第1章12 新兵器と依頼と仲間
私の小説内における鉱石の超簡単な設定です。
オリハルコン:電気と魔力の導率が高い。モース硬度10かそれ以上。ダイヤモンドのような見た目をしている。
ミスリル:魔法や魔術の効果を高める効果がある。モース硬度は9。見る者を惹き付ける鏡のように美しい銀色をしている。
イロカネ:様々な色が存在し、自然の力を宿している。赤なら熱や炎、青なら冷気や水、黄色は光や電気など物によって特性が異なる。モース硬度は9。
暗影石:周囲の音を吸収する能力のある鉱石。純度が高い程効果が高い。全てを飲み込むような黒い色をしている。
[翌日 10:00時]
〈菜園都市ファーブル 宿屋〉
フェンリル軍ギルド派遣部隊第1独立大隊『フェアリー・ウインド』 七海優香 コールサイン:フェアリー
朝食を終え、私とSBU、DeltaForce、KSKの小隊長達は少し話をしていた。
「皆、街を出発した後合流したトラックに見慣れないケースが多数積まれていたのには気付いてた?」
「ああ。」「あのケースね。」「あれって銃じゃないの?」
「さっき気になって確認を取ったんだけど、どうやら技術部が開発した新兵器らしいわ。」
「「「「「それは面白そうですね。」」」」」
「今までは硬度や熱の問題で出来なかった装備をオリハルコンやイロカネ、ミスリルを使って完成させた最新兵器だそうよ。メイン、サブ、刀物の3種類が私達専用に用意してあるらしいわ。
そこで今日の午前中は各自バディと装備の確認をして、午後に簡単な討伐依頼でも受けようと思うんだけど。どう?」
「「「「「異議なし!」」」」」
「それじゃあバディが集まったらトラックに行きましょう。」
[10:20時]
私達は各自バディを連れてトラックから自分の名前の書かれたコンテナを引っ張り出し、中身を確認していた。
「これが私のね。開けてみましょう。」
コンテナを開けると中にはM5のようなライフルとSG550を大型にしたようなスナイパーライフルと1.4m程の機械の鞘に納められた刀があった。
「これが新兵器ね。説明はっと。」
説明にはこう書いてあった。
試作アサルトライフル M5A型
フェアリー愛用のM5Aをミスリルとオリハルコンを用い再設計した物。ミスリルを用い、王国の魔術師のエルフが魔術を込めたことで銃弾に、燃焼、炸裂、冷却、スタンの能力を付与出来る。対魔法障壁の能力はデフォルトで付与されている。セイフティの上のセレクターで、通常、燃焼、炸裂、冷却、スタンが切り替えられる。暗影石という鉱石を用いた新型サプレッサーを着ける事で発射音を殆ど消す事が出来る。オリハルコンには大気中の魔力で自己再生する能力があるため、射撃後のパーツの取り替えは不要。
20mmレールガン狙撃システム RSS-1
伝導率が非常に高いオリハルコンと熱を操る事の出来るヒヒイロカネの合金で出来た狙撃用レールガン。 艦船や航空機用のレールガンを個人で使用出来るように再設計した物。通常の金属では熱と衝撃に耐えられず、20発が限界だったが、オリハルコンとヒヒイロカネの合金を使用する事で硬度が増し、熱を制御することに成功した。戦車砲レベルの破壊力を持ち、破壊力と音の割に反動は非常に低い。サプレッサーが無いと雷のような音がするが、暗影石の専用サプレッサーを着ける事で、エアガンの発射音以下まで抑えることが可能。大口径なので様々な種類の弾を撃てる。大出力大容量バッテリーを使用。オリハルコンの自己再生能力によりパーツの取り替えは不要。
高周波ブレード 草薙
オリハルコン、ミスリル、ヒヒイロカネの合金で出来た高周波ブレード。超高速で振動すると同時に高温になるため、振動と熱でありとあらゆる物を切断する。この刀で斬れない物はあまり無い。また、損傷してもオリハルコンの能力により自己再生する。
説明を読んだだけで超危険と判断出来る武器が詰め込まれていた。
「これ作ったヤツは頭がちょっとおかしい気がするわ。」
『同感です。ヤバいですよこの装備。』
「八重、良美、エマそっちはどう?」
