか言うのをもらったので、空挺降下体験に行こうかと。」
「なるほど。良かったら一緒にやる?今日はこの後、降下の補助をやる予定だったし。」
「本当ですか?よろしくお願いします。」
「それじゃあ受付で待っているわね。」
私は車を出し、受付に向かった。
[15:00時]
〈フォート・ディール 空軍区画 エプロン〉
空挺降下体験の参加者の受付と簡単な説明を終え、スピアー隊のMC-130J 3機に参加者とインストラクター係りの隊員が乗り込んだ。
「これはまた大きいですね。」
「マスターには窮屈そうだけどね。」
私達の近くの席に、マスターとインストラクター係りの隊員が窮屈そうに座っていた。
《これより離陸します。ベルトを確認して、座っていてください。》
私達が話していると、機体がタキシングを開始し、空に飛び立った。
[15:10時]
〈フォート・ディール上空 高度2000m MC-130JコマンドⅡ〉
MC-130Jが指定された高度に到達し、ジャンプマスターが起立の指示を出した。
「全員起立してください。これから皆さんには大空に飛び出してもらいます。当然危険もあります。なので、隊員の指示には必ず従ってください。
それではハッチを開きます。
風速は4ノット、突風無し。」
後部のハッチが開き、青い空と海が現れた。
「装備チェック!」
近くの隊員と装備に問題が無いかを確認し、ジャンプマスターに合図を出した。
「全員立ってください!」
全員が立ち上がった。
「後部へ移動してください!」
私を先頭に全員が後部に近付いた。
「降下準備!」
最終確認を行い、合図を出した。
「降下開始!ゴー、ゴー、ゴー!」
「さあニーナちゃん!フリーフォールよ!」
私はニーナちゃんと共に大空に飛び出した。
「うひゃー!」
「ニーナちゃん!目を開けてご覧!」
「うぅ。……!凄い!」
眼下には、広大な大地と巨大な基地、海が広がっていた。
「凄いけど、優香さん!じ、地面が迫って来てますよ!」
「大丈夫よ。」
私は肩の紐を引き、パラシュートを展開した。
パラシュートは無事に開き、落下速度が落ちた。
「ほ、本当にあんな布だけでこんな事が出来るなんて!」
「もう少しで着地するわよ。それまでゆっくり楽しんで。」
私はパラシュートを操作し、陸軍区画の演習場に降下した。
「さあ、これで降下体験は終わりよ。どうだった?」
「凄く楽しかったです!今日は本当にありがとうございました!」
「どう致しまして。また今度仕事を受けに行くと思うからその時はよろしくね。」
「わかりました!それじゃあ私は向こうでマスターを待っていますね。」
私はニーナちゃんと別れ、パラシュートを回収した後、インストラクターをする為に空軍区画に戻った。
[18:00時]
〈フォート・ディール 中央区画 司令部 ロビー〉
七海アナト TACネーム:ルーシー
今日の仕事を終えた私達は、司令部に来ていた。
「それじゃあ私はこれから会議だから行くわね。あっ、そうそう!資料室に昨日言っていた資料が届いているそうよ。会議が終わるまでに見ておいたら?」
「わかったよお姉ちゃん。行ってみるね。」
私と有希、シャルの3人はお姉ちゃんと別れ、資料室に向かった。
〈フォート・ディール 中央区画 司令部 資料室〉
私達は資料室に入ると近くにいた係の隊員に声をかけた。
「あのー。ここに操縦関連の資料が届いていると聞いたんだけど?」
「ああ。フェアリーのご友人方ですね?話は聞いています。こちらです。」
私達は隊員に着いて行って、カウンターの裏の部屋に入った。
部屋の中の机の上には大量の本が置かれていた。
「語学、数学、化学、物理、生物、地学、辞典、ASF-X専用の操縦教本、各種回転翼機用の操縦教本、各種固定翼機用の操縦教本、陸海空軍海兵憲兵隊各種資料集、ざっとこれくらいですね。極秘資料もありますので、持ち運びはご遠慮下さい。それでは私はこれで。」
「あ、ありがとうございます。」
私達は隊員を見送り、再び机の上に目を向けた。
そこには当然のように大量の本が鎮座していた。
『「「多過ぎるよ[の]。」」』
あまりの多さに打ちのめされてしまった。
「と、とにかく始めよう。まずはこの英語?の教本から。」
私は1冊の本を手に取り、魔法の準備を始めた。
[20:30時]
〈フォート・ディール 中央区画 司令部〉
七海優香 TACネーム:フェアリー
会議を終えた私は、資料室に向かっていた。
今日の会議では、今日の売り上げ、人気のコーナー、逮捕者、明日行われる観艦式と、海軍の演習について話あった。
逮捕者は喧嘩で注意を受けた者が数人と、立ち入り禁止区域に侵入して、銃や資料を盗もうとした商人を3人確保した。
前者は注意だけで返したが、後者は当然帰すわけも無く、取り調べが続いている。
現時点での情報では、そいつ等はレイシスの商人で、『この者の邪魔をする者は、我が帝国の敵と見なし、排除する』などと書かれた帝国の王のサインと判の押された書状を持っていた。この書状は以前捕らえた奴隷商人達も持っており、帝国の商人は帝国の名の下で好き勝手やっている事が改めて確認出来た。
「………これはなんとしても帝国を潰す必要があるわね。」
そうこうしていると、資料室に着いたので、係の隊員に声をかけた。
「ちょっと良い?銀髪の子と、緑の肌の子と、青い肌の子の3人の女の子が来なかった?」
「彼女達でしたら後ろの部屋にいますよ。」
「ありがとう。失礼するわね。」
隊員に断ってから、後ろの部屋に入ると、床に大量の本が並べられて、3人が突っ伏していた。
「ちょっ!3人とも大丈夫?!」
「どうしました!?」
私が驚いて声を上げると、係の隊員も部屋に入ってきた。
「うー。…?あ。お姉ちゃん。」
騒いだせいか、アナトが目を覚ました。
「大丈夫?!何かあったの?!」
私が心配してそう聞くと、
「ああ…。大丈夫だよ。増えた知識を定着させようと強烈な眠気が出てるだけだから…。」
アナトは眠気に耐えながらそう言った。
「そう。良かった。それじゃあ私があなた達を部屋まで運んであげるわ。」
「うん…。…お願い…。」
アナトは再び目を閉じた。
「大丈夫なようですので私は仕事に戻りますね。お手伝いしましょうか?」
「ええ。ありがとう。でも大丈夫よ。」
私はアナトをおんぶし、有希とシャルを抱いて立ち上がり。宿舎に向けて歩き出した。
「……あったかい………」
私が歩き出して少しすると、アナトがそう呟いた。
私も私を慕ってくれている少女達の温もりを感じながら夜の基地を歩いた。彼女達の未来に希望が溢れている事を願って。
初めて本格的な空戦を書きましたが、いやー難しいです。自分でもうまく出来てないと思うので、後で変える可能性大です。アドバイスなどがあれば是非お願いします。
現実で不可能な機動が出来るのはゲームで良くある事[特にエースコンバット]と言う事でお願いします。
それでは今回の名言を。今回もエースコンバットからです。
傭兵「ただの作戦だ、たかが戦争だ、やられても死ぬだけだ。」
国土の大半を制圧されたウスティオ軍の雇った傭兵の台詞です。死んでも戦死者にカウントされないと言う傭兵の立場が良くわかる台詞だと思います。
次回は海軍が活躍する予定です。
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