第1章13 依頼達成と作戦会議
やっとダンジョン攻略です。
[5日目 07:00時]
〈菜園都市ファーブル 西門 駐車場〉
フェンリル軍GDU 1stIB 七海優香 コールサイン:フェアリー
フィールの街に戻る日となり、私達は荷物の積み込みをしていた。
「ほら!ちゃっちゃと積み込んじゃいなさい!」
『『『『『りょーかーい。』』』』』
『もう少し横にずらせない?』
『ん?ああ、わかった。』
『おい、ネルソン。なんだそれ?』
『何だ、リックか。見りゃあわかるだろ。花束さ。』
『んな事は分かってる。何でそんな物を?……!いや!やっぱ言わなくて『実は最近フィールの街のフリーの女の子の冒険者と仲良、ムグ!』それ以上言うな!死ぬぞ!』
「何やってるのよ。」
隊員達の馬鹿騒ぎを見ていると、
「優香。準備してきたの。」
声をかけられたので、振り返ると、深緑のベレー帽をかぶり、黄色のスカーフを首に巻き、黄緑を基調とした服を着たシャルがいた。
「ああ。シャル。準備は終わった?」
「うんなの。しっかり準備してきたの。」
「なら良いわ。そう言えば、あの家と庭園はどうしたの?」
「”持ってきた”の。」
「………はい?」
「魔法で私の支配空間に取り込んだの。」
「わぉ。流石ファンタジー。」
私達の技術も大概だと思ったが黙っていることにした。
[11:00時]
〈アメックス王国 街道 ストライカーCV『バジャー・アクチュアル』〉
私達は街道をフィールの街に向けて走っていた。
「この乗り物は凄いの。初めて見たの。」
私の左のキューポラからシャルが体を出して、外を見ていた。
「まあ私達しか持って無いしね。」
「そう言えば優香。忘れている事があったの。ちょっと顔をこっちに寄せて欲しいの。」
「?良いわよ。」
私が顔を近寄らせると、シャルは小さな額をコツンと私の額に当てた。
すると私の頭の中に全く知らない知識が入ってきた。
「!い、今のは?」
私は驚いて身を引き、シャルに質問した。
「私達の知識を共通にしたの。寵愛を与えた者と与えられた者の間で出来る能力の1つなの。それと知識には動きも含まれていて、それも共有出来るの。」
「それで私の知らない知識が入ってきたのね。と言うことはシャルも?」
「優香達の事と、銃の撃ち方と格闘のやり方と、ストライカーとかヘリとかの操縦の仕方とかの知識はもらったの。」
「へえ。それじゃあチェックよ。中に入りましょう。」
〈バジャー・アクチュアル 車内〉
『優香さん、どうかしましたか?』
「ちょっとね。私の代わりに外を見ていて。」
『わかりました。』
車内に戻り、有希に外の確認を頼むと、弾薬箱と前使っていたM5A、空のマガジン、暗影石のサプレッサーを取り出した。
私はその4つをシャルに渡した。
「弾込めから装填まで見せてもらって良い?」
「任せるの。」
シャルは迷い無く、慣れた手付きでマガジンに6.8mm弾を装填し、M5Aに差し込み、チャージングレバーを引き、サプレッサーを銃口に取り付けた。
「どうなの?」
「凄いわね。確かに知識だけじゃなくて動きもあるようね。本当に凄いわ。」
「もっと褒めて欲しいの。」
「わかったわ。」
私はシャルの頭を優しく撫でた。
[5分後]
「満足した?」
「ん。満足したの。」
「それじゃあまた上に戻りましょう?」
「うん。」
私達は銃を戻し、キューポラに戻った。
途中で何人かがシャルを羨ましそうに見ていたが、今始めると当分終わりそうにないので無視する事にした。
[14:00時]
食事を終え、順調に街道を進んでいると、
《フェアリー、こちらバジャー2-3。出ました。この先300mに30人、アンブッシュしています。》
「フェアリー了解。冒険者の皆さん。聞こえましたね?」
《盗賊なら俺達で十分だ。》
《皆!ここで活躍しないと飯抜きよ!気合い入れて!》
《《《《《うぉーー!》》》》》
「それでは盗賊はそちらに任せまてこちらは援護射撃をします。
フェアリーより全車。目標から50m地点で停車しろ。盗賊は冒険者に任せる。スナイパーは援護射撃の準備をして。」
《《《《《了解。》》》》》
「盗賊もかわいそうね。同情はしないけど。」
車列は少し進んでから停車し、冒険者達が前に駆け出し、スナイパーはストライカーの上で腹這いになり、狙撃の準備をした。
[14:50時]
盗賊達は特に語ることが無い程速やかに鎮圧された。
