第2章1 ゲテモノ装備と制作者
[6月29日]
〈アメックス王国 フィールの街 フォート・ベアード〉
フェンリル軍GDU1stIB 七海優香 コールサイン:フェアリー
私達ギルド派遣部隊(GDU)第1独立大隊(1stIB)の隊員は本土から新装備が届くのを待っていた。
「お姉ちゃん。今日届く新装備ってどういう物なの?」
アナトが質問してきた。
「パワードスーツよ。」
「パワードスーツ?でも私みたいな亜人族にはいらないんじゃ?」
「それが、本土の科学者が私達全員のデータを元に個人専用に調整した物で、私達より高い身体能力を持つあなた達の身体能力も強化される物を作ったそうよ。
当然私達の使う物も同じレベルまで強化されているそうよ。」
「つまり、元々高い身体能力を持つ私達の身体能力も強化出来て、しかも着けた人の身体能力も同じレベルまで強化するって事?」
「らしいわね。本当に気違いじみた性能ね。」
「そんな神話級の装備どうやって作ったの?」
「オリハルコンとかの希少金属、まあ実際には本土の至る所から採れてるから希少でもないそうだけど。希少金属に科学と魔術と魔法を混ぜたハイブリッドで作ったらしいわ。」
そんな事を話していると基地に3機のC-5が着陸した。
「きたわね。行きましょう。」
エプロンに入ったC-5のカーゴベイから降ろされたケースの中には迷彩が施された骨格のような物が並んでいた。
「これがパワードスーツ?」
「そうだよ。」
私がパワードスーツに近付くと機体の奥から白衣をきたメガネの女性が現れた。
「一体誰があんなゲテモノ兵器を作ったと思ったら、やっぱりあなただったのね、湊。」
「ゲテモノ兵器とは心外だなぁ。ちゃんと使えただろう?」
「それは認めるけど、あなたの作る武器は色々と気違いじみているのよ。」
「それは自覚しているよ。
おっと、後ろにいる人達と会うのは初めてだね。
自分は平賀湊。フェンリル軍技術研究所設計・製作部の部長を務めている。
今回こんな最前線に来たのは久し振りにフェアリーと話がしたかったのと、異種族を直に見てみたかったからだね。
うん。いやー、この子達を見ると本当に異世界何だなあと改めて実感出来るね。
それじゃあ目的も果たしたし自分はこれで。」
そう言って湊は機内に戻ろうとした。
「いやいやいや!ちょっと待ちなさい。どうせここまできたなら最後までやりなさい。」
戻る前に慌てて襟を掴んで引き止めた。
「正直面倒くさいんだよ。説明はそこにあるし、自分でやれば?」
「いいから、説明していきなさい。」
「ちぇ。
このパワードスーツには様々な機能がある。主なものは行動補助、衝撃吸収、光学迷彩の3つだね。
それじゃあ着けてみようか。それぞれ自分の名前の書いてある所に行ってくれるかな?」
私達はそれぞれ自分の名前の書かれたケースの前に立った。
「それじゃあケースに触れて。」
ケースに触れると、
『本人と確認。ロックを解除します。』
という音声が流れ、ケースが開いた。
「ケースが開いたら、スーツを出して、足から順番に着けていって。」
言われたとおりに足から順番に着けていくと体にピッタリとフィットしたがまだうまく動かなかった。
「これピッタリしすぎて逆に違和感があるんだけど。それにうまく動かないんだけど。」
「そのうち慣れるよ。
動かすにはまず各自のスマートフォンのサポートAIを無線で同期させるんだ。」
スマートフォンをなんとか取り出し、無線で接続した。
「サポートAIは各自のバイタルや脳波をスーツから測定して、持ち主の動きを最適な動きで補助してくれるように再プログラムした。もう思い通りに動けるはずだよ。」
試しに腕を動かすとさっきより素早く動いた。
「確かに素早く動くようになったわね。でも特に強化されているようにはかんじないけど。」
「それは本気でやろうとしてないからだよ。
そうだな。それじゃあ性能を見てもらおうかな。」
湊はそう言うと、トレーラーに乗って機内に戻り、少しするとトレーラーに装甲板のような物を載せて戻ってきた。
「これは以前なんとなく作ってみた装甲板なんだけど、もういらないからこいつで試してみよう。」
そう言うと湊は装甲板を垂直に立てて置いた。
「さあ、フェアリー。思いっきり蹴り飛ばして見てよ。」
「大丈夫よね?」
「大丈夫だよ。あ。そっちに蹴るのはやばいかな。反対向きで。」
私は言われたとおりに位置を変えて構えた。
「それじゃあ思い切り蹴って見て。」
合図があったので思い切り蹴ろうとすると、アシストが働き、普段の何倍ものスピードで蹴りが放たれた。
[ズゴォン!]