近くでコンテナを確認していた、3人にも聞いてみた。
「私の所にはHK416のようなライフルと7.62mm口径狙撃用レールガンと高周波ナイフが入ってました。」
DeltaForce第2中隊メタル隊第2小隊隊長のエマ・ベックウィズ大尉が教えてくれた。
「私のより小さいわね。マークスマンライフルかしら。」
「多分そうですね。ナイフは予備含めて5本入ってました。」
「フェアリー!私のには30mm対物狙撃用レールガンとMP7、トマホーク(斧 ミサイルではない)が入ってたよ!」
「またゲテモノが出たわね。そんなの使えるの?」
「今のXM109より軽いし、反動も低いみたい!威力は段違いだけど。」
「良美はどうだった?」
良美を見ると背中を震わせていた。
「どうしたの?」
「フェアリー……こ、この刀…三日月宗近です!」
「三日月宗近って天下五剣の一つで、最も美しい名物中の名物と言われた大業物の?」
「間違いありません!ま、まさかこの手で持てるときがくるなんて!」
良美は相当嬉しいのか、刀を抱きしめながら号泣していた。
「説明によるとオリハルコンとヒヒイロカネとミスリルを使って名工に打ち直して貰って高周波ブレードに生まれ変わったようね。それにしても、綺麗な刀ね。大事にしなさいよ良美。」
「は、はい!大切に使います!」
{この様子だと他の人のコンテナにもとんでもない物が入ってそうね。後でリストにまとめましょう。}
私は至る所ではしゃいでいる1人1人に声を掛けていった。
[10:40時]
ようやっと全員に話が聞き終わった。それぞれの新しい武器はこうなっていた。
●SBU
○斎藤重春
HK416
M26
高周波ナイフ
○山上美紀
89式小銃
M1014
高周波ナイフ
○宮元良美
MP5A5
M1014
高周波ブレード 三日月宗近
○新島八重
30mm狙撃用レールガン[XM109]
MP7
高周波トマホーク
●DeltaForce
○ウィリアム・フィクナー
M5A
12.7mm狙撃用レールガン[M82A3]
高周波ナイフ
○エマ・ベックウィズ
HK416
7.62mm狙撃用レールガン[Mk.14]
高周波ナイフ
○ウェイド・イシモト
SCAR-H
AA-12
高周波ブレード 鬼丸
○ジェシカ・ハウ
7.62mm狙撃用レールガン[MSR]
HK416C
高周波ナイフ
●KSK
○ローザ・シュルツ
7.62mm狙撃用レールガン[G28]
HK416C
高周波ブレード 大包平
○ライナー・ギュンツェル
MG36
MP5K
高周波ナイフ
○アレーナ・ハルトブロート
G36
7.62mm狙撃用レールガン[PSG-1]
高周波ナイフ
○ハインツ・ブトラー
G36C
SPAS12
高周波ナイフ
それぞれが今使っているライフルのデザインを元に魔改造が施されたライフルや狙撃用レールガン、高周波ナイフなどがコンテナには入っていた。
「皆自分の新しい武器を受け取った事だし、何か依頼でも受けてみましょうか。」
「「「「「賛成です。」」」」」
「それじゃあ行きましょうか。」
私達は試し撃ちがてら討伐依頼を受ける事にした。
[11:20時]
〈菜園都市ファーブル冒険者ギルド〉
冒険者ギルドは依頼とにらめっこしている人や騒いでいる人で賑わっていた。
私と有希は真っ直ぐカウンターに向かい、受付嬢のピナさんに挨拶をして、良い依頼がないか聞いてみた。
「ああ!昨日の!」
「昨日は騒ぎを起こしてすまなかったわね。今日は依頼を受けに来たんだけど、日帰りで終わる討伐依頼とかあるかな?」
「う~ん。その条件で昨日見た通りの腕ならこのジャイアントブル3頭の討伐が良いと思います。本来はFランクの軍団じゃなくてC~Bの集団向けなんですけどね。補足の説明は必要ですか?」
「ええ。ジャイアントブルの詳細な姿と習性、生息場所の情報と周辺で活動している冒険者がいるかの情報が欲しいわ。」
「わかりました。