奇襲をかける筈が逆に奇襲された盗賊は、混乱に陥り、特に抵抗出来ずに捕縛され、何人かが逃げようとしたが、スナイパーに足を狙撃され、御用となった。
「全く。またヘリを呼ばないといけないじゃない。」
私は無線で基地に連絡を取った。
「こちらフェアリー、ベアードHQ聞こえる?」
《こちらベアードHQ、感度良好。》
「盗賊30名を捕縛。ギルドに引き渡したいからヘリを送って。」
《了解。チヌークを送ります。》
「頼むわね。街に変わったことは?」
《冒険者達の動きが活発になっています。どうやら近々魔物の襲撃があるようです。魔物の群れの目撃証言もあります。今日冒険者が500人程出かけていくのも確認しました。
それとジャックと言う冒険者ですが、治療は終わり、今は軍団のホームで帰りを待っているそうです。》
「そう。わかったわ。何かあったら連絡をして。」
《了解。アウト。》
基地との通信を終えた。
「急いだ方が良さそうね。」
私は嵐の前の静けさを感じた。
[7日目 13:30時]
〈アメックス王国 フィールの街 東門〉
6日目には何も起こらず、私達は無事にフィールの街に着いた。
「1週間護衛してくれてありがとう!報酬はギルドで受け取ってくれ!それではまた何かあったら頼む!解散!」
カレンさんが依頼の成功と解散を宣言した。
「それでは七海さんまた今度そちらの基地に伺うわね。」
「わかりました。その時はプレゼントをお渡ししますよ。」
「楽しみにしているわ。じゃあね。」
カレンさんは風の隊の人達を連れて去っていった。
「七海さん!私達もこれで!」
「次はダンジョン攻略だろうな。その時はまたよろしくお願いする。」
「ええ。セシルさんとジョナサンさんもお元気で!」
バスターズの人達は冒険者ギルドの方に歩いて行った。
「私達も車両を返したら解散にしましょう。各小隊長は私とギルドに行ってからよ。」
「「「「「了解。」」」」」
[13:50時]
〈フィールの街 冒険者ギルド〉
私達は車両を基地に返却し、冒険者ギルドにきた。
「あ!皆さんお帰りなさい!」
「ただいま、ニーナちゃん。」
「これで皆さんはCランクとなり、ダンジョン攻略戦への参加資格が与えられます。」
「なるほど。それがギルドの狙いね。参加して欲しいけど規則で参加させられないから裏技でとっととあげちまおうと。」
「あ、あははは。」
「まあ良いわ。楽しかったし。それで調査はどうなってるの?」
「それなんですが……。非常に不味い状況です。
ダンジョンは3日前に発見されました。ギルドとしては皆さんとバスターズの帰りを待ってからの予定だったんですが、2日前の6月12日にこの街に滞在中のCランクパーティー27組、合計572人が制圧に向かったんですが……」
「まさか全滅?!」
「いえ。全滅は免れました。ですが、途中で分断されて戻ってきたのは115人。彼等の話では110人程が死亡し、残った350人程はダンジョン内の砦で釘付けにされているそうです。」
「っ!最悪ね。彼等は食料と医薬品は持ち歩いているの?」
「最低限は。ですが持って後5日でしょう。」
「救出部隊は?」
「王都に要請しましたが到着は早くて1週間後、とても間に合いません。」
「この街に残っている軍団とパーティーは?」
「Aランク軍団のバスターズ、Aランクパーティーのスラッシャー、Bランク軍団のノースウエストの合計357人が残っていますがスラッシャーとバスターズはこの惨状を見て乗り気ではありません。バスターズは直ぐにメンバーを揃えると乗り気でした。」
「自分達より多くの人間で失敗した所には行きたくはないものね。」
「優香さん、何とかしてあげられませんか?」
「……………。今の戦力では無理ね。」
「そんな…」
「但し!1日待ってくれれば用意出来るわ。」
「!それじゃあ!」
「ええ。彼等は助け出すわ。
そのためにも、もっと情報を教えて。」
「わかりました!生存者からの調書がありますのでいくらかは答えられます。」
「それじゃあまずはダンジョンの規模を出来るだけ詳細に。」
「ダンジョンは遺跡型と異次元型の混生と思われます。エルフの術者が調べた所、全3階層で各階の広さは高さ10km、横10km、奥行き60kmです。60km地点には転移門とそれを守る魔物がいます。転移門によりどんな大きさの物でも次の階層には進めるようになっています。」
「分断された冒険者はどこにいるかわかる?」
「2階、転移門から15km程にある砦に入ったのを最後に見たそうです。そこに着く前に大量の魔物に邪魔されて撤退したそうです。」