強化された蹴りを受けた装甲板はくの字に折れ曲がり、50m程吹き飛んだ。
「何?これ。しかも衝撃が殆ど無いんだけど。」
「どう?凄いだろう?これなら移動も素早くなるし、攻撃もパワーアップするよ。それと、手のパーツは特殊グローブも兼ねていて壁に吸着させて登ったり出来るよ。」
「これ凄いを通り越してもはや不気味なんだけど。」
「AI技術と魔法と魔術を複合して出来ているから、自分にも理解出来ていない所があるからね。」
「大丈夫なの?」
「魔法と魔術を学んでいる部下は太鼓判を押していたよ。それに昔から発達し過ぎた科学は魔法と変わらないと言うだろう?そう言うことだよ。」
「まあ使えれば良いわ。」
「同感だね。
それじゃあ次に衝撃吸収の説明をしよう。
これは攻撃を受けそうになったり、衝撃が加わりそうになると、緩衝の魔術と魔法が同時発動して、衝撃を100分の1まで減少させられるんだ。これは周囲を監視しているAIが感知した瞬間に発動するから自分で操作する必要は無いよ。蹴りをいれたり殴った時にも自分にかかる衝撃を和らげてくれるから、全力で蹴っても体は無事だよ。ただ、和らげるのは衝撃だけで、熱や刺突なんかには無力だから気をつけるように。」
「それはしょうがないでしょう。それにしても100分の1とは凄いわね。」
「それじゃあ最後。光学迷彩。これは今までの光学迷彩の弱点を改良した物だよ。具体的に言うと、高速移動、透過率、使用可能時間の各性能が飛躍的に上昇したね。
これは魔法の技術と新素材のおかげだね。」
ふと隊員達を見てみると何人かが完全に透明になった。
「確かに透過率が上がってるわね。全く見えないわ。」
「そうだろう!ただこれも存在が消える訳じゃないから見つかるかどうかは着用者の技量によるね。
後流石に全員透明だと作戦に支障をきたすだろうから、HUD越しだと普通の姿で見えるようになっているから。」
試しにHUDを掛けて見ると先程消えていた隊員の姿を普通に確認する事が出来た。
「これで説明は終わりだよ!どうだい?凄いだろう!個人専用の設計を作って製作するのに2週間不眠不休で働いたからね!」
「一応聞いといてあげるわ。大丈夫なの?」
「この位余裕だよ!自分は作業中は眠気を感じないからね。まあ多分今夜から明後日の朝までは眠りっぱなしだろうね。」
「ゆっくり休んで頂戴。今日はありがとうね。」
「そうさせてもらうよ。それじゃあ自分は本土に戻るよ。またね。」
湊はそう言うとC-5に乗り込み、C-5がタキシングを始め、本土に向けて飛び立った。
「相変わらずねえ。湊は。
さあ皆!1週間後には新しい作戦が始まるからその前に完璧に使いこなせるようにするわよ!」
「「「「「はい!」」」」」
私達は1週間で使いこなせるように訓練を始めた。
パワードスーツはアイアンマンやHALOみたいなのではなく、CODAWの兵士達が着けているような物です。魔法で強化された人間や異種族とタイマンはれるようにえげつないレベルで身体能力を強化します。今の所特殊部隊のみの配備で数が揃い次第一般部隊にも配備されていきます。
次回は戦闘回です。最近空気だったお母様がAWACSとして登場します。
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