ジャイアントブルは名前の通り巨大な牛で、体重は平均で530kg。大きな角と黒い毛皮を持ちます。敵と判断した物には相手が自分より格上だろうと突進を仕掛ける獰猛な性格です。仲間の血の匂いを嗅ぐと興奮して沢山集まってくるため、連戦必至で、初心者キラーと呼ばれています。
生息場所はこの街から東に5km程に位置する丘に生息しています。今のところその近辺で活動中の冒険者は、え~と、今のところいないですね。」
「そう。依頼者はジャイアントブルのなにがほしいの?」
「角ですね。装飾品に使うんだとか。
それと、肉は程よく油がのっていてとても美味しいので、そちらも角や皮と同じく高値で取り引きされています。」
「ありがとう。それじゃあ手続きをお願い。」
「わかりました。皆さんに幸運を。」
手続きを終え、ギルドを後にし、HMMWVの準備をしている仲間に依頼の情報をHUDを通して送り、彼等と合流するため、駐車場に向かった。
[11:40時]
〈菜園都市ファーブル 西門 駐車場〉
菜園都市ファーブルの門には馬車を止めておく為に大きな駐車場が確保されているが、今はストライカー、10式戦車、HMMWVが大半を占め、中世風の街並みと馬車の中に大量の軍用車が並ぶ奇妙な空間となっていた。
20人程の兵士がHMMWVの周囲で武器や弾薬のチェックをしていた。
「皆!チェックは終わった!?」
「こっちは大丈夫ですよ!」「こっちもです!」「同じく!」
「それじゃあHUDで確認したと思うけど、今日は牛狩りよ!さらっと片付けて焼き肉パーティーと洒落込みましょう!」
「「「「「おーー!」」」」」
「全員登場開始!」
私の号令に従い、全員がHMMWVに乗り込み、配置についた。私もワスプ2-1の助手席に乗り込んだ。
「それでは出発しますよ、フェアリー。」
「ええ。頼むわね、アンナ。」
ワスプ2-1の運転手のアンナ・ボッシュ少尉がHMMWVをゆっくりと発車させ、1列になって門を出て東に向かった。
[12:20時]
〈菜園都市ファーブルより東 5km地点 丘〉
私達は丘の頂上で車列を止め、昼食を終えてからそれぞれの武器にサプレッサーを着け、バイポッドでスナイパーライフルを支え、周囲を観察していた。
「確かに至る所にいるわね。」
《そうですね。どうします?》
「各自、自由に発砲してよし。戦闘開始よ。」
《《《《《了解。》》》》》
私は手始めに30m先で草を食べているジャイアントブルに狙いをつけた。
「まずチャージは通常の5分の1で撃って見ましょうか。有希、スポッターは任せたわよ。」
『了解です。』
息を止めて引き金を引いた。
[プッ]
と軽い音がして、20mmの巨大な飛翔体が飛び出し、ジャイアントブルを貫通し、背後で土煙が上がった。
「5分の1でこの威力。凄まじいわね。」
そう言ってスコープから目を離し、全体を見ていると、さっき私が撃ったやつの横にいたジャイアントブルが”跡形もなく弾け飛んだ”。更に、後ろの地面をえぐり取り、直径5m程の大穴を空け、特大の土煙を巻き上げた。
「はぁー!?」
「これは想像以上の威力だね。」
声のした方を見ると、八重が巨大なライフルを構えていた。
「八重、あなた何やったの?」
「いやー。フルチャージだとどうなるか気になって。凄まじい威力だね。」
『これドラゴンとか殺すのが目的ですよね。人間にはとても使えないですよ。』
「そうね。もし人間に使ったら最後、撃たれた奴は跡形もなく消し飛ぶわね。」
周りでは仲間の血の匂いを嗅ぎ付けたジャイアントブル達が集まってきたが、次々と撃ち殺されていき、遂には逃げ出してしまった。
「静かになったわね。
皆!ご苦労様!HMMWVに連結してきた荷台に載せて街に帰りましょう!」
《《《《《焼き肉だ!》》》》》
仲間達がHMMWVの荷台にテキパキとジャイアントブルを積み込み始めた。
[14:50時]
〈菜園都市ファーブル 東門〉
私達がHMMWVで17頭のジャイアントブルを持ってくると、門は喧騒に包まれた。
通常ではジャイアントブルは重いため、肉の一部が流通する位で1頭丸ごと持ってくることすら珍しいのに、今回は一気に17頭も街に運ばれてきたのだから当然だろう。
「すいません!通してください!」