「……それってセーフティゾーンじゃなくて釘付けにしてなぶり殺しにする罠じゃないの?」
「恐らくその通りです。それと撤退した時に転移門のボスが再出現したのを見たそうです。」
「なる程。楽はさせてくれないと。わかったわ。明日の昼には戦力を揃えるわ。本格的な攻略は明後日からね。それと明日の昼に3つの集団の全員を連れて基地に来てくれる?」
「わかりました!」
「それと、今晩はかなりうるさくなると思うから街の住民に謝罪と耳栓を配布しておいて。」
「どういう事ですか?」
「これから大量の輸送機とヘリが車両と兵士を連れて来て出撃準備を始めるからよ。」
「つまり、あの轟音が1晩中鳴り続けると?」
「そう言うことよ。」
「わ、わかりました。とにかくお願いします!彼等を助けて下さい!」
「任せて。私達の誇りにかけて、生存者は救出するわ。」
さぁ、ファンタジーに科学の力を見せ付けてやりましょう。
[翌日 6月15日 12:30時]
〈アメックス王国 フィールの街 フォート・ベアード 正面ゲート〉
翌日の昼になり、ニーナちゃんが予定通り3つの集団の357人を連れてきた。
中にはエイミーさんや以前調査船団に乗っていた冒険者などもいた。
「優香さん!約束通り連れて来ました!」
「ありがとう。ニーナちゃん。
さて皆さん。私が軍事国家フェンリルの総帥兼現地指揮官の七海優香です。本日は皆さんにはダンジョン攻略と冒険者の救出の会議の為に集まってもらいました。」
「その前に1つ良いか?」
「あなたは?」
「軍団ノースウエストのリーダーのグレゴリー・ホッパーだ。俺達はあんた等が多くの戦力を出してくれると聞いていたんだが、どれ位出せるんだ?」
「それは確かに気になるわね。おっと!私はスラッシャーのリーダーのエミリア・フェリーよ。」
「第3戦車大隊と第24戦車大隊の戦車60両、第1機甲大隊の装甲車70両、第17戦闘飛行中隊の戦闘ヘリが8機、第160特殊作戦航空連隊第1大隊のヘリ46機、第76強襲航空団のAV-50が4機、第3偵察ヘリコプター中隊のヘリが4機、第174戦闘航空団と第9偵察航空団のUAVが10機、第75レンジャー連隊第3大隊の兵士489人、ギルド派遣部隊第1独立大隊の兵士127人が今回用意した戦力よ。
良く分からないでしょうから後で実物と資料映像を見せるわ。」
「取り敢えず沢山いることは伝わった。軍隊の指揮官なら指揮はそちらに任せよう。」
「ありがとうございます。それでは皆さん。ここで話すような内容では無いので会議室に行きましょう。」
〈フォート・ベアード 大会議室〉
大会議室には既に今回の作戦に参加する兵士達1000人以上が座っていた。
「な!凄い広い会議室ですし、凄い数の兵士ですね、七海さん!」
「本土にはもっと広いのもあるけどね。
これで今回の作戦に参加した全員です。それでは皆さん空いている席に座って下さい。」
冒険者達はそれぞれ空いている席に座ったのを確認し、私は各所に設置されたモニターのスイッチを入れ、マイクを手に取り、全員の前に立った。
「それではこれより作戦会議を始める。」
「全員起立!」
私の横に立つフォート・ベアード司令のウィリアム・ガリソン少将が号令をかけると兵士達は全員一斉に立ち上がった。
「敬礼! 着席!」
「さて諸君。既にいくらか情報は知っていると思うが先ずは状況を整理する。
2日前、冒険者572人がダンジョンの攻略に向かった。しかし、攻略は失敗し、115人が帰還し110人以上が死亡、未だ300人以上がダンジョン内に取り残されている。
冒険者ギルドは私達に出動を要請した。
これを受け私達は明日救出とダンジョン攻略作戦を開始する。以降本作戦を ”Operation Labyrinths Breakers(迷宮の破壊者達作戦)”と呼称する。
この作戦の目標は2つある。
1つ。冒険者の救出。
2つ。ダンジョンの攻略だ。
最重要目標は冒険者達の救出となる。
まず、アンヴィル大隊[第3戦車大隊]とライノ大隊[第24戦車大隊]が突入し、転移門から2kmを確保する。続いて航空隊と他の部隊が突入を開始する。以降は互いにカバーしながら最初の転移門まで到達し、2階層へ進む。