角を高周波ナイフで切り落としていると、野次馬を掻き分けてピナさんと2人のギルド職員がやってきた。
「ああ。ピナさん。大量ですよ。」
「凄いですね。今までこんなに大量のジャイアントブルが市場に流れた事はありませんよ。これは売るんですか?」
「3頭は私達で解体して食べようと思っているので、残りは売ってしまおうと思います。」
「でしたらギルドが買取も行っていますよ。」
「へぇ。いくら?」
「相場が黒貨1枚(1000万)ですので、1.4でどうですか?」
14頭で1億9600万か。
「それで良いわ。」
「ありがとうございます。依頼達成です。報酬は後で取りにきてください。」
「了解。」
私達は3頭を荷台に載せたまま、一旦街の外に向かい、バーベキューの準備を始めた。
[19:00時]
私達は他の隊員のHUDにメッセージを送った後、調味料を買いに行くついでにシャルと風の隊のエルフ達やバスターズのメンバーを出来る限り集めた。
「お誘いしてくれてありがとうございます!」
「御相伴に預からせてもらおう。」
「セシルさんにジョナサンさん。見つかって良かったです。」
私が食器を並べていると、街の方から2人が歩いてきた。
「所で、あそこにいる人は…何者ですか?」
彼女は肉を焼くのを手伝っているシャルを差して聞いた。
「彼女はこの街に住んでいるアルラウネ族のシャルル・オラトリエです。昨日知り合いになりまして。せっかくなので呼んだんです。」
「なるほど。どうりで強大な力を感じるんですね。まさか生きる伝説の一人とは。」
「シャルの事を知ってるんですか?」
「ええ。彼女は元SSSランクの冒険者で、かなりの人嫌いと聞いています。」
「それは正しくないわ。」
私とセシルさんが話していると、カレンさんが話に割り込んできた。
「あの子の本心はお喋り好きよ。ただ口下手で人見知りなせいと、アルラウネ族という事もあって誤解されやすいのよ。そのせいで世間から人嫌いと判断されて、人が寄り付かなくなってしまったのよ。
唯一の友達は、あの子に意志を与えられた植物と本当の彼女を知る極少数だけ。街の人は怖がって近寄ってこない。そんな時にやってきたのがあなた達よ。見た事の無い服を着て、自分に怖がる事も無く普通に接してくれる存在がたまらなく嬉しかったんでしょうね。」
私はカレンさんの話を聞いているうちにいてもたってもいられなくなり、
「シャル!」
私はシャルを抱きしめた。
「ゆ、優香?どうしたの?」
シャルは困惑して私に質問してきた。
「シャル、私はあなたの友達よ。たとえ世界中の全ての人間が、あなたを化け物と罵ろうと、私は常にあなたの友達で居続けるわ。
だから、あなたはもう孤独でいる必要は無いのよ。」
私は涙を浮かべながらシャルに思いを全てぶつけた。
私の思いを聞いたシャルは私の首に手を回し、
「うん。これからもよろしくなの優香。」
見とれる程可愛い笑顔を浮かべた。
[20:30時]
私がシャルと親密になってから少しすると肉が焼き上がり、焼き肉パーティーが始まった。
肉は現実世界ならA5ランクに値する程美味しく、パーティーは大いに盛り上がった。
冒険者達は奪い合うように肉を食べ、風の隊のエルフ達は肉にかけられたソースやジュースに興味津々で、調理をした兵士に詰め寄っていた。
私は美味しい肉を思う存分食べ、満足していた。
すると、
「優香。1つお願いがあるの。」
私の隣で食事をしていたシャルが話かけてきた。
「お願い?」
「うん。私をあなた達の仲間にして欲しいの。迷惑、なの?」
「そんな事無いわ!むしろ大歓迎よ!改めてよろしくね、シャル。」
「ありがとう。ふつつか者ですがよろしくお願いするの。」
私達はそれは少し違うと思いながらも、新しい仲間を歓迎した。
ちょっとやり過ぎた気がします。でも後悔はしてません。
隊員の名前はアニメやゲームのキャラや、実在した人物の名前をもらったりしています。
例:エマ・ベックウィズ=エマ・シーン+チャールズ・ベックウィズ
ご意見ご感想をお待ちしています。