最初と同様に機甲大隊が2階層転移門周辺を制圧したら、スカウト隊[第3偵察ヘリコプター中隊]とウォッチャー隊[第9偵察航空団]のUAVを飛ばし、冒険者を捜索する。冒険者を発見後はガンスリンガー隊[第17戦闘飛行中隊]、ナイトストーカー隊[第160特殊作戦航空連隊]、チェッカー隊[第174戦闘航空団]がQRFとCASを冒険者達に送ると同時にバジャー大隊[第1機甲大隊]がエコー隊[第75レンジャー連隊]を乗せて急行し、魔物を殲滅する。QRFは私と第1独立大隊、パラレスキューが受け持つ。降下後QRFは冒険者と協力してバジャー大隊到着まで戦闘を行う。
バジャー大隊到着後は一気に魔物を殲滅する。
その後冒険者達の救護をし、再び侵攻を開始する。2階層序盤以降の周辺情報は無いため、救出後はアドリブとなるだろう。心してかかれ。
以上だ。何か質問は?」
第75レンジャー連隊のマリナ・スティール中佐が挙手した。
「魔物の種類は?」
「冒険者ギルドのニーナ・ヴァレンさん。説明を。」
「は、はい!ゴブリンやウルフなどの小型の物から、オーガやオークなどの大型の物も確認されています。階層が下に行くほど強力になる傾向がありますので、2階層後半はワイバーンなどのより強力な魔物が現れると思われます。」
「他に質問は?」
第160特殊作戦航空連隊のジャック・デュラント中佐が挙手した。
「冒険者はヘリを魔物と勘違いしないですかね?」
「勘違いしないように祈ろう。他には?」
DeltaForceのウィリアム・フィクナー大尉が挙手した。
「ROE(交戦規定)はどうなります?」
「各自の判断で撃って良いわ。武器は各自必要と思う物を持って行きなさい。他には?」
ジョナサンさんが挙手した。
「俺達はどうすればいい?」
「第75レンジャー連隊と一緒に行動してもらうわ。詳しくはマリナ中佐と打ち合わせて。他には?」
誰も手を挙げなかった。
「では作戦会議は終了とする。各自準備を整えなさい。明日0830時出発よ。冒険者の人達は資料映像を流すから残って。以上。」
「起立! 敬礼! 解散!」
兵士達が起立し、敬礼をした後、各自準備の為に大会議室を出て行った。
「それで、俺達に何を見せてくれるんだ?」
グレゴリーさんが質問をしてきた。
「1部を見た方もいますが、私達の戦力と武器についての映像を見てもらいます。」
私はモニターに映像を映した。
「先ずは明日主役となる戦車からです。」
[1時間後]
映像を見終わった冒険者達は皆開いた口が塞がらないと言った感じだった。
特にヘリやUAVなどの航空機には心底驚いたようだ。
「以上が今回参加する兵器です。」
「……これ俺達いなくても良いんじゃないか?」
「そんな事ありません。確かにこれらの兵器は非常に強力ですが、大きいため、森や山岳地帯、市街地、洞窟では使用が難しいです。なのでどうしても人の力は必要です。
特に今回は相手は魔物です。私達は人間が相手の戦闘経験は豊富ですが、魔物との戦闘経験は皆さんよりも少なく、危険な事も多いでしょう。そこで皆さんには彼等のサポートをして欲しいんです。当然ですが不味いようでしたら戦闘にも出てもらいますが。」
「つまり、直接の戦闘はあんた等に任せて、俺達は知識面でのサポートと、緊急時の戦闘をすればいいと言うことか?」
「そうなります。」
「………よし!わかった。俺達ノースウエストはこの依頼受けさせてもらおう。」
「バスターズはもう決めていましたよ。」
「ああ。当然参加する。」
「スラッシャーも参加させてもらいます。」
「俺もだ!」「あの日のお礼をさせてもらう!」
「皆さんのご協力に感謝します。明日動向する部隊の指揮官のマリナ中佐を呼びますので、彼女の指示に従って下さい。」
エイミーさんを除く冒険者達は直ぐにやってきたマリナ中佐に連れられて大会議室を後にした。
「何でエイミーさんは残ったんですか?」
「私をあなたの率いる部隊と一緒に連れて行って欲しいからよ。」
「……前線後方の敵のど真ん中に行く部隊ですからかなり危険ですよ?」
「覚悟の上よ。銃の使い方も、ジェニーに教えてもらってたしね。それに冒険者達も知り合いがいた方が安心出来るはずよ。」
「………わかりました。許可しましょう。明日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。」
「エイミーさんの装備も用意しないといけないですし、行きましょう。」
私達も大会議室を出て、準備に向かった。
今週は早く出来たんで続きをあげました。
長文が多くて見難くなっているので、改善案などがあれば是非教えてください。
ご意見ご感想をお待ちしています。